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答申書(平成28年度答申第2号)

2023年2月17日

ページ番号:386030

諮問番号:平成28年度諮問第2号

答申番号:平成28年度答申第2号

 

答申書

 

第1 審査会の結論  

 本件審査請求は理由があるので、本件処分はその全部が取り消されるべきである。

 

第2 審査請求に至る経過

1~4 省略

5 処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)は、平成28年4月、審査請求人に対し、平成28年度固定資産税として○○○円、平成28年度都市計画税として○○○円をそれぞれ賦課する旨の決定処分(以下「本件処分」という。)を行った。

6 審査請求人は、平成28年4月27日、大阪市長に対し、本件処分の取消しを求めて審査請求をした。

 

第3 審査関係人の主張の要旨

1  処分庁の主張

(1) 非課税事由該当性について

ア 法令の定め

 地方税法(以下「法」という。)は、保護施設及び障害者支援施設の用に供する固定資産(以下「本件非課税事由」という。)に対しては、固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)を課することができないと定めている(法第348条第2項柱書本文、同条第10号及び第10号の6並びに第702条の2第2項)。

イ 保護施設について

 生活保護法第41条第2項は、「社会福祉法人(中略)は、保護施設を設置しようとするときは、あらかじめ(中略)申請書を都道府県知事に提出して、その認可を受けなければならない。」と定め、同条第5項は、「第2項の認定を受けた社会福祉法人(中略)は、同項第1号又は第3号から第8号までに掲げる事項を変更しようとするときは、あらかじめ、都道府県知事の認可を受けなければならない。」と定めている。

 平成28年1月1日現在、上記の認可がされていないことは審査請求人も認めているところであり、審査請求人から提出された「生活保護法に基づく救護施設○○○の変更認可について」において、変更年月日が平成28年3月○日とされていることからも、平成28年1月1日現在、保護施設の用に供しているということはできない。

ウ 障害者支援施設について

 障害者総合支援法第46条第3項は、「指定障害者支援施設の設置者は、設置者の住所その他の厚生労働省令で定める事項に変更があったときは、厚生労働省令で定めるところにより、10日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。」と定めている。

 平成28年1月1日現在、上記の届出がされていないことは審査請求人も認めているところであり、審査請求人から提出された「指定障害者支援施設変更届」において、障害者支援施設の移転は平成28年3月○日とされていることから、平成28年1月1日現在、障害者支援施設の用に供しているということはできない。

(2) 非課税事由該当性に関する処分庁職員の説明について

ア 本件家屋竣工前、○○○市税事務所職員(以下「処分庁職員」という。)は、審査請求人より「保護施設及び障害者支援施設の用に供する家屋を建築する。非課税になると思うがどうか。」と電話で照会を受け、「保護施設及び障害者支援施設の用に供されている建物であれば非課税となる。」と回答した。竣工日を聴取したところ、平成27年10月とのことであったため、「非課税適用の可否については実地調査を行ったうえで判断することとなる。」ことも併せて回答した。

イ 平成28年1月19日、処分庁職員が非課税適用申告書を審査請求人に手渡した際、施設の開設が平成28年3月からであるとの申出を受けた。当該申出を受け、同年1月20日、処分庁職員において外部から状況を確認したところ、本件家屋のまわりに囲障がある状態であり、保護施設及び障害者支援施設の用に供されていないことを確認した。

ウ 同年3月8日、実地調査時において、処分庁職員は、審査請求人に対し、保護施設及び障害者支援施設の開設は、同年3月であり、同年1月20日の状況からも賦課期日に保護施設及び障害者支援施設の用に供されておらず非課税要件に該当するものではないため、非課税の適用はできない旨を説明した。

エ この説明に対して、処分庁職員は、審査請求人から、「平成27年中より職員の常駐や移転予定者に施設見学を行っており賦課期日には実質的に保護施設及び障害者支援施設の用に供している。」との申出を受けた。そこで、処分庁において非課税適用の可否について再検討を行ったが、職員の常駐や施設見学では保護施設及び障害者支援施設の用に供しているとはいえず、前記(1)のとおり、保護施設の変更認可日が平成28年2月○日、障害者支援施設の変更届出日が平成28年2月○日であることからも、賦課期日において非課税要件に該当するものではないと判断し、処分庁職員は、平成28年3月18日、審査請求人に再検討の結果としてその旨を伝えたところである。

(3) 信義則違反について

 審査請求人は、「事前の説明を変更して、非課税措置に該当しないと主張するのは信義則に反する」と主張するが、審査請求人からの申出内容や実地調査等を踏まえ、非課税の適用ができない旨を審査請求人に対し説明を行ってきており、本件処分を行ったことは信義則に反するものではない。

2  審査請求人の主張

(1) 非課税事由該当性について

ア 法第348条第2項第10号から第10号の6までに定める固定資産税の非課税措置は、社会福祉法人が営利を目的とせず、地域・社会の福祉を担い公益に資することを目的としている。

イ その趣旨からすれば、賦課期日において未だ施設の認可が下りていないが、以下の理由により、本件土地及び本件家屋は、救護施設及び障害者支援施設の用に供していたと評価されるべきである。

① 客観的に見て、賦課期日の直近に、救護施設及び障害者支援施設として使用されることが明らかなものである。

② 大阪市民間社会福祉施設等整備費補助金の交付決定を受け、平成27年12月○日、大阪市長(大阪市福祉局)による完成検査を受け、同月○日に承認された。

③ 賦課期日(平成28年1月1日)には、既に平成28年3月の救護施設及び障害者支援施設の開所に向けて準備作業を行っており、平成27年12月から職員を常駐させるとともに、施設管理委託契約を締結し、夜間においても施設管理を行い、本件家屋に移転する居住者の施設見学等も行なっていた。

ウ 法の目的及び趣旨を把握し、文言にとらわれることなく合理的に解釈すれば、実質的に社会福祉施設として利用に供していたものというべきである。

(2) 非課税事由該当性に関する処分庁職員の説明について

ア 処分庁は、弁明書において、「非課税措置の適用について審査請求人から相談を受けていた」ことを認めたうえで、「賦課期日現在、本件家屋が法第348条第2項第10号及び第10号の6に規定する施設の用に供されていることを前提に非課税適用があるという趣旨で説明していたところです。」と主張している。

 しかし、処分庁職員は、相談の際、審査請求人に対し、上記のような「前提」を告げたことはない。

イ 処分庁は、弁明書(第2回)において、審査請求人から竣工日を「平成27年10月」である旨聴取したと主張するが、審査請求人がそのような回答をすることはあり得ない。

 本件家屋の竣工日は「平成27年11月○日」である。審査請求人は、平成27年10月、処分庁に電話をし、本件家屋の竣工日が平成27年11月○日であることを説明し、非課税適用申請の方法等について確認したのである。これに対して、処分庁職員から「非課税となる」ことを前提に、建築図面等の調査や非課税適用申告書等の交付がなされたのである。

ウ 処分庁は、「非課税適用の可否については実地調査を行ったうえで判断することになる。」と説明したと主張するが、審査請求人は、平成28年3月までこのような説明を一切受けていない。

エ 処分庁は、「本件家屋の現況確認に翌1月20日に外部から状況を確認したところ、本件家屋のまわりに囲障がある状態であり、保護施設及び障害者支援施設の用に供されていないことを確認しました。」と主張するが、審査請求人は、そのような問い合わせを受けておらず、非課税の適用が無理であるとの説明も受けていなかった。審査請求人とすれば、なぜ平成28年3月8日になって初めて非課税要件に該当しないと言い出したのか、まったく不明としか言い様がない。処分庁が、「審査請求人からの申出内容や実地調査等を踏まえ、非課税適用できない旨を審査請求人に対して説明を行ってきており」というのは事実に反している。

(3) 信義則違反について

ア 審査請求人にとって非課税措置を受けられるか否かは極めて重要な事柄であって、それ故にこそ事前に○○○市税事務所に相談に行っていたのである。○○○市税事務所としては、相談を受けた以上は、非課税措置が受けられるか否か、非課税措置を受けるためにはどうすべきかにつき、審査請求人に明確に説明をすべき義務があったと言わなければならない。

イ 審査請求人は、○○○市税事務所とも相談したうえで、問題なく非課税の扱いとなる教示を受け、さらに、その教示を前提として、救護施設及び障害者支援施設の用に供することと密接に関係する職員の常駐等を行い、賦課期日の前後を通じて救護施設及び障害者支援施設としてより便宜に使用できるように作業をしていたものである。

ウ 事前の説明を変更して、非課税措置に該当しないと主張して行った本件処分は信義則に反すると言わなければならない。

 

第4 審理員意見書の要旨

1  結論

 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきものと判断する。

2 非課税規定を適用すべきという主張について

 固定資産税等の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とされ(法第359条及び第702条の6)、平成28年度固定資産税等の賦課期日は平成28年1月1日となる。

 賦課期日は、固定資産税等の課税要件を確定させる日とされ、非課税の適用の判定も賦課期日において行われる。

 したがって、平成28年1月1日時点において、本件土地及び本件家屋が法第348条第2項第10号に規定する保護施設及び同項第10号の6に規定する障害者支援施設の用に供されているか、次のとおり判断する。

(1) 処分庁から提出された証拠書類等によると、救護施設については、平成28年2月○日付け大福祉第○○号「生活保護法に基づく救護施設○○○の変更認可について」により生活保護法第41条第5項の規定による変更認可が行われ、変更内容が「救護施設○○○の老朽化に伴う移転建替えによる、施設名称並びに建物等の規模及び構造」、変更年月日が「平成28年3月○日」とされ、本件家屋に移転したことが確認できる。障害者支援施設については、平成28年2月○日受付「指定障害者支援施設変更届」により障害者総合支援法第46条第3項の規定による変更届出が行われ、変更があった事項が「事業所(施設)の名称」及び「事業所(施設)の所在地」、変更年月日が「平成28年3月○日」とされ、本件家屋に移転したことが確認できる。

 救護施設の変更認可及び障害者支援施設の変更届出が賦課期日後に行われ、変更がいずれの施設においても平成28年3月であることから、賦課期日において、本件土地及び本件家屋が救護施設及び障害者支援施設の用に供しているとは認められない。

(2) 審査請求人は、大阪市民間社会福祉施設等整備費補助金の交付等及び平成28年3月の開所に向けて平成27年12月から、職員を常駐させるとともに、施設管理委託契約を締結し、夜間においても施設管理を行い、本件家屋に移転する居住者の施設見学等も行なっていたことを理由に、実質的に救護施設及び障害者支援施設の用に供していたとして非課税措置の適用を受けるべきである旨を主張している。

 しかしながら、大阪市民間社会福祉施設等整備費補助金の交付等は固定資産税等の非課税の適用において考慮すべき事項ではなく、施設管理及び施設見学等は救護施設及び障害者支援施設を開設するための準備行為である。これらの事情をもって、本件土地及び本件家屋が救護施設及び障害者支援施設の用に供しているとは認められない。

(3) 審査請求人は、大阪市は、非課税となる福祉施設等の建築中の敷地に係る減免措置を一方的に廃止しており、一方において、保護施設及び障害者支援施設の建設に補助金を出しながら、他方において、「賦課期日において救護施設及び障害者視線施設の用に供されていないため」という理由だけで、賦課期日の翌日あるいは直近の期日において「救護施設及び障害者支援施設の用に供された」としてもまったくの減免もなく、年度分全額の賦課をすることは課税の効率性を重視する余り、課税の公平性を侵害するものであって違法である旨を主張している。

  しかしながら、固定資産税等は法令に規定された要件に基づいて課するものであり、本件処分は、課税の公平性を侵害するものではなく、審査請求人の主張は採用できない。

(4) 審査請求人は、昭和45年1月26日付け大阪高等裁判所判決を引用し、経済的実質によって課税すべきである旨を主張している。

 しかしながら、同判決は法人税の算出について判示されたものであり、固定資産税等の非課税の判定において、同判決を適用することは適当でなく、審査請求人の主張は採用することはできない。

 以上により、賦課期日において救護施設及び障害者支援施設の用に供されているとは認められず、本件土地及び本件家屋に非課税規定を適用することはできない。

3 本件処分に至るまでの処分庁の説明について

 審査請求書、反論書、弁明書によると、本件家屋の竣工前から本件処分に至るまでの処分庁の説明について、審査請求人及び処分庁の主張において、くい違いが認められる。

 税務職員は、納税者に対して誤解を招かない説明が求められるところであるが、上記2のとおり本件家屋は、賦課期日において救護施設及び障害者支援施設の用に供しているとは認められず、仮に、処分庁から審査請求人に対して、審査請求人が主張するとおりの説明が行われていたとしても、固定資産税等は法令に規定された要件に基づいて課するもので、本件処分は適正に行われている。

4 上記以外の違法性又は不当性についての検討

 他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。

 

第5  調査審議の経過

 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。

平成28年10月25日 諮問書の受理

平成28年11月10日 審議

平成28年11月18日 審査請求人から主張書面の収受

平成28年11月30日 調査及び審議(大阪市福祉局の陳述)

平成28年12月6日 審査庁から主張書面の収受

平成28年12月8日 調査及び審議(処分庁の陳述、審査庁の口頭説明)

平成28年12月22日 調査及び審議(制度所管担当の陳述)

平成29年1月12日 審議

 

第6  審査会の判断

1  関係法令の定め

(1) 固定資産税等の賦課期日について

  固定資産税等の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする(法第359条及び第702条の6)。

(2) 固定資産税等の非課税措置(本件非課税事由)について

ア 固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない(法第348条第2項柱書本文)。

① 社会福祉法人が生活保護法第38条第1項に規定する保護施設の用に供する固定資産で政令で定めるものに対しては、固定資産税を課することができない(法第348条第2項第10号)。同号において政令で定める固定資産とは、生活保護法第38条第2項に規定する救護施設等をいう(地方税法施行令第49条の11)。

② 社会福祉法人が障害者総合支援法第5条第11項に規定する障害者支援施設の用に供する固定資産(法第348条第2項第10号の6)。

イ 市町村は、法第348条第2項の規定により固定資産税を課することができない土地又は家屋に対しては、都市計画税を課することができない(法第702条の2第2項)。

(3) 救護施設について

ア 救護施設は、生活保護法に定める保護施設の一つである(生活保護法第38条第1項第1号)。

イ 都道府県は、保護施設の設備及び運営について、条例で基準を定めなければならない(生活保護法第39条第1項)。

ウ 社会福祉法人は、保護施設を設置しようとするときは、あらかじめ、保護施設の名称及び種類等の事項を記載した申請書を都道府県知事に提出して、その認可を受けなければならない(生活保護法第41条第2項)。

エ 都道府県知事は、認可の申請があった場合に、その施設がイの基準のほか、設置しようとする者の経済的基礎が確実であること、その保護施設の主として利用される地域における要保護者の分布状況からみて、当該保護施設の設置が必要であること、保護の実務に当たる幹部職員が厚生労働大臣の定める資格を有するものであることの基準に適合するものであるときは、これを認可しなければならない(生活保護法第41条第3項)。

オ ウの認可を受けた社会福祉法人は、保護施設の名称及び種類等の事項を変更しようとするときは、あらかじめ、都道府県知事の認可(以下「変更認可」という。)を受けなければならない(生活保護法第41条第5項)。

カ イからオまでの規定は、地方自治法第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)に関する規定として指定都市に適用があるものとする(生活保護法第84条の2第1項)。

(4) 障害者支援施設について

ア 障害者支援施設の指定は、障害者支援施設の設置者の申請により、施設障害福祉サービスの種類等を定めて、行う(障害者総合支援法第38条第1項)。

イ 障害者支援施設の設置者は、施設の名称及び設置の場所等に変更があったときは、10日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない(障害者総合支援法第46条第3項、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則第34条の26)。

ウ 指定障害者支援施設等の設置者は、都道府県の条例で定める基準に従い、施設障害福祉サービスに従事する従業者を有し、施設障害福祉サービスを提供しなければならない(障害者総合支援法第44条第1項及び第2項)。

エ イ及びウの規定は、指定都市に関する規定として指定都市に適用があるものとする(障害者支援法第106条)。

2 争点

(1) 本件土地及び本件家屋は、本件非課税事由(法第348条第2項第10号に規定する保護施設及び同項第10号の6に規定する障害者支援施設の用に供する固定資産)に該当するか否か(争点1)

(2) 非課税事由該当性に関する処分庁職員がした説明の内容(争点2)

(3) 本件処分は信義則に反するか(争点3)

3 争点1について

(1) 本件非課税事由について

ア 法は、社会福祉法人が生活保護法第38条第1項に規定する保護施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの(法第348条2項第10号)、及び、社会福祉法人が障害者総合支援法第5条第11項に規定する障害者支援施設の用に供する固定資産(同項第10号の6)に対しては、固定資産税等を課することができないと定めている(法第348条第2項柱書本文、第702条の2第2項)。

イ 本件非課税事由は、法第348条第1項が人的非課税を定めるのに対し、用途非課税を定めたものであり、固定資産の性格や用途に着目して、社会福祉法人が行う事業そのものに公益的性格が強いために、その用途に供されている固定資産について、政策的見地から固定資産税等を非課税とし、当該固定資産に対する市町村の課税権を制限したものと解される。

ウ このような法の規定及び趣旨に照らすと、本件非課税事由に該当する固定資産といえるためには、賦課期日現在における固定資産の現況において、保護施設又は障害者支援施設の用に供する実態を有するものであることが必要であると解される。

エ ところで、本件非課税事由に関し、処分庁は、当審査会による調査に対し、固定資産税については、大量反復して事務を行うことから、公正性・公平性が求められるため、客観的な基準によるべきものであり、行政官庁による許認可等なくして使用することが許されない固定資産については、当該許認可等(本件保護施設にあっては大阪市長の変更認可、本件障害者支援施設にあっては変更届の受理)がなされた時点以降を非課税の適用対象とし得る時点と捉えていると陳述している。

オ しかしながら、法は、本件非課税事由において、保護施設又は障害者支援施設の用に供する固定資産につき、許認可等を非課税要件としておらず、また、「現に」「直接」等の文言も付していない。また、制度を所管する大阪市財政局税務部課税課は、当審査会による調査に対し、許認可等を非課税要件とする取扱いについては、処分庁内部において明文の審査基準を設けているものではなく、対外的にも公表していないと陳述している。

カ 以上より、法の規定及び趣旨に照らすと、本件非課税事由に該当するか否かを判断するにあたって、許認可等を要件とすることは相当でなく、賦課期日現在の固定資産の現況において、保護施設及び障害者支援施設の用に供する実態を有するか否かに則して判断すべきである。許認可等の有無は考慮事由の一つにとどまり、これに尽きるものではない。

(2) 賦課期日(平成28年1月1日)現在における固定資産の現況

ア そこで、賦課期日(平成28年1月1日)現在における固定資産の現況を検討すると、以下のとおりである。

① 本件家屋は、保護施設と障害者支援施設を併設することを予定した合築施設である。

② 審査請求人は、平成26年7月及び平成27年2月、大阪市民間社会福祉施設整備費補助金の交付決定を受け、補助金交付対象施設として、平成27年11月○日、本件家屋を新築し、同年12月○日、新築を登記原因とする表示登記及び所有権保存登記を完了した。

③ 大阪市長(大阪市福祉局)は、平成27年12月○日、上記②の登記に係る登録免許税について、法務局による非課税措置の適用を受けるための疎明資料に供するため、審査請求人に対し、本件家屋が社会福祉事業の用に供する不動産の取得である旨の証明書を発行した。

④ 大阪市長(大阪市福祉局)は、平成27年12月○日、本件家屋につき、大阪市民間福祉施設整備費補助要綱に基づく完成検査を行い、保護施設及び障害者支援施設としての基準に適合することを確認した。

⑤ 大阪市長(大阪市福祉局)は、当審査会の調査に対し、本件家屋において開設する施設が保護施設及び障害者支援施設としての最低基準に適合するよう、事業計画の段階から家屋完成に至るまでの間、審査請求人に対して事前指導を行っており、本件家屋が前記④の完成検査に合格した平成27年12月○日以降、保護施設及び障害者支援施設としての変更認可等が可能な状態にあった旨、及び、本件家屋は他の用途に転用することが極めて困難な状況にあった旨を陳述している。

イ 以上によれば、本件土地及び本件家屋は、賦課期日(平成28年1月1日)現在の現況において、特段の事情のない限り、近い将来、保護施設及び障害者支援施設としての目的に沿って使用されることが客観的に見て確実といえる実態を有していたということができる。

(3)  このような現況に鑑みれば、本件土地及び本件家屋は、法第348条第2項第10号又は同項第10号の6に定める保護施設及び障害者支援施設の用に供する固定資産に該当するというべきである。

4 審査請求に係る審理手続について

 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。

5 結論

 よって、本件審査請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由があり、本件処分はその全部を取り消されるべきものであるから、当審査会は、第1記載のとおり答申する。

 

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)

     大阪市行政不服審査会税務第2部会

   委員(部会長)岸本佳浩、委員 鹿田良美、委員 瀬川昇

 

別紙物件目録 省略

答申書(平成28年度答申第2号)

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