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答申第146号

2024年3月22日

ページ番号:21308

【要旨】 

「大阪市立○○小学校に関連して1999年12月17日、公務災害の認定申請が行われたことに関して、同校及び大阪市教育委員会等が保有する文書及びその基礎となる資料のすべて(申請者と市教委・学校との交渉・連絡関連文書及び出張関連文書を含む)」の情報公開請求があった。
  大阪市教育委員会は、請求の対象となる文書については、個人に関する情報で、特定の個人が識別され又は識別されうる情報が記載されていると認められるため非公開決定を行ったが、請求者は当該決定を不服とし、申請者、第三者の個人情報及び住所、電話番号、生年月日を除き、全部公開を求めて異議申立てを行ったので、審査会に対して諮問があった。
  審査会は審議の結果、大阪市教育委員会が行った非公開決定を取り消し、その一部につき公開すべきであるとの判断を示した。

【概要】

1 争点及びその決定の理由 

(1)争点:

 請求の対象となる文書についての条例第7条第1号を理由とした非公開決定の妥当性 

(2)理由:

 本件公文書については、個人に関する情報で、特定の個人が識別される可能性又は他の情報と照合することにより特定の個人が識別される可能性があると認められるため。 

2 審査会の判断 

1結論 

 大阪市教育委員会(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定を取消し、次に掲げる部分について公開すべきである。

・起案文書(標題のうち被災職員の所属及び職を除く)

・地方公務員災害補償基金大阪府支部長あて依頼文(依頼文のうち被災職員の所属、職、氏名を除く)  

2理由要旨 

(1) 本来、情報公開の原則からすると、何人も公開請求することができ、請求者が誰であるか、請求者がどんな情報を保有しているかを問わずに公開するべきであり、請求方法の如何にかかわらず、特定の文書については公開する範囲は同一となるべきものであるため、個人識別性の問題は、請求者を基準とするのではなく、一般人を基準とするべきものであると解される。
 しかし、本件については、学校名及び公務災害の認定申請日を特定したうえで請求されており、請求者が請求の際に学校名及び公務災害の認定申請日についての情報を既に保有しているか、あるいは、当該公文書の存在を前提とした決定通知により事後的に本件に関する情報を保有することが明らかであるので、その前提のもと公開請求の対象とされた情報について非公開情報該当性を判断することとなり、結果として、学校名及び公務災害の認定申請日を特定せずに請求された場合よりも、対象文書の公開範囲は狭くなることと考えられる。

(2)上記をふまえ、下記アからサまでの本件各文書に記載された情報について、条例第7条第1号該当性を検討する。

ア  起案文書 

 対象文書には、(1)起案年月日、(2)担当職員(課長、係長、係員)の印影、(3)文書主任の取扱印、(4)所属印の通数及び箇所、(5)簿冊名称、(6)保存期限及び文書分類コード、(7)標題(被災職員の所属及び職を含む。)、(8)起案文といった情報が記載されている。
  以下、上記(1)から(8)までの各情報について、当該情報そのもの又は他の情報との照合により被災職員を識別することができるか、また、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるかを検討する。
  まず、(7)の被災職員の職については、それ自体では直接的に個人を識別することはできないが、本件事件のあった学校の教職員や保護者などの関係者であれば、その情報自身により、又は上記の関係者や請求者がすでに保有している情報若しくは通常入手可能であると考えられる情報と照合することにより、被災職員を識別することができる情報であると認められ、かつ第7条第1号ただし書ア、イ、ウに該当しないことは明らかである。
  また、(7)の被災職員の所属についても、本件事案の特殊性に鑑みると、それ自体では直接的に個人を識別することはできないが、本件事件のあった学校の教職員や保護者などの関係者であれば、その情報自身により、又は上記の関係者や請求者がすでに保有している情報若しくは通常入手可能であると考えられる情報と照合することにより、被災職員を識別することができる情報であると認められ、かつ同号ただし書に該当しないことは明らかである。
  さらに、(1)から(6)まで、(7)のうち被災職員の所属及び職を除いた部分及び(8)については、当該情報そのもの又は他の情報との照合により被災職員を識別することができるとはいえず、また、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるともいえない情報であるため、本件文書からについては、条例第7条第1号に該当するとは認めがたい。

イ  地方公務員災害補償基金大阪府支部長あて依頼文 

 対象文書には、(1)文書番号、(2)送付年月日、(3)あて名、(4)送付者、(5)標題、(6)送付の依頼文(被災職員の所属、職、氏名を含む)といった情報が記載されている。
  以下、上記(1)から(6)までの各情報について、当該情報そのもの又は他の情報との照合により被災職員を識別することができるか、また、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるかを検討する。
  まず、(6)のうち被災職員の職及び所属については、前記アと同様「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別することができるもの」に該当することは明らかであり、被災職員を識別することができる情報であると認められ、かつ同号ただし書に該当しないことは明らかである。
  また、(1)から(5)まで及び(6)のうち被災職員の所属、職、氏名を除く情報については、当該情報そのもの又は他の情報との照合により被災職員を識別することはできず、また、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるとはいえない情報であるため、当該文書から上記(6)のうち被災職員の所属、職、氏名以外の情報については、条例第7条第1号に該当するとは認めがたい。

ウ  公務災害認定請求書 

 対象文書には、(1)被災職員に関する事項(ア)所属団体名、所属学校名、電話番号、(イ)共済組合員証・健康保険組合員証記号番号、(ウ)氏名、生年月日、年齢、性別、(エ)職名、常勤及び非常勤の別、(オ)災害発生の日時・場所、(カ)傷病名、(2)請求者に関する事項(ア)住所、氏名、印影、(イ)被災職員との続柄、(3)災害発生の状況・被災職員の当該災害に係る具体的かつ詳細な事実 (4)所属部局の長の証明(ア)所属学校の所在地・名称(イ)所属学校長の職・氏名・公印、(5)任命権者の意見・意見の内容、任命権者の職・氏名といった情報が記載されている。 
  以下、上記(1)から(5)までの各情報について、当該情報そのものまたは他の情報との照合により被災職員を識別することができるか、また、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるかを検討する。
  まず、(1)の(イ)及び(ウ)の性別を除く情報、(2)の(ア)については、条例第7条第1号本文に規定する「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別することができるもの」に該当することは明らかである。
  次に、(1)の(ア)、(ウ)の性別、(エ)、(オ)、(カ)、(2)の(イ)及び(4)の(ア)、(イ)について検討すると、(1)の(ア)のうち所属団体名、所属学校名については、すでに請求人が保有している情報であり、それ自身有意な情報ではないと認められる。
  さらに、(1)の(ウ)の性別、(エ)、(オ)、(カ)、(2)の(イ)について検討すると、これらの情報は、個人に関する情報であって、それ自体では直接的に個人を識別することはできないが、学校名が明らかになっているという前提で検討することが必要である以上、本件事件のあった学校の教職員や保護者などの関係者であれば、それ自体により、又は上記の関係者や請求者がすでに保有している情報若しくは通常入手可能であると考えられる情報と照合することにより、被災職員を識別することができる情報であると認められ、かつ同号ただし書に該当しないことは明らかである。
  なお、(3)については、当該情報全体が個人識別情報であり、かつ被災職員やその関係者等の個人情報が、全文脈を通して、詳細かつ相互に密接に関連付けられながら記載されているため、特定の個人を識別できる部分を分離した場合、分離後の部分は断片的な情報のみとなり、十分文意を把握することができず、有意な情報が残らないと認められ、かつ同号ただし書に該当しないことは明らかである。
  さらに、(5)については、特定の個人を識別することはできないが、公にすることによりなお個人の権利利益を害するおそれがあるものに該当する情報であると認められる。
  上記をふまえ、対象文書から上記の情報を除いた場合、有意の情報が記録されているとは認められないため、条例第8条第1項ただし書により、当該対象文書については非公開が妥当であると認められる。

エ  死体検案書 

 対象文書には、(1)死亡者の氏名、性別、生年月日、(2)死亡したとき、死亡したところ及びその種別、(3)死亡の原因、死因の種類、外因死の追加事項、(4)検案年月日、検案書発行年月日、検案者の氏名及び印影並びに所属、所属の住所・公印といった情報が記載されている。
  以下、上記(1)から(4)までの各情報について、当該情報そのものまたは他の情報との照合により被災職員を識別することができるか、また、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるかを検討する。
  まず、(1)(性別を除く)については、個人の戸籍的事項に関する情報であり、条例第7条第1号本文に規定する「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別されうるもの」に該当することは明らかであり、かつ同号ただし書に該当しないことは明らかである。
  次に、(1)のうち性別、(2)及び(3)については、これらの情報は、個人に関する情報であって、それ自体では直接的に個人を識別することはできないが、本件事件のあった学校の教職員や保護者などの関係者であれば、それ自体により、又は上記の関係者や請求者がすでに保有している情報若しくは通常入手可能であると考えられる情報と照合することにより、被災職員を識別することができる情報であると認められ、かつ同号ただし書に該当しないことは明らかである。
  また、(4)の検案年月日及び検案書発行年月日については、本件事件のあった学校の教職員や保護者などの関係者であれば、その情報自身により、又は上記の関係者や請求者がすでに保有している情報若しくは通常入手可能であると考えられる情報と照合することにより、被災職員を識別することができる情報であると認められ、かつ同号ただし書に該当しないことは明らかである。
  さらに、検案者の氏名及び印影並びに所属等の情報については、検案した医師の個人識別情報であることは明らかであり、かつ同号ただし書に該当しないことは明らかである。
  上記をふまえ、対象文書から上記の個人を識別することのできる情報を除いた場合、有意の情報が記録されているとは認められないため、条例第8条第1項ただし書により、当該対象文書については非公開が妥当であると認められる。

オ  事実証明書 

 対象文書には、(1)被災職員に関する事項(ア)所属、職、氏名、性別、(イ)災害発生の日時、(ウ)災害発生の場所、(2)現認した災害発生の状況・被災職員の当該災害に至る具体的かつ詳細な事実、(3)事実証明者の職・氏名・印影といった情報が記載されている。
  以下、上記(1)から(3)までの各情報について、当該情報そのものまたは他の情報との照合により被災職員を識別することができるか、また、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるかを検討する。
  まず、(1)の(ア)のうち氏名については、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別されうるもの」に該当することは明らかであり、かつ同号ただし書に該当しないことは明らかである。
  次に、(1)の(ア)のうち所属、職、性別、(イ)、(ウ)及び(3)についても、これらの情報は、個人に関する情報であり、それ自体では直接的に個人を識別することはできないが、本件事件のあった学校の教職員や保護者などの関係者であれば、それ自体により、又は上記の関係者や請求者がすでに保有している情報若しくは通常入手可能であると考えられる情報と照合することにより、被災職員を識別することができる情報であると認められ、かつ同号ただし書に該当しないことは明らかである。
  さらに、(2)については、当該情報全体が個人識別情報であり、被災職員やその関係者等の個人情報が、全文脈を通じて、詳細かつ相互に密接に関連づけられながら記載されているため、特定の個人を識別できる部分を分離した場合、分離後の部分は、断片的な情報のみとなり、十分文意を把握することができず、請求の趣旨にかなう有意な情報が残らないと認められるため、当該文書につき非公開が妥当であると認められ、かつ同号ただし書に該当しないことは明らかである。
  上記をふまえ、対象文書から上記の個人を識別することのできる情報を除いた場合、有意の情報が記録されているとは認められないため、条例第8条第1項ただし書により、当該対象文書については非公開が妥当であると認められる。

カ  出勤簿、キ 年休整理簿、ク 災害発生状況見取図(地図)、ケ 人事記録カード、コ 教職員結核健康診断個人票、サ 戸籍謄本

 上記アからオまでの各対象文書と同様に検討すると、カ及びキには被災職員の職名・氏名・印影・休暇の種類等の情報が記載されている。また、クには被災職員の災害発生場所が図示されているほか、ケには被災職員の本籍・現住所・学歴のほか採用後の昇給事由・賞罰等が、さらにコには被災職員の診断結果等が、サには被災職員を含めた家族の本籍、届出事項等が記載されており、これらの情報は個人の戸籍的事項や経歴等に関する個人情報であることが明らかであると認められる。
  これらの情報は、個人識別情報であるか、個人に関する情報で、特定の個人が識別され、又はそれ自体では直接的に個人を識別することはできないが、本件事件のあった学校の教職員や保護者などの関係者であれば、その情報自身により、又は上記の関係者や請求者がすでに保有している情報若しくは通常入手可能であると考えられる情報と照合することにより、被災職員を識別することができる情報であるか、又は、特定の個人を識別することはできないが、公にすることによりなお個人の権利利益を害するおそれがあるものに該当する情報であると認められる。
  よって、上記カからサまでの各文書は、条例第7条第1号本文に該当し、かつその性質上同号ただし書には該当しないと認められるため、非公開が妥当であると認められる。

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