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【第106号】「スマホ時代を生きる子どもたちと共に~その2~」甲南女子大学 冨田幸子

2022年10月30日

ページ番号:562502

4 決め手は想像力・判断力


次にSNSでの書き込みを取り上げます。LINEは、今では大人も子どもも当たり前のように使うSNSの一つです。世に登場するや否や瞬く間に広がっていき、いじめは暴力的な行為を直接目にするというより、親や教師の見えないところにあります。いじめの形態に変化が見られるようになったのです。ある女生徒が学校への登校を渋るようになったので、家庭訪問をし、よくよく話を聞いてみると「学年LINEから一方的に外された」ことが原因となっていることがわかりました。
残念ながら、今でもそうしたSNSでの書き込みにまつわるいじめやトラブルはあとを絶ちません。ネット上の言葉には、相手の表情をはじめとして、スピード、抑揚、身振りなどの情報が盛り込まれず、文字面だけの会話になってしまいます。関西弁でいうところの「なんでくるん?」というネット上の言葉、これは「あなたはなぜ来るのよ。(来ないでよ。)」ともとれるし「何を使って来るの?」と手段を尋ねているとも受け取れる、誤解されがちな言葉になります。相手の姿を目の前にしないことから、ネット上の言葉は少々過激になるという側面もあります。
SNSでの書き込みのポイントを一言で言うなら、ネットの向こう側にいる人を想像し「送る前に相手がどう思うかを考えてから送る」ということに尽きるでしょう。私たちは小さい時から、家でも学校でも「相手の気持ちを考えて行動しよう!」と教えられてきました。それが大事なことと子どもたちもわかっています。ただそれを実行するとなると、周囲に流されない正しい判断力や想像力が必要です。


先ほどの「なんでくるん?」とトラブルになりかねないケースでは、どのような言葉を次に送るべきか、学級のみんなで考えあう学習も有効です。私の元勤務校では、LINEが送られてきた時、「嬉しかった言葉」、逆に「嫌だった言葉」を全校生徒にアンケートし、文化祭の企画として生徒会が発表したことがあります。ポイントはLINEというツールを悪者扱いにはしなかったことです。「あの書き方だと傷つくよな」「皆も同じように感じてるんだ・・」「あんな言葉もらうとうれしいよね。元気が出る!」など、同世代のお互いの気持ちを確認し共有しあいます。自分たちの事例に基づいた発表には関心が高いのか、スクリーンに流されるそうした言葉を生徒たちが最後までじっと見ていたのは印象的でした。一人では気づかないけれど、他人との関わりの中で判断力や想像力が問われる場所が学校です。そこは、情報モラルにおいても皆の考えを共有し合い、気づきを得る大切な学びの場、一人前の大人になるまでの仲間律が有効に働く場でもあります。

5 大人そして社会が果たすもの


現在の私は、職場が大学に変わり、講義の一部をオンラインで実施しています。顔を合わさない講義の形は残念ですが、学生たちは入学式前からネットを通じて、同じ学校に通う者同士として既に知り合いになっています。毎回のレポート課題をスマホで送ってくるケースも少なくありません。文字を打つのはパソコンよりスマホが早いと答える学生たちにとって、もはやネット・スマホの存在はなくてはならないものです。そんな学生たちと接していて感じるのは、大半の学生は自分にとって有用な使い方を知っており、それを実行しているということです。情報モラルについて家庭や学校で考える場や話し合いを持ちながら年を経るうちに、自分を律すること、賢い使い方を子どもたちが身につけるのは可能です。ただ、そこに行きつくまで様々なリスクにぶつかる子どもたちが一部存在します。そうなった時、それを非難するのは簡単ですが、なぜそうしてしまうのだろうと子どもの心の奥底にあるものを考えたいです。子どもが相談したいと思える身近な存在に大人がどれだけなれるかが肝要です。

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