消防職員の懲戒処分に関する指針 大阪市消防局
2023年12月1日
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第1 基本的な考え方
大阪市においては、平成18年4月に職員の非違行為に対し、厳正に対処することで、服務規律の確保を図り、もって、市民の信頼に応えることを目的とする「懲戒処分に関する指針」を策定した。
消防職員は、あらゆる災害から市民の生命、身体及び財産を守るという職責を担っていることから、公務員のなかでも一段と高いモラルが求められている。
したがって、消防職員については、大阪市の指針を基本としつつ、消防職員の特殊性を考慮し、必要のあるものを追加して、消防職員を対象とする「懲戒処分に関する指針」を策定する。
具体的な量定の決定にあたっては、
① 公務遂行にかかる非違行為か否か
② 非違行為の動機、態様、状況及び結果はどのようなものであったか
③ 故意又は過失の度合はどの程度であったか
④ 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
⑤ 被害者との間で示談や和解がなされているか
⑥ 司法判断はどのようなものであるか
⑦ 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
⑧ 過去に非違行為を行っているか
等のほか、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め、総合的に考慮したうえで判断する。個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる量定以外となることもあり得る。
特に、次に掲げる事情が認められる場合には、それらを考慮して標準例に掲げる量定を軽減し、特に悪質な事案を除き、免職としない。
① 自主的な申告により非違行為が発覚していること
② 調査に協力するなど、自らの非違行為に関連する不祥事案の全容解明に寄与したこと
また、職員が行った一連の行為が、複数の非違行為に該当する場合は、標準例で規定する最も重い懲戒処分よりも重い処分を行うことができる。
なお、標準例にない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものとし、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考に判断する。
第2 標準例
1 一般服務関係
(1) 欠勤
ア 正当な理由なく10日以内の間、勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。
イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間、勤務を欠いた職員は、停職又は減給とする。
ウ 正当な理由なく21日以上の間、勤務を欠いた職員は、免職とする。
(2) 遅刻・早退
勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。
(3) 休暇の虚偽申請
病気休暇、介護休暇等の申請を必要とする各種休暇、職務免除について、虚偽の申請をした職員は、減給とし、虚偽の申請により不正に取得した場合は停職又は減給とする。
また、取得した病気休暇、介護休暇等を申請のとおり適正に取得しない職員についても同様とする。
(4) カードリーダの不正打刻
ア カードリーダの代理打刻を依頼し、勤務時間に影響があった職員は、停職とする。
イ カードリーダの代理打刻を依頼し、勤務時間に影響のなかった職員は、減給又は戒告とする。
ウ 依頼を受けてカードリーダの代理打刻を行った職員は、減給又は戒告とする。
(5) 勤務態度不良
勤務時間中に職場を離脱・私的な行為を繰り返し行うなどして職務を怠り、又は、職務遂行にあたって上司の命令に従わない等により公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。
(6) 職場内秩序びん乱
上司その他の職員に対する暴行又は暴言、嫌がらせ等により職場の秩序を乱した職員は、停職、減給又は戒告とする。
(7) 虚偽報告
事実を捏造して虚偽の報告を行った職員は、減給又は戒告とする。この場合において、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職又は減給とする。
(8) 違法な職員団体活動
ア 地方公務員法第37条第1項前段の規定に違反して、同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は、本市の活動能率を低下させる怠業的行為をした職員は、減給又は戒告とする。
イ 地方公務員法第37条第1項後段の規定に違反して同項前段に規定する違法な行為を企て、又は、その遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおった職員は、免職又は停職とする。
(9) 秘密漏えい
職務上知ることのできた秘密を漏らした職員は、減給又は戒告とする。この場合において、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。
(10) 個人の秘密情報の目的外収集
その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した職員は、減給又は戒告とする。
(11) 個人情報の流出
故意又は重大な過失により不適切な事務処理をし、職務上知ることのできた個人情報を流出させ、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
(12) 個人情報の目的外使用
職務上知ることのできた個人情報を自己又は第三者の利益に供するために不正な目的に使用した職員は、免職又は停職とする。
(13) 情報セキュリティポリシー違反
故意又は重大な過失により、情報セキュリティポリシーに違反し、本市が保有する情報資産に危害を加えるなど、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。
(14) 兼業の承認等を得る手続きのけ怠
任命権者の許可を得ることなく、営利企業の役員の地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得て事業若しくは事務に従事した職員は、停職、減給又は戒告とする。
(15) セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)
ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。
イ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。この場合において、わいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。
ウ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。
(16) 収賄
職務に関し賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をした職員は、免職とする。
(17) 供応
ア 正当な理由なく、利害関係者から金銭や物品の贈与、金銭の貸付又は便宜の供与を受けた職員は、免職又は停職とする。
イ 正当な理由なく、利害関係者と共に会食、遊技、旅行、個人的な取引等を行った職員は、停職、減給又は戒告とする。
(18) 公文書の取扱い
ア 公文書を不正に作成し、使用した職員は、免職又は停職とする。
イ 公文書を故意に毀棄し、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。
ウ 重大な過失により公文書を紛失若しくは汚損し、又は重大な過失により盗難にあったことにより、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
(19) 公的債権の滞納等
公的債権を滞納し、履行の督促等にもかかわらず滞納し続けた職員は、減給又は戒告とする。この場合において、公的債権の滞納を繰り返した職員は、停職又は減給とする。
(20) 破産・民事再生等
無計画な借金等により破産宣告又は民事再生の認可等を受けた場合で、公務に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
2 公金物品取扱い関係
(1) 横領、窃盗、詐欺
これらの行為を行った職員は、免職とする。
(2) 紛失、盗難
ア 過失により公金又は物品を紛失し、又は盗難に遭った職員は、戒告とする。
イ 重大な過失により公金又は物品を紛失し、又は盗難に遭った職員は、減給とする。
(3) 物品損壊
故意に職場において物品を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
(4) 出火・爆発
過失により職場において出火、爆発を引き起こした職員は、停職、減給又は戒告する。
(5) 諸給与の違法支払・不適正受給等
ア 故意に法令に違反して諸給与を不正に支給した職員及び故意に届出を怠り、又は虚偽の届出をするなどして諸給与を不正に受給した職員は、免職、停職又は減給とする。
イ 諸給与の支給又は受給にかかわって、不適正な手続きをした職員は、減給又は戒告とする。
ウ 正当な理由なく、自動車等の交通用具を常例的に使用して通勤した職員は、停職又は減給とする。
(6) 公金物品処理不適正
ア 公金又は物品の不適正な処理をした職員は、減給又は戒告とする。
イ 「不適正資金」を捻出した職員、又は当該資金から支出した職員は、免職又は停職とする。
※ 「不適正資金」とは、公金や公金外現金から不正に捻出し、いったんプールした後、通常の決裁手続きを経ずに支出するために保管している資金という。
ウ 「預け」を行った職員、又は「預け」から納品を行った職員は、免職又は停職とする。
※ 「預け」とは、物品の納品なしに代金名目で一定額を取引事業者に支払い、後の物品購入等の代金として、取引事業者に管理させるものをいう。
(7) 不適正な契約事務等
ア 契約事務等にかかわって、関係規定等に違反する不適正な処理をした職員は、減給又は戒告とする。この場合において、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。
イ 入札等の必要な手続きを避けるために、故意に分割して契約又は発注を行った職員は、減給又は戒告とする。この場合において、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。
ウ 実態のない契約を行った職員は、停職又は減給とする。この場合において、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。
3 一般非行関係
(1) 放火、殺人、強盗、強姦、麻薬・覚せい剤の使用・所持
これらの行為を行った職員は、免職とする。
(2) 横領、窃盗、詐欺、恐喝、脅迫、公務執行妨害、職務強要
これらの行為を行った職員は、免職又は停職とする。
(3) 傷害
人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。
(4) 暴行・けんか
暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。
(5) 器物損壊
故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
(6) 賭博
ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
イ 常習として賭博をした職員は、免職又は停職とする。
(7) 酩酊による粗野な言動等
酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。
(8) わいせつ行為等
ア 強制わいせつ、淫行
暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした職員、又は、18歳未満の者に対して法律や条例等に違反して淫行をした職員は、免職又は停職とする。
イ 痴漢行為、ストーカー行為
公共の乗物等において痴漢行為をした職員、又は、つきまとい等のストーカー行為をした職員は、免職又は停職とする。
ウ その他
公然わいせつ、盗撮、のぞき等その他のわいせつ行為を行った職員は、免職、停職又は減給とする。
(9) 出火・爆発
本人の過失により出火、爆発を引き起こした職員は、停職、減給又は戒告とする。
4 交通事故・交通法規違反関係
(1) 飲酒運転関係
ア 飲酒運転で人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職とする。
イ 飲酒運転で人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職とする。この場合において事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職とする。
ウ 飲酒運転をした職員は、免職又は停職とする。
エ 飲酒運転となることを知りながら、運転者に飲酒を勧めたり、飲酒運転の車に同乗した職員は、免職又は停職とする。
※ 飲酒運転とは、酒酔い運転及び酒気帯び運転をいう。
(2) 飲酒運転以外での交通事故等
ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職とする。
イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
ウ 他人の物を損壊し、措置義務違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。
エ 著しい速度超過、無免許運転等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は戒告とする。
5 監督責任関係
(1) 指導監督不適正
部下職員が懲戒処分を受ける等した場合で、管理監督者としての指導監督に適正を欠いていた職員は、減給又は戒告とする。
(2) 非行の隠ぺい、黙認
部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず、その事実を隠ぺいし、又は黙認した職員は、停職又は減給とする。
第3 報告義務
公務外においても、上記の標準例に掲げるような非違行為を行い逮捕された職員は、上司に報告しなければならない。また、無免許運転を行い検挙された職員、交通法規違反を起こし、免許停止又は免許取消の処分を受けた職員は、速やかに上司に報告しなければならない。
なお、部下からの報告を受けた上司は、所属長へ報告するものとする。
第4 公表
1 対象処分
地方公務員法第29条に基づく懲戒処分(監督責任含む)とする。
2 内容、時期及び方法
(1) 公表する内容は、原則として、被処分者の所属、階級、職種、年齢、処分内容、処分年月日、事案概要とし、毎月1回行う。
(2) 毎月の公表は、ホームページ上で行う。
(3) 懲戒免職及び停職3月以上の処分については、処分後、速やかに公表を行うこととし、被処分者の氏名、補職も公表する。ただし、社会的影響が特に大きいと認められる事案については、懲戒免職及び停職3月以上の処分以外であっても、被処分者の氏名、補職を公表する。
3 その他
(1) 監理団体等派遣者についても、本基準に準じて対応するよう努める。
(2) 被害者のプライバシー等の人権に配慮する必要がある場合や、教育的な配慮を必要とする場合は、例外として公表しない。
(3) 懲戒処分の対象となる非違行為を行った職員が、地方公務員法第16条第1項第2号の欠格事由に該当した(禁固刑以上の刑が確定)ため、懲戒処分を受ける前に失職した場合において、当該事案にかかる社会的影響が特に大きいと認められる場合には、失職者の氏名、補職、所属、階級、職種、年齢、判決内容、失職年月日、事案概要を公表する。
第5 告発
職員が行った非違行為のうち、刑事事件に係る事案については、刑事訴訟法に定めるところにより告発又は告訴を行う。ただし、被害者が告発を望んでいない等特別な事情があると認められる場合は告発しないことができる。
第6 施行日等
この指針は、平成22年7月15日から効力を有し、同日以後に処分事由となる非違行為があった事案について適用する。ただし、第1の規定は、平成24年1月25日以降に行うすべての懲戒処分について適用する。