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答申第143号

2024年3月22日

ページ番号:21311

【要旨】

  「大阪オリンピックマラソンコース紹介ビデオ制作に関する決裁文書一式、及び成果物(支出命令書を除く)」の情報公開請求があった。
  大阪市長は、請求の対象となった文書に添付された見積内訳明細書に記載されている積算内訳部分については、法人の販売戦略上の情報であると考えられ、これを公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるため、条例第10条第1項に基づき部分公開決定を行ったが、請求者は当該決定を不服として、見積内訳明細書における積算内訳部分の全部公開を求めて異議申立てを行ったので、審査会に対して諮問があった。
  審査会は審議の結果、大阪市長の行った決定のうち、非公開とした部分の一部を公開すべきであるとの判断を示した。

【概要】

1 争点及びその決定の理由 

(1)争点:

 ビデオ制作に関する決裁書類に添付されている見積内訳明細書に記載の積算内訳部分における各情報についての条例第7条第2号妥当性 

(2)理由:

 見積内訳明細書に記載されている積算内訳部分については、法人の販売戦略上の情報であると考えられ、これを公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるため。 

2 審査会の判断 

(1)結論 

 大阪市長(以下「実施機関」という。)が行った部分公開決定において非公開とした部分のうち、次に掲げる部分について公開すべきである。

 ・「内容」欄に記載された情報(編集方法の具体的な名称を除く。)

 ・「数量」欄に記載された情報のうち、「単位」欄の情報と合わせて「1・式」と表示される情報、「7.CG製作費」のうちCGの上映時間及び当該ビデオのタイトルの本数に関する情報及び「11.プリントその他」のうちビデオの納品本数に関する情報

 ・「単位」欄に記載されたすべての情報

実施機関のその余の判断は妥当である。 

(2)理由要旨 

ア 当該ビデオは、IAAFやIOC評価委員会といったオリンピック競技に関連した国際的な団体に対して、大阪オリンピックの優れたマラソンコースについてアピールするために制作されたものである。その制作に当たっては、国際的な団体が重要視するポイントを的確に把握し、そのうえで最小のコストで最大の効果を引き出すことのできる人員及び機材の組み合わせなどのノウハウが必要となるところであり、当該広告代理店は、上記の国際的な団体との豊富な接触の経験に基づき、独自のノウハウを活用して当該ビデオを作成したものであると認められる。

イ したがって、この人員及び機材の組み合わせなどの情報が明らかとなり、独自のノウハウが他同業者の知りうるところとなった場合には、今後発生しうる類似の契約において、当該広告代理店の競争上の地位その他の正当な利益を害する結果を招くことになると考えられるので、こうしたノウハウは少なくとも法人等の事業者が保有する生産技術上若しくは販売上の情報に該当し、公開することにより当該法人等の事業活動が損なわれるおそれがあると判断される場合は、条例第7条第2号に該当すると判断することができるものである。

ウ 上記をふまえ、当該見積内訳明細書に記載された各情報の種類ごとに、条例第7条本文第2号該当性について検討する。

(ア) 「項目」欄に記載された情報のうち、5.機材費及び6.ロケ費の注釈の部分(※印)には、制作日程に関する情報が記載されており、どの行程に何日使うかは、ビデオ制作に関するノウハウであって、公開により当該法人の事業活動が損なわれるおそれがあるものと判断される。

(イ) 「内容」欄に記載された情報については、「8.編集費」に記載された一つ目及び二つ目の情報(編集方法の具体的な名称)を除いて、当該法人のノウハウといえる要素は認められないため、公開により当該法人の事業活動が損なわれるおそれがあるとは認めがたい。
 なお、「8.編集費」の一つ目及び二つ目の情報は、当該ビデオの編集方法についての情報が記載されており、編集に当たりどういった技術を使った編集方法を用いているかは、当該法人のビデオ制作上のノウハウであって、公開により当該法人の事業活動が損なわれるおそれがあるものと判断される。

(ウ) 「数量」欄に記載された情報については、「単位」欄に記載された情報と合わせて「1・式」と表示されている情報については、当該法人の技術上のノウハウは表現されているとは認められないと判断され、公開により、当該法人の事業活動が損なわれるおそれがあるとは認めがたい。
 以下、「1・式」以外の表示がされている「数量」欄の各情報について検討する。 

A 「3.技術人件費」に記載された情報については、全体の構成において、どのくらいの人数のスタッフが制作に投入されているかが公開されると、当該法人の制作技術上のノウハウが流出するため 

B 「4.ロケハン費」の一つ目の情報、「5.機材費」の三つ目の情報、「6.ロケ費」の一つ目の情報については、上記Aと同様、当該ビデオの制作についてどのぐらいの機材等を投入しているかを公開すると、技術面でのノウハウが明らかになると認められるため 

C 「8.編集費」の二つ目の情報及び三つ目の情報並びに「9.録音費」の一つ目の情報は、これを公開すると当該ビデオの制作についてどの程度の時間をかけて編集作業を行ったか、またどの程度の時間をかけて録音を行ったかが明白となり、当該法人の技術面のノウハウが流出するおそれがあると認められるため 

D 「10.テープ費」については、当該ビデオの制作の際に、収録や編集にどの程度の量のテープを使用しているかが明らかになることから、これを公開することにより当該法人のビデオ制作上のノウハウが明らかになると認められるため 

E 「11.プリントその他」の二つ目の情報については、打合せ等に要した人数が記載されており、この情報を明らかにすると、当該ビデオの制作に当たりどれだけの調整や打合せなどが必要になったかが推測されることとなり、これを公開すると、当該法人の営業上のノウハウが明らかとなると認められるため 

 上記AからEまでの各情報については、各々の理由により、公開することによって当該法人の事業活動が損なわれるおそれがあるものと判断される。
 なお、「7.CG制作費」の一つ目の情報については、コンピューターグラフィックの上映時間についての情報が記載されており、その長さは当該ビデオを視聴すれば明らかになるものである。また、「7.CG制作費」の二つ目の情報については、当該ビデオのタイトルの本数が記載されており、その本数については、制作を発注したビデオが一種類であることを考えれば自明である。さらに、「11.プリントその他」の三つ目の項目の数量についてもビデオの納品本数に関する情報は仕様書に記載されていることから、上記三つの情報は何人でも知り得ることのできる情報であると認められるため、公開により当該法人の事業活動が損なわれるおそれはないと判断される。

(エ) 「単位」欄に記載された情報については、「名」や「台」など、ごく一般的な「単位」が記載されていることから、そもそもこの欄には当該法人のノウハウは存在しえないと考えられるため、公開により、当該法人の事業活動が損なわれるおそれがあるとは認めがたい。

(オ) 「単価」欄に記載された情報については、業界内で各社独自の考え方や工夫、積算根拠等に基づいて設定された固有の情報であり、これをいかに設定するかは各法人の裁量に属し、当該ビデオの制作において、どのレベルの人材を利用したか、どの程度の機材を利用したか、どの程度の値段の物品を利用したかなどについては、当該法人の営業上のノウハウであると認められるため、公開により、当該法人等の事業者の事業活動が損なわれるおそれがあるものと判断される。

(カ) 「日数」欄に記載された情報については、上記(オ)の「単価」欄と同様、当該法人がビデオの制作に当たり、作業においてどの程度の日数をかけているのかが明白になると、公開する「内容」欄の各情報との照合により具体的な制作過程の推測が可能となることから、当該法人の技術上のノウハウであると認められるので、公開により、当該法人の事業活動が損なわれるおそれがあるものと判断される。

(キ) 「見積金額」欄に記載された情報については、上記(オ)の「単価」欄と同様、当該法人がビデオの制作上、どういった内容にどれだけの価格を設定しているかの詳細が明らかとなることから、当該法人の営業上のノウハウであると認められるので、公開により、当該法人の事業活動が損なわれるおそれがあるものと判断される。

(ク) 「総計」の下に記載された「注1」の情報については、当該法人の取引先情報が記載されており、当該ビデオの制作においてどういった法人等とどのような取り決めを行ったかは、当該法人の営業上のノウハウであると認められるため、これを公開すると、当該法人の事業活動を損ねるおそれがあるものと判断される。

エ 以上の理由により、見積内訳明細書の「項目」欄の「5.機材費」及び「6.ロケ費」の注釈(※印)、「内容」欄の「8.編集費」の一つ目及び二つ目に記載された編集方法の具体的な名称、「数量」欄に記載された情報(「単位」欄とあわせて「1・式」と記載されている情報及び「7.CG製作費」の一つ目及び二つ目の情報並びに「11.プリントその他」の三つ目の情報を除く。)、「単価」欄、「日数」欄並びに「見積金額」欄に記載された情報及び「総計」の下に記載された「注1」の情報については、当該法人の保有する生産技術上又は販売上の情報であって、公開により、当該法人の事業活動が損なわれるおそれがあると認められるため、条例第7条第2号本文に該当すると認められる。
 なお、当該情報については、その性質上同号ただし書に該当しないことは明らかである。したがって、これらの情報については条例第7条第2号に該当すると認められる。

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