「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」の解説及び審査の実例(2条)
2024年4月9日
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解説及び審査の実例(条例第2条)
第1項の趣旨・解説
本条の趣旨
ヘイトスピーチの定義については、表現活動の「目的」、「態様」及び「発信対象が不特定多数であるかどうか」の3つの観点からの要件を設けています。
第1条に規定されている「市民等の人権擁護」という目的からすると、ヘイトスピーチの対象は人種、民族による属性に限定されるものではありませんが、条例制定当時、大阪市内で特定の人種、民族に対するヘイトスピーチが多く行われていた現実を踏まえ早急に具体的な方策を講じていくことが求められていたことから、対象を人種、民族に係るものに限定して制度を開始することとし、条例を制定しました。
第1号の趣旨
第1号は、「目的」の観点からの要件として、特定人等について、「社会からの排除」、「権利又は自由の制限」、「憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおること」のいずれかを目的として行われることを定めたものです。
目的としての「社会からの排除」や「権利又は自由の制限」は個人の尊厳を害するものであることは明らかですが、「憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおること」については、憲法が保障する表現の自由を考慮し、その目的が「明らかに認められるもの」に限り、ヘイトスピーチに該当することとしています。
第1号の解説
第2号の趣旨
第2号は、「態様」の観点からの要件として、「特定人等を相当程度侮蔑し又は誹謗中傷するもの」又は「特定人等(当該特定人等が集団であるときは、当該集団に属する個人の相当数)に脅威を感じさせるもの」を定めたものです。
第2号の解説
「相当程度」という要件を設けたのは、 憲法が保障する表現の自由を考慮し、短絡的な解釈・運用を避け、単なる批判や非難は対象外とする趣旨ですが、「相当程度」の判断に当たっては、個々の事例ごとに一般的な社会通念などに従って、客観的に判断することになります。
第3号の趣旨
第3号は表現活動の「発信対象が不特定多数であるかどうか」すなわち当該表現活動の受け手の観点からの要件として、「不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法で行われるもの」を定めたものです。
第3号の解説
例えば、仲間うちでの悪口程度の会話や、会員のみが参加できる集会での発言など、特定の者だけが受け手になるようなものは基本的には対象とはならず、一般公衆が受動的に表現内容を知り得る状態にあるかが判断の基本となりますが、具体的には個々の事例ごとに判断していくこととなります。
定義に用いている「明らかに」や「相当程度」について
これにより、一般的にヘイトスピーチに当たると思われるような事案が定義から漏れてしまうことを避けるとともに、逆に、「明らかに」や、また「相当程度」といった要件を加えることで短絡的な解釈、運用を抑止しようとしています。こうした幅のある概念の規定は法律においても用いられているところです。
こういった幅のある概念の解釈、運用に当たっては、個々の事例ごとに一般的な社会通念あるいは経験則に従って客観的な判断がなされなければならないものだと考えています。本条例においては、専門的、中立的な審査機関である大阪市ヘイトスピーチ審査会(以下「審査会」といいます。)を設置し、まず審査会で審査を行い、審査会の意見を踏まえ、市として判断することとしています。

第1項の審査の実例
※個別具体の案件に対する審査の実例であり、類似した案件であっても、その表現活動全体の特徴によっては、過去の実例とは異なる判断がなされる場合も考えられますので、予めお含みおきください。
※下記表現の一部の内容はヘイトスピーチに該当するものですが、当該内容を一般市民に周知することによって、ヘイトスピーチの問題に関する一般市民の理解を促進し人権意識をより一層高揚させ、ヘイトスピーチの抑止につなげるとともに、本市が条例に基づき公正にヘイトスピーチに該当すると認定したことを示す観点から掲載するものです。
※条例以外の法令違反等については、判断するものではありません。
条例2条第1項第1号に該当する表現活動 | ・「不逞犯罪ゴキブリくそ〇〇、日本からたたき出せ」等の表現を繰り返した表現活動 |
条例第2条第1項第2号に該当する表現活動 | ・「殺せ、殺せ、△△人」等の表現を繰り返した表現活動
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条例第2条第1項第3号に該当する表現活動 | ・インターネットを通じて、不特定多数の者が閲覧・視聴できる状態においていた表現活動 |
条例第2条第1項第1号に該当しない表現活動 | ・街宣活動の実施中、当該街宣活動の弁士に向けて、当該街宣活動を聴いていた者のうち1人が中指を立てた行為
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条例第2条第1項第2号に該当しない表現活動 | ・大阪市内の店舗(以下「本件店舗」という。)が、海外の旧政権の標章と認識しうる標章(以下「本件標章」という。)を、不特定多数の者が視認できる状態に置いていた行為 (本件標章以外には、本件店舗の商品に関する一般的な宣伝文句等の表記があるのみで、他の手段による表現も認められないことからすると、仮に本件表現活動が、特定の人種又は民族の属性を問題にしているものであるとしても、当該人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人若しくは当該個人 により構成される集団(以下「特定人等」という。)に対する相当程度の侮蔑又は誹謗中傷といえるような態様又は内容については、認めがたい。また、特定人等に脅威を感じさせる態様又は内容であるかどうかについては、当該旧政権が、歴史的に、複数の人種・民族を迫害してきたことからすると、当該人種又は民族に係る特定人等にとっては、その歴史が呼び覚まされ、一定の脅威を感じさせるものとなる可能性は考えられるが、現在(本件の調査審議が行われたのは令和元年から令和2年まで。)の大阪市を含めた日本国内における当該旧政権に関する事象が取り扱われている状況に照らして鑑みれば、本件表現活動を視認した特定人等に、その生命、身体又は財産が具体的に侵害されるとの脅威を感じさせるとまでは言い難いと考えられる。) ※条例第2条第1項第1号及び第2号の各規定によれば、表現活動がヘイトスピーチに該当するためには、人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団に関する表現活動であることが要件となっている。 ※条例以外の法令違反等については、判断をするものではない。 |
条例第2条第1項第3号に該当しない表現活動 | ・特定の人種又は民族に関する記載がなされた印刷物(以下「本件印刷物」という。)2枚を、大阪市内の鉄道駅(以下「本件鉄道駅」という。)構内に、1枚ずつ折り畳まれた形で放置した行為 (本件印刷物は、不特定多数の者が利用する本件鉄道駅構内に放置されていたものの、合計で2枚しか確認されていないうえ、本件鉄道駅構内はもちろんその周辺などの他の場所において、もっと多くの枚数の本件印刷物の差し置き、配布、放置等がなされていたとの情報もなく、また、いずれも折り畳まれた状態となっていたため、壁などに貼り出されている場合とは異なり、本件印刷物1枚の内容を、一度に多数の者が視認することは、一般的に困難であり、本件印刷物の放置によって直接的にその内容を知り得る人数は、多く見積もっても数人程度にすぎないと考えられることから、本件表現活動が、条例第2条第1項第3号の規定のうち、「多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法で行われるものであること」との要件を満たすとまではいえない。) |
第2項の趣旨・解説
趣旨
条例における「表現活動」には、他の表現活動の内容を拡散する活動を含むものであることを定めたものです。
解説
近年の情報通信手段の発展に伴い、表現活動は多様化しており、直接受け手に訴える手法だけでなく他の表現内容を拡散する手法が採られることも考えられます。表現活動には、公共の場所での演説、インターネットのウェブサイトへの書き込みや動画の掲載といったことのほか、他人の演説や示威運動などの動画をDVDなどに記録し頒布したり、インターネットのウェブサイトに掲載するといった他の表現活動の内容をさらに拡散する活動も含まれます。
第3項及び第4項の趣旨・解説
趣旨
解説
条例における「市民等」については、条例の目的である人権の擁護の対象となるほか、条例第5条の規定による「拡散防止の措置及び認識等の公表」という本市による措置を受ける対象となるものであることから、本市の区域内に居住する者又は本市の区域内に通勤し若しくは通学する者である「市民」と、ヘイトスピーチにおける表現内容の対象となり得る「人種若しくは民族に係る特定の属性を有する市民により構成される団体」としています。
「居住する者」は、必ずしも住所を有する者に限定せず、居所を有している者も含むものです。また、「通勤する者」とは、本市の区域内で事業を営む者も含みます。
「団体」とは、単なる集団ではなく一定の目的によって結集した人の集合体であって、代表者や意思決定の仕組みの定めがあるなど一定の組織化が図られたものをいい、法人格を持たないものも含みます。
「市民等」は条例第5条の規定による「拡散防止の措置及び認識等の公表」という本市による措置を受ける対象となるものであり、個人でない場合の「市民等」については、一定の組織化が図られたものであることが求められることから、「集団」ではなく「団体」であることを要件としているものです。
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