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【第53号】 「思春期は親と子どもは伴走する関係~学生が語ってくれたこと~」龍谷大学文学部教授 松浦 善満

2019年3月20日

ページ番号:347096

増える一人親家庭の学生たち

  大学で勤めていて、「20年前との違いは?」と聞かれることがよくあります。

 私は即座に「ひとり親で育ってきた元気な学生が多いこと。」と答えます。現在のゼミでも5人(18人中)の学生がひとり親家庭で育ってきました。父子家庭もあれば、母子家庭もありますが、なかには幼い時に両親と別れ祖父母に育てられその自宅から通っていた学生もいます。しかしどの学生も明るく元気なのです。彼らは音楽クラブや空手部のキャプテン、バスケット部の選手というように文化やスポーツ好きなのが特徴です。


自分を分かってもらいたかった?中学時代

 先日、中学時代は野球部、高校時代は陸上部だったT君が卒論の相談で研究室にやってきました。この原稿を書きかけているときだったので、「君の中学時代のことを読者に知ってもらってもいいかな?」と尋ねると。「いいですよ。大学に入ってから意外と僕と同じ境遇の人が多いので安心しました。どんどん書いてください。」と即座に返答がありました。

 T君は中学三年の時、父親の浮気が原因で離婚した母親に弟と暮らしてきました。「あの時は、本当にショックだったけれど、なんとか自分を保てたのは、クラブ活動での友達がいたからです。」そして「あの時、僕が折れてしまったら母親までも折れてしまうのではと思ってぐっと我慢しました。いまではいい思い出になっています。」と淡々と話しました。ここで母親を折れさせないT君の力はどうして湧き上がってきたのでしょうか?ここではお答えしませんが読者の皆さまそれぞれに思いを巡らせてください。

 そのT君が私に「思春期は、何についても疑問に思い、時には落ち込むことも多い時期でした。両親の離婚もそうだったけど、なぜ勉強しなければならないか?自分はなぜテレビを見ているのか?すべてを疑っていた時代でした。しかも自分のそのような気持ちを分かってくれない親にはイライラした毎日でした。」と率直に話してくれました。

 しかし私は、親は子どもの気持ちを全部わかる必要はないと思います。子どもは自分を分かろうとしない親への反発心をもちながらも、どこかで親を思いつつ、自分自身で悩み考えようとできるのです。自立心が芽生えるのです。また、そんな自分を自己嫌悪しつつも自分の存在を冷静に見ることができるようになるのです。したがってこの時期に親は、決して子どもに阿ねたり、ましてや迎合する必要もありません、親としても腹立たしく思いつつちょっと距離をとって伴走しつづけると、やがて子どもは「見守られている」と感じ安定するのです。思春期の子どもと親の関係はこのような、反発しつつ自立する伴走関係なのです。


大事な友達の存在

 T君はさらに、「学校の行き帰りに友達と過ごせる短い時間が一番楽しかった。」と話してくれました。思春期の子どもにとって友達の存在が大きいことは言うまでもありません。クラブや塾など教室以外にも遊び友達がいることが大事なのです。親や学校の先生はこのことを十分に配慮する必要があります。


「重要な他者」の発見が子どもを自立させる

 アメリカの社会心理学者GH・ミードは、子どもは小学校低学年まで身近にいる母親と父親を自分にとってかけがえのない存在(彼の言葉では「重要な他者」)として付き合っていますが、やがて、家庭から離れた友達のなかに自分にとっての心の友を発見すると語っています。このように子どもは次々と「重要な他者」を発見し、やがて社会では職場の同僚に「重要な他者」(自分に影響を与え信頼できる他者)を発見します。そして自分自身を高めてゆきます。

 皆さんは、いま思春期の真っただ中の不安定な状況にある子どもと向き合っておられることと思いますが、まもなく彼や彼女たちは親元を離れるのです。その時こそ、親子の関係はよりリスペクト(信頼)の絆で結ばれるのです。


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