【第129号】多様化する進学先~通信制高校の今~ その1 星槎大学大学院 教育学研究科 准教授 土岐 玲奈
2025年3月25日
ページ番号:650480

はじめに
近年、通信制高校への関心が高まっています。
「普通」の高校で苦しい思いをしてきた生徒にとっては、安心して過ごし、学ぶことができる学校。
自分の興味関心を突き詰めたい生徒にとっては、知的好奇心を満たす学校。
仕事やスポーツに打ち込みたい生徒にとっては、時間を有効に使うことができる学校。

このように、通信制高校での学び方や学べる内容には様々なバリエーションがあり、生徒が自分に合った学び方を選択できます。
一方で、その仕組みには複雑でわかりにくい部分も多いのが現状です。
そこで、本コラムでは、通信制高校の基本的な制度や学習の特徴、進路選択の一環として通信制高校を考える際のポイントについて、2回に分けて解説します。

第1回の今回は、通信制高校のシステムと特徴についてご紹介します

通信制高校とは
通信制高校は、全日制・定時制と並ぶ高等学校の一課程です。
教育は、以下の方法で行われます。

面接指導(スクーリング)
レポート課題作成に関する指導で、多くの場合、一斉授業の形で実施されますが、個別指導を実施している学校もあります。面接指導の回数は、一単位当たり1~10回程度です。面接指導の一部を、e-ラーニング等にできる場合もあります。

添削指導(レポート)
生徒が各自で作成したレポート課題に対し、教員が添削や助言を行い、返却します。レポートはドリル形式が多いですが、学校や教科によっても内容や形式が異なります。最近は、オンライン形式も増えてきました。

試験
学習成果を確認するために実施されます。いわゆる「期末テスト」のイメージです。一発勝負の学校もありますが、再受験が可能な学校もあります。

これらをすべてクリアすると、その科目の単位を修得することができます。高校を卒業するためには、特別活動を含む74単位を修得することが必要です。
近年、通信制高校の学校数や生徒数は増加傾向にあり、文部科学省の「学校基本調査」によれば、学校数は303校、生徒数はおよそ29万人で、高校生の11人に1人が通信制高校生です。

通信制高校のタイプ
通信制高校の教育方法は先ほどお伝えした通りですが、実際の学校生活は、学校によっても生徒によっても様々です。学習スタイルも多様で、生徒のニーズに合わせた登校形態が選択可能です。
私は、通信制高校の登校スタイルを以下のように分類しています。

従来型
月に数日から週に一度程度登校し、面接指導を受けるスタイルで、公立校に多く見られます。

集中型
年に数日間集中して面接指導を受ける形式です。e-ラーニング等を併用することで、面接指導の時間数が少なく設定されています。

ダブルスクール型
通信制高校と連携する他の教育機関に同時に在籍し、日常的に通学するスタイルです。体験活動や専門的カリキュラム、特別支援ニーズへの対応など、施設によって選択できる活動内容は様々です。

通学型
通信制高校に日常的に通学する形式で、全日制課程と比べて通えなくなった場合の救済措置が取りやすく、ダブルスクール型と比べると多少学費が安い傾向があります。

公立校の場合「従来型」が多いのに対し、私立校の場合、一つの学校の中に複数のコースがあったり、生徒が登校日数を選べるケースがあったりします。

通信制高校が選ばれる理由
近年、コロナ禍で、皆が学校へ通わない生活を経験したこともあり、多様な学び方が認知されるようになりました。また、大規模な通信制高校の特色ある活動や、在学中の高校生アスリートの活躍がメディアで取り上げられる機会が増え、通信制高校に対するポジティブな印象が強まっているように感じられます。
通信制高校が選ばれる理由としては、以下のような点が挙げられます。
■多様な通学スタイルの選択肢
通いたい、通えるようになりたい、通いたくないといった個々の状況や希望に応じた柔軟な登校形態が選べる。
■個別のニーズへの対応
特別支援ニーズや別室対応、転編入など、生徒一人ひとりの状況に合わせたサポートが可能である。
■教科教育以外の活動
体験活動や専門的な教育、受験指導、アスリートの養成等、特定の強みを持つ学校やコースもある。

そしてもう一つ、私が大事なポイントだと考えているのは、「加点法」の評価システムです。
全日制や定時制高校では、すべての授業に出席し、課された課題をすべてこなすことが前提となり、それができないと評価は減点されていきます。一方通信制高校では、面接指導を受けた回数、レポートを出した回数等が加点の対象となり、これらが一定の基準に達すると単位を修得することができます。
このように、「できなかったこと」(例えば欠席日数)によって減点されていくのではなく、「できたこと」によって加点されていくのが、通信制高校の大きな特徴と言えます。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
次回は、実際に進路を選ぶ際の流れやポイントについてお話したいと思います。
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