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【第78号】「乳幼児期の遊びで育つ子どもの力」神戸大学大学院人間発達環境学研究科 北野幸子

2022年10月30日

ページ番号:463976

はじめに

 今の子どもたちが大人になった時には、今ある仕事の大半がなくなっているのではないか、といわれています。これからの子どもたちには、ICT化や人工知能化が進む中、知識技術を単に記憶したり、習得したりするだけでは不十分と考えられています。むしろ、状況を判断したり、臨機応変に知識や技術を活用したり、応用したり、創意工夫を施す力の育ちが大切になります。さらには、人とのつながる力がさらに大切になると考えられています。つながりによって個々の力を超えた、新たな力が創出されます。それにより、人工知能を超えた新たなアイディアや価値が創造されます。

 こういった力の育成には、乳幼児期の、主体的な遊びの経験が大切であると考えられています。

遊びは学び


 多くの大人にとって、4,5歳までの時期の記憶は、あいまいです。学びについて、小学校以降の記憶のイメージが強いものです。そのため「授業時間」と「休憩時間」、「学び」と「遊び」を二項対立的なものとして捉えがちです。つい、「遊んでばかりではなく教育をして欲しい」といったことを子どもを預けている施設にいってこられる保護者もおられます。しかし、乳幼児期の教育とは、小学校以降の教育とは大いに異なります。
 乳幼児期によく遊ぶことによって、自分を好きになったり、自分に自信を持てたりします。また、よく遊ぶ経験が、友達とかかわろうとする気持ちの育ちや、実際に多く友達ができることにつながります。乳幼児期は遊びこそが学びであるといえます。

乳幼児期の特徴と遊び


 乳幼児期は、視野も狭く、自己中心的で、気分にコントロールされやすいです。記憶をていねいに再現したり、順序立てて考えたりといったことが得意な時期ではありません。抽象的なことよりも、リアリティのある経験から多く学びます。つまり、子どもは、具体的に、物や人とかかわりながら、学びます。ものに気付く、興味を持つ、しっかりとリアリティをもってかかわる、さらに興味を持つ、そして、探求する。といった学びの基礎、学びのパターンを経験的に遊びながら学びます。

遊びでこそ育まれる力


 変化の時代、国際化が進む時代には、凛とした、心の芯の部分を育むことが大切です。乳幼児期には、誰かに与えられたものを、できたか?できないか?と見張られたり、チェックされたりするような、経験は不適切です。指示されたり、命令されたりすることよりも、自由で自分が発揮できる遊びが大切です。その経験の中でこそ、自尊心や自己効力感が育まれます。これらの力から、チャレンジしてみようという気持ちも育まれます。新しい国に行ってみたり、異なる文化に興味を持てたり、新しい価値を受け止めたり、他者との肯定的なつながりを深めたり、新しいものを創りだしたりといったことにつながります。

保護者の方のかかわり方

 保護者の方には、子どもに、お教室やワークシートなど、与えられた経験ばかりをさせていないか考えて欲しいと思います。子どもが、できたか、できなかったかと、用意された結果を問う経験ばかりに、追われていないか、考えていただきたいと思います

 指示・命令への応答は、おそらくこれからは人工知能がします。聞かれたことに応えたり、与えられたことをこなしたりすることよりも、子どもには、自分で考える力、工夫する力、創造する力等を育みたいものです。
 知識、技術を多く身に着けることは悪いことではありません。しかし、それらが意識や感情とかかわりながら身についていっているのか、結果だけではなく、そのプロセスに保護者の方も意識して欲しいと思います。


 保護者の方には、遊びの中の子どもの気付き、興味関心を受け止めて欲しいと思います。そして、物と人とのかかわる様子に肯定的に共感して欲しいと思います。時に、試行錯誤する様子や創意工夫する姿を、しっかりとほめたり、励ましたりして欲しいと思います。遊びの中にはたくさん学びがあります。時に問いかけたり、時に提案したりすることもよいと考えます。さらには、共に考えたり、調べたりすることもよいと思います。たくさん話を聞き、子どもに考えたり、表現したりする経験こそを遊びの中で保障して欲しいと思います。

保護者の方も楽しみながら

 遊びのイメージは、自由であることと思います。しかし、主体性を尊重し遊びを大切に子どもに保障することと、無関心や、放任は、異なります。保護者が育って欲しい子どもの姿のイメージを持ち、子どもの教育に熱心になることはもちろん大切です


 そこで、子どもに十分な経験が保障されているのか、不安になったり、あれをさせねば、これもさせねば、と思いすぎて、不足部分を気にしすぎたり、自分の至らなさを探すような関わりは、保護者の方も楽しくないと思います。大好きな保護者の方が、心配ばかりしていると、子どもも萎縮してしまうように思います。


 子どもが何に興味を持っているのか、何に疑問を持っているのか、何に憧れを抱いているのか、そういった子どもの姿を、保護者の方も楽しみながら、「可愛いなぁ」とおもいながら、洞察して欲しいと思います。結果重視の目的志向型ではなく、プロセスを重視した子どもの主体性を尊重し、かつ、保護者も大いに楽しみながら、子どもの豊かな育ちや学びにつながる、遊びこそを大切にして欲しいと考えます。

 

参考: 

保育所保育指針(2017)

幼稚園教育要領(2017)

幼保連携型認定こども園教育・保育要領(2017)

国立教育政策研究所(2013)『社会の変化に対応する資質や能力を育成する教育課程編成の基本原理』(2013))。

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