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【第75号】「きこえない・きこえにくい子どもの子育て~保護者としてできること」神戸大学国際人間科学部 河﨑佳子

2019年3月20日

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きこえない・きこえにくいってどういうこと?

 「聴覚障害」は外から見てわかりにくいだけでなく、「きこえにくさ」「きき分けにくさ」の個人差がとても大きいという特徴があります。

 まず、どれくらいの大きさの音ならきこえるかによって、軽度・中等度・高度・重度などに分類されます。また、外耳から鼓膜までの範囲に原因がある場合を「伝音性難聴」、鼓膜から聴神経を経て脳に達するまでの範囲に原因がある場合を「感音性難聴」といいます。伝音性難聴は中等度までの比較的軽い難聴で、補聴器の効果で「きこえにくさ」が改善されやすいです。


 一方、感音性難聴は軽度からまったくきこえない状態までの幅があり、音がひずんだり,くぐもったり,途切れたりするため、補聴器で音を拡大しても、ことばをきき分けて理解することは難しいです。そのため、たとえ軽い難聴であっても、感音性難聴の場合は、音声言語の習得やコミュニケーション上の支障を軽視してはいけません。さらに、どういった高さの音がきこえにくいかの個人差もあり、「男性の声はきこえやすいが、女性の声はきこえない」といった体験が生じてきます。

子どもが「きこえない・きこえにくい」とわかったとき

 新生児聴覚スクリーニングが産院で実施されるようになって、軽い難聴や片側の耳だけの難聴も含め、生来的に聴覚障害をもつ赤ちゃんは、生まれてすぐに発見されるようになりました。ただし、スクリーニング検査が判定するのは「きこえない・きこえにくい可能性」であって、直ちに聴覚障害があると断定するものではありません。4~5ヶ月頃に、指定病院の耳鼻科で精密検査を受けるよう紹介がなされます。

 それでは、産院で「きこえていないかもしれない」と告げられたご家族は、確定診断を待つ間どうすればいいのでしょうか。きこえない赤ちゃんのほとんどは、きこえるご両親のもとに誕生しますので、お母さん・お父さんが戸惑い、不安を抱かれるのは当然です。

 「どう接したらいいの?」「何をしてあげればいいの?」

 そうした問いかけに、わたしは次のようにお答えしています。


 赤ちゃんとのコミュニケーションの始まりは、感情に彩られた「心の状態」のキャッチボール。
 お母さん・お父さんの気持ちが、身体の弛緩や表情をとおして、赤ちゃんの身体と心に伝わっていきます。
 ふんわりと暖かな心の状態は、赤ちゃんに、「ママも、パパも、あなたも、だいじょうぶよ」というメッセージを伝えます。赤ちゃんの身体も柔らかくなって、満足げな微笑みを返してくれることでしょう。
 これからの数ヶ月、赤ちゃんは驚くほどの能力を発揮してくれます。
 チラチラ揺れる木漏れ日を、興味深く見つめます。大人の表情を真似て、小さな舌をちょっと不器用に突き出します。振ってもらった玩具に向かって、手や腕、お腹や足まで動きます。

 


 日に日に成長していく赤ちゃんを観察できたら、発見の一つひとつを「すごいなあ!」と褒めてあげてください。
 それから、そんな発見のできたご自身を「たいしたものだ」と誇らしく感じてください。
 ママやパパのうれしい笑顔が、赤ちゃんに喜びを伝えます。「自分は人に喜びを与える存在なのだ」と、知ることから始まる人生はすてきです。
 伝えられる、受けとめてもらえる、分かち合える。そうした実感から、「人とかかわる能力」が発達していきます。ですから、さまざまなやりとりを、全身で楽しみたいですね。(大阪府の相談まど口「ひだまり・MOE」の案内より)

手話との出会い

 手と表情を使って赤ちゃんとかかわることは、とても有効なコミュニケーション手段です。それは、赤ちゃんがきこえていても、きこえていなくても同じです。

 スクリーニング検査で「きこえていないかも」と告げられたなら、是非、手話のある支援の場を探してみてください。そこにはきっと、きこえない青年や成人との出会いがあり、きこえない子を育てている先輩ママ・パパもおられるでしょう。豊かな表情や仕草、映像を生み出す手の動きに、赤ちゃんは釘付けになります。そして、いろんなことを理解し、吸収して、やりとりができるようになっていきます。


 きこえる子の場合は、自然に耳から入ってくる音によって言語(日本語)を獲得していきます。一方、きこえない子の場合は、目から吸収できる映像言語、つまり「手話」に触れて成長する環境が与えられれば、手話を第一言語として自然獲得します。きこえる子がネイティブ・スピーカーに接することで、日本語や英語を「気がついたら話していたわ」となるように、きこえない子は、手話を第一言語とするネイテイブ・サイナーとかかわることで「気がついたら手話していたわ」となるわけです。
 もちろん、お母さん・お父さんも、子育てを楽しみ、親子関係を培うために手話の威力を使ってください。それによって、お子さんの意味をつかみ理解する能力を引き出してあげることは、やがて、日本語を習得していく際にも有効に働きます。

きこえない・きこえにくいことが確定したら?


 生後4~5ヶ月頃、精密検査で「きこえない・きこえにくい」と診断されると、補聴器を付け、音に関心をもって「聴く」練習が始まります。そして、日本語を習得するために、療育教室などに通って、残存聴覚を生かした発話・読話の訓練を受けることが多いです。
 手話ではじめた親子のコミュニケーションをいっそう豊かにしながら、聴覚を使い、また手話を生かして日本語を吸収し、バイリンガルに成長する芽を育んでいけたらいいと思います。
 もちろん、幼児期・児童期を迎えてから聴覚障害が発見されることもあります。そうした場合も、耳鼻科で精密検査を受けた後、補聴器や人工内耳手術の相談や、ろう学校や療育教室での支援を受けることになりますが、「見ればわかる」環境の保障を忘れずに、お子さんの自尊感情が傷つかないように配慮してあげることが大切です。

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