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答申第159号

2024年3月22日

ページ番号:21289

【要旨】

 「大阪市長が2000年10月26日に決定した、大阪市立○○小学校における体育授業中の事故に関連して、被害者を〇〇とする金〇円の損害賠償金を支払ったことに関する資料一切、及びその基礎となる資料のすべて」の情報公開請求があった。
  大阪市教育委員会(以下「実施機関」という。)が請求の対象となった各文書について行った部分公開決定について、請求者は当該決定を不服とし当該部分の公開を求めて異議申立てを行ったので、審査会に対して諮問があった。
  審査会は審議の結果、大阪市教育委員会が行った決定のうち、「事件番号」、「受付番号」並びに児童事故報告書中の「事故の分類」、「加害・被害の別」及び「学校のとった措置及び事後対策」については、公開すべきであるとの判断を示した。

【概要】

1 争点及びその決定の理由 

(1)争点:

実施機関が本件決定により非公開とした部分のうち、「事件番号(受付番号を含む。)、病名(事故の種別、事故の程度を含む。)、病院の住所・名称・代表者氏名・印影、示談斡旋申立の月・日(受付の月・日を含む。)、申立の趣旨、紛争の概要と申立を根拠づける理由(事故の経過・問題点)、申立人の学年、事故の概要(事故の分類、加害・被害の別を含む。)、学校のとった措置及び事後対策、関係者の意見、申立の趣旨に対する答弁、申立を根拠づける理由に対する認否・反論」についての条例第7条第1号又は第5号該当性。 

(2)理由:

個人に関する情報で、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報であり、また旧条例第6条第2号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため。また、公開した場合、今後詳細な事実を報告しにくくなる可能性があり、いずれも、今後の同種の事務事業の公正・円滑な執行に支障が生じると認められるため。 

2 情報公開審査会の判断 

1結論 

 実施機関が行った部分公開決定により非公開とされたもののうち、「事件番号」、「受付番号」並びに児童事故報告書中の「事故の分類」、「加害・被害の別」及び「学校のとった措置及び事後対策」については、公開すべきである。 

2理由要旨 

○条例第7条第1号該当性について

(1) 本件文書は、大阪弁護士会民事紛争処理センター(以下「民事紛争処理センター」という。)における示談斡旋手続において実施機関が作成、取得した文書等であって、本件事故について示談斡旋を申し立てた児童(以下「申立人」という。)及びその法定代理人(以下「申立人等」という。)に関する情報が記録されていることから、申立人等との関連性を有するものであり、既に本件決定において、申立人の氏名が公開されていることからすれば、本件決定により非公開とされた部分は、「当該情報に含まれる氏名…により特定の個人を識別することができる」情報であるとも解される。
 しかし、既に申立人の氏名、学校名、事故発生の年月日、場所、事故の概要の一部が公開されている本件において、申立人の氏名等の識別情報が含まれるとの理由のみで、本件事故に対する実施機関の対応をも含め、その余の部分について一律に非公開とすることは、市民に公文書の公開を求める具体的な権利を保障し、本市の説明責務を全うするとの本条例の基本的理念からすれば、必ずしも妥当ではない。
 よって、特定の個人を識別することができる情報を非公開とする条例第7条第1号の趣旨を踏まえ、プライバシーを中心とする個人の正当な権利利益が害されるおそれがあるかどうかとの観点から、各情報について、以下のとおり同号該当性を検討する。 

(2)  「事件番号」「受付番号」について 

 上記各情報は、民事紛争処理センターから送付された示談斡旋申立書等に記載されているところ、「事件番号」は申立の種別に応じて、事案に対し付与される番号であり、「受付番号」は申立人等から提出された書類に付与される番号であって、いずれも、専ら民事紛争処理センターにおける内部管理用の整理番号であることが認められ、その性質からすれば、上記各情報を公にすることにより、申立人等に関し、既に公開されている情報以上に新たな情報が識別されるとは認められず、当該申立人等のプライバシー等個人の正当な権利利益を害するおそれがあるとは認めがたい。
  よって、条例第7条第1号本文に該当するとは認められない。 

(3)  「病名」「病院の住所・名称・代表者氏名・印影」について 

 上記各情報は、診断書、和解契約書に記載されており、申立人にとっては通常他人に知られたくないものであると考えられるので、上記各情報を公にすることにより当該申立人のプライバシー等個人の正当な権利利益を害するおそれがあると認められる。
  よって、条例第7条第1号本文に該当し、かつその内容からみて、同号ただし書アからウまでのいずれにも該当しない。 

(4)  「受付の月・日」「示談斡旋申立の月・日」「申立の趣旨」「紛争の概要と申立を根拠づける理由(事故の経過・問題点)」について 

 上記各情報は、診断書、示談斡旋申立書に記載されており、申立人等が示談斡旋を申し立てた経過、同手続における申立人等の主張等に関するものであり、申立人等が円満に紛争の解決を図りたいとの趣旨から、本件事故に関して示談斡旋の手続を選択した事実も考慮すれば、申立人等にとっては通常他人に知られたくないものであると考えられ、また、これらの各情報が公にされれば、申立人等の平穏な生活に予期せぬ影響を及ぼすおそれが否定できないことから、当該申立人等のプライバシー等個人の正当な権利利益を害するおそれがあると認められる。
  よって、条例第7条第1号本文に該当し、かつその内容からみて、同号ただし書アからウまでのいずれにも該当しない。 

(5)  児童報告書に記載された「申立人の学年」等の各情報について 

ア  「申立人の学年」「事故の種別」「事故の程度」「事故の概要」について 

 「申立人の学年」については議案書に記載がなく、「事故の種別」「事故の程度」は、「病名」に類するものであり、申立人にとっては通常他人に知られたくないものであると認められる。また、「事故の概要」は、本件事故に対して実施機関が認識した事実を基に記載されており、これらの事実も含めて示談斡旋手続における争点とされたことからすれば、やはり、申立人等にとっては通常他人に知られたくないものであろうと解される。
  したがって、上記各情報は、公にすることにより、申立人等のプライバシー等個人の正当な権利利益を害するおそれがあると認められる。
  よって、条例第7条第1号本文に該当し、かつその内容からみて、同号ただし書アからウまでのいずれにも該当しない。 

イ  「事故の分類」「加害・被害の別」「学校のとった措置及び事後対策」について 

 児童事故報告書の記入要領は、『生活指導(資料)』(大阪市教育委員会発行)に示されており、本書は一般の閲覧に供されているところ、本件事故について、記入要領に則って児童事故報告書を作成した場合、「事故の分類」「加害・被害の別」の記載内容が、現に記載のとおりとなることは明らかであり、これらの各情報を公にすることにより、既に公開されている本件事故の概要以上に、新たな情報が識別されるとは認められない。また、「学校のとった措置及び事後対策」は、本件事故後の実施機関の対応に関するものであり、本件事故に関する連絡等の事実が時系列で簡潔に記載されていることが認められるところ、その内容からみて、これを公にすることによりプライバシー等個人の正当な権利利益を害するおそれがあるとは認めがたい。
  よって、上記各情報は、申立人との関連性を有するものではあるが、条例第7条第1号本文に該当するとは認められない。 

ウ  「関係者の意見」について 

 上記情報は、申立人の保護者である法定代理人の本件事故に対する個人的な意見、感想等であり、当該法定代理人の人格と密接に関連するものであるから、これを公にすることにより当該法定代理人のプライバシー等個人の正当な権利利益を害するおそれがある情報であると認められる。また、上記情報は、申立人にとっても心身の発育や人格形成の途上においてかかわった事故に関するものであり通常他人に知られたくないものであろうと解され、申立人のプライバシー等個人の正当な権利利益を害するおそれがあると認められる。
  よって、条例第7条第1号本文に該当し、かつその内容からみて、同号ただし書アからウまでのいずれにも該当しない。 

(6)  「申立の趣旨に対する答弁」「申立を根拠づける理由に対する認否・反論」について 

 上記各情報は、実施機関からの答弁書に記載されており、本件事故に係る示談斡旋手続における実施機関の対応に関するものではあるが、申立人等の行動、これに対する実施機関の評価、見解等が記載されており、仮に、上記各情報が公にされれば、「申立の趣旨」「紛争の概要と申立を根拠づける理由」が推測され、結果として申立人等の個人情報が明らかとなるおそれが否定できず、当該申立人等のプライバシー等個人の正当な権利利益を害するおそれがあると認められる。
  よって、条例第7条第5号該当性を判断するまでもなく、同条第1号本文に該当し、かつその内容から見て、同号ただし書アからウまでのいずれにも該当しない。

○条例第7条第5号該当性について 

(1) 実施機関は児童事故報告書中「学校のとった措置及び事後対策」を公開した場合、今後、関係者が詳細な事実を報告しにくくなる可能性があり、また、公開が前提となると、関係校長は第三者からの不当な干渉をおそれて、正確かつ詳細な報告を行わなくなり、結果として正確、詳細な事実確認が行い難くなるおそれがあると主張する。
  しかし、前出の事故報告書の記入要領によると、当該欄は「簡潔に順を追って箇条書きで記入すること」とされており、本件においても、記入要領に則って、本件事故に関する連絡等の事実が、時系列で極めて簡潔に記載されていることが認められ、本審査会が見分したところ、特に問題となる記述は認められない。したがって、これらの客観的な事実を公にするのみで、関係者から詳細な事実の報告を受けにくくなるとの可能性は考え難く、また、同記入要領によると「必ず事前・事後に学校がとった措置を記入すること」とされていることからすれば、関係校長が正確かつ詳細な報告を行わなくなるなどした結果、事実確認が行い難くなり、当該事務又は事業の適正な遂行に支障が生じる相当の蓋然性があるとまでは認めることができないので、児童事故報告書中「学校のとった措置及び事後対策」は、条例第7条第5号に該当しない。

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