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【第101号】「『住まい』から考えるシングルマザーの支援」 追手門大学地域創造学部 葛西リサ

2022年3月17日

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住むだけではない、存在証明としての住宅の役割



 「住宅」は人間が生きていくために欠かせない生活の基盤です。住宅は、寝る・食べる・団らんするなど、生活の場としての役割以外に、そこに住まう人の存在の証明、地域コミュニティとの接点ともいうべき機能を持ち合わせています。就職するときや学校への入学、行政手続きはもちろん、携帯を借りるなどの際も「住所」が必要です。
シングルマザーの貧困問題が言われる時、真っ先に「就労支援」という言葉がセットで使われがちです。しかし、就職して、経済自活したくとも「住宅」がないためにそれが叶わないシングルマザーはたくさんいるのです。
 離婚等をきっかけに多くの女性と子どもが家を失うことはあまり知られていません。
夫に追い出された、また、DVや子への虐待、夫のアルコールや借金問題など、家を出なければ、苦しい環境を脱することができなかったという意見はよく聞かれます。たとえ、持家に住んでいたとしても、そこが夫の名義になっていれば、住み続けることは難しくなります。
一方、婚姻時に「専業主婦だった」、「パート等非正規の職についていた」という傾向が高いシングルマザーにとって、新たな住まいを見つけることはたやすいことではありません。不動産業者に相談に行っても、定収が得られない就労状況では、住宅は貸してはもらえないからです。一時金の準備や保証人の確保も難しければ、状況は更に不利になります。

使いにくい住宅支援


実家や親類宅を頼る人もいますが、そこが必ずしも良好な環境と言えない場合もありますし、頼れる人がいないなど「関係の貧困」に陥っている親子もたくさんいます。
 住宅に困るシングルマザーが利用できる公的支援の中には、母子生活支援施設があります。集団生活のため規則などはありますが、個室が保障され、育児等の生活支援も提供されます。ただし、自治体によっては入所が難しいエリアもあるなど、希望が利用に結びつかないという報告も多く挙がってきています。
低家賃で住むことができる公営住宅もありますが、数も少なく、希望するエリアに空きがないという問題がよく聞かれます。応募時期が決まっているため、必要なタイミングで利用できない点も課題として挙げられるでしょう。なお、公営住宅は離婚係争中であれば、応募できるとする自治体もありますが、DV等の場合をのぞき、入居時に離婚が成立していなければ辞退が求められます。
ここ数年、離婚が成立していないプレシングルマザーの貧困問題がクローズアップされるようになりました。彼女らは離婚ができていないため、児童扶養手当やその他多くの母子支援が利用できません。コロナ禍では、ひとり親の臨時の給付金が支給されましたが、プレシングルマザーは対象外となりました。このように、いまある住宅支援は、住宅に困窮するすべてのシングルマザーに対応できるものではないのです。

シングルマザーのためのシェアハウス


2000年代の後半から、こういったシングルマザーの実情に寄り添おうと、民間の不動産業者等が、シングルマザー向けシェアハウスを開設し始めています。シェアハウスとは、非血縁関係にある複数の世帯が一つ屋根の下ともに暮らす住まい方です。親子に個室が1つ、リビング・キッチンや風呂や便所などの水回りを共有するタイプが多いのが特徴です。
 集まって住むことのメリットはなんでしょうか。シェアすることにより家賃が安くなるといった面ももちろんありますが、育児や家事の助け合いによるケアの負担の軽減、孤独の解消といったメリットもあります。
入居相談者の中には、住まいがない、保育所が決まっていない、仕事がないといった状態で、ハウスに訪れる人も少なくありません。しかし、①仕事がなければ住まいの確保は難しく、②住まいがなければ、就職することも難しいのはすでに述べたとおりですが、③保育が欠けていれば就職は難しく、④就労していなければ保育所を確保することが難しいといった現実もあり、どこから手をつけていいかわからず、自立が大幅に遅れてしまうというケースは珍しくありません。
こういった問題をトータルに解決しようと、保育所の併設、シッターサービス、食事の提供、就労支援など、多様なサービスを展開するシェアハウスも登場しています。更には、フードバンクやフードパントリーという仕組みを取り入れたり、シェアハウスの共有スペースを子ども食堂や無料学習塾として開放したりと、地域資源をうまく活用したサポートもはじまっています。
2021年には、大阪府営住宅の1室を活用した国内初の女性専用シェアハウスが開設しました。民間企業が空室を借り上げ管理し、そこに地域の支援者がケアを届けます。地元行政と連携することで、事業者も安心して入居者を引き受けられるという仕組みです。空き家活用は民間の物件だけの話ではありません。空室の多い公営住宅も、知恵と工夫次第で、人を幸せにすることができるのです。

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