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【第52号】「誰にでも起こりうる不登校2~不登校から抜け出すためのアプローチ~」一般社団法人家庭教育支援センターペアレンツキャンプ代表理事 水野 達朗

2022年10月30日

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<あふれる情報に混乱せず、自分の家庭にあった情報を取捨選択しましょう>

現代社会は様々な情報が溢れています。インターネットで「不登校」と検索すると約7万件もの情報が出てきます。

これらの情報を読み解くだけでも膨大な時間と労力が必要となります。また、不登校に関していえば「こころのエネルギーが溜まるまで待ちましょう」「積極的に登校を促しましょう」のように専門家の立場によっては真逆の意見が述べられています。

不登校にお悩みの方の多くがこのような情報の多さに混乱した経験があるのではないかと思います。

 

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

 

こたえは不登校には不登校の数だけ原因や背景があるということに尽きるかと思います。

ゆえに、一見対立するような真逆の意見でも、私はどちらも正解だと思います。

例えば、「不登校は親の過保護、過干渉が引き起こす自立の問題」と「不登校は親の愛情不足。何でも好きなものを買い与えてやり、毎晩抱き締めてあげましょう」という真逆の意見を取り上げて考えてみましょう。

 

前者の考え方は、家庭内での生活と学校との生活とのギャップに起因する不登校と捉えればその通りだと思います。つまり「思い通りにできない学校よりかは何でも言うことを聞いてくれるお母さんのいる家のほうがいいや」となるケースですね。そのようなケースではその子にとってどこまでが「しつけ」として必要な干渉とみなすのか、どこを越えれば過保護や過干渉になるのかを判断した上で親の対応を変えていくことが大切です。

それによって、子どもの自立心や社会性などが育まれていきます。その先には適切なタイミングで登校刺激をして復学を目指すという方向性が見えてきます。

 

後者の考え方は子育てに対して放任傾向であり、時に虐待の疑いがもたれるような家庭背景があるようなケースやいじめ等によりこころに大きな傷を負っているような不登校のケースでは適切なアドバイスと言えます。

そのような事例では子どもにとってわかりやすい形での保護者の愛情表現をし、自己肯定感や家庭に対する安心感を育んだうえで、本人の意志を確認しながら復学の道筋や多様な選択肢を考えるというのは適切かと私は思います。

 

例えば、この2つのアドバイスを逆の事例で信じてしまったとすれば、どうなるかを考えてみましょう。

「過保護過干渉のケース」に「何でも受け入れる」対応をすると、きっと子どもはより幼くなり、保護者への依存を高め、時には退行現象をおこしてしまいます。

「愛情不足のケース」に「自立を促す」対応をしてしまえば、より子どもは保護者への不信感を深めてしまい、非行行為に走ったりするリスクが高まるでしょう。

いずれにしても学校社会に戻ることとは真逆の未来が待っている可能性が高くなります。

このような真逆の意見が存在する背景にはケースごとによって専門家のアドバイス内容も真逆になるということがあるのです。

 

世の中にはテレビやネット、そして新聞や書籍など不登校の情報に触れる機会が数多くあります。子育てに熱心なお父さん、お母さんであればあるほどそれらの情報に流されやすいという恐れがあります。

不登校は「保護者のせい」でも「学校のせい」でも「子どものせい」でも「社会のせい」でもありません。ましてや「こころの問題」でも「からだの問題」でも「病気」でも「なまけ」でもありません。

しかし、それらすべての要因があるのが不登校だとも言えるのがこの問題の難しいところだとも言えます。

 

 


<待っているだけでは解決しないケースが増えている>

『愛する我が子がある日突然「学校に行きたくない」と布団から起き上がられない状態になる。玄関でランドセルを背負ったまま固まって泣いている。』

 

不登校を経験した保護者の方々から話を聞くと、「何が起こったのかがわからない」とパニックになったとおっしゃいます。

 

多くの保護者の方々がそんな我が子をなんとか登校させようと、布団を力ずくではぎとり、叱り、なだめ、説得されたのではないでしょうか。

 

そんな闘いの日々が続き、保護者も子どもも疲弊していきます。そして、「不登校は時間が解決してくれる…」という考え方に至る保護者の方が増えているように感じます。

しかし、ゴールのないマラソンほどしんどいものはありません。そういう意味ではこのような考え方は保護者の方にとっては大変つらい考え方とも言えます。そして残念ながら不登校の中には待っているだけでは解決しないケースがあります。

 

待つだけでは、どんどん心の奥で抱えている問題が大きくなり、体力面や生活習慣の問題、そして休んでいる間の勉強面の遅れなどの問題が出てきます。

このように不登校といっても様々なタイプがあります。待っているだけでは解決できない事例であれば、勇気を持って「待つ」だけではなく、積極的に子どもとかかわることが必要です。

またいじめなどのケースでは積極的に登校を促すのではなく、しっかりと受容や共感の姿勢で学校との距離を置いてやることが必要です。

不登校でお悩みの保護者の方はまず、専門家と相談し、あなたのお子さんの不登校がどのようなタイプなのかを理解して「待つべきか、積極的に登校を促すべきか」の方向性を決めることが大切なことだと言えます。

 


<大切なことは親の共感姿勢>

様々な原因と様々なタイプが存在する不登校ですが、お子さんの不登校解決に共通する重要な保護者の姿勢は「共感」という考え方です。

 

共感とは子どもの気持ちを否定せずに肯定的に感じることをいいます。

この共感力を保護者の方が鍛えれば、子どもが抱えている課題を解決できる可能性が大きくなります。

保護者の共感的姿勢により親子関係が改善し、不登校や、引きこもり、家庭内暴力の問題解決につながる場面を数多く私は見てきました。

この共感的姿勢を保護者が身に付けると、子どもにとって保護者が「相談に乗ってくれる味方」になります。

皆さんはご自身の不安な気持ちを優先してしまって子どもの気持ちに寄り添わずに登校を促してしまい、保護者と子どもが敵対関係のようになっていませんか?

多くの不登校の子どもたちは心に傷を負っていたり、現実とは違う個人的な思い込みに囚われたり、頭では理解しているけれど身体が動かなかったり、自分自身の存在を受け入れることが困難になっていたりします。もちろん「なまけの延長線上にある不登校」にもそれなりの葛藤があります。

そのような不登校の子どもに共感してあげるだけで保護者を頼りにしてくれるようになります。

逆に保護者が子どもの気持ちに否定的で、共感していなかったり、ただ単に同情をしているだけだったり、説教ばかりしている場合は、親子のこころの距離が離れてしまって子どもは保護者の話を聞きませんし、抱えているものを話してくれずに、保護者と相談をする関係性になりません。

不登校の我が子に対する保護者の対応としてまず大切なのは言葉の選択ではなく、まずは「親はどんな状況にあってもあなたの味方なんだよ」という立場作りです。それをなくしては不登校解決にはつながりません。

 

保護者が共感的姿勢で真剣に子どもの話を聞くことで、子どもは自分の中にあるモヤモヤした気持ちが整理され、前に歩むきっかけを獲得できるかもしれません。また、保護者が根気よく心の扉をノックし、話を聞き続けることで親子の信頼関係を築くことができます。

学校へ行けない、行かない子どもを前にして保護者の正論をぶつける前に、まずは「あなたの味方なんだよ」と伝えましょう。そうすることで保護者からの不登校解決のための具体的なアドバイスがはじめて子どもの心に届いて説得力を持つことになるのです。

解決へのアプローチの入り口はまずは親子の信頼関係だと言えるのです。


<明けない夜はないし、やまない雨はない>

今回のコラムでは不登校から抜け出すためのアプローチについて説明してきました。冒頭でもお伝えしましたが、私は原則として「不登校はそのケースごとに全く違うも

のであり、ひとりひとりの不登校の子どもに適した対応法や解決策を模索する必要がある」と考えています。

お子さんの不登校のパターンを正確に分析し、どのような方向性で一貫してアプローチしていくかが肝要です。

 

明けない夜はありません。やまない雨もありません。不登校というつまずきも決して乗り越えることができない試練ではありません。

私は支援者として、不登校を乗り越え保護者も子もたくましく成長した家庭を数多く見てきました。

どんなに今が辛くても保護者が学べば子は伸びる。保護者が変われば子も変わる」ということを意識して、まずは子どもの元気な「行ってきまーす」の声と姿を取り戻すのをどうか目指してほしいと思います。

 


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