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【第111号】「絵本を通して多文化に出会う」その1                           NPO法人おおさかこども多文化センター 梨木 亜紀

2022年10月30日

ページ番号:594319

 町の中で、コンビニのレジで、また子どもたちの学校・園で、外国から来た人たちに出会う機会が増えてきました。グローバル化が進む現在、子どもたちには、将来いろんな国の人と仲良くなってほしい。そのために、小さいときから世界のことに興味を持って、国際感覚を身に着けてほしい・・・ そんなふうに思うこと、ありませんか?

そんなときは、はい、「絵本」の出番かもしれません!

絵本は、世界への窓


 絵本は、飛行機に乗って遠くにお出かけしなくても様々な国の文化にふれることができる、世界へのもっとも身近な「窓」です。子どもさんと一緒にページをめくると、海の向こうの世界をのぞいてみることができます。

 最近では欧米だけでなく、アジアや中南米、アフリカなどのおはなしも、たくさんの絵本が出ています。
 その国の文化や伝統が色濃く映し出された昔話や、日本とよく似たおはなしだけど、そこに込められた教訓や意味が全く違ったりするもの。見たこともない食べ物や、びっくりするような生き物(でもその国の子どもたちにはすごく愛されていたりします)が出てくるおはなし。さらには、え?そんなオチで終わっていいの?!という物語なども…。

 ユニークで、本当にバラエティー豊かです。興味のある方はぜひ、図書館で司書さんにたずねたり、また『多文化に出会うブックガイド』( https://d-kobo.jp/products/detail/32別ウィンドウで開く )などでも探してみてください。

絵本はやっぱり絵の力



 また絵本は、挿絵も大きな魅力です。さりげなくその国の人々の暮らしが描き込まれていて、見ているだけで楽しい発見があります。
 この人たち、何食べてるんだろう。なんか見たことない乗り物に乗ってるな。あれ?学校なのにお菓子を売ってるよ?! …子どもは絵の中に、たくさんのものを見つけます。好奇心いっぱいに、初めて見るもの、自分たちと違うところをキャッチする力がすごいです! 
 そんなところから、それぞれの文化の多様性に気づく、こんな世界もあるんだね…というのが自然にすっと入ってくるのも、絵本の楽しさではないでしょうか。

‘’ちがいを楽しむ力‘’を


 このように多文化にふれる絵本は、子どもたちが「自分とは違う世界も、ちょっとのぞいてみる」、はじめの一歩になります。
世界にはいろんな暮らしや考え方がある、という感覚を、絵本を通して“楽しいもの”として自分の中に貯めていきます。そうして「自分と異なるものを拒まない、おもしろがる力」が育つでしょう。そこから将来、さらに多様な人々との“出会いの幅”が広がっていきます。

 もちろん、小さい子どもは、どこの国の話かなど今すぐにはピンとこないかもしれません。でも、なんとなく「私が住んでるところとは全然ちがうね…」「なんかめずらしい服着てるなぁ…」などと感じるだけで十分です。いつか大きくなって、何かの機会に「あ、これ前に絵本で見たよ!」とか、「あのときの人って、ここの国の人やったんやね!」と気づく、嬉しい出会い直しの瞬間があるかもしれません。
 多文化な絵本を読むことは、そのときまでの、楽しい“種まき”みたいなものなんだと思います。

「ちがうけど、いっしょやね」


 多文化な絵本を読んでいると、「自分たちと違うね」と同時に、「でも、ここのところは同じなんやね」という発見も生まれます。ことばや肌の色が違っても、「大切にしたいもの、ホッとするものは同じ」だと、ふと気づく瞬間。その共感も、共生のスタートではないでしょうか。


 『むこう岸には』( https://www.holp-pub.co.jp/book/b485950.html別ウィンドウで開く )という絵本では、大人たちは川の向こうに住む人たちに対して「自分たちとは違っている」と警戒し、心のバリアを作っています。そんな中、実際に川向こうの人たちと交流する機会を持ったある女の子は、大きな発見をします――

「ちがうけど、同じ」に気づいた子どもたちが思い描くこれからの夢に、勇気をもらえるおはなしです。

外国から来たお友だちのこと


 そしてもうひとつ、外国から来た人が身近に増えてきた今、“すでにお隣にある多文化”にも目を向けてみたいと思います。
そんな絵本の例として、ぜひ紹介したいのが『ええぞ、カルロス』。ブラジルからやってきたばかりのカルロスくんと、クラスメートのアキラくんの物語です。
 この話を読んだ外国人のママが、自分の子どもの来日したての頃を思い出して、ポロポロと涙をこぼされていました。こういった絵本を通して、外国からやって来る人たちの気持ちを想像する、心を添わせることができたら、すてきだなと思います。

 「国際感覚を養う」という言葉はよく聞くけれど、それは決して、単に外国に関する知識を増やしたり、英語がペラペラになったりすることだけではないと思います。
まずは自分たちのすぐ身近なところで、外国から来た人たちのことにきちんと関心を持つ。どんな国の文化や言語に対しても、敬意をもって向き合えるということではないでしょうか。

 この物語、最後にアキラくんが言う「ぼくもブラジルのことばを
たくさんおしえてもらおう」というセリフが、とても印象的です。日本語の不自由なお友だちに、一方的に「教えてあげる」「助けてあげる」だけではない、お互いに得意なことを「持ち寄る」。そこから生まれる対等な関係性が、本当の「多文化共生」につながるんだということをさりげなく伝えてくれる、とてもすてきな絵本です。

 こちらのURLからは、デジタルブック版で読むことができます。

https://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu010/digitalbook/kyoiku/eezo_carlos/html5.html#page=1 )。お子さんと一緒に、ぜひ楽しんでみてください。

ここまで、「絵本の中で」多文化に出会うことについて見てきました。後半では、「絵本を使って」多文化に出会う、異文化交流の可能性について考えていきたいと思います。(第112号 「絵本を通して多文化に出会う」その2につづく)

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