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【第79号】「社会的養護の子どもへのまなざし」大阪府立大学教育福祉学類 伊藤嘉余子

2020年3月23日

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社会的養護とは

    保護者からの虐待、貧困、保護者の疾病や障がいなどさまざまな理由によって、保護者や家族と一緒に暮らすことができない子どもたちを「社会が育てる」仕組みのことを「社会的養護」といいます。

  社会的養護には大きく2つのレパートリーがあります。一つは「施設養護」、もう一つは、里親家庭や養子縁組家庭で子どもを育てる「家庭養護」です。2018年3月末現在、社会的養護のもとで暮らす子どもたちは全国で約45,000人です。日本では少子化が進んでいますが、社会的養護を必要とする子どもはそれほど減少していない状況だといえます。

  日本のこれまでの社会的養護は「施設養護」が中心でした。里親や養子縁組の少なさのほか、施設職員配置の不十分さ等といった日本の社会的養護の状況は、過去に3回にわたって、国連から改善勧告を受けています。そのため、日本でも里親委託の推進など社会的養護の改善に向けてさまざまな新しい取り組みを始めているところです。

社会的養護を必要とする子どもたち


  社会的養護を必要として施設や里親家庭にやってくる子どもたちの多くが、それまでの家族との生活の中で十分かつ適切な衣食住を経験してきていません。また基本的な生活習慣を獲得することができなかった子どもも少なくありません。

  例えば、食事を1日3回食べる、毎日入浴する、トイレの後は手を洗う…等ということを知らずに生活をしてきた子どももいます。つまり、多くの人が考える「当たり前の生活」を経験していない子どもが多いという視点が必要になります。そのため「小学生なのに、こんなことも知らないの?」「10歳だったら、これくらいのことは言わなくてもわかるだろう」という決めつけや思い込みをもたずに、一人ひとりの子どもと丁寧に向き合い、生活や今後の人生に必要なことについて、一緒に生活を重ねていく中でゆっくり伝えていく根気強さや寛容さが施設職員や里親など「社会的養護の担い手・養育者」には必要になります。また、地域や学校でも、社会的養護の子どもたちが、差別を受けたりせず、生き生きと生活できる地域・社会づくりが重要になります。
 
  また、ネグレクト(育児放棄)や保護者からの身体的暴力などを経験した子どもたちは、「親を頼る」という経験や「親が安心・安全な生活や環境を整えてくれる」という経験が乏しいため、人を信じたり頼ったりする力や、安定した人間関係を構築する力が育っていません。そのため、社会的養護の担い手のみならず、子どもにかかわるすべてのおとなたちが、社会的養護を必要とする子どもにとって「信頼できるおとな」「安心・安全を提供してくれるおとな」として、子どもと向き合うことができるかという点が非常に重要になります。

社会的養護の子どもに社会ができること


「社会的養護」の理念は「子どもの最善の利益のために」と「社会全体で子どもを育む」です。つまり、施設職員や里親など、一部の人間だけが社会的養護を担うのではなく、社会で生きるおとな全員が、すべての子どもを社会人として社会全体で育むという視点や姿勢が必要ということです。
 
  例えばスコットランドでは、社会的養護のもとで生活する(あるいはしていた)子どもに対して、社会福祉分野だけでなく、教育、医療、住宅などあらゆる領域に従事する人間が「自分たちにできること」を考え実行することが社会全体で共有されています。例えば、不動産業界による「社会的養護で育った子どもには敷金や礼金のない住宅を提供する」という配慮、「社会的養護の子どもの大学受験の費用を免除する」という各教育機関の制度設計、「社会的養護で育った配慮が必要な若者については急な欠勤や遅刻について、なるべく寛容な措置をとる」という雇用主側の配慮などが「あたりまえの配慮や取り組み」として実践されているそうです。
 

実家機能をもたない子どもたちを社会全体で支える


  社会的養護の子どもたちを特別扱いしてほしい、というのが趣旨ではありません。社会的養護の子どもだけでなく、貧困家庭の子ども、ひとり親家庭の子ども、病気や障害のある子ども、あらゆる子どもにとって、安心・安全に心地よく育つことのできる地域・社会をつくっていきたいと思っています。
 
  ただ、一つ考えて頂きたいことは、社会的養護の子どもたちの何が「しんどさの核」にあるかというと「実家がない」という点なのです。貧困であっても、病気や疾病があっても「精神的に支えてくれる親がいる」つまり「心の軸になってくれるおとながいる」ということは、子どもにとって心強い支えになると思います。しかし、社会的養護の子どもの多くは「一生涯、自分の軸として心の中で生き続けてくれるおとな」がいないのです。人にとっての「親等が果たす実家機能」100とした場合、その機能を特定の里親や施設職員だけですべて担うのは不可能です。だから、「実家機能100」を「施設職員30」「子どもの職場の人10」「アパートの親切な大家さん10」…といった具合に社会全体で分担していくことが大切なのだと考えています。
 
  地域社会に「社会的養護の子どもの自立生活を支える応援団」を、領域を超えてたくさんたくさん作っていく。そんなイメージで社会的養護にかかわる社会的活動に携わっています。

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