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【第103号】「支援学校卒業後も豊かに歩む~『移行期』への支援~その2」 大和大学教育学部 川田 和子

2022年3月17日

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危機に立ち向かう親たち~転所の繰り返し、就労継続へのフォロー


同窓会役員2人のお母さんから聞いた話をご紹介します。

【Sさん親子のケース】
Sさん親子は卒業後10年以上「第3移行期」を経験したと言います。


 18~20歳 D市立の就労継続支援B型の福祉施設(年限は6年)に2年間通った。

 20~23歳 子どもの得意な面を伸ばそうとG市内の福祉施設(作業所)に2年半通った。手芸作品を作って販売した。子どもは作業で力を発揮していたが、自閉的でパニックになって大声を上げることがあり、他の利用者から怖がられ排除されるような形で退所した。

 23歳 D市立の福祉施設にもう一度お願いに行ったが断られた。なぜ市の施設なのに、と感じたが、「手が足りないので。」とおっしゃるので無理にお願いしなかった。

23~25歳 社会福祉法人「Q施設」(就労継続支援B型の福祉施設)の印刷部門で1~2週間の実習を受けた。「いけるよ」と評価をもらい通うことにした。しかし機械の扱いは本人には難しかったようで、ベテランの指導員さんに注意されるようになった。それでパニックになると「クールダウン」と別室へ。「迎えに来てください」と母親の自分に電話が入る。子どもは1週間微熱が続き、初めててんかん発作を起こしたのがこの25歳の時。ストレスとは恐ろしいと感じた。その頃は「Q施設」からは「お荷物」視されていて、「(ここに)いなくていいです。」と言うような失礼な言い方、早く辞めてくれ、と言うような言い方を施設の上の方からもされ、辞めた。

20代後半~現在 次はA市の「R施設」(知的障がい者通所施設)に「来年からなら枠がある。」とのことで、半年間ガイドヘルパーなどを活用してすごした。…(中略)何とか入れていただけた。「R施設」通所施設で今まで頑張っている。



【Dさん親子のケース】
Dさんは自閉症で軽度の知的障がいがあり、細かな手作業が得意で几帳面な男性です。公共施設の厨房で就労が30年近く継続しています。


ある時仕事中に、上司の声かけの意図がわからず息子は腹を立てペティナイフを流しに投げた。危険行為と捉えられ、職場に呼ばれて部長、科長、親との話し合となった。「1ヶ月、職場での息子さんの様子を見るためお母さんが付き添ってください」と言われた。1ヶ月間通い、9時から18時まで何もせず職場に立って息子を見ていた。1時間は食事休憩がありましたけれど。もちろん親には「給料は出ません」とも言われていた。息子が暴れないことを確認して仕事を続けることになった。


子どもの職場とのこのようなエピソードには事欠かないDさん母ですが、「まだまだ多くの迷惑をかけていますのでそれでも仕事ができること、働かせてもらえることを親として感謝しています。」と述べます。一方で、ご自身が70歳台であることに触れ、「今後は勤め先と本人(保護者)の間に入ってくれるような第三者的な仕組みができてほしいです。」とも言います。企業就労・福祉就労・生活介護と通い先はそれぞれでも、障がい者には雇われる側、受け入れてもらう側という弱みのようなものがあって対等な話し合いが難しいと想定できます。そして、Sさんのように学校卒業後に新しい所属に定着できずに通い先を転々とする場合もあるということです。そんなときの保護者(親)の存在やその力は本当に大きいことがわかります。

住まいと地域定着支援、成年後見制度の柔軟な活用~「親なきあと」への備え


通い先を辞めた後ひきこもり生活を経験した熟年層は30%を超えます。また生活面で保護者に頼らずグループホームや公営住宅で暮らす人は若年層では17%ですが、熟年層では40%に増えます。保護者自身が高齢化し支援や介助が必要になってくると子どもを社会につなぎ戻すパワーは衰えます。保護者や当事者たちはその時までに自立して生きていけることを真剣に模索するのです。
国は「障害者差別解消法」等の制定、居住市町では2012年度から相談支援事業を推進し、地域移行・定着支援を現実化しつつはあります。この施策によって施設から地域への移行にとどまらず、保護者との世帯分離も模索されているようです。2018年度の卒業生へのアンケートでは、35歳未満の若年層ではグループホームでの生活者は5%ですが熟年層になると22%に増えます。公営住宅入居者も35歳以上では3倍近い増加です。家族との生活から自立して地域でインクルーシブに暮らすライフスタイルをようやく選択でき始めていると言えるでしょう。ただ肢体不自由者のグループホームがほとんどない(標記アンケートでは0%)→地域移行の障壁、という問題があり、今後の公的な支援が求められます。

親の会などでは成年後見制度充実への踏み込んだ動き等も進展しています。例えば大阪府では、支援学校の子どもの保護者が中心となり、設立メンバー全員が身内に障がい者がいるという『(一社)「親なきあと」相談室 関西ネットワーク』を立ち上げ、2019年から「後見」のあり方の相談を受けています。将来必ず必要になる障がいのある子どもの「身上監護(例えば,本人の住まいの確保,生活環境の整備,施設に入所する契約,本人の治療や入院の手続を行うこと)」「財産管理(本人の預金通帳や保険証書などを保管し,年金や保険金などの収入を受け取り、本人に必要な経費の支払を行うなど)」、そして家族がいなくなった世界での我が子の最期への資金、意思表示などの準備…。この相談室では難解な法律を理解し研究し、ほころびがないように改善を求めつつ、活用する術を全国の障がいのある子どもの保護者やきょうだいに発信しておられます。くわしくは、『(一社)「親なきあと」相談室 関西ネットワーク』を検索してみてください。https://oyanakinet.com/別ウィンドウで開く

『共生社会』…誰もが豊かに生きる


支援学校の卒業生について述べてきましたが、障がいのある人に限った話ではありません。誰しもが離転職の危機や親の死に直面していくものですし、病気や事故、この度のコロナ禍のように不慮の出来事によって突然職場を失ったり家族との離別を経験するかもしれません。一例をあげると2020年度で不登校の小中学生は19万人6千人超です。些細なきっかけから不登校や退職などになり、そのまま社会とつながるチャンスを得られないまま(提供されないまま?)ひきこもり生活が続けば、「8050問題」※の当事者になるかもしれません。リスク社会とも言われる現代では、社会によるセーフティーネットはむしろ脆弱化していると言われます。障がいのある人々が様々な制度や支援を活用し、地域で所属や役割を得て生活し続けることは、誰もが暮らしやすく豊かに生きる共生社会・インクルーシブな社会の実現への近道ではないでしょうか。

※「8050問題」・・・長年ひきこもる子ども(50代)とそれを支える親(80代)が社会的に孤立する論点から2010年代以降の日本に発生している高年齢者のひきこもりに関する社会問題をさす。

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