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【第100号】「日本の子育てに『ネウボラ』を:フィンランドのネウボラの基盤システム導入の最初の1歩 大阪市立大学大学院 横山美江

2022年3月17日

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フィンランドのネウボラとは?

 

フィンランドの母子保健は、国際的にも高い評価を受けており、優れたシステムを有しています。このフィンランドにおける母子保健活動の地域拠点が「ネウボラ」です。日本では、妊娠が分かれば向かう先は病院ですが、フィンランドでは妊娠が分かれば向かう先は病院ではなく妊産婦ネウボラに行きます。そして、妊婦とその家族は、ネウボラを定期的に受診します。このネウボラで活躍しているのが、保健師です。ネウボラには、地区ごとに担当保健師がおり、家族に対して健康診査、両親教室あるいは家庭訪問などの保健事業を通じて同じ担当保健師が継続的に支援を実施します。出産後も同様に、子どもネウボラの担当保健師が家族全員に対して継続的に健康診査や家庭訪問等の保健事業を通じて支援します。

このようなフィンランドにおけるネウボラの活動の中で基盤となるシステムは、①地域に在住する就学前の子どもを持つ全ての家族への担当保健師による継続支援と、②父親を含めた家族全員の支援です。このシステムがあるからこそ、保健師は家族との信頼関係を築きやすく、家族の抱える繊細な問題をも早期に発見し、支援につなげることができます。

 一方、日本においても、日本版ネウボラと称される施設が各地でできていますが、それらのほとんどは保健事業などをつなげてネウボラとされています。しかしながら、フィンランドのネウボラの保健師は、単発の保健事業を切れ目なく提供しているわけではなく、同じ担当保健師が継続的に家族全員の支援をしているため、取り組み内容に大きな違いがあります。

日本において、フィンランドのネウボラで基盤とされるシステムを導入するには、各自治体の母子保健制度の再構築が必要となるため、時間と労力を要します。しかし、各自治体で設置されている子育て世代包括支援センターにおいて実施されることの多い妊婦面接のやり方や母子健康手帳の活用方法を見直すことで、フィンランドのネウボラのシステム導入の最初の1歩とすることができます。以下はその方策についてです。

担当保健師さんを知っていますか?


フィンランドの妊婦とその家族は、担当保健師と妊娠中からつながっており、気軽に相談できる顔の見える関係が妊娠期からできています。フィンランドの母親たちは、ネウボラという場所につながっているのではなく、ネウボラに勤務している担当保健師とつながっているのです。このようなネウボラの保健師の活動により、フィンランドでは保健師の役割を全国民が認知しています。
一方、日本においては、残念ながら保健師の役割があまり知られていないことが多く、そのため、担当保健師による継続支援のシステムづくりのための最初の1歩として、まずは母子健康手帳交付時における妊婦面接において保健師の役割を周知する必要があります。近年は、自治体の子育て世代包括支援センターで妊婦面接を実施していることが多くなっており、必ずしも地区担当保健師が妊婦面接を担うとは限りません。そのため、全ての妊婦に妊婦面接時に、「地区担当保健師がいること」、「子どもやその家族の健康相談や育児相談を地区担当保健師が担うこと」をまずは説明することで、子どもをもつ家族に保健師の役割を認知していただくことが大切です。
子どもの家族全員が担当保健師に健康相談できるような関係をつくるためには、母子手帳に担当保健師の名前が明記されており、連絡先がわかることが大事です。
母子健康手帳以外の資料にいくら担当保健師の連絡先が記載されていても、他の資料であればそれはただの紙にすぎず、いずれ捨てられる運命にあります。しかし、多くの母親にとって母子健康手帳は、自分の子どもの成長を記した重要な記録物であり、一生大切に保管するものです。このため、母子健康手帳に担当保健師の名前を明記することは、子どもをもつ家族にとっても貴重な情報となります。
 

大阪市版ネウボラの取組み


大阪市では、2018 年度に「大阪市版ネウボラ」の検討が開始され、2019 年度からの実施に向けて具体的な検討が進められました。
 大阪市版ネウボラは「全ての子育て家族にとって、安心して気軽に相談できる場」を目指し、「保健事業を切れ目なくつなげる」のではなく、可能な限り地区担当保健師が継続して支援できるような体制を取れるよう「地区担当保健師との信頼関係の強化」と「子育て家族支援の充実」を取り組みの主な柱としました。具体的な各区での取り組みは、母子健康手帳における担当保健師名を記述する頁を新たに追加したことです。大阪市の区の調査では、3か月児健診、1歳6か月児健診、3歳児健診を受診した保護者に対し実施した地区担当保健師の認知度に関して、「区に保健師がいることを知っている」「自分の地域を担当する保健師の存在を知っている」と答えた方は、いずれの健診時期においても70%を超えており、以前の調査に比べ認知度が高くなっており、保健師の周知に関しては一定の効果が得られていると言えます。

保健師さんの感想


保健師はこの新しい取組みにどんな感想をもっているのでしょうか。就学前のすべての子どもをもつ家族に対し担当保健師が継続支援する自治体における保健師へのインタビュー調査では、保健師がすべての対象者に対して個別性をより具体的に認識でき、継続支援による信頼関係からきめ細かく対応ができるようになっていました。さらに、担当保健師と話す中で、母親の不安が解消されたり、困ったことがあれば母親から早めに連絡が入るようになったことを経験し、このような丁寧な関わりが虐待予防につながると保健師は認識しています。今後、保護者が不安なく、楽しく子育てするために、本格的にフィンランドのネウボラの基盤のシステムが日本においても各自治体に広がっていくことが期待されます。
3歳までの子どもさんの育児中で困ったことがあるのならば、ぜひ担当保健師さんに気軽に相談してみましょう!

 

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