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答申書(平成29年度答申第8号)

2023年2月17日

ページ番号:415541

諮問番号:平成29年度諮問第5号
答申番号:平成29年度答申第8号

答申書

第1 審査会の結論
 本件審査請求のうち、平成29年4月4日付けで減額の更正がされた延滞金に係る部分については却下し、その余の部分については棄却されるべきである。

第2 審査請求に至る経過 
1 審査請求人は、処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)に対して、平成28年6月10日付けで徴収猶予の申請を行い、これに対して、処分庁は、当該申請について許可決定を行い、同月27日付けで審査請求人に通知した。
2 審査請求人は、平成28年12月1日、平成21年度及び平成23年度の市・府民税本税(以下「本税」という。)を完納した。
3 審査請求人は、平成28年12月26日、平成21年度市・府民税に係る延滞金(以下「平成21年度延滞金」という。)及び平成23年度市・府民税に係る延滞金(以下「平成23年度延滞金」という。)について、その全額の免除を求めて処分庁に対し申請(以下「本件申請」という。)をした。
 これに対して、処分庁は、平成29年1月4日付けで、平成23年度延滞金についてのみ、その全額の免除を認める決定(以下「本件処分」という。)をし、同月10日付けでその旨を審査請求人に通知した。
4 審査請求人は、平成29年3月13日、本件処分のうち平成21年度延滞金について減免を認めなかった部分の取消し及び全額の免除を求めて、大阪市長に対し審査請求を行った。
5 処分庁は、平成29年4月4日付けで、平成21年度延滞金のうち平成22年6月30日以後に課された部分について免除する旨の本件処分の更正をし、その旨を審査請求人に通知した。

第3 審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 本税については、平成21年度及び平成23年度ともに、「納税者又は特別徴収義務者がその事業を廃止し、又は休止したとき」(平成29年大阪市条例第11号による改正前の大阪市市税条例(以下「条例」という。)第6条の2第1項第3号)の該当事由があるとして、徴収猶予につき許可がなされている。
 一方、延滞金の免除申請については、平成23年度延滞金についてのみ、「地方税法第15条第1項第5号(事業を廃止したとき)に該当」とし免除を認めているが、平成21年度本税についても、事業廃止(条例第6条の2第1項第3号)を根拠に徴収の猶予が認められているのであって、延滞金について別異に取り扱うことは整合性を欠く。
 したがって、平成21年度延滞金について、平成23年度延滞金と同様に、地方税法(以下「法」という。)第15条第1項並びに第15条の9第1項及び第2項を適用せず、全額免除しなかったことは、法令の適用に誤りがあり違法である。
(2) 審査請求人は、平成21年度本税については、平成28年の催告を受け、未納金の存在を知ったことから、その後、分割により全額を納付した。しかし、平成21年度延滞金については、その免除を許可しないことは、課税庁による徴収事務の怠慢を、納税者に責任を負わせるに等しく、看過し難いものであり、納税者間の公平を害するものである。
 条例第45条第6項は、「市長は、公益上その他の事由により特に必要があると認めるときは、申請に基づき、市規則で定めるところにより市民税を減免することができる。」と定めるところ、上記のような納税者間の公平を害する徴収事務の取扱いは、課税庁に対する納税者の信頼を大きく損なうものであって、公益又はそれに準じて、重大な事由であり、免除する必要性も高い。
 したがって、平成21年度延滞金については、条例第45条第6項に定める「公益上その他の事由」に該当し、免除する必要性があるというべきであり、同項を適用せず、平成21年度延滞金を免除しなかったことは裁量権の逸脱又は濫用であって、違法である。
(3) 破産手続を申し立てた審査請求人に対し、その後、何ら催告等を行うこともなく、長期間経過したことにより、審査請求人は平成21年度本税が未納であることを知る機会すらなく、未納金がないものと考えていた。他の公租公課については、所管課からの通知等により審査請求人は未納金を把握し、延滞金減免の申請を行っており、課税庁が適時に催告等を行っていれば、徴収緩和の申請等の手続を行っていたはずである。
 そして、何ら催告等を行わなかったことは、まさに、徴収事務を放置したに等しい。
 以上の本件の経緯を踏まえれば、課税庁が平成21年度本税のみならず延滞金を徴収する(免除を認めない)ことは、徴収事務の放置に起因する延滞金の発生・増額原因を納税者に押し付けるものというほかなく、そのような取扱いが、信義誠実の原則(以下「信義則」という。)に反するものであり、違法である。
(4) 万一、平成21年度延滞金の免除を認めないことが違法ではないと解する余地があったとしても、上記に述べた経緯からすれば、未納金の存在を知らされていなかった市民に対し、本税のみならず延滞金までを徴収することは極めて不当である。例えば、年に1回など定期的に未納付の状況につき文書で知らせる等の事務がなされていれば、審査請求人は適時に、しかるべき対応を行っていたものである。実際、審査請求人は平成21年度本税が未納状態であることを知ったのち、直ちに、納税に向けて誠実に対応のうえ、分割により完納に至ったものである。
 しかし、長期間にわたり、審査請求人は未納金の存在を知らされることもなかった。このような徴収事務の放置に起因する延滞金については、これを審査請求人に負担させることは誰の目から見ても不当である。
(5) 以上のとおり、平成21年度延滞金の免除を認めなかった本件処分は違法又は不当であるから、取消しの上、免除を許可するべきである。
2 処分庁の主張
(1)ア 平成21年度延滞金は、平成29年大阪市規則第82号による改正前の大阪市市税条例施行規則(以下「規則」という。)第7条の4第1項(法第15条の9第1項と同趣旨)を適用し、徴収猶予履行終了時に一部免除済みである。
イ 審査請求人につき、現在、相当の給与収入が認められること等から、規則第7条の4第2項(法第15条の9第2項と同趣旨)の規定する要件に該当せず、同規定を適用することはできない。
ウ 本件審査請求の対象となった処分は、上記ア及びイの処理後、残った当該延滞金につき、規則第7条の4第5項による「延滞金軽減免除手続に係る要綱」(以下「要綱」という。)第1項に該当しないとして、本件申請を不許可とした。
エ 本件審査請求を受け、改めて本件申請に係る審査を行った結果、平成21年度延滞金については、要綱第1項に規定する事業廃止(平成22年6月30日)以降に加算された延滞金については免除することが相当であると判断し、上記ウの処分につき、延滞金減免を一部許可する更正通知書を平成29年4月4日付けで審査請求人あて発送している。
オ 平成21年度延滞金のうち事業廃止以前に係る部分についても、その事業につき著しい損失を受けた事実があれば減免が可能であるため、審査請求人に当該事実を証する資料等の提出を求めていたが、平成29年3月31日に事実を証する書類はないと聴取したため、その部分についての減免はされない旨を伝えている。
カ 結果、事業廃止以前の延滞金は残るものの、事業廃止以降の延滞金については全額免除となっている。
(2) 条例第45条は、市民税本税の減免に係る規定であり、延滞金に係るものではない。よって、本条を延滞金の減免に適用することはできない。
(3) 市・府民税(普通徴収)については、法第13条に基づき納税者に対し文書により納付の告知を行い、法第329条第1項に基づき納税者が納期限までにその徴収金を完納しない場合においては督促状を発しなければならないとされているが、その他の催告については法令等に定めはない。
 また、審査請求人は、徴収事務の放置に起因する延滞金の発生・増額原因を納税者に押し付けるものと主張しているが、納税は日本国憲法第30条に定められた義務であり、延滞金の発生・増額は納税義務者である審査請求人が市・府民税をその納期限までに完納しなかったことに起因するものである。
(4) 延滞金の免除は法令等で規定されており、その判断基準に基づき適正に処分したものであることから、審査請求人が主張するところの、未納金の存在を知らされなかったということについて、そのこと自体をもって本件処分の違法性及び妥当性に影響を及ぼすものではない。

第4 審理員意見書の要旨
1 結論
 本件審査請求のうち、更正が行われた部分は審査請求の利益がないため却下し、その余の部分は理由がないため棄却されるべきものと判断する。
2 理由
(1)  法第15条の9第1項及び第2項を適用せず、全額免除しなかったことについて
ア 本件処分の延滞金減免一部許可通知書に記載されている平成21年度延滞金の額は、法第15条の9第1項を適用した後の延滞金額であることが、提出された資料から確認できる。したがって、同項の適用は既になされており、審査請求人の主張は失当である。
イ 延滞金減免申請書に添付された徴収猶予等申請書から、審査請求人には相当の収入があることが窺われるところ、法第15条の9第2項の要件である、事業又は生活の状況によりその延滞金額の納付又は納入を困難とするやむを得ない理由にかかる事実の主張がなく、同項の要件を満たす事実は認められない。
ウ 平成21年度延滞金のうち、平成22年6月30日以降に加算された部分については、平成29年4月4日付け更正により免除されている。これは、平成22年6月30日付けで審査請求人が事業を廃止した事実があることから、規則第7条の4第5項及び要綱第1項により改めて免除されたものである。したがって、当該更正により免除された部分については、審査請求人に審査請求の利益はなく、審査請求は却下すべきと考える。
 そこで、平成29年4月4日付け更正で免除されていない、その余の部分に係る要綱第1項による減免の可否について判断する。
エ 事業の廃止など、法第15条第1項による徴収猶予を適用する事実があったときには、延滞金額の全部を限度として減免することができるとされており、本件においては、事業を廃止した事実があった期間が対象となるが、その余の部分は、事業を廃止した平成22年6月30日より前に生じた延滞金であることから、当該減免の対象ではない。
オ 平成22年6月30日の事業の廃止より前に、その事業につき著しい損失を受けたときにあたる事実があれば、その余の部分についても減免することができるとされているところ、平成29年3月31日に、審査請求人がこれらの事実を証する書類はない旨、処分庁に申述していることからもわかる通り、当該事実は認められない。
カ したがって、その余の部分について、免除を行わないことは適法と考える。
(2) 条例第45条を適用し全額免除しなかったことについて
 条例第45条は、本税の減免に係る規定であり、延滞金に係るものではない。よって、同条の本件処分への適用はなく、当該処分は適法と考える。
(3) 信義則違反について
 弁明書において、平成21年6月に納税通知書の発送、同月から平成22年6月30日までの間に督促状の発送を行った旨の記載があるところ、これらの点につき特に争いがないことからすると、納税通知書及び督促状の送付があったものと考えられる。そうすると、審査請求人は、本税の内容について認識していたといえ、本税が完納されているかどうかは、審査請求人が納付をした結果であり、催告がなくとも、審査請求人自身で把握可能な事柄である。したがって、納付の催告がなかったとしても、本税が未納であることを知る機会がなかったとはいえない。
 なお、審査請求人の主張する破産手続開始決定時以降の催告について、法令上、義務付けられているわけではない。
 以上のことからすると、本件において破産手続開始決定時以降、催告がなかったことを理由に、延滞金の徴収及び免除の不許可をすることが信義則違反になるとはいえない。よって、本件処分は適法であると考える。
(4)  全額免除しないことの不当性について
 (3)と同様の理由により、その余の延滞金の免除をしないことが不当とはいえない。

第5 調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
平成29年7月25日 諮問書の受理
平成29年7月26日 審議
平成29年8月22日 審議
平成29年9月 8日 審議
平成29年9月22日 審議

第6 審査会の判断
1 関係法令の定め
(1)  徴収猶予の要件等について
 法は、次のいずれかに該当する事実がある場合において、その該当する事実に基づき納税者が地方団体の徴収金を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、その者の申請に基づき、1年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができる(法第15条第1項)。
ア 納税者がその財産につき、震災、風水害、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかったとき
イ 納税者又はこれらの者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したとき
ウ 納税者がその事業を廃止し、又は休止したとき
エ 納税者がその事業につき著しい損失を受けたとき
オ アからエまでのいずれかに該当する事実に類する事実があったとき
(2)  納税の猶予の場合の延滞金の免除について
 事業の廃止等による徴収の猶予をした場合には、その猶予をした地方税に係る延滞金額のうち、当該事業の廃止等による徴収の猶予をした期間に対応する部分の延滞金額について、特例基準割合による延滞金の額を超える部分の金額は、免除する(法第15条の9第1項及び附則第3条の2第3項)。
 また、徴収の猶予をした場合において、納税者の事業又は生活の状況によりその延滞金額の納付又は納入を困難とするやむを得ない理由があると認められるときには、市長は、その猶予をした地方税に係る延滞金につき、猶予した期間に対応する部分の金額でその納付又は納入が困難と認められるものを限度として免除することができる(法第15条の9第2項第2号)。
(3)  公益上その他の事由による延滞金の免除について
 市長が公益上その他の事由により特に減免する必要があると認めるときは、延滞金を減免できる(規則第7条の4第5項)。
 法第15条第1項に該当する事実があった場合には、延滞金額の全部(規則第7条の4第1項から第4項の規定により既に軽減されている場合にはその残額)を限度として減免することができる(要綱第1項)。
(4)  個人の府民税に係る延滞金の減免について
 市長が個人の市民税又はその延滞金額を減免した場合においては、当該納税者に係る個人の府民税又は延滞金額についても当該市民税又は延滞金額に対する減免額の割合と同じ割合によって減免されたものとする(法第45条)。
2 審理の対象について
 平成21年度延滞金のうち、平成22年6月30日以降に加算された部分については、平成29年4月4日付けで免除されている。
 したがって、本件審査請求のうち、平成29年4月4日付けで平成21年度延滞金に係る減額の更正がされた部分(以下「更正部分」という。)に対するものについては、請求の利益がなく不適法であり、却下されるべきであるから、当審査会は、その余の部分について以下審理するものとする。
3 争点
(1) 法第15条の9第1項及び第2項を適用せず、全額免除しなかったことは違法か(争点1)
(2)  条例第45条を適用し全額免除しなかったことは違法か(争点2)
(3)  本件処分は信義則に反するか(争点3)
(4)  本件処分は不当か(争点4)
4 争点1について
(1) 審査請求人は、平成21年度延滞金について、法第15条の9第1項を適用せず、全額免除しなかったことは、法令の適用に誤りがあり違法である旨主張している。
 しかしながら、平成21年度延滞金については、平成23年度延滞金同様、徴収猶予期間に対応する部分は、既に法第15条の9第1項を適用し、同項により適用可能な一部減免を行い、事業を廃止した平成22年6月30日以降に加算された延滞金については、平成29年4月4日付けで免除している。
 したがって、平成21年度延滞金について法第15条の9第1項の適用を求める審査請求人の主張には、理由がない。
(2)  審査請求人は、法第15条の9第2項を適用せず、全額免除しなかったことは、法令の適用に誤りがあり違法である旨主張している。
 しかしながら、審査請求人につき、相当の給与収入が認められること等から、同項の要件である、事業又は生活の状況によりその延滞金額の納付又は納入を困難とするやむを得ない理由があるとは認められない。
 したがって、平成21年度延滞金について法第15条の9第2項を適用することはできない。
(3) 規則第7条の4第5項及び要綱第1項適用による減免の可否について
 法第15条第1項に該当する事実があった場合には、延滞金額の全部(規則第7条の4第1項から第4項の規定により既に軽減されている場合にはその残額)を限度として減免することができる(要綱第1項)。
 更正部分以外の平成21年度延滞金は、事業を廃止した平成22年6月30日より前に生じた延滞金であるところ、当審査会が入手した資料を精査しても、審査請求人が事業の廃止より前に、その事業につき著しい損失を受けた事実は認められない。
 したがって、処分庁が更正部分以外の平成21年度延滞金について免除をしなかったことは適法である。
5 争点2について
 審査請求人は、条例第45条第6項を適用し全額免除しなかったことは、裁量権の逸脱又は濫用であり違法である旨主張している。
 しかしながら、条例第45条は、市民税本税の減免に係る規定であり、延滞金に係るものではない。
 したがって、同条を適用して延滞金を免除することはできない。
6 争点3及び4について
 審査請求人は、破産手続後、何ら催告等が行われなかったことは、徴収事務を放置したに等しく、処分庁が延滞金の免除を認めないことは、徴収事務の放置に起因する延滞金の発生・増額原因を納税者に押し付けるものであり、信義則に反し、違法であると主張する。
 また、審査請求人は、長期間にわたり、未納金の存在を知らされることもなく、このような徴収事務の放置に基因する延滞金を負担させることは不当であると主張する。
 しかしながら、審査請求人は、平成28年6月10日付けで処分庁に提出した徴収猶予等申請書に「滞納公租公課一覧表」を添付しているところ、同一覧表には平成21年度本税が記載されているのであって、審査請求人の「未納金の存在を知らされなかった」との主張の前提事実が認められないところである。
 また、そもそも、延滞金は、所定の要件を充足することによって当然に納付義務が成立し、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき額が確定するものであり、納税者から本税の納付が完了しない限りは自動的に発生し続けるものである。
 さらに、処分庁が滞納者に対して改めて催告をすべきことを定めた法令上の規定はなく、特に本件においては、上記のとおり滞納者たる審査請求人自身も納税義務の存在を認識していたものであるから、処分庁が催告をしなかったことを徴収事務の放置等と評価することはできない。
 したがって、更正部分以外の平成21年度延滞金を免除しなかったことについては、信義則違反であるとも不当であるとも評価されるものではない。
7  結論
 よって、本件審査請求に理由がないものと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり答申する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会税務第1部会
  委員(部会長) 佐藤善恵、委員 津留真弓、委員 下尾裕

答申書(平成29年度答申第8号)

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