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答申書(平成29年度答申第7号)

2023年2月17日

ページ番号:415540

諮問番号:平成29年度諮問第8号
答申番号:平成29年度答申第7号

答申書

第1  審査会の結論
 本件審査請求は、棄却されるべきである。

第2  審査請求に至る経過
1 審査請求人は、平成29年5月3日付けで郵送により法人市民税均等割申告書及び法人市民税減免申請書を処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)に提出した。
2 処分庁は、平成29年大阪市条例第63号による改正前の大阪市市税条例(以下「条例」という。)第60条第1項第6号に定める期限を過ぎて減免申請書が提出されたことを理由として、平成29年5月16日付けで法人市民税減免不許可処分(以下「本件処分」という。)を行った。
3 審査請求人は、平成29年5月25日、大阪市長に対し、本件処分の取消しを求めて審査請求をした。

第3 審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 次のとおり災害等やむをえない理由による期限延長を認めるべきである。
ア 平成29年4月29日に車上荒らしの被害にあい、車内よりすでに税理士に依頼して提出する前に印鑑を押すだけの状態の申請書類の入ったカバンを盗まれ、さらに仕事で利用している両替機の鍵を盗まれた。
イ 対応が遅れると2億円相当の被害を出すことになるため、二次災害を事前に防ぐために、5月2日の深夜2時頃まで、鍵の交換作業に追われ、自身での申請書類の対応が物理的に不可能な状態になり、税理士に依頼して書類を提出しようとした。
ウ 連休ということもあり、1日に税理士に書類を準備してもらったが、当日は車上荒らしの後処理で身動きがとれず印鑑を押す事が不可能であり、他に代替的な手段をとることが物理的に不可能であった。
エ 処分庁は、代替的手段によって期限までに申告納付手続きをすることが可能であった場合には、地方税法(以下「法」という。)第20条5の2の規定による「災害その他やむを得ない理由」に該当しないと主張するが、車上荒らしという犯罪行為に対して、できる限りの復旧作業を行ったことが「やむを得ない理由」に仮に該当しないのであれば、車上荒らしという犯罪行為で書類を盗まれたことに対する過失があるような言い回しであり、犯罪行為の被害者にとってあまりにも厳しすぎる対応である。
(2) 仮に1~2週間書類の到達が遅れたのであれば弁明のしようが無いにしろ、実質1~2営業日程度の到達遅延は、郵送での誤差の範囲内であり、市税の管理業務に対して多大な影響を与えたとも言えず、本件処分は、民法第1条第2項のいわゆる「信義誠実の原則」(以下「信義則」という。)に反する決定であると解する。
2  処分庁の主張
(1)  本件処分理由について
 審査請求人は平成27年10月15日に設立されており、条例第60条第1項第6号に規定する「初めて市内に事務所、事業所又は寮等を有することとなったもの」には該当しないことから、審査請求人が法人市民税の免除を受けようとする場合は、当該市民税の納期限までに減免申請書を提出しなければならないが、減免申請書の提出が期限後であったため、これを不許可としたものである。
(2) 本件審査請求は、減免の申請に対する不許可処分についてなされたものであり、申告期限の期間延長についてなされたものではないこと、また、申告期限の期間延長の申請をしていないことから、期間延長の適否について判断すべきものではない。
(3) 審査請求人の平成29年度法人市民税の均等割申告書及び減免申請書については、平成29年5月8日に収受しているが、法第20条の5の3の規定により通信日付印に表示された同月3日付けの提出とみなすこととなるので、到着遅延について誤差の範囲を考慮する余地はない。
(4) 租税法において信義則とは、「相手方の合理的な期待や信頼を裏切ってはならない」という原則であり、誤った言動を信じて行動をした者の期待や信頼を保護することが目的であるものとされている。本件処分は、審査請求人が減免申請書を提出した日が、条例第60条第1項第6号に定める日を過ぎていたため不許可としたものであり、信義則に反するものではない。
 なお、法人市民税の減免申請書の提出期限については、平成29年3月24日付けで審査請求人あてに送付した法人市民税申告納付依頼状において、法人市民税(均等割)申告書の提出期限を同年5月1日と明記し、同封している法人市民税減免申請書には「この申請書を法人市民税申告書の提出期限までに提出されないときは、減免されませんのでご注意ください。」と明記している。

第4 審理員意見書の要旨
1 結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきものと判断する。
2 理由
(1)  本件処分理由の適法性について
 審査請求人である特定非営利活動法人は、平成27年10月15日に設立されており、条例第60条第1項第6号イに規定する「初めて市内に事務所等を有することとなったもの」には該当しないことから、審査請求人が法人市民税の減免を受けようとする場合は、条例第60条第1項第6号アの規定により、その納期限である4月30日(本年については4月30日が日曜日のため5月1日)までに法人市民税の減免申請書を提出しなければならない。
 しかしながら、処分庁から提出のあった審査請求人が減免申請書の郵送に要した封筒の写しからは通信日付が平成29年5月3日であることが確認でき、法第20条の5の3の規定により、審査請求人から減免申請書が提出された日は平成29年5月3日とみなされることから、条例第60条第1項第6号に定める期限を過ぎて減免申請書が提出されたことを理由として、処分庁が本件処分を行ったことは適正である。
 なお、審査請求人は、郵送での誤差の範囲内である旨主張しているが、上記のとおり、到達遅延による郵送の誤差を考慮する余地はなく、審査請求人の主張には理由がない。
(2)  災害等による申告等の期限の延長の適用について
 審査請求人は、災害その他やむを得ない理由による期限延長を認めるよう求めているが、条例第13条第4項の規定により、期限の延長を受けようとする者は、同条第3項に規定する理由がやんだ後速やかに、申請書にその証拠となる書類を添付して、市長に提出しなければならないとされているところ、審査請求人からそのような申請書の提出があった事実は認められないため、延長の適用の適否については判断すべきものではない。
(3)  信義則の適用について
 信義則は、人は相手方の合理的な期待や信頼を裏切ってはならない、という原則であり、誤った言動を信じて行動をした者の期待や信頼を保護することが目的であるとされている。
 本件処分は、審査請求人からの減免申請書の提出が条例第60条第1項第6号に定める期限を過ぎてなされたことを理由として行われているに過ぎず、審査請求人の主張からも、処分庁から誤った申請期限を表示された等の事実は認められず、信義則の適用についての審査請求人の主張には理由がない。
(4)  上記以外の違法性又は不当性についての検討
 他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。

第5 調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
平成29年9月 1日 諮問書の受理
平成29年9月 6日 審議
平成29年9月20日 審議

第6 審査会の判断
1 関係法令の定め
(1)  特定非営利活動法人に係る法人市民税の申告納付について
 特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人(以下「特定非営利活動法人」という。)で均等割のみを課されるものは、毎年4月30日までに、均等割額を記載した申告書を、前年4月1日から3月31日までの期間中において有する事務所、事業所又は寮等所在地の市町村長に提出し、及びその申告した均等割額を納付しなければならない(法第294条第7項、第312条第3項第4号及び第321条の8第19項)。
(2)  期限の特例について
 法又は条例により定められている期限が民法第142条に規定する休日に該当するときは、法又は条例の規定にかかわらず、これらの日の翌日をその期限とみなす(法第20条の5第2項)。
(3) 特定非営利活動法人に係る法人市民税の減免について
 特定非営利活動法人で収益事業を行わないものに対しては、申請に基づき市民税を免除することとされており(条例第58条)、条例第58条の規定により市民税の免除を受けようとする者のうち、条例第60条第1項第6号イに掲げるもの以外のものは、同条第2項に掲げる事項を記載した申請書にその証拠となる書類を添付して、当該市民税の納期限までに市長に提出しなければならない(条例第60条)。
(4) 災害等による期限の延長について
 市長は、広範囲にわたる災害その他やむを得ない理由により、申告等に関する期限までに、申告等をすることができないと認めるときは、その理由のやんだ日から2月以内に限り、地域、期日その他必要な事項を指定して当該期限を延長する(条例第13条第1項)。
 また、市長は、災害その他やむを得ない理由により、申告等に関する期限までに、申告等をすることができないと認めるときは、第1項の規定の適用がある場合を除き、申告等をすべき者の申請により、その理由のやんだ日から2月以内に限り、期日を指定して当該期限を延長するとされており(条例第13条第3項)、当該期限の延長を受けようとする者は、同項に規定する理由がやんだ後速やかに、申請書にその証拠となる書類を添付して、市長に提出しなければならない(条例第13条第4項)。
(5)  郵送等に係る書類の提出時期の特例について
 法又は条例の規定により一定の期限までになすべきものとされている申告等に関する書類が郵便又は信書便により提出されたときは、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日にその提出がされたとみなす(法第20条の5の3)。
2 争点
 上記第3及び第4における審査請求人及び処分庁の主張等を踏まえると、審査請求人が減免申請書を条例第60条第1項第6号に規定する期限を過ぎて提出したことについては争いがない。よって、本件審査請求の争点は以下の2点に集約される。
(1) 審査請求人の法人市民税の減免申請について、期限の延長が認められるか(争点1)
(2) 本件処分は信義則に反するか(争点2)
3 争点1について
 審査請求人は、法人市民税の減免申請について、災害等やむをえない理由による期限の延長を認めるよう主張する。
 しかしながら、審査請求人が減免申請をした時点において、大阪市長が、条例第13条第1項に基づき申告等に係る期限の延長をした事実は認められない。また、同条第3項は、災害その他やむを得ない理由により、申告等に関する期限までに、申告等をすることができないと認めるときは、第1項の規定の適用がある場合を除き、申告等をすべき者の申請により、その理由のやんだ日から2月以内に限り、期日を指定して当該期限を延長すると規定するところ、審査請求人から、同条第4項に規定する申告等の期限延長に係る申請書の提出があった事実は認められない。
 したがって、審査請求人の法人市民税の減免申請について期限の延長は認められない。
4 争点2について
 審査請求人は、1~2営業日程度の書類の到達遅延は、郵送での誤差の範囲内であり、市税の管理業務に対して多大な影響を与えたとも言えず、本件処分が信義則に反すると主張する。
 しかしながら、法第20条の5の3は、郵便により提出された申告書に関する書類については、通信日付印により表示された日を提出日とみなす旨規定しており、郵送における到達遅延は提出日の認定に一切影響を与えないものである。
 この点、審査請求人が減免申請書の郵送に要した封筒の写しからは通信日付が平成29年5月3日であることが確認でき、同条の規定により、審査請求人から減免申請書が提出された日は、同日とみなされることから、条例第60条第1項第6号に定める期限を過ぎて減免申請書が提出されたことは明らかである。
 また、処分庁は、平成29年3月24日付けで審査請求人あてに送付した法人市民税申告納付依頼状において、法人市民税(均等割)申告書の提出期限を同年5月1日と明記し、同封している法人市民税減免申請書には「この申請書を法人市民税申告書の提出期限までに提出されないときは、減免されませんのでご注意ください。」と明記していることから、審査請求人に対し、法人市民税(均等割)申告書及び減免申請書の提出期限を誤認させるような誤った教示を行った事実も認められない。
 したがって、処分庁が、条例第60条第1項第6号に定める期限を過ぎて減免申請書が提出されたことを理由として、本件処分をしたことは、信義則に反するものとはいえない。
5 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
6 結論
 よって、本件審査請求に理由がないものと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり答申する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会税務第2部会
 委員(部会長)岸本佳浩、委員 鹿田良美、委員 瀬川昇

答申書(平成29年度答申第7号)

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