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【第49号】「思春期と摂食障害~これって摂食障害?~」 大阪市立大学大学院医学研究科 講師 山内 常生

2019年3月20日

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摂食障害ってどんな病気?


 皆さんもこれまで拒食症や過食症といった病名を聞いたことがあるのではないでしょうか。きっと「ご飯を食べずにどんどんと痩せていく病気」とか「いっぺんにたくさん食べてしまう病気」など、なんとなくの印象はお持ちだと思います。専門的に摂食障害は、神経性やせ症、神経性過食症、過食性障害と大きく分類されています。まず、それぞれの病型の特徴と症状について簡単に紹介しましょう。

神経性やせ症


 一般的に拒食症といわれ、最も特徴的なのは、著しい痩せをきたすことです。徐々に、あるいは急激に体重が減って、最低限の体重を下回ることが診断の助けになります。また、発達過程にある健康な子どもであれば体重は増加を続けますが、体重が下降することがあれば拒食症の始まりを疑わせる異常として注意が必要です。患者さんは、強い痩せ願望や体重が増えることへの強い恐怖心を持っています。さらに、痩せているにも関わらず、「自分は太っている」と誤った認識をするなど、病気によって生み出された症状に翻弄されて、ますます食事を拒み続けるのです。病気の経過中には、食事制限の反動で過食をしてしまい、太るのを防ごうと食事を嘔吐したり、過剰な運動をしたりするタイプの患者さんもいます。女性では低体重の影響から、無月経になってしまいます。

神経性過食症


 過食症は、過食に加え、過食を帳消しにするための嘔吐や下剤乱用などの代償行為により特徴づけられます。痩せ願望や肥満恐怖がある点では、上述の拒食症と同様ですが、過食と代償行為の釣り合いから、過度な肥満にはならず正常範囲内の体重を保つことが多いです。過食したいという衝動に気持ちを揺り動かされ、結局我慢できずに過食した後は、強い罪悪感や無力感で自己否定する気持ちが強くなります。初めの頃は、食欲を満たす満足感や嘔吐の爽快感、あるいは嫌な気分を晴らすことに多少なりとも役立った過食と嘔吐も、習慣化してしまうと、もはやその理由さえわからず、食べたら止まらなくなってしまいます。

過食性障害


 過食症と似ていますが、肥満を防ぐための不適切な代償行為がない点で異なります。終われば苦痛に感じる過食ですが、腹一杯食べることの虜になって、肥満に陥る傾向があります。

摂食障害の原因は?


 摂食障害は、十代から二十代前半の若い女性に多くみられるこころの病気です。子が成長し思春期を越えて大人へと近づくこの時期に、子ども達は様々な場面で悩み、不安を覚ることがあります。例えば、親子の関係は少しずつ変化します。互いにとって適当な距離を模索し、いわゆる親離れ、子離れがうまく進むには、それまでに育まれてきた家族との信頼関係が必要になるでしょう。また、学校生活などでよい友人関係を築き、家庭外での自分の居場所を見つけることは、将来への自信に繋がります。このようにして、自分が周囲と安定した関係にあると実感することは、こころの健全な発達の大きな助けになります。裏を返せば、このような経験を欠いて、いつも不安でいることは、摂食障害といった精神的トラブルの一要因となります。
 また、私たち、とりわけ若い女性の間には、痩せがもてはやされる文化があります。自尊心が低く、自信が持てない子どもにとって、体重を減らすことには様々な効果があるようです。痩せて褒められたことは自分の唯一の誇りに思えてくるかもしれません。自分を思い通りにコントロールできたと何かを達成したように思われ、ますますダイエットに没頭するようになります。しかし、行き過ぎた食事制限により、摂食障害への罠に陥ると、病的な認識の歪みからいくら痩せても満足できなくなります。四六時中、食事のことや体重や体型のことが気になって頭から離れず、よりエスカレートした食行動異常への悪循環が完成します。

家族の気づきについて


 拒食症患者さんのなかには、病気から抜け出せずに痩せの状態が長期間続く方がいます。そこには、痩せがもたらすもう一つの効果があるようです。極度の痩せは、それまで願っても得られなかった家族など周囲の注意を引きつけます。患者さんは、決して好ましくないこの心配された状況に、どこか心地よさを感じるのかもしれません。また、過食や嘔吐は、絶望的な気分に対する憂さ晴らしと同時に、駄目な自分を罰することで気持ちを落ち着かせる行動にも見て取れます。拠り所のない気持ちを、不器用ながら自分なりの方法で癒やそうとする行動が摂食障害なのです。
 さて、摂食障害に向き合うとき、家族は何が出来るでしょうか。一見するとわがままな行動にとられがちな無茶な食行動の裏で、患者さんの心の中の消え入りそうな声に聞き耳を立て、思いに気づくことが出来れば、回復に繋がる家族の支えがどのようなものか理解できるのではないでしょうか。

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