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【第39号】「家族が『うつ』になったら・・・~あせらず見守るために大切なこと~」医療法人 渡辺クリニック院長 渡辺 洋一郎

2022年10月30日

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うつ病って何?


 うつ病は、最近よく聞く言葉です。色々な所で聞くので、知っているような気になってしまいますが、本当にうつ病のことを理解していますか?
 例えば、嫌なことがあると誰でも落ち込むことと、うつ病の人が落ち込むことの違いは説明できますか?どこが違うのか?なぜ違うのか?意外と説明できないものです。いやなことがあって落ち込むことがうつだとしたら、誰だってうつ病になってしまいますね。
 普通に落ち込んでいたら、励ましたり、話を聞くことで、ある程度解決できます。しかし、うつ病は普通の落ち込みとは違うのです。
 このように、うつ病がどういう病気かを知らないと、家族や周囲の人はどう対応していけばいいかわからないと思います。
 ここでは、典型的なうつ病の話をしたいと思います。

うつ病の発生メカニズム


 人間は、体質などの生物学的要素やその人がもつ性格的要素、それに仕事や家庭などの環境的要素が絡みあうと、何らかの反応(いわゆるストレス反応)をおこします。それは、心理的レベルの症状であり、適応障害もこのレベルに該当します。しかし、そのレベルをこえ、脳の中のホルモン(セロトニン、ノルアドレナリンなど)の働きが鈍ってくると、自律神経症状や感情が不安定になるなど、色々な症状が出てきます。うつ病は、まさに脳レベルの症状で、脳の中のホルモンの異常が起きていることで発症しているのです。
 先ほど、嫌なことがあって落ち込むことは、励ましたり、話を聞くことで、ある程度解決されると説明しましたが、これは心理的レベルの症状だからです。脳の中の変化が起こっているということは、ホルモンの働きが関係しているので、いくら環境を変えたり、励ましたからといってすぐに回復するわけではないということです。

うつ病の症状

 うつ病の症状として、「こころ」の症状と、「からだ」の症状があります。

 「こころ」の症状として、ゆううつ感、意欲・興味の低下、不安症状が主な症状となります。今まで好きだったことに打ち込めなくなったり、楽しめなくなったりします。

主な症状


・ゆううつ、悲しい、寂しい  ・ささいなことから不安に陥りやすい
・絶望感、孤独感       ・仕事への意欲が低下する
・自分に自信がなくなる   ・何をするにもおっくうになる
・自分を責める        ・物事の判断が鈍くなる

 「からだ」の症状として、不眠(朝早く目がさめる)、食欲低下、疲れやすい、自立神経症状が主な症状となります。また、若い女性に多いのですが、非定型のうつとして、過眠、過食(食欲増加)があります。

主な症状


・眠れない、朝早く目がさめる   ・からだがしびれる
・何を食べてもおいしくない     ・生理不順
・ときどきめまいがする       ・性欲がおちる
・肩がこる               ・下痢、便秘
・からだがだるい、疲れやすい  ・息切れ、息苦しい

 うつ病のチェックポイントとして、1.好きなことを楽しめない。2.疲れているのに眠れない。こういった状態が、1週間から2週間続くと、病気としてのうつ病の可能性が高いといえます。

うつ病の治療


うつ病の治療の基本として、おさえておきたいことが7つあります。
1.うつ病という病気について、本人並びに家族・周囲が理解する。
 うつ病は、脳の神経伝達系の障がいであり、気の持ち方では回復しません。

2.精神的な休息をとること。特に病初期は決して無理をしてはいけない。
 病初期は脳の処理能力が落ちているので、普段出来ることができなかったり、何倍もの労力を要したりします。そのことで、ますます疲れ果て、悪化してしまいます。

3.薬物治療が必要で、有効であることを認識する。
 薬の作用について十分理解し、続けて飲むことで成果がでてくるので、勝手に減量したり中断したりしてはいけません。

4.短くても完治に最低でも3カ月程度はかかる。
 脳の機能は急には回復しないので、ある程度の時間が必要です。

5.治療中の一進一退はほとんどの人がなる。
 うつ病とは、良くなったり悪くなったりの繰り返しなので、一喜一憂しないことです。やれる範囲のことを段階的に増やしていき、決して回復してきているからといって、やりすぎないことです。

6.治療中絶対に自殺をしない。
 うつ病になると、症状として死にたくなることがあります。人生観や哲学などを説明しても効果はありません。あくまで「症状」であり、回復すると、「死ななくて良かった」に変わります。

7.治療がすむまでは、人生上の大決断(退職など)をしない。
 うつ病の時は、本来の自分ではありません。決断は一旦棚上げにし、本来の状態に回復してから考えましょう。

家族や周囲の接し方


 最後に、病初期と回復期のうつ病患者の家族や周囲の接し方についてですが、まず病初期は、うつ病は病気であるということを理解し、気の持ちようではどうにもならないということで、やたらに励まさないことが大切です。また、ゆっくり休めるように環境を整備し、患者の不安に巻き込まれず、周りからの不適切な忠告、根拠のない話に惑わされないことです。
 回復期には、生活リズムをたてなおす協力をし、患者が焦っている時には、ブレーキをかけ、家族自身が焦らないことが大切です。また、患者の様子を客観的にみて伝えたり、再発予防のため、発症時の状況などを話し合うことも必要でしょう。
 時間をかけて、あせらず、ゆっくりと。うつ病からの復帰を目標とするのではなく、その後も、患者が人として豊かな生活を維持することが大切だということを意識して、長い目で考えましょう。

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