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答申第172号

2024年3月22日

ページ番号:21271

【要旨】

 「平成11年~平成13年におけるATCの消防立入検査結果報告書」の情報公開請求があった。
   大阪市消防長(以下「実施機関」という。)は、請求の対象となった文書について、特定の個人が識別される情報であること、あるいは、これを公開すると、法人等事業者の名誉、社会的評価を損ない、法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあること、さらに、立入検査時における不備欠陥事項の隠ぺい等も考えられ、正確な管理実態の把握及び消防法違反の発見を困難にするおそれがあるため、全部を非公開としたものである。
   請求者は、当該決定を不服とし請求の対象となった文書の全部公開を求めて審査請求を行ったので、審査会に対して諮問があった。
   審査会は審議の結果、実施機関が行った非公開決定において非公開とされたもののうち、受領者の印影以外の情報は公開すべきであるとの判断を示した。

【概要】

1 争点及びその決定の理由 

(1)争点:

 「平成11年~平成13年におけるATCの立入検査結果報告書」の条例第7条第1号、第2号及び第5号該当性 

(2)理由:

  事業者の担当者等個人の氏名、肩書及び印影については、個人の戸籍的事項に関するものとして、特定の個人が識別されるものであり、かつ、第1号ただし書アからウまでのいずれにも該当しないため。(条例第7条第1号該当)
  検査結果については、軽易な事項で検査後直ちに改善されたものがあることなどから、これを公にすることにより、法人等事業者の名誉、社会的評価を損ない、法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、かつ第2号ただし書に該当しないため。(条例第7条第2号該当)
  さらに、当該情報は、これを公にすることにより、当該対象物の不備欠陥事項の有無が判明することとなり、対象物側の立入検査時における不備欠陥事項の隠ぺい等も考えられ、正確な管理実態の把握及び消防法違反の発見を困難にするおそれがあり、適正な立入検査業務遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。(条例第7条第5号該当)
  また、これらの情報が記録された部分を除外した残りの部分については、有意な情報が記録されていないと認められ、部分公開になじまないため。 

2 大阪市情報公開審査会の判断 

1結論 

  実施機関が行った非公開決定において非公開とされたもののうち、受領者の印影以外の情報は、公開すべきである。
  実施機関のその余の判断は妥当である。 

2理由要旨 

(1) 本件文書には、1)通知書交付関係者名、2)検査実施者(本市職員の職、氏名及び印影)、3)不備欠陥事項がある旨を示す前文、4)検査実施対象物の所在地、5)検査実施対象物の名称、6)検査実施対象、7)検査立会者の職及び氏名、8)交付枚数、9)不備欠陥事項及び摘要並びに10)通知書受領年月日、受領者の氏名及び印影の各情報が記載されている。

(2) 条例第7条第1号該当性について

  7)検査立会者の職及び氏名並びに10)のうち受領者の氏名及び印影の各情報(以下「本件各情報1」という。)により識別される特定の個人は、本件防火対象物の立入検査に立ち会った法人の担当者及び法人に対する立入検査結果通知書を受領した法人の担当者であることが認められる。
  検査立会者については、実施機関の説明によると、立入検査実施規程第14条第3号の趣旨を踏まえ、防火対象物の防火管理業務に精通し、必要な説明や具体的な質問に対する回答ができる者の立会を求めていることが確認された。
  また、立入検査の結果、不備欠陥事項が認められた場合にのみ関係者に通知書を交付するとのことであり、本件防火対象物が不特定多数の者の出入りする大規模集客施設であることを考慮すると、本件通知書の受領者は、当該防火対象物の防火管理について相当程度の権限、責任を有する者であると認められる。
  以上を踏まえれば、本件各情報1は、「法人等を代表する者…が当該法人等の職務として行う行為に関する情報又はその他の者が権限に基づいて当該法人等のために行う…当該法人等の行為そのものと評価される行為に関する情報」に含まれると解するのが相当であり、条例第7条第1号に規定する「個人に関する情報」に該当しない。

(3) 条例第7条第2号該当性について

  不備欠陥事項のある旨を示す前文、交付枚数(不備欠陥事項が認められた場合に交付される通知書の枚数)、不備欠陥事項及び摘要の各情報(以下「本件各情報2」という。)は、本審査会が見分したところ、立入検査の結果、不備欠陥事項が認められた場合に作成される報告書にのみ記載されており、これらの事項が認められなかった場合には、これらの事項を認めなかった旨が前文に記載されている。
  本件各情報2は、本件防火対象物の立入検査の結果であり、当該防火対象物を所有ないし管理する法人の内部管理に属する事項に関する情報に該当する。 本件防火対象物は、消防法第17条に規定する防火対象物に該当するところ、同条は、不特定多数の者が出入りする建築物等に対し、消防用設備等の維持、管理につき、より厳しい義務を課していることが認められ、かかる防火対象物を所有ないし管理する法人は、本来、消防法以下の法令(以下「消防法等」という。)を遵守すべきことが、強く要請されているといえること、また、本件立入検査は、ひとたび火災が発生すれば重大な被害が生じるおそれのある上記防火対象物について、消防法等に違反する事実の有無を確認し、仮に違反事実が認められる場合にはその改善を指示し、現実に改善させることにより、消防法第1条に規定する火災予防等の目的を達成することを主たる目的として実施されているものと解されることを踏まえて検討すると、本件文書のうち不備欠陥事項のなかったものについては、そもそも不備欠陥事項を認めなかった旨が記載されているのみであり、これを公にすることに何らの不利益もないと認められる。
  また、本件文書のうち本件各情報2が記載されているものについても、当該各情報により消防法等の遵守という公法上の義務を履行してない事実が明らかになる点では不利益があるともいえるが、大規模集客施設という本件防火対象物の性質並びに本件立入検査の趣旨及び目的等に照らせば、火災発生により重大な被害が生じるおそれのある当該防火対象物を所有ないし管理する以上、消防法等を遵守すべき義務は重いと考えるべきであり、仮に、義務違反の事実を公にすることにより当該法人の社会的評価等が損なわれることがあるとしても、それは当該法人において受忍せざるを得ないものと解される。
  よって、本件各情報2を公開しないことにより保護される法人の利益は、「法人の…正当な利益」であるとは認められず、本件各情報2は、同号に該当しない。

(4) 本件各情報1の条例第7条第2号該当性について

  検査立会者の職及び氏名並びに受領者の氏名は、本件防火対象物を所有ないし管理する法人に関する情報であり、これを公にしても、当該法人の事業活動が損なわれるなど当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものとはいえず、条例第7条第2号に該当しない。
  一方、受領者の印影については、本件防火対象物の防火管理について相当の権限、責任を有する者の印影であり、当該法人の内部管理に属する事項に関する情報に該当すると認められ、本件文書の性質を考慮すると、不特定多数の者に広く知られる状態に置いているものとは認められない。よって、これを公にすると、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害する相当の蓋然性があると認められ、また、印影については、その性質から、本号ただし書に該当しないことは明らかである。
  したがって、本件各情報1のうち、受領者の印影については、条例第7条第2号に該当するが、検査立会者の職及び氏名並びに受領者の氏名については、同号に該当するとは認められない。

(5) 条例第7条第5号該当性について

  本件立入検査が、火災発生により重大な被害が生じるおそれのある消防法第17条に規定する防火対象物に対するものであり、消防法第44条第2号に規定する罰則によって間接的に強制力を有するものであるという性質を考慮すると、一般に、防火対象物を所有ないし管理する法人が立入検査を拒むなどした場合には、そのこと自体によって、当該法人の社会的信用が大きく失墜することは、容易に予想することができるであろうし、上記の罰則が適用される危険すら顧みず、あくまで立入検査を拒むものが現れるということは、直ちには想定し難いといえ、かかる例外的な事例の発生の可能性をもって、当該事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
  したがって、本件各情報2は、条例第7条第5号に該当しない。

(6) 情報の有意性について

  上記のとおり、本件各情報1及び2については、第7条各号に該当せず公開が妥当であることから、本件各情報1及び2を除いた部分の有意性について改めて検討する必要はなく、当該各情報が条例第7条各号に該当するとは認められないので、公開すべきである。

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