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答申第173号

2024年3月22日

ページ番号:21270

【要旨】 

    「大阪市教育委員会が2003年度予算において「学校園における事件・事故等への適切な対応を支援するため、弁護士による相談体制の整備」を目的として約500万円を計上した「学校経営の支援」事業について、当該事業に関連する資料及びその基礎となる資料のすべて(事業の要綱、当該予算の執行状況及び支出関連文書を含むすべて)」の情報公開請求があった。
  大阪市教育委員会(以下「実施機関」という。)は、請求の対象となった文書について、関係者個人を識別することができる情報が記載され、あるいは、これを公開すると、相談事案についての対応を公にすることとなり、問題解決に向けての交渉に関する事務に支障を及ぼすおそれがあり、さらに、争訟が提起された際に、当該争訟事務に支障が生じるおそれがある情報が記載されており、その部分を除くと有意な情報が記録されていないと認められるため全部を非公開としたものである。
  請求者は、当該決定を不服とし請求の対象となった文書のうち一部の個人情報を除いた部分の公開を求めて異議申立てを行ったので、審査会に対して諮問があった。
  審査会は審議の結果、実施機関が行った非公開決定により非公開とされたもののうち、「学校名」、「相談者の氏名」等の「非公開妥当部分」を除いた部分について公開すべきであるとの判断を示した。

【概要】

1 争点及びその決定の理由 

(1)争点:

    「「学校支援(法律相談)事業 相談個票(平成15年度 相談事案1)、同(平成15年度 相談事案2)、同(平成15年度 相談事案3)、同(平成15年度 相談事案4)、同(平成15年度 相談事案5)」」の条例第7条第1号及び第5号該当性 

(2)理由: 

    当該文書には、児童の学年・組・名前、相談事案の概要、学校のとった措置、関係者の意見等が記されており、これらは児童等本人のほか、関係者個人が直接識別される情報及び他の情報と照らし合わせることにより、特定の個人を識別することができる情報が記載されているため。(条例第7条第1号該当)
  また、これらの情報を公開すると、相談事案についての対応を公にすることとなり、問題解決に向けての交渉に関する事務に支障を及ぼすおそれがあり、さらに、争訟が提起された際に、当該争訟事務に支障が生じるおそれがあるため。(条例第7条第5号該当)
  なお、本件文書から非公開部分を区分して除くと、様式のみとなり、有意の情報が記録されていないことが認められるため、本件文書の全てを非公開とした。    

2 大阪市情報公開審査会の判断 

1結論   

 実施機関が行った非公開決定により非公開とされたもののうち、別表に掲げる「非公開妥当部分」を除いた部分について公開すべきである。
 実施機関のその余の判断は、妥当である。 

2理由要旨  

(1) 条例第7条第1号該当性について 

ア  本件文書は、学校支援(法律相談)事業に寄せられた相談事案別に作成された相談個票であって、個票1は、校内で発生した事件への教諭のとった措置に対する抗議事件に関するものであり、個票2ないし5は、校内で発生した児童事故に関するものであることが認められ、事故又は事件の当事者である児童又は関係者(以下「事故児童等」という。)との関連性を有するものであると考えられる。また、将来、争訟に発展する可能性も考慮すれば、本件文書に記載の各情報は、その内容や性質からして特段の配慮を要するものと言え、当該個人の近親者、地域住民等により公開請求がなされる可能性もあることから、当該近親者、地域住民等が保有する情報又は当該近親者、地域住民等であれば入手可能であると通常考えられる情報とを照合すべき「他の情報」に含めたうえで個人識別性を検討する。

イ  「校園名・校園長名」欄は、「学校名」「校種」「相談者の補職」「相談者の氏名」の各情報より構成されている。 

 (ア)  「学校名」は、本件事故又は事件(以下「本件各事案」という。)のあった学校の教職員や保護者などの関係者が保有している情報又は入手可能であると通常考えられる情報と照合することにより、当該事故児童等を識別することができる情報であると認められる。  

(イ)  「相談者の氏名」は、当該情報自体は事故児童等を識別することができる情報であるとは認められないが、本件請求においては、結果として相談を行った期間が特定されているところ、当該情報と照合することにより、本件各事案のあった学校名が特定され、さらに本件各事案のあった学校の教職員や保護者などの関係者が保有している情報又は入手可能であると通常考えられる情報と照合することにより、事故児童等を識別することができる情報であると認められる。 

 (ウ)  「校種」「相談者の補職」は、事故児童等やその他の特定の個人を識別することができる情報であるとは認められず、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるとも認められない。

 ウ  「事案の概要」欄には、「事故児童等の氏名」「学校名」「事故児童の学年・組」「発生日時・曜日」「発生場所」「児童の行動・診断・病状・事後の状況」「関係者の様子・行動・事後の状況」「事故又は事件に関わった関係機関の名称」「関係者の意見」「学校のとった措置・対応」等の情報を中心に、本件各事案発生から相談時点までの事実の経過が時系列で記載されている。  

(ア)  「事故児童等の氏名」は、事故児童を識別することができる情報であることは明らかである。加えて、個票1に記載の関係教諭の氏名は、当該事案のあった学校の教職員や保護者などの関係者が保有している情報若しくは入手可能であると通常考えられる情報と照合することにより、当該関係教諭の対応に対して抗議を行った当事者及びその家族等の関係者をも識別することができる情報であると認められる。  

(イ)  「学校名」「事故児童の学年・組」「発生日時・曜日」「発生場所」「児童の行動・診断・病状・事後の状況」「関係者の様子・行動・事後の状況」「事故又は事件に関わった関係機関の名称」は、そのいずれか一つの情報であっても、それ自体により又は本件各事案のあった学校の教職員や保護者などの関係者が保有している情報若しくは入手可能であると通常考えられる情報と照合することにより、事故児童等を識別することができる情報であると認められる。 

 (ウ)  当該関係者の関係教諭の対応に関する具体的な抗議の内容及びこれに対する関係教諭の意見並びに事故児童の保護者の当該事故に対する個人的な意見及び感想等の「関係者の意見」は、それ自体により直ちに事故児童等を識別することができる情報であるとは認められないが、学校又は教諭に対して抗議を行った事実や、心身の発育や人格形成の途上においてかかわった事故に関する情報は、事故児童等にとって、通常他人に知られたくないものであると解される。また、本件各事案のあった学校の教職員や保護者などの関係者において、上記情報から事故児童等を識別することができる可能性があると認められることから、当該事故児童等の現在又は将来の平穏な生活に予期せぬ様々な影響を及ぼすおそれも懸念され、公にすることにより、なお事故児童等の権利利益を害するおそれがある情報であると認められる。
 なお、個票1に記載されている関係教諭の意見は、事件への対応に苦慮している当該関係教諭の個人的な心情及び事件に対する見解が詳細に記載されており、当該関係教諭の人格と密接に関連するものであるから、これを公にすることにより、なお当該関係教諭の権利利益を害するおそれがある情報であると認められる。  

(エ)  したがって、「事案の概要」欄は、「当該情報に含まれる氏名…により特定の個人を識別することができる」情報であり、当該事故児童等を識別することができる情報であると認められる。 

エ  「相談(質問)事項」欄には、法的な論点を中心に取りまとめた相談(質問)事項が記載されており、「回答」欄には、相談(質問)事項に対する弁護士の助言及び今後の対応方針等が記載されているところ、個票4の「相談(質問)事項」欄を除いて、上記各欄にはいずれも、事故児童等の氏名等「事案の概要」欄に記載の情報が含まれており、当該各情報は、事故児童等を識別することができる情報であると認められる。
 なお、個票4の「相談(質問)事項」欄については、本審査会が見分したところ、法的論点のみに整理されて記載されており、事故児童等やその他の特定の個人を識別することができる情報であるとは認められず、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるとも認められない。 

オ  したがって、「校園名・校園長名」欄のうち「校種」「相談者の補職」を除いた「学校名」及び「相談者の氏名」並びに「事案の概要」欄、「相談(質問)事項」欄(個票4を除く。)、「回答」欄については、条例第7条第1号本文に該当し、かつその内容からみて、同号ただし書アからウまでのいずれにも該当しない。

(2) 条例第7条第5号該当性について 

ア  本件文書は、本市の行う学校支援(法律相談)事業が、当該事故又は事件の当事者との交渉を前提に実施され、将来、争訟が提起されることも十分に予想されることからすれば、交渉又は争訟に関する事務に係る情報に該当すると認められる。 

イ  本件文書に記載の各情報のうち「氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分」を除いた部分は、本件各事案の概要の一部、法的な論点及びこれに対する一般的な解釈又は助言等の記載にとどまっていることが認められ、これらが、いわゆる初期の対応方針等として作成されたものであることも考慮すれば、これらを公にすることにより、実施機関の当事者としての地位を不当に害するなど当該各事案自体の交渉に関する事務及び将来の争訟に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼす相当の蓋然性があるとまで認めることはできない。 

ウ  よって、本件文書に記載の各情報のうち、特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除いた部分は、条例第7条第5号に該当するとは認められない。

(3)  部分公開の可否について 

ア  「事案の概要」欄には、本件各事案発生から相談時点までの事実の経過が、個票1及び3を除いて、おおむね、簡潔に順を追って記入されており、「相談(質問)事項」欄及び「回答」欄には、法的な論点及びこれに対する解釈等を中心に、簡潔に箇条書きで記入されていることが認められる。 

イ  個票1及び3の「事案の概要」欄を除いて、当該各欄から「事故児童等の氏名」「学校名」「事故児童の学年・組」「発生日時・曜日」「発生場所」「児童の行動・診断・病状・事後の状況」「関係者の様子・行動・事後の状況」「事故又は事件に関わった関係機関の名称」「関係者の意見」等事故児童等を識別することができる部分を容易に区分して除くことができると考えられ、かつ当該非公開情報を除いた部分には、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるとも認められない。
 また、当該非公開情報を除いた部分には、本件各事案の対応に公務として従事した教諭等の行動や学校のとった措置、これらを踏まえて行った法的な観点からの相談や回答の要旨が、特定の個人を識別できない形で簡潔に記載されており、当該部分を公開することにより、学校内外で発生した事故又は事件への学校側の対応や、事後の対応を行う際の学校支援(法律相談)事業の利用状況を相当程度把握することができ、当該対応が適切であったか否か、又は当該事業が有効に活用されているか否かを吟味することができる。以上の点から、分離後の部分には、請求の趣旨にかなう有意の情報が記録されていると認められることから、これらの情報は公開すべきである。

ウ  一方、個票1及び3の「事案の概要」欄については、もっぱら関係者の行動、意見及び事故児童の行動、病状を中心に、事故児童等の個人情報が、全文脈を通して、詳細かつ相互に密接に関連づけられながら記載されているため、特定の個人を識別することができる部分を分離した場合、分離後の部分は、断片的な情報のみとなり、十分文意を把握することができず、請求の趣旨にかなう有意の情報が残らないと認められる。

別表
番号非公開妥当部分
文書項目

該当場所

1相談個表
(平成15年度 相談事案1)
校園名・校園長名欄学校名及び相談者氏名
2事案の概要欄全文
3相談(質問)事項欄1行目1文字目から4行目24文字目まで
4回答欄1行目1文字目から33文字目まで
5相談個表
(平成15年度 相談事案2)
校園名・校園長名欄学校名及び相談者氏名
6事案の概要欄1行目1文字目から23文字目まで
2行目14文字目から3行目3文字目まで
3行目10文字目から11文字目まで
4行目3文字目から5行目14文字目まで
5行目26文字目から9行目4文字目まで
7相談(質問)事項欄1行目2文字目から2行目2文字目まで
8回答欄1行目2文字目から2行目1文字目まで
9相談個表
(平成15年度 相談事案3)
校園名・校園長名欄学校名及び相談者氏名
10事案の概要欄全文
11相談(質問)事項欄1行目2文字目から2行目22文字目まで
3行目15文字目から18文字目まで
5行目5文字目から16文字目まで
12回答欄1行目2文字目から3文字目まで
1行目26文字目から2行目1文字目まで
2行目12文字目から15文字目まで
2行目22文字目から25文字目まで
4行目26文字目から5行目1文字目まで
7行目2文字目から3文字目まで
11行目5文字目から27文字目まで
12行目7文字目から10文字目まで
12行目20文字目から13行目14文字目まで
16行目2文字目から18行目17文字目まで
13相談個表
(平成15年度 相談事案4)
校園名・校園長名欄学校名及び相談者氏名
14事案の概要欄行目1文字目から4行目24文字目まで
5行目12文字目から13文字目まで
5行目23文字目から6行目9文字目まで
7行目1文字目から8文字目まで
7行目23文字目から8行目7文字目まで
10行目10文字目から11行目5文字目まで
12行目9文字目から19文字目まで
12行目27文字目から13行目16文字目まで
13行目22文字目から19行目5文字目まで
15回答欄8行目5文字目から6文字目まで
16相談個表
(平成15年度 相談事案5)
校園名・校園長名欄学校名及び相談者氏名
17事案の概要欄1行目1文字目から4行目16文字目まで
5行目18文字目から24文字目まで
7行目12文字目から19文字目まで
9行目2文字目から18文字目まで
9行目24文字目から25文字目まで
11行目1文字目から15行目15文字目まで
15行目22文字目から26文字目まで
16行目5文字目から16文字目まで
18行目17文字目から23行目13文字目まで
18相談(質問)事項欄1行目2文字目から3行目24文字目まで
4行目6文字目から7文字目まで
5行目16文字目から6行目9文字目まで
8行目2文字目から9行目12文字目まで
12行目2文字目から5文字目まで
12行目11文字目から14行目5文字目まで
19回答欄3行目2文字目から5文字目まで
5行目10文字目から21文字目まで
・1行に記載された文字を左詰にして数え、符号、句読点は、それぞれ1文字と数えるものとする。

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