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【第91号】新しい時代を生きる子どもたちに求められるコミュニケーション力とは? その2 「子育ての目的」に立ち返る wmoon合同会社代表 福地 朋子

2022年10月30日

ページ番号:529398

しなやかに生きる力が求められる



「あなたの子育ての目的は何ですか?」と問われたら、あなたは何とお答えになりますか?皆さんの答えは様々ですが「自立」して「幸せな人生を歩んでほしい」という共通の願いがこめられています。そのためには、「何でもできる子に育つ方が良い」と考えるのが親心かもしれません。しかし、人には得て不得手があり、資質・能力もそれぞれ違います。だからこそ、人は家族や仲間と助け合い、分かち合い生きていくのだと思います。そして、その分かち合いの中で様々な感情交流を図り、人生がより豊かに彩られていくのではないでしょうか。
「自分でできる」ことは素晴らしいことですが、自分の資質、得意なことと苦手なことを自己理解した上で「助けて」「手伝って」とお願いできる発信力や表現力は、しなやかに生きる力のひとつではないでしょうか。自己理解は、自分以外の誰かとかかわる中で深まっていきます。人との違いから、自分を知るのです。家庭という安心・安全な場で、時に家族と衝突したり、泣いたり笑ったりトライアンドエラーを繰り返しながら、自己理解を深めていくことは何にも代えがたい尊い体験です。子どものトライアンドエラーのエラーを決して否定せず、エラーから学びを得る方向づけをしたいものです。子どもの特性を見極めながら、時に見守り、時に手を差しのべ、望む結果を得た時には喜びを分かち合う。その時のコミュニケーションは、決して一方的では成り立ちません。じっくり子どもの様子を観察し、子どもにとって最適なタイミングや言葉を選ぶ必要があります。

一方的なコミュニケーションをさけよう


保護者だから、保護者が言いたいタイミングで言いたいことを言うのは一方的なコミュニケーションです。私自身、それに気づかず一方的なコミュニケーションをとっていた過去があります。一方的なコミュニケーションは、子どもから様々な成長の機会、自己理解の機会を奪っていました。振り返ると、その頃の私は「子育ての目的」を見失っていました。自分勝手な期待や不安を子どもに押しつけていたことに気づき、反省してもしきれないほどです。子どもに失敗させたくないというのが親心ですが、子どもが成長する機会を奪ってしまっては、元も子もないのです。
新しい時代を生きる子どもたちに求められるコミュニケーションの練習をする場が、家庭であり、学校であり、サイバー空間です。インターネットを介したコミュニケーションも必須の時代です。時には、友だちとケンカをしてしまう場面もあると思います。一概にケンカをしてはいけないと指導するのではなく、その経験からどんな気づきを得られるか、経験を成長につなげるにはどのような声かけが最適か、保護者もトライアンドエラーで関わっていく必要があると感じています。

いろいろなコミュニケーション方法で「最適解」を求めよう


家族でLINEを利用している人には、普段は照れくさくて言えない感謝の気持ちを伝えることができた。というエピソードを聞いたこともあります。内容や目的により、どの手段が最適か、社会に出てから学びはじめるのではなく、子どもの頃から経験を積んでいくことが望ましいと感じます。そこに絶対的な正解が1つあるわけではありません。変化が常態化する社会の中で、常に最適解を見出すことが肝要です。
目的によって手段を変え、手段によって伝え方を変える必要もあります。コミュニケーションが多様化する時代だからこそ、子どもの頃から練習を積み重ねて「小さな失敗」を経験し、活用能力を身につける機会を見守ることが、家庭でできる練習ではないでしょうか。
 
とはいえ、日々忙しく過ごしていると、ついつい一方的に伝えてしまう場面もあるかと思います。「頭ではわかっているのですが…」とおっしゃるお母さん、お父さんの気持ちが痛いほど伝わってきます。私自身もそうでしたから。心に余裕がない時は、コミュニケーションも思うようにいきません。それは、大人も子どもも同じです。心に余裕をもつためには、どのように過ごせばいいのか自己理解をしておくとイライラも減ります。簡単なことでも構いません。珈琲を飲む、窓を開ける、深呼吸するなど、自分の心に余裕をもつ何かを準備しておいてください。ほんの少しでも、心を休めてみてください。そして「子育ての目的」を書いたメモを読み返してみてください。ふと、肩の力が抜けると思います。


新しい時代を生きる子どもたちの可能性は無限大です。トライアンドエラーを楽しめるしなやかな心を、安心・安全な場である家庭で育んであげてください。

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