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答申第151号

2024年3月22日

ページ番号:21300

【要旨】

 「大阪市立野中小学校において2000年度に卒業した児童全員の小学校児童指導要録中、「総合所見」欄の全て(その他の全ての項目を除く。また転校生の場合は転校元の学校の分を含む)」ほか1件の情報公開請求があった。
 大阪市教育委員会は、請求の対象となった各「総合所見」欄について全部を非公開とする決定を行ったが、個人を識別される情報が記載され、かつ、学習指導等教育事務の遂行に支障があるため非公開としたものである。
 請求者は、当該決定を不服とし当該部分の全部公開を求めて異議申立てを行ったので、審査会に対して諮問があった。
 審査会は審議の結果、大阪市教育委員会が行った非公開決定を取り消し、「総合所見」欄から個人を識別できる情報を除いた部分について公開すべきであるとの判断を示した。

【概要】

1 争点及びその決定の理由 

(1)争点:

 「大阪市立野中小学校において2000年度に卒業した児童全員の小学校児童指導要録及び大阪市立天満中学校3年生(平成12年度)全員の中学校生徒指導要録中、「総合所見」欄の全て(その他の全ての項目を除く。また転校生の場合は転校元の学校の分を含む)」ほか1件における条例第7条第1号及び第5号該当性 

(2)理由:

 「総合所見」欄に記載された情報については、野中小学校(平成12年度卒業生46名)及び天満中学校(平成12年度卒業生125名)という限られた範囲の児童又は生徒(以下「児童等」という。)の人物評価に関するものであるから、当該等本人や家族、友人そのほかの関係者が見ると、他の情報と照合することにより、本件各請求に係る特定の対象文書に記載された児童等を特定することは容易であり、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため。
また、当該情報について第三者に公開した場合、当該評価を行った各校の教諭と当該児童等・保護者との信頼関係を損なうとともに、教諭が心理的な圧力を感じ、今後記載の形骸化が生じるおそれがある。さらに、児童等の性格や行動など、計数的評価におきかえることのできない総合的な人物評価については、評価者である教諭の主観的判断が入らざるをえず、よい事項を記載することを原則とするとしても、当該児童等本人やその保護者の自己評価と異なる場合には、自尊心を傷つけられ、意欲や向上心を失い、あるいは教諭や学校に対して不信感を抱き、信頼関係を損なうおそれがあるため。 

2 審査会の判断 

1結論

 大阪市教育委員会(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定を取り消し、転校生である児童等及び特定の個人が識別できる情報を除き、公開すべきである。 

2理由要旨 

(1) 本件各文書のうち「総合所見」欄が含まれている様式2については、転校生とそれ以外の児童等に係るものとでは1人あたりの枚数が違うため、以下、転校生とそれ以外の児童等という分類に従って、「総合所見」欄の条例第7条第1号該当性について検討する。

(2) まず、転校生である児童等に係る「総合所見」欄についてであるが当審査会において見分したところ、在籍した学校ごとに別葉となっており、学年ごとの記載の有無により、当該児童等が何年生の時に転校してきたかが明らかに識別できる状態となっている。
 したがって、本件各文書のうち、転校してきた児童等に係る様式2の「総合所見」欄については、野中小学校(平成12年度卒業生46名)及び天満中学校(平成12年度卒業生125名)という限られた児童等に関するものであることからすれば、「総合所見」欄の記載内容を見るまでもなく、仮に当該児童等の近親者、地域住民等であれば保有している情報又は通常入手可能であると考えられる情報と照合することにより特定の児童等を識別できることは明らかであり、かつ第7条第1号ただし書アからウまでのいずれにも該当しないと認められる。

(3) 次に、本件各文書のうち転校生以外の児童等に関する様式2の「総合所見」欄(以下「本件「総合所見」欄」という。)に記載された情報について検討する。 

ア 本件「総合所見」欄が含まれる様式2は、各児童等についてそれぞれ1枚で、各学年次の欄のすべてに記載がある。これらの記載の中には、下記のような識別できる当該児童等に固有の個人情報(以下「下記の情報」という。)が含まれているものもあり、こういった情報が含まれている本件「総合所見」欄については、本件各文書が上記(2)で述べたとおり限られた児童等に関するものであることからすれば、仮に当該児童等の近親者、地域住民等であれば保有している情報又は通常入手可能であると考えられる情報と照合することにより特定の個人を識別することができるものと認められる。
 かつ、下記の情報が含まれている本件「総合所見」欄については、その性質上条例第7条第1号ただし書アからウまでのいずれにも該当しない。
 したがって、下記の情報が含まれている本件「総合所見」欄については、条例第7条第1号に該当すると認められる。

イ 次に、特定の個人が識別できる情報が含まれていない「総合所見」欄について、当該「総合所見」欄に含まれる情報そのもの又は他の情報との照合により特定の個人を識別することはできなくても、なお個人の権利利益を害するおそれがあるかどうかについて検討する。
 下記の情報が含まれていない本件「総合所見」欄について、本審査会において見分したところ、個人の成績等の優劣や能力の程度について批評するなどの記載は認められず、みだりに他人に知られたくない個人の機微にわたる情報が記載されているとは認められない。
 したがって、下記の情報が記載されていない本件「総合所見」欄については、条例第7条第1号に該当するとは認められない。 

3条例第7条第5号該当性について 

(1) 条例第7条第5号は、本市の機関等が行う事務又は事業の目的を達成し、公正、円滑な執行を確保するため、「本市の機関又は国等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は公開しないことができると規定している。

(2) 上記をふまえ、本件各文書の「総合所見」欄について検討すると、本件各文書は、児童等の学籍と指導の過程及びその結果を記載し、継続的な指導、教育を行うための基礎資料として用いられているものであるから、担当教員が「総合所見」欄に記載した個々の児童等の評価は、学習指導や進路指導等の教育事務に関する情報として、本市の機関が行う事務事業に関する情報に該当することは明らかである。
 そこで、本号に該当することを理由に本件各文書の「総合所見」欄について非公開とした実施機関の判断が妥当であるというためには、当該「総合所見」欄を公にすることにより、事務事業の公正、円滑な遂行に支障が生じる蓋然性があると認められなければならない。

(3) 実施機関は、本件各文書の「総合所見」欄に記載された児童等の評価を第三者に公開した場合、当該評価を行った各校と当該児童等・保護者との信頼関係を損なうとともに、教諭が心理的な圧力を感じ、今後ますます記載内容の形骸化が生じるおそれがあり、さらに児童等の性格や行動など、計数的評価におきかえることのできない総合的な人物評価については、評価者である教諭の主観的判断が入らざるをえず、よい事項を記載することを原則とするとしても、当該児童等本人やその保護者の自己評価と異なる場合には、自尊心を傷つけられ、意欲や向上心を失い、あるいは教諭や学校に対して不信感を抱き、信頼関係を損なうおそれがある旨主張する。

(4) しかしながら、上記のような支障については、個々の児童等に対して、「総合所見」欄に個別に記録されている人物評価について、個々の児童等が識別される場合についてのみ懸念されるため、本件各文書の「総合所見」欄については、特定の個人を識別することができる情報を除き、条例第7条第5号に該当すると認められない。 

4部分公開の可否について 

(1) 条例第8条第1項本文は、非公開情報が記録されている部分を「容易に区分して除くことができるときは、公開請求者に対し、当該部分を除いた部分につき公開しなければならない」と規定しているが、同項ただし書により、「当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない」としてただし書に該当する場合は、部分公開の義務を免除している。また、同条第2項は、公開請求に係る公文書に条例第7条第1号の情報で特定の個人を識別することができるものが記録されている場合において、「当該情報のうち、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する」と規定している。

(2) 本件各文書のうち下記の情報が含まれる「総合所見」欄については、特定の児童等を識別することができる下記の情報について、容易に区分して除くことができると考えられ、かつ下記の情報を除いた部分には、上記2(3)イで検討したとおり、公にすることによりなお個人の権利利益を害するおそれがあるとも認められない。さらに、分離後の部分については請求の趣旨にかなう有意の情報が記録されていると認められる。

(3) したがって、本件「総合所見」欄のうち個人を特定できる情報を除いた部分については、公開することが妥当であると認められる。

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