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答申書(平成29年度答申第1号)

2023年2月17日

ページ番号:398437

諮問番号:平成28年度諮問第8号
答申番号:平成29年度答申第1号

答申書

第1  審査会の結論  
本件審査請求は、棄却されるべきである。

第2  審査請求に至る経過
1 審査請求人の関与税理士(以下「関与税理士」という。)は、平成27年7月1日から平成28年6月30日までの事業年度分の法人市民税に係る申告書(以下「確定申告書」という。)を平成28年8月25日に提出した。
2 処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)は、法人市民税均等割額の税率判定に誤りがあるとして審査請求人の関与税理士に問い合わせを行った。
3 関与税理士より、平成28年8月29日付けで、審査請求人の平成28年6月30日現在の貸借対照表の写し、平成27年7月1日から平成28年6月30日までの株主資本等変動計算書の写し及び平成27年7月1日から平成28年6月30日までの事業年度に係る利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書の写し(以下「添付書類」という。)が処分庁あてに提出された。
4 処分庁は、関与税理士より提出された上記資料を確認し、平成28年9月9日付けで法人市民税更正処分(以下「本件処分」という。)を行った。
5 審査請求人は、本件処分の取消しを求めて平成28年10月31日に大阪市長あて審査請求をした。

第3  審査関係人の主張の要旨
1  審査請求人の主張
(1) 審査請求人は、申告期限の延長の特例申請を提出しているので、申告期限は平成28年9月30日である。処分庁から同年9月9日付けで法人市民税更正通知書(以下「更正通知書」という。)が送付されてきたのは時期尚早である。
(2) 処分庁は、審査請求人の資本準備金について、単に貸借対照表の記載だけで判断しており、資本準備金の意味を全く理解していない。資本金○○○○万円の会社が○億円のプレミアをつけて株式を発行することができるかは、常識で判断しても不可能であることが明らかである。
(3) 戦前より所有している本社の土地に係る評価益について、正しくは損益計算書の特別利益に計上しその他の利益剰余金に計上すべきところ、あまりにも目立ちすぎると思い、資本準備金が無難と判断し企業会計上正しくない処理をした。審査請求人の資本準備金は○○○万円強しかない。
(4) 修正申告書は、審査請求人が誤りがあると判断した場合に提出するものであり、審査請求人は正当な申告書を提出したと判断したので修正申告はしなかった。
(5) よって、本件処分は取り消されるべきである。
2  処分庁の主張
(1) 地方税法(以下「法」という。)第321条の8第1項は、法人税法第74条第1項の規定によって法人税に係る申告書を提出する義務がある法人は、当該申告書の提出期限までに、法人の市民税の申告書を提出しなければならないと規定し、申告期限前の提出を妨げていない。
 また、法第321条の11第1項は、市町村長は、法第321条の8の規定による申告書の提出があった場合において、当該申告に係る均等割額がその調査したところと異なることを発見したときは、これを更正するものと規定していることから、本件処分の時期は適法である。
(2) 本件処分については、関与税理士から提出のあった「貸借対照表」の写し及び「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」の写しを確認したところ、資本金又は出資金○○,○○○,○○○円、資本準備金○○○,○○○,○○○円、利益積立金額△○○○,○○○,○○○円であり法人税法上の資本金等の額は○○,○○○,○○○円であった。資本金等の額が資本金及び資本準備金の合算額に満たないことから、審査請求人の均等割税率を資本金の額及び資本準備金の合算額○○○,○○○,○○○円、従業者数○○人で判定したところ均等割の税率は○○○,○○○円となる。よって、本件処分は適正であり審査請求人の主張は認められない。

第4  審理員意見書の要旨
1  結論
本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきものと判断する。
2  理由
(1) 本件処分の時期の妥当性について
 審査請求人は、申告期限の延長の特例申請を提出しており、申告期限が平成28年9月30日であると主張している。当該申告期限については、各事業年度終了の日の翌日から2月以内とされ(法人税法第74条第1項)、本来の申告期限は平成28年8月末までとなるが、この点について処分庁は弁明の中で特に主張していないことから、申告期限は審査請求人が主張する平成28年9月30日であると判断する。
 一方で、処分庁は、関与税理士より、平成28年8月25日付けで確定申告書を、同月29日付けで他の添付書類の提出を受け、これらの資料をもとに同年9月9日付けで本件処分を行っている。
 この点、法人市民税の申告納付については、申告期限までに確定申告書を提出しなければならないとされ(法第321条の8)、市長は、当該申告書の提出があった場合には、当該申告に係る法人税額若しくは当該法人税額を課税標準として算定した法人税割額がその調査によって、法人税に関する法律の規定によって申告し、修正申告し、更正され、若しくは決定された法人税額若しくは当該法人税額を課税標準として算定すべき法人税割額と異なることを発見したとき、又は当該申告に係る均等割額がその調査したところと異なることを発見したときは、これを更正するものとされているが(法第321条の11第1項)、当該更正を申告期限前に行うことを妨げる規定はない。
 そのため、本件においては、申告期限前に申告に必要となる確定申告書及び他の添付書類が提出され、これらに基づいて処分庁は本件処分を行っていることから、本件処分の時期が妥当性を欠いているとは認められない。
(2)  本件処分における法人市民税均等割に係る適用税率について
 審査請求人が処分庁あてに提出した確定申告書及び他の添付書類の写しによると、資本金等の額については○○,○○○,○○○円であることが確認でき、また資本金又は出資金の額は○○,○○○,○○○円、資本準備金の額は○○○,○○○,○○○円であることが確認できることから、資本金の額及び資本準備金の合算額は○○○,○○○,○○○円となり、法第312条第6項及び平成29年大阪市条例第11号による改正前の大阪市市税条例(以下「条例」という。)第30条の2第5項に規定する「資本金等の額が、同号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額又は出資金の額に満たない場合」に該当する。そのため、資本金等の額については、同項に規定する、同項の表の「第2号から第9号までの規定中『資本金等の額が』とあるのは『第3項第1号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額又は出資金の額が』とする」が適用されることとなる。
 したがって、審査請求人の平成27年7月1日から平成28年6月30日までの事業年度の末日現在における事業年度に係る法人市民税均等割適用税率は、資本金及び資本準備金の合算額である○○○,○○○,○○○円及び従業者数○○人をもとに法第312条第1項の表にあてはめて判定することとなるため、その税率は、年額○○○,○○○円が適正であると判断する。
 よって、審査請求人の法人市民税均等割税率を年額○○○,○○○円から○○○,○○○円に更正した本件処分は適正である。

第5  調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
平成29年2月27日 諮問書の受理
平成29年2月28日 審議
平成29年3月17日 調査及び審議(審査請求人の口頭意見陳述)
平成29年3月29日 審議

第6  審査会の判断
1  関係法令の定め
(1) 法人市民税の納税義務者について
 市町村内に事務所又は事業所を有する法人は、均等割額及び法人税割額の合算額を納付しなければならない(法第294条第1項第3号)。
(2) 法人市民税の申告納付について
ア 法人税法第74条第1項の規定によって法人税に係る申告書を提出する義務がある法人は、当該申告書の提出期限までに、総務省令で定める様式によって、当該申告書に係る法人税額、これを課税標準として算定した法人税割額、均等割額その他必要な事項を記載した申告書をその法人税額の課税標準の算定期間中において有する事務所、事業所又は寮等所在地の市町村長に提出し、申告した市町村民税額を納付しなければならない(法第321条の8)。
イ 法人税法第74条第1項の規定による申告書の提出期限については、各事業年度終了の日の翌日から2月以内とされている。また、会計監査人の監査を受けなければならないことその他これに類する理由により決算が確定しないため、当該事業年度以後の各事業年度の当該申告書をそれぞれ同項に規定する提出期限までに提出することができない常況にあると認められる場合には、当該提出期限を1月間延長することができる(法人税法第75条の2第1項)。
ウ 市町村長は、法第321条の8の規定による申告書の提出があった場合において、当該申告に係る均等割額がその調査したところと異なることを発見したときは、これを更正するものとする(法第321条の11第1項)。
 (3) 法人市民税均等割の税率について
ア 法人に対して課する均等割の税率は、資本金等の金額及び市町村内の事務所又は事業所の従業者数によって、300万円、175万円、41万円、40万円、16万円、15万円、13万円、12万円、5万円の9段階に分けられている(法第312条第1項及び条例第30条の2第1項)。 
イ 法第312条第3項第1号に掲げる法人の資本金等の額が、同号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額又は出資金の額に満たない場合における同条第1項の適用については、同項の表の第2号から第9号までの規定中「資本金等の額が」とあるのは「第3項第1号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額又は出資金の額が」とするとされている(法第312条第6項)。
2 争点
(1) 本件処分を申告期限前に行ったことは妥当か(争点1)
(2) 本件処分における均等割に係る適用税率は適正か(争点2)
3 争点1について
 審査請求人は、申告期限の延長の特例申請を提出しているので、申告期限は平成28年9月30日であり、処分庁から同年9月9日付けで法人市民税更正通知書(以下「更正通知書」という。)が送付されてきたのは時期尚早であると主張する。
 しかしながら、法人市民税の申告納付について、法第321条の11第1項においては、市長は確定申告書の提出があった場合には、当該申告に係る均等割額がその調査したところと異なることを発見した時はこれを更正するものとしており、当該更正を申告期限前に行うことを妨げる規定は法上存しない。また、審査請求人は、この当時、正当な申告書を提出していると判断の下、修正申告を行う意思はなかったと述べていることから、申告期限前に更正通知書の送付を受けたことにより、審査請求人に特段の不利益等が生じたものとも認められない。
 よって、処分庁が確定申告書及び添付書類に基づき同月9日に本件処分を行っていることは、違法ないし妥当性を欠いているとは認められない。
4  争点2について
 審査請求人は、確定申告書に記載した資本準備金の額は非常識な数字であり、企業会計上も正しくない処理であるから、処分庁は実質をみて課税すべきであると主張する。
 しかしながら、株式会社の資本準備金の金額は、株式会社における決算承認等、会社法等に則った会社の意思ないし手続により確定されるものであり、処分庁としても、少なくとも、納税者からの審査請求において、当該審査請求人が処分庁あてに提出した確定申告書及び添付書類(以下「確定申告書等」という。)に記載されている資本金等の額、資本金又は出資金、資本準備金の金額が株式会社たる納税者の決算承認等を前提とするものである限りは、これらの数字を前提に均等割額を判定することになる。
 これを本件においてみるに、審査請求人は、資本準備金の金額について「正しくは損益計算書の特別利益に計上しその他の利益準備金に計上するのが妥当な処理であると思うが、あまりに目立ちすぎると思い、資本準備金が無難と判断し企業会計上正しくない処理をしてしまった」と述べており、企業会計におけるこれら会計処理の妥当性は別にして、これら会計処理を会社の意思ないし手続において行っていることを前提としている。また、審査請求人において、確定申告書提出後に、本件処分の前提となる会計処理を会社法等に則って是正したなどとの特段の事情も認められない。よって、本件においては、審査請求人が提出した確定申告書等に記載された資本準備金の金額こそが会社の決算承認等を前提とした金額であると認められる。
 以上を前提に、審査請求人の平成27年7月1日から平成28年6月30日までの事業年度にかかる法人市民税における均等割額を検討するに、上記平成27年の法改正により、同年4月1日以後に開始する事業年度分から、株式会社である納税者の「資本金等の額」が「資本金の額及び資本準備金の額の合算額」を下回る場合には、「資本金の額及び資本準備金の額の合算額」が課税区分の基準とされるところ、審査請求人が提出した確定申告書等においては、「資本金等の額」が「資本金の額及び資本準備金の額の合算額」を下回っているにもかかわらず、「資本金等の額」を基に法人市民税均等割額を算出していることからその内容が法令の定めに沿ったものとは認められず、むしろ当該「資本金の額及び資本準備金の額の合算額」を前提に均等割額を算出した本件処分こそが適法かつ妥当なものと認められる。
 よって、審査請求人の主張によっても、本件処分が違法ないし妥当性を欠いているとは認められない。
5  審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
6 結論
 よって、本件審査請求に理由がないものと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり答申する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会税務第1部会
 委員(部会長) 佐藤善恵、委員 津留真弓、委員 下尾裕

答申書(平成29年度答申第1号)

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