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【第80号】「仕事と家庭の『本当の』両立とは その1」ダブルムーン合同会社代表 福地朋子

2022年10月30日

ページ番号:492060

専業主婦世帯数と共働き世帯数の逆転

専業主婦世帯と共働き世帯の数は、この40年で逆転しました。1980年代の専業主婦は1,114万世帯、共働きは614万世帯と、圧倒的に世の中の主婦は専業主婦が多い時代でした。2017年の数字を見ると、専業主婦は641万世帯に減少し、共働きの世帯は1,188万世帯に増加。つまり、1980年時の世帯構成が逆転しており、働く女性が世の中の主流を占めているといえます。(出典:厚生労働省「厚生労働白書」内閣府「男女共同参画白書」総務省「労働力調査」)

共働き世帯の増加と共に、仕事と家庭(家事・子育て)の両立に悩む声も大きくなり、ファッション誌でも話題に取り上げられているほどです。私自身も30代の頃から周りの「時間がない」「忙しい」「疲れた」という声を聞くことが増えました。環境によってその度合いはそれぞれですが、多くの人が抱える悩みであることは明白です。

『名もなき家事』は女性がする?


では実際にどの家事に、どれくらいの時間を費やしているか棚卸ししてみると「名もなき家事」の存在が明らかになります。

例えば、朝の家事について考えてみましょう。出勤前に洗濯をして外に干す。健康的な朝食とお弁当をつくり、その日の夕食の準備をして出勤をする。これらの家事には「献立を考える」「事前に材料を揃える」「洗い物をする」「食器を片づける」「洗濯物を仕分ける」などの「名もなき家事」の存在があります。

フランスの友人曰く、彼らの朝の何倍もの家事量だそうです。

フランスの朝食は、シンプルです。珈琲とパンをひと切れ、またはフルーツでなどが一般的で、日本の食卓のようにテーブルに何品も並ぶことはなく、朝から料理をすることはほとんどないそうです。また、フランスでは、パートナーと外食をするために、シッターを利用するのも当たり前のことですが、日本ではまだまだシッターや家事代行を利用する人が、フランスに比べて少ないのが実情です。社会背景や文化の違いと言ってしまえばそれまでですが、日本では、まだまだ「家事」は女性の仕事であるという認識が根強く、外注することにも気が引ける(頼みにくいと感じている)風潮が色濃く残っていると個人的には感じています。誰かにお願いすることに罪悪感さえ生まれるのです。

「なぜ?」と感じる方もおられるかもしれませんが「罪悪感」は多々あらわれるキーワードなのです。


 家事という一言で済ませてしまえば、大した負担を想像できないかもしれませんが、家事を担う立場になると、「これは誰がするべきこと?」と感じる「名ものなき家事」は優に20を超えます。①たまったゴミを捨てる②朝ベッドや布団を整える③定期的にシーツを洗う④テーブルに置き去りのグラスを洗う➄トイレットペーパーの補充⑥ゴミの分類⑦洗面所のタオルを取り替える⑧古紙回収の日に新聞などを集めて出す⑨クリーニングを出す⑩引き取りにいく⑪回覧板を届ける⑫郵便物を仕分ける・チェックする⑬子どもの食事を手伝う⑭子どもの送迎をする⑮ペットや植物のお世話⑯使い切ったティッシュの交換⑰靴磨き⑱カーテンの開け閉め⑲町内会の会合など⑳学校関係のおつきあい…まだまだありますが、このあたりにしましょう。

40年前専業主婦が担っていた家事や雑務は、現代の共働き家庭においても無意識レベルで「女性がやるべきこと」と位置付けている家庭が多いのです。「名もなき家事」の一つひとつは短時間で終わるものもありますが、これに加えて、何が起こるか予測不能の子育ても常に並走しているわけですから、いつも時間に追われているような感覚になることは容易く想像できます。

 

総務省の統計によると、40歳代では仕事時間と家事関連時間を合わせた時間が8時間台後半,1日の3分の1以上となり,男女・各年代を通して最も長くなっています。問題は、それらを一人で抱え込み苦しい気持ちで日々をすごすことです。家事も子育ても、ひとりで「しなければならない」という考えが、私たちを苦しめることが多々あります。まずは、無意識にすりこまれた枠組みを外し、過去の常識にとらわれず考えてみることが肝要です。

家事内容の見直しを



その一歩として、家事の内容を見直してみましょう。名のある家事も、名もなき家事も、これまでの習慣で行ってきた「~すべき」という価値観を一旦横に置いて「必要のない家事」はやめてみるのです。


例えば、洗濯をした衣類を畳み、家族それぞれのタンスに片づける家事について。私がクライエントにすすめているのは、乾いた衣類は家族それぞれの名前の書いたカゴに入れるだけ。ハンガーにかけた衣類は、かけたままです。そこから先は、家族各自にお任せするシステムです。子どもの個性や年齢にもよりますが、大きくなればなるほど任せやすくなります。「洗濯物はたたんで片づけるべき」という数十年の習慣を変えるには、多少の抵抗があるかもしれませんが、一度やり方を変えてみて、あなたのやりやすいやり方で、家族も同意してくれれば、それでいいのです。家事は、減らせる。という視点で考えてみると、今まであたりまえにしていた家事に疑問が生まれるかもしれません。家族で話し合って、もっと楽にできるアイディアを出し合ってもいいですね。

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