ページの先頭です

「行政と政治の分離」についての見解

2012年2月10日

ページ番号:156284

行政と政治の分離について、市長からの指摘を受け、課題の整理を行い、市役所としての見解を作成しました。

1.具体的な事例

(1)地方債残高等の説明

(1) 趣旨・内容
  • 市政改革を進める中で、市債残高を着実に減らしてきた実績を市民に情報発信するため市長記者会見等で平成17年度末と平成22年度末見込みの地方債残高(全会計)を比較したグラフを使い、大阪府は増加傾向、大阪市は減少傾向にあることを示した。
  • その後、補足する形で、臨時財政対策債を除く地方債残高や実質公債費比率などを含め、Q&A形式で説明した「大阪市と大阪府の借金の状況」[資料1]をホームページに掲載。
(2)時期

平成22年度より。ホームページへの掲載は平成23年6月。

(3)課題
  • 府県と市町村では、所掌する事務も財源構成もまったく異なるため、地方債残高を単純比較しても意味がないにもかかわらず、市政改革の実績を示すという本来の趣旨から離れて、大阪府との対比を強調するような形での公表となった。
  • 臨時財政対策債は、地方自治体の努力では減らすことが難しい仕組みであるが、そうした説明を十分に行わなかったため、市民に一面的な印象を与えかねない内容となった。

(2)二重行政の否定、財政格差などに対する説明

(1)趣旨・内容
  • 「大阪都構想」が大きく取り上げられる中、市会での質問や市民からの問い合わせも多く、それに答える形で以下の内容について情報発信した。

    ア.「市政だより(平成23年2月号/P4)」[資料2]に、「二重行政」については、大阪市と大阪府が同じような事業を実施し、無駄や非効率が発生して、市民・府民に不利益を与えているものを言い、単に、市と府の施設が二つあるという見かけだけで「二重行政」だとするのは誤り。と記載。(ホームページ 「地域主権改革などに関するよくあるご質問  FAQ Q3-2」[資料3]に同様の内容を掲載している。)

    イ.「大阪市の一体性を守る」という主張で、「さまざまな地域の違いや課題を、その地域だけの課題とするのではなく、大阪市一体となって施策を行っていく。」「大阪市民であれば、どこの区に住んでいても均等のサービスを受けることができる一体の市。」とホームページ「同FAQ Q5-2」[資料4]において掲載。

    また、「市政だより(平成22年12月号/P3)」[資料5]において、「エンジン」である大阪市を分割すると、関西という車の動きが止り、関西の発展が難しくなる等と掲載。

    ウ.「区ごとの財政格差」について、大阪市を8~9の基礎自治体に分けるということが議論される中で、ホームページ「同FAQ Q5-2」に「市税合計では最も多い区と最も少ない区では約12倍、そのうち法人市民税では約104倍の格差がある。」と掲載。
(2)時期

「市政だより」(平成22年12月号 4頁目)、(平成23年2月号 3頁目)、「ホームページ」(平成23年2月)

(3)経費

ア、「市政だより」(平成22年12月号)17,185,186円(全体:10頁)のうち約2分の1頁

イ、「市政だより」(平成23年2月号)17,166,806円(全体:10頁)のうち約2分の1頁

(4)課題
  • 総じて、大阪市が特別自治市構想を推進する中で、大阪都構想に反対する立場からの情報発信となっていた。あわせて、客観的な説明が不足していた面があった。

    ア.「二重行政」についての考え方は、従来から、研究し、公表してきたが、様々な考え方がある中で、例示として「二重行政」にあたらないとする見解だけをあげていた。

    イ.「大阪市の一体性を守る」という主張は、大阪市としての組織のあり方と地域のコミュニティの問題を同じベースで捉え、行政組織が分割されれば地域コミュニティが損なわれ、住民サービスの水準が低下するような誤解を与えかねないものであり、現行制度の大阪市という枠組みを前提にした理論展開であった。

    ウ.「区ごとの財政格差」について、現行制度のもとでの24行政区においては、市税収入や行政需要に大きな違いがあるが、新たな大都市制度を構築する場合、制度設計次第で財政収支は大きく変わってくること。
  • また、大阪都構想が争点となっていた選挙の期間においてもホームページに掲載を続けていた。

(3)エコノミスト誌記事の掲載

(1)趣旨・内容
  • これまでの市政改革や市民協働の成果を、市民の皆さんに広く知っていただくため、「市政だより(P1)」[資料6]、「ホームページ」、リーフレット「グラフで見る大阪市」[資料7]、ポスター[資料8]を使い情報発信した。
  • 市債残高の減少といった市政改革の成果や街頭犯罪の減など市民協働の実績をデータで示すとともに、市民に関心を持っていただけるよう、大阪以外の方にも大阪が高く評価されていることを表す判り易い指標としてエコノミスト誌の「世界で最も住みやすい都市ランキング」の情報などをトピックス的に入れた。
  • 「都市ランキング」の結果が「大都市、そしていちばん住みたいまちへ」という本市の政策推進の成果、進捗状況を表すうえで趣旨に合致する情報であり、積極的に広く市民へ発信するため、世界の中での大阪市の住みやすさ、まちの現状を示す客観的な指標のひとつとして、「都市ランキング」の順位を掲載。

 

(2)時期

「市政だより」(平成23年7月号)

(3)経費

ア、「市政だより」(平成23年7月号)16,247,312円(全体:10頁)のうち1頁

イ、「リーフレット」(A4判  45,000部)327,600円・ポスター(B2判  2,300部) 79,695円

(4)課題
  • 調査項目は、所得額や失業率などの項目が含まれておらず、対象都市も日本では東京・大阪しか含まれておらず、生活実態や満足度を評価する指標として見るには一面的な情報発信となった。
  • この調査の性質や実施方法などを十分市民に説明することなく、市長選挙において市政に対する評価が争点となる中で、広報活動として実施する時期、内容など市民目線からみて配慮を欠くものであった。   

(4)地域懇談会

(1)趣旨・内容
  • 大阪市の新たな市政改革の「地域から市政を変える」という方向性を踏まえ、さらに、これまで市民との直接対話を重視してきたことから、今後の地域コミュニティや地域と行政のあり方について、市長が出席し市政の現状の説明や、学識経験者や地域で活動をする人を迎え、パネルディスカッションを行なうとともに、参加者からの質問に答えるなど、オープンに市民との議論・対話を深める機会をつくるため、「区地域懇談会~地域から市政を変える~」を平成22年7月の生野区から平成23年2月の此花区まで24区において開催した。
(2)時期

平成22年7月4日~平成23年2月11日 24回 [資料9]

(3)主催

大阪市(市民局、区役所)及び(財)大阪市コミュニティ協会各区支部協議会 

(4)経費

開催経費 2,239,764円

(5)課題
  • 基本的には区政に関する事項が中心であったが、いくつかの区において大阪維新の会が主張する「大阪都構想」についての市長の考えについて参加者から質問があった。前市長がこれに答える形で反対の意思を示すこととなった。
  • 第1回目は平成22年7月4日に生野区において開催し、以後平成23年2月の此花区まで開催したが、7月11日には生野区の市会議員補欠選挙が、また、平成23年4月には統一地方選挙の実施が予定されている時期に開催したことが配慮に欠けていた。

(5)地域防災フォーラム

(1)趣旨・内容
  • 平成23年3月11日に発生した東日本大震災をうけて、防災への市民の意識が高まる中で、市民の意見を今後の施策・事業の見直しに反映していく仕組みとして、各区長のもとオープンな形で「地域防災フォーラム」を実施。
  • 区災害対策本部長である区長の指揮のもと、区長が区の防災計画の考え方を示し、本市職員等の被災地支援状況報告、地域での防災・減災への取組紹介、市民との意見交換を行うなど、「自助・共助・公助」の意識の醸成や、今後の地域コミュニティづくりの一環として、各区で工夫を凝らして行った。    
  • また、東日本大震災の被災地支援に取り組む大阪市の活動をまとめた「大阪市の震災支援レポート」を参加者に配布した。
(2)時期

全体期間 平成23年5月25日~11月20日 回数:116回 [資料10]

(3)主催

大阪市(区役所、協働まちづくり室)及び(財)大阪市コミュニティ協会各区支部協議会

(4)経費

リーフレット 443,310円 (A4判 60,000部)[資料11]

(5)課題
  • 内容的には、防災に関するフォーラムで、各会場において東日本大震災支援活動をまとめた「大阪市の震災支援レポート」を参加者に配布したが、前市長の名前が入ったメッセージが掲載されており、前市長が9月19日に市長選挙への立候補表明した後も配付したことが配慮に欠けた。(9/19:鶴見区、9/22・23:城東区、11/20:住之江区)

(6)区民まつりにおける市民協働アンケート

(1)趣旨・内容
  • 平成21年3月に「『元気な大阪』をめざす政策推進ビジョン」を策定し、市民協働の象徴的な取り組みとして「地域防犯対策」、「放置自転車対策」、「ごみの減量」の3つの事業を実施してきた。
  • 市民協働の取り組みの成果について、周知に努めており、さらに市民の皆さんに市民協働への関心を持っていただき、市民協働の取り組みをより一層広がりあるものとするため、多くの市民の皆さんが集まる、各区の区民まつりでアンケートを実施した。
  • 回答者には、市民協働の取り組みに関するリーフレットと軍手やウエットティッシュなどの啓発物品をビニール袋に入れて渡した。
(2)時期

平成22年7月19日~平成23年11月6日[資料12]

(3)経費

啓発物品 510,600円(約222円×2,300件)

(4)課題
  • 前市長のイラスト入りアンケート用紙[資料13]の利用、顔写真入りリーフレットや啓発物品[資料14]を配布しており、前市長が市長選に立候補を表明(平成23年9月19日)した後も実施し、政治的活動ではないかという疑念を招くなど行政としての配慮に欠けていた。
  • 平成23年10月21日に開催された財政総務委員会において、市民協働アンケートについて、「事前運動と誤解されても仕方がない、しっかり直すべき」との指摘があったにも関わらず対応しなかった。

(7)市役所前での候補者演説に参加

 (1)趣旨・内容
  • 11月14日の始業前、市役所庁舎前で前市長が演説するという情報があり、現職市長でもあった平松前市長の市政運営についての考え方を聞くことは各局にとっても参考になるとの判断のもと、副市長の指示を受け、前週の金曜日に当時の秘書部長が中之島庁舎の主だった局の総務担当部長、総務担当課長に日時・場所を連絡した。
  • 11月14日の始業前に職員が市役所庁舎前に集まり、前市長の演説を聞いていた。
(2)課題
  • 勤務時間外と言うこともあり、前市長の考え方を聞きたい職員にはこういう機会があるという趣旨で連絡したものであって、参加を強制したものではなかったが、特定の候補者に対して組織を挙げて応援しているのではないかという印象を与えたことが、配慮に欠けていた。

 

2.まとめ

  • 上記のとおり、具体的な事例についてその活動内容の整理を行ったが、当時の市役所の意識としては、行政と政治の分離について明確な意識はなく、当時の市長の市政方針のもと、市役所の通常の行政活動として実施していたものである。
  • しかしながら、当該行為が、たとえ地方公務員法や公職選挙法に抵触しないとしても、時期・内容・状況から市民目線で総合的に判断し、政治的行為ではないのかと疑われるような行為は、厳に慎むべきであり、慎重な取り扱いが必要であった。
  • これまでの反省にたち、市役所は、政治的要素からは決別した行政組織として、市政運営に邁進し、市民の期待と信託に応えていく必要がある。
  • 一方、市長は、行政の長(首長)としての立場と、政治家としての立場という二面性を有しており、職員は首長の補助機関として、指示・命令に従い職務を遂行するものであることから、職員の行政活動の中で政治的要素の明確な区分けが難しい場合もある。
  • したがって、今後は、職員個人としての政治的行為の禁止はもとより、行政としての活動であっても、政治的行為と疑われることがないよう、時期・内容・状況など外形的な観点からみた制限を行うとともに、職員・組織に、その認識共有を図るため、明確な基準の策定が急務である。
  • 具体的な事例の整理については、市長からの指摘事例を対象にしたものであるが、特別顧問による調査・検討は、行政活動全般についておこなわれており、今後、特別顧問の意見を参考に、行政と政治の明確な分離を図るための規範となる条例の制定を検討する。
  • また、前述の具体的事例については、新しい市政方針のもと、行政と政治を峻別したうえで、適宜、市民の皆様に積極的な情報発信を行っていく。

【問合せ先】

(1)は財政局財務部財源課
(2)は政策企画室企画部政策企画担当 
(3)は政策企画室市民情報部広報担当
(4)(5)(6)は市民局区政支援室地域力担当
(7)は政策企画室秘書部秘書課
見解のとりまとめに関しては政策企画室市民情報部広報担当

添付資料

Adobe Acrobat Reader DCのダウンロード(無償)別ウィンドウで開く
PDFファイルを閲覧できない場合には、Adobe 社のサイトから Adobe Acrobat Reader DC をダウンロード(無償)してください。

探している情報が見つからない

このページの作成者・問合せ先

大阪市 政策企画室市民情報部広報担当

住所:〒530-8201 大阪市北区中之島1丁目3番20号(大阪市役所5階)

電話:06-6208-7251

ファックス:06-6227-9090

メール送信フォーム