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【第97号】「アートを楽しむことは保護者と子どもの相互理解にもつながる?!」国立国際美術館主任研究員 藤吉祐子

2022年10月30日

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 「アート」と聞くと、なんだか難しそう、少しこそばゆい感じがする、私たちには関係ないな、などなど、思われることは少しずつ違っても、つまるところ、私たちと「アート」はものすごく頑張ってみないと接点の持てないものと感じられていないでしょうか? それでは、せっかくのチャンスを逃しているかもしれません。実はアートを楽しむことで、いつもとはひと味ちがった保護者と子どもの相互理解にもつながる貴重な時間がもたらされることがあります。今回は、自分流に美術館時間を楽しんでいる保護者と子どもの姿を例に、アートを楽しむと一体どういうことが起きるのかご紹介します。

よりそってお話ししてみると・・・・・


 お母さんと小学1、2年生くらいの女の子が非常にほほえましく、仲良く会話をしながら作品を見ています。何を話しているのかなとそばで会話を聞いてみると、「〜ちゃん、何が見える? おかあさんは○○に見えるわ〜」「〜ちゃん、この中で何が好き? ☆☆、かっこいいなぁ」などと子どもに声をかけ、子どもの視線を作品に向けつつ、自分の意見も言うことで、子どもが話しやすい状況をつくっています。保護者はさほど意識することなく、いつも通りの会話なのかもしれませんが、このように、子どもの話しに耳を傾ける姿勢を示す問いかけは、子どもを自然と作品に集中させ、子どもから意見を引き出すことができます。保護者はここでは、作品について知っている、知っていないにかかわらず、子どもから飛び出す、大人が思いもしないような発見、見方、考えを多いに楽しむことが大切です。「どうしてそう思ったの?」と必ず理由を聞き、その理由に驚きながら対話を続けたり、「お母さんは、○○が好きやなぁ」「これに似ている作品がないか探してみよう」など、作品鑑賞を通した子どもとのやりとりを繰り返していると、いつの間にか、子どもならでは、保護者ならではの見方、感じ方、考え方があわさった、まるで一つの創造物のような解釈にたどり着いたり、なにより、この一連の作品鑑賞を通して、いつもの生活の中ではおそらく持ち得ない子どもと保護者の見方や考え方をお互いに発見/再認識する機会につながります。

それぞれの時間を大切にしてみると・・・・・


小学4年生以上くらいになり、美術館での鑑賞経験を比較的多く積んでいるように見受けられる子どもと保護者になると、じっくり見たいものも異なります。そうすると、展覧会場入口のほうでは行動を共にしていますが、徐々にそれぞれの速度が生まれ、着かず離れず会場を回り、会場出口付近で合流し、一緒にカタログを覗きながら歓談しています。ここでも、積極的に会話を交わす姿が印象的で、この行為は一人ではなく、自分ではない誰かと作品を鑑賞する時に味わえる楽しさのポイントとも言えるでしょう。それぞれのオススメ作品を紹介し合い、気に入った作品として紹介された作品を思い出せないと、作品をあらためて見に行き、相手からの紹介を受けながら作品を鑑賞しています。自分が気にも留めなかった作品について嬉しそうに語る相手の姿を見ることは、普段仲良し親子であっても、共通の趣味があっても、あらためて、お互いは違う個人であると言うことを見直し、よく知っているつもりになっていた相手のことを知るチャンスになります。

このようにアートと出会い、保護者と子どもで触れあうことは、見る人によっていくつもの見方、考え方を引き出してくれるアートだからこそ、保護者と子どものいつもとは違う一面を垣間見せてくれます。

とはいえ、美術館にまで来て、アートを楽しむことは最初の一歩としてはなかなかエネルギーを要することかもしれません。そういう場合には、お子さんの図画工作や美術の教科書に載っている作品やインターネット上で見つけた作品を見ながら、ちょっとした時間に保護者と子どもで話してみてください。そのときに重要なことは全身全霊でお子さんが発する言葉に耳を傾け、興味を持ち肯定しながら、どうしてそう見えたのか、感じたのか、考えたのか、理由を聞くことです。たとえば、好きか嫌いかと言った単純な話からスタートする会話でも、「好き」→「どうして好きなの?」→「かわいいから」→「どこがかわいいと思ったの?」→「○○あたりがふわっとしてるから」といったように、お子さんがどこを見て何を思っているかを聞いているうちに、必ず、ふだん割と価値づけられているようなものを見て発しているところからは想像できないお子さんの姿が浮かび上がってきます。そして、質問だけではなく、お子さんの言葉を聞いて、保護者が思ったこと、感じたこと、考えたことは包み隠さず話していくことです。そうすれば、対話の中には、自然とお互いの再発見につながるようないくつものキーワードが驚くほど飛び出してくることでしょう。どうしても敬遠されがちなアートには、実は、保護者と子どもの関係をほぐし、新しいお互いの像(イメージ)を築き上げることのできる力が潜んでいます。そんなアートをお子さんと楽しんでみませんか。アートを楽しむことはいつでもどこでも始められます。

 

お役立ちHP

○Google Arts & Culture

https://artsandculture.google.com/?hl=ja別ウィンドウで開く

○MoMa The Collection ニューヨーク近代美術館(アメリカ)

https://www.moma.org/別ウィンドウで開く

○Tate テート・ギャラリー(イギリス)

https://www.tate.org.uk/art/archive/collections別ウィンドウで開く

○The Met Collection メトロポリタン美術館(アメリカ)

https://www.metmuseum.org/art/collection別ウィンドウで開く

○Louvre ルーヴル美術館(フランス)

https://collections.louvre.fr/en/別ウィンドウで開く

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