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【第134号】「自分の中の多様性」が未来の力に変わるお話 臨床心理士 渡辺栄里奈

2026年4月24日

ページ番号:673552






パパ、ママの皆さん、育児に仕事に忙しい毎日、本当にお疲れ様です。

今、この文章を読んでくださっているあなたは、どんな一日を過ごされていますか?


育児と仕事の両立は非常に困難で、「仕事も育児も、どちらも中途半端」、「本当はもっと精力的に働きたい...」、「復職するのが不安。ブランクが怖い。」、そんなふうに、自分を責めたり、将来に不安を感じたりすることはありませんか?


かつて、「お父さんは仕事、お母さんは家庭」と言われた時代もありました。


厚生労働省の「2024年 国民生活基礎調査の概況」によれば、児童のいる世帯における核家族世帯の割合は86.4%。総務省の「2025年11月度の労働力調査(基本集計)」によると、共働き世帯は約7割。

いまやほとんどの親御さんが、頼れる手が少ない中で、仕事と育児という二つの大きなかばんを背負って奔走しています。


実は、私自身も、働き方に迷い、何度もキャリアをあきらめようとしてきた一人です。


妊娠がわかったとき、喜びと同じくらい、得体の知れない不安が襲ってきたのを覚えています。

「これで私のキャリアは止まってしまうんだ。」と、勝手に思い込んで絶望していました。


復帰してからも、現実は甘くありません。

仕事中もスマホの通知が鳴るたび、「保育園からのお呼び出しかな?」と怯え、 終業時間になれば溜まった仕事を必死で片付け、駅まで全力疾走。
お迎えに行って帰宅した頃には、もう疲れ切っています。

そこから、「家事という名の後半戦」が始まります。



散らかった部屋、なかなか進まない夕食、寝かしつけ。

「仕事も育児も、私の理想には程遠い。どっちの自分もだめだ。」と、布団の中で涙を流した夜は一度や二度ではありませんでした。


そんな私の心をふっと軽くしてくれたのが、心理学などの世界で言われる「イントラパーソナル・ダイバーシティ(個人内多様性)」という考え方でした。

少し難しい言葉ですが、簡単に言うと「一人の人間の中に、様々な顔があることが良い効果を生み出す」ということです。



私たちはついつい、「親としての私」と「仕事人としての私」を別々の箱に分けて、それぞれ100点満点をめざしてしまいます。

だから、片方に時間を取られると、もう片方がおろそかになっている気がして苦しくなるのです。



でも、本当は違います。

「ママ・パパである私」、「働く私」、「趣味を楽しむ私」、これらいろんな「私」は全部つながっていて、ひとつの「素敵な自分」を作り上げている要素なのです。


かつての私は、子育ての時間を「キャリアの足止め」だと捉えていました。


でも、今は胸を張って言えます。
子育ての経験は、仕事でも活きています。

たとえば子育ては予想外の連続です。

忙しい時に限って牛乳をこぼしたり、水筒を忘れたりといった事態への対応力、家に帰ってからの限られた時間で家事をこなすための優先順位付けなどのスキルは、ビジネスでもとても役立っていると感じています。

仕事と育児は、お互いに足を引っ張り合うものではなく、むしろ相乗効果を生む関係なのです。




もし今、あなたが「どちらも中途半端だ」と自分を責めているなら、どうかその考えを少しだけ横に置いてみてください。

あなたが今、必死で駆け抜けているこの時間は、決して足踏みではありません。

あなたの中に「多様性」という名のパワーを蓄え、変化の激しい時代を生き抜く「しなやかな強さ」を育てている真っ最中なのです。




完璧な「親」、完璧な「仕事人」をめざす必要はありません。

さまざまな役割を持つ「今の自分」を、楽しんでみませんか。

その軽やかな気持ちが、あなたの心を自由にし、明日への一歩を支える力になることを願っています。


 




【引用・参考文献】
厚生労働省(2024)「2024年 国民生活基礎調査の概況」
総務省統計局(2025年11月)「労働力調査(基本集計)」
岡田昌毅(2023)『働く人の心理学:キャリア形成の視点から(第2版)』ナカニシヤ出版


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