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【第92号】女性と子どもの困難~DVに気づいたらどうする? その1  甲南女子大学 友田 尋子

2022年10月30日

ページ番号:530878

新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大で急増するDVと子ども虐待相談


 2021年度警察庁統計が2月に発表され、全国の警察が認知した刑法犯は61万4303件、街頭犯罪は大幅に減少し、2020年の1年間で虐待の疑いで警察が児童相談所に通告した18歳未満の子どもは10万6960人、DVの相談は8万2641件と、感染拡大による外出自粛が一因の現象が増加しているとのことです。
通告児童の内訳は、心理的虐待が7万8355人、身体的虐待が1万9452人、ネグレクト(育児の怠慢・拒否)が8858人、性的虐待が295人でした。全体で前年比8738人増で、10年一貫して増加を続け、過去5年間で2倍に増えています。誰にも知られず密室の中で暴力が存在していることを考えると、この数倍もの被害者がいるといえます。
長引く自粛、変容する働き方、失業等生活の困難により不安、ストレスが暮らしを脅かし始め、ステイホームにより家族の接点が増え、それぞれの価値観の相違により葛藤や対立が起こり、解決や修復の難しさが浮き彫りとなっています。
家族とつながり、愛しケアする力を身につけた人々は、葛藤や対立に対し自分を開きながらなお自分らしさを失わずに関係の中にいることのできる自立した自己を持ち、自分自身であり続けることのできる力、及びそれぞれの人生はその人のものであることを認めリスペクトすることのできる力を備えています。困難に遭遇し、解決できない出来事に喧嘩となり、離婚したい…との思いが勝っても、情緒的に自立した家族は解決する力を持ち合わせています。
しかし、暴力や人格を否定され尊厳を踏みにじられてしまっている家族の中で起こる対立は、対等にそれぞれの意見をぶつけ合う喧嘩とは違うのです。

DVの実態


DVは女性への人権侵害であり男女共同参画をさえぎる行為です。DVは喧嘩と違って、やる側とやられる側が固定した関係になり、被害者の尊厳が身体的・精神的に侵される人権侵害です。東京都生活文化局「女性に対する暴力」調査では、3人に1人が身体的暴力、2人に1人が心理的暴力、5人に1人が性的暴力を受けた経験をしていました。内閣府調査では、女性の約20人に1人は夫から命の危険を感じる暴力を受けた事があると答え、それ以外の虐待的な扱いを受けている場合を含めると半数以上の家庭で何らかの暴力的支配があることがわかりました。


DVによる暴力とはいったいどういうものでしょうか。以下のような6種類に分類できます。①殴る等の身体的暴力、②意志に反して無理やり性行為を強要する等の性的暴力、③経済的決定権を奪い最低限の生活費で暮らすことを強制する等の経済的暴力、④保険証などを渡さない、また行動を監視する等の社会的暴力、⑤事あるごとに罵る、脅したりする等の精神的暴力、⑥生活に必要なものを渡さない等のネグレクトに分類できます。こうした暴力は、生活を共にする間柄でおこるため、被害者は相手に迷惑をかけていると自分を責め、加害者に屈従していき、被害と気づくことができず支配されていくのです。

骨折や出血のあるようなけがの場合は明らかなDV被害と理解できても、一見してもわからないうつ傾向、不安症状、対人関係の不調和の被害の場合は「同居人も大変だ」と加害者を庇護しがちです。DV被害者は暴力によって心身の健康を害しながら育児・家事・労働と一日中働かざるを得ない状況となります。心身の痛みを抱え休むことができず、周囲の人に相談することもできず、帰宅時間を監視され給料を搾取され暮らしているDV被害者に「逃げないのは自己責任」と被害者の生活に寄り添うことのない人は、多いですが、たとえ就労していて外から見て自立をはたしているように見える女性も、自由になるお金は持ち合わせていないこともあります。

加害者の多くは女性が母親や妻として家庭内に居ることを理想とし、女(妻)は男(夫)に優しく気を使い機嫌を保つ役割を果たすべきとする「女性性の強調(gender bias)」があることはよく言われています。加害者が暴力をふるうきっかけに「自分の言うことをきかない」「自分を怒らせた」と話すことが多くあります。ジェンダー社会に暮らす男性の中には、男らしさという力の支配を内面化し、自分の感情処理ができないとき、女性に暴力や屈辱を与えて相手を怯えさせ支配していくことを学んできた人もいます。このような認識や行動を支えている背景には、有償労働から女性を締め出してきた現実、未だ女性を社会参画から排除するといった考え方、家父長制度への囚われなど男性優位社会の社会構造があると考えられます。

現在ではDV、子ども虐待予防対策として養育支援訪問事業、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業が全国で実施されていますが、感染予防のために面談ができず支援につながりにくくなっています。DV通報件数が国連報告書や各国報道によるとフランスで30%増、シンガポールで33%増、米国、カナダ、英国でも同様に増加傾向で、国連組織「UNウイメン」のムランボ=ヌクカ事務局長は暴力的なパートナーといる女性は孤立を深め、密室での暴力は最悪の事態であり、新型コロナウイルスの陰に隠れたDVのパンデミック(世界的流行)が起きていると述べています。尊厳が侵されやすい文化にある家庭では、外出自粛、在宅勤務、休業や失業などによるストレスの矛先が立場の弱いメンバーにむかいやすく、暴力の被害が広がっているといえます。(【第93号】女性と子どもの困難~DVに気づいたらどうする?~その2に続く)

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