ページの先頭です

【第120号】からだとこころが軽くなるような運動をしよう―お家時間とお散歩― 大阪成蹊大学教育学部准教授 小林志保

2024年3月25日

ページ番号:621864

はじめに


 子育て中の保護者の皆様は、こどもと過ごす日々の中で、なかなか運動をする時間が取れないと思います。運動をしたいとも思わないかもしれません。コロナ禍における様々な制限が緩和され、親子で参加できる活動も戻ってきています。令和5年4月に設立されたこども家庭庁からは、「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」(参考1)が示されました。こどもの持つからだとこころ、周囲を取り巻く身近な環境や社会的状況の重要性が改めて見つめられています。こどもと一緒に、からだとこころが軽くなるような運動を取り入れてみませんか?

くっついてできるマッサージ


 「ベビーマッサージ」(参考2)は、おへそのまわりを、円を描くように、時計回りで指先を使ってなでることで、便秘解消のきっかけになることや、両手をこどもの胸の中央に置き、肩に向けて滑らせ胸と肩を開くことで、呼吸をゆるやかにしてあげるなど、保護者とこどものリラックスに繋がるような、魅力的な活動です。(参考1)の5つの育ちのビジョンの2つ目には、「安心と挑戦の循環」を通してこどものウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に幸せな状態にあること)を高めることが掲げられており、乳幼児の育ちには「アタッチメント(愛着)」の形成と豊かな「あそびの体験」が不可欠であると示されています。恐怖や不安などで、こどもの感情が崩れた時に、保護者がしっかり受け止め、安心感を与えてあげることで、気持ちを落ち着かせることができるのです。目を見ながら触れ合い、密着する親子でのマッサージは、その安心感の土台作りにもなると考えられます。こどもが大きくなっても、その安心感、心地よさを体験していると、「マッサージをして欲しい!」と言われることがあります。乳幼児にとっては、マッサージを受けることは、全身運動になるとも言われています。小学生になってもできますし、思春期になっても、顔や足裏のマッサージはしてあげることができます。べったりくっついて、からだ全体を撫でまわすことができる時期は、ほんの少しの時間です。

筋肉をリラックスさせる柔軟あそび


 家の中で1日中こどもと過ごす。この時間は楽しくもあり、時には寂しさやイライラ、孤独感も湧いてくることでしょう。テレビの前で、お布団の上で、こどもと一緒に柔軟あそびをしてみませんか?

 画像1のあぐらのポーズから画像2の開脚。これを片方の足ずつ、両足を一緒に、1・2、1・2とリズムよく繰り返すだけで太腿の内側(内転筋)の筋肉をリラックスさせることがきます(参考2)。こどもの背中側から包み込むように手を回し、足首を掴んであげて、やってみて下さい。まずは保護者が、そしてこどもが!開脚にした姿勢から、そのまま画像3の前屈になるように押してあげましょう。股関節の柔軟になります。

 からだの柔らかさは、学童期になってから改めて作り上げるよりも維持する方が楽なのです。自然に親子で戯れる中で、あそびが運動に繋がっていきます。できる・できない、上手・下手はありません。

画像1

1.あぐらのポーズ

画像2

2.開脚

画像2

2.開脚

画像3

3.前屈

音楽に合わせて踊ってみよう


 気分転換になる、好きな曲に合わせて身体を動かしてみましょう。足踏みをする、屈伸をする、からだを回す、こどもと手を繋いでジャンプをする・・・これだけで簡単なリズムダンスです。速過ぎず、テンポのよい曲に合わせて動いてみましょう。保護者が笑顔であること、忙しい中でも、心からリラックスして過ごしていることが、乳幼児期の子育てを乗り切るために必要な心意気かもしれません。

掃除いらずのお散歩


 こどもとの公園あそび。私にとっては、ほっとできる楽しい時間でした。
ブランコを揺らしたり、一緒に滑り台を滑ったり。食事後のこぼれた床の掃除が億劫だったので、日々、近くの公園のベンチで、おにぎりやパンなど簡単なランチを楽しんでいました。公園ならいくらこぼれても掃除の必要もなく、イライラもせず、太陽の下で気分が晴れました。おまけに鳩が食べてくれます。行き帰りは徒歩か自転車。これも軽い運動ですね。幼児期運動指針(参考3)では、「幼児にとってからだを動かすことは遊びが中心となるが、散歩や手伝いなど生活の中での様々な動きを含めてとらえておくことが大切である。」と示されています。「運動をしよう」の気合はいらず、公園にお散歩、こどもと一緒に遊具であそぶ、行き帰りは手を繋いで歩く。これで十分ではないでしょうか。

乳幼児期の子育て(2歳5カ月差の娘2人)を振り返って


 起床、身支度、朝ごはんと幼稚園のお弁当作り、こどもを起こす、着替えの援助、朝食(自身は台所で立ったまま)、洗濯、登園準備、登園・・・と朝の2時間ほどだけでも、いくつものタスクがあります。よくやっていたな・・・とその頃の自分自身の精神状態を思い出します!掃除をした途端に牛乳がこぼれた、おもちゃの散乱、洗濯ものの山・・・、下の子を昼寝させ、銀行に行き、幼稚園のお迎え、習い事、晩御飯を作って・・・など運動をする隙間など全くありませんでした!唯一、一息つけた時間は、ベビーカーを押して歩いている時でした。歩く=運動です。運動をしている意識はありませんでしたが、振り返ると、その頃の運動の一つにはなっていたのですね。あっという間にこどもは大きくなってしまいました。娘たちが高校生になった今、「温かく、優しい時間、空間だったなあ」と懐かしく思います。どうしてあんなことで怒ってしまったんだろう?と後悔する気持ちも一杯あります。でも、「その時は新米母として精一杯だった」と自分のことも許し、温かく協力、支えてくれた両親やママ友、幼稚園や習い事の先生方に感謝の気持ちが溢れます。娘たちにも「ここまで元気に大きく育ってくれてありがとう」と、私を成長させてくれたことに感謝しています。今、乳幼児の子育て真っただ中の保護者の皆様、乳幼児のこどもとくっついていられる今を、存分に楽しんで下さい。長く長く感じる毎日も、振り返ると一瞬の尊い時期です。

参考

  1. こども家庭庁「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」
  2. ピーター・ウォーカー「ベビーマッサージ」(2006)
  3. 文部科学省「幼児期運動指針」

探している情報が見つからない

このページの作成者・問合せ先

大阪市 教育委員会事務局生涯学習部生涯学習担当社会教育・生涯学習グループ

住所:〒550-0014 大阪市西区北堀江4丁目3番2号(大阪市立中央図書館4階)

電話:06-6539-3345

ファックス:06-6532-8520

メール送信フォーム