ページの先頭です

【第112号】「絵本を通して多文化に出会う」その2                           NPO法人おおさかこども多文化センター 梨木 亜紀

2022年10月30日

ページ番号:594320

 絵本『ええぞ、カルロス』のような、外国から来た子どもたちは、いま大阪でも増加しています。2022年5月の調査では、大阪府内の外国籍児童生徒の数は約8900人、その母語の数も37言語にのぼります。

身近なところからの異文化理解が求められる今、私たちにできることは何でしょう? 

ここでは、そんな外国につながる人たちと一緒に楽しめる、絵本を使った多文化交流=「多言語での読み聞かせ」を提案したいと思います。

いろいろなことばで絵本を楽しむ


 NPO法人おおさかこども多文化センターでは、これまで図書館や小学校などで、多言語での読み聞かせをおこなってきました。日本の子どもが絵本を通して、さまざまな言語や文化に出会える場をつくりたい。そして外国ルーツの子どもには、母語でおはなしを楽しむ機会を提供したいという思いからです。

 多言語の読み聞かせは、日本人と外国人がペアになって、ひとつの絵本を日本語と外国語、二つのことばで交互に読んでいくことが多いです。まず日本語で1ページ読んだら、すぐそのあとで同じ場面を、こんどは中国語やベトナム語などでも聞いてみます。
 外国語の「お勉強」ではなく、あくまでも、おはなしを楽しみながら自然に外国語にふれること。初めて聞く言語もあるけど、その響きを味わいながら「それぞれが、大切なことば」なんやね、と感じ合うことを大事にしたいと思っています。



 子どもたちは、外国語で読んでる間は絵をじっくり見ていたり。知ってる単語が聞き取れたら、「あ、ニイハオって言うた!」「アミーゴやって!」と嬉しそうにリピートしたり。ときには『おおきなかぶ』の「うんとこしょ、どっこいしょ」のかけ声を、一緒に外国語で「ヘイ・ユウ!」「フーラー・フイッ!」など、みんなで声をそろえて言ってみたりもします。

 また外国人の読み手さんには、絵本を読むだけではなくて、お国の挨拶や手遊びを教えてもらったり、おはなしに出てくる野菜を使った料理の話を聞いたり。絵本をきっかけにいろんな交流を楽しみながら、日本人も外国人の子もみんな、目をキラキラさせて参加してくれます。

 最近では、図書館や子育て支援施設などでも少しずつ、こういった多言語のおはなし会をしているところが出てきました。機会があれば、ぜひお子さんと参加してみてください。

 そしてさらに、もし皆さんのまわりにも外国から来たお友だちがいたら、この多言語の読み聞かせをお子さんの学校や園でできないか、ぜひ先生に提案してみてはいかがでしょうか。
絵本さえあれば、図書の時間やクラスのお楽しみ会などで、また地域の子ども会でもできます。外国語の絵本は、大阪市立図書館にたくさんあります。日本語と外国語、対訳で出ている作品も多いです。
 そして、外国語の読み手には、外国ルーツの子どもの親御さんに声をかけて、ぜひ参加してもらえたらすてきだと思います。

外国にルーツをもつ子どもたちと母語


 というのは、外国から来た子どもの中には、日本語をおぼえていくにつれて、自分たちの国のことば(母語)をだんだん忘れていってしまう子がいます。
 また保護者の側でも「日本で大事にされるのは英語だけでしょう」と、自分の国の母語はここでは必要ないと感じてしまっている人もいます。そして大人のそのようなネガティブな気持ちは、子どももすごく感じ取り、「ママ、恥ずかしいから外では母語で話しかけないで」と言ったりすることも起こっています。

 もし私たちも外国に行って子育てすることになったら…と想像してみると、家族のことばがそのようなかたちで失われていくのは、とても残念で悲しいことですよね。
 だから、同じ子育て中の仲間としても、外国ルーツの人たちには親子で共通の“母語”というものを大切にしてほしい。自分たちの言語や文化に自信をもって、日本で生活していってほしいと思います。

絵本を通して、顔の見える出会いから

 その意味でも、この多言語の読み聞かせは、外国から来た人たちが母語を使って活躍する機会になります。また、ママやパパがみんなの前で絵本を読み、いきいきと活動する姿は、外国ルーツの子どもの安心感と、自分たちの文化に対する誇り、自己肯定感にもつながります。

 そして日本の子どもたちにとっても、目の前で外国の人に絵本を読んでもらうことで、世界にはいろんな文化やことばがあることを肌で感じることができます。「絵本を通した多文化との出会い」が、楽しい、温かい記憶として残ることでしょう。(それがお友だちの〇〇ちゃんのママ・パパだったら、なおさらです!)


 いま、特定の国に対する様々なヘイトや偏見などが問題になっています。が、その原因のひとつは、相手のことをよく知らないがゆえの不安からではないでしょうか。
 一度でも直に顔を合わせて、同じ絵本を読んで笑ったり、お国の遊びを一緒に楽しんだりした経験があれば、「あのときの、あの人の国」のことだと思えます。子どもたちには、小さいときからそういった機会を、ぜひたくさん用意したいものです。

 そのために、まずは私たち大人自身が、異なる文化に出会うことを楽しみましょう。「同じ地域に、教室に、外国から来た人がいてくれてラッキー!」という姿勢は、必ず子どもたちにも伝わっていきます。
 そして、絵本はそんな多文化交流のための、もっとも身近で楽しいツールの一つです。「いろんな国の言葉や文化が身近にあるって、楽しいよね」という、多様性は豊かさなんだというメッセージを、きっと子どもたちに届けてくれると思います。

SNSリンクは別ウィンドウで開きます

  • Facebookでシェア
  • Xでポストする
  • LINEで送る

探している情報が見つからない

【アンケート】このページに対してご意見をお聞かせください

入力欄を開く

ご注意

  1. こちらはアンケートのため、ご質問等については、直接担当部署へお問い合わせください。
  2. 市政全般に関わるご意見・ご要望、ご提案などについては、市民の声へお寄せください。
  3. 住所・電話番号など個人情報を含む内容は記入しないでください。

このページの作成者・問合せ先

大阪市教育委員会事務局生涯学習部生涯学習担当生涯学習推進グループ
住所: 〒550-0014 大阪市西区北堀江4丁目3番2号(大阪市立中央図書館4階)
電話: 06-6539-3346 ファックス: 06-6532-8520

メール送信フォーム