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平成29年3月29日付け裁決

2023年2月17日

ページ番号:420309

裁決書

審査請求人  ○○○○
処分庁  大阪市長      

 審査請求人が平成28年6月13日付けで提起した処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)による平成28年度固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)賦課決定処分(以下「本件処分」という。)に係る審査請求(平成28年度財第4号。以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決します。

主文
 本件審査請求を棄却します。

事案の概要
1 平成28年度の賦課期日(平成28年1月1日)現在、審査請求人が所有する大阪市○区(略)所在の土地(以下「本件土地」という。)については、以前は住宅の敷地となっていたことから、住宅用地に対する固定資産税等に係る課税標準の特例(地方税法(以下「法」という。)第349条の3の2第1項及び第702条の3第1項。以下「住宅用地の特例」という。)に該当し、さらに、面積が200㎡以下であることから、平成27年度まで小規模住宅用地に対する課税標準の特例(法第349条の3の2第2項及び第702条の3第2項。以下「小規模住宅用地の特例」という。)を適用していました。
2 処分庁職員は、平成28年3月8日登録の平成27年度航空写真経年異動判読結果等の内容を確認した際、本件土地の上に存在している家屋(以下「本件家屋」という。)に異動があることを確認しました。
3 処分庁職員は、平成○年○月○日に現地へ赴き、本件家屋が(略)に異動していることを確認しました。
4 処分庁職員は、審査請求人に連絡した上で、平成○年○月○日に現地調査(以下「本件調査」という。)を行いました。
5 処分庁は、本件家屋について、平成28年度賦課期日現在は倉庫であると認定し、これに伴い、本件土地を商業地等(法附則第17条第4号)に該当するとして、平成28年4月15日付けで、本件土地を含む別紙物件目録記載の土地及び家屋に係る本件処分を行い、審査請求人あて納税通知書を送付しました。
6 審査請求人は、平成28年6月13日付けで、本件処分の取消しを求めて本件審査請求を行いました。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 本件家屋は住居として使用していたが、損傷が激しいため、一部解体せざるを得なかったものであり、設備に若干の不足があるものの、やむを得ず従前どおり住居として使用している。
(2) 平成28年3月24日に、処分庁職員である○○○○氏から連絡を受け、同日、○○○○市税事務所を訪ねた。その際、同じく処分庁職員である○○○○氏から、家屋を住居として認定するために必要なものとして、床、流し台、トイレ、電気設備及びパイプ・ライン等があればよいと説明を受けた。本件家屋に備えている設備は、(略)であり、備えていない設備は、(略)である。設備に若干心許ないところがあるものの不便を常と考え我慢すれば生活には困らない。
 また、本件家屋については設備の状況に心許ないところがあったので判例を調べてほしいと申し出たが、判例については全て確認することはできないと○○○○氏に言われた。市民から税を徴収する立場にあるにもかかわらず、不適切な対応であると感じた。
(3) 処分庁職員の以下の対応について、不信感を抱いた。
ア 家屋の住居として必要であるとされた「パイプ・ライン」は普通の家屋にはない。
イ 屋内調査に応じた際、処分庁職員である○○○○氏から「悪ですね。」と罵られた。
 なお、「パイプ・ライン」及び「悪ですね。」は聞き間違いではない。
(4) 平成27年に処分庁が行った本件家屋の実地調査に係る情報提供を依頼していたところ、平成28年6月28日付けの回答書(以下「回答書1」という。)を受け取ったが、その記述に違和感がある。調査結果として「(略)」とあるが、「(略)」と表現するのが適切ではないか。
 次に、回答書1に対する疑問について、平成28年9月6日付けの回答書(以下「回答書2」という。)を受け取った。回答書2によると「平成27年12月10日当該家屋のある地区の現況調査を行ったが、家屋の形状までの確認はしていなかったため異動を把握できなかった。」とあるが、本件土地のピンポイント調査を行ってこの回答はあり得ない。本当に調査を行ったか疑問がある。また、「用途については外観だけで判断せず、内部調査を行い倉庫と判断した」とあるが、外観によって車庫とすでに判断を下していると思う。
(5) 平成28年8月31日に提出した反論書に対する平成28年9月16日付けの弁明書(第2回)では、「パイプ・ライン」については、「ライフ・ライン」を言おうとしたものであり言葉の誤りであるとの弁明があったが、なぜ○○○○氏がこの説明をしている際に、そばにいた○○○○氏は誤っていることを認識していたにもかかわらず明確に取り消さなかったのか。誤りは明確に取り消すべきで真摯に職務に従事すべきである。
 なお、第2回弁明書に対して反論書を提出しなかったのは、杓子定規に説明しているだけで、過去の判例等、納税者に有利となる事例を調べようとしないことがわかったからである。
(6) 平成28年3月24日の対応について、○○○○氏から座ってすぐに、不服申立ては固定資産評価審査委員会にしていただくことになりますとの説明があったが、同日の段階では、税額がまだ決定されておらず、不服申立ての説明をするのは税額が決まった後にするものだと思う。
(7) 大阪市職員としてセクト主義に走らないでほしい。危険な建物は各地で問題になっている。処分庁職員はせっかく家屋調査に出ているのだから、危険な建物を発見した場合には、市の担当部署に連絡するなどしてほしい。危険な建物についてだけではなく、あらゆることに対して、大阪市の職員として真摯に取り組んでいただきたい。
2 処分庁の主張
(1) 本件調査の結果、本件家屋について次のとおり確認した。
(略)
(2) 住宅の意義については、法上、不動産取得税に関する用語の意義(法第73条第4号)と固定資産税の新築住宅の減額の規定(同附則第15条の6第1項)において、人の居住の用に供する家屋であるとされている。このため住宅と認定するためには社会通念上生活を営むことができる構造、設備が求められる。
 また、家屋に含んで評価することとされている建築設備は、法第388条第1項に基づき総務大臣が定める固定資産評価基準第2章第1節七において「家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となつて家屋の効用を高めるもの」とされているところ、本件家屋については、(略)であり、構造及び設備の状況を総合勘案し居宅でないと認定したものである。
(3) 住宅用地の特例が適用されるところの住宅とは、家屋の全部又は4分の1以上の部分を人の居住の用に供する家屋をいうものである。居住の用に供するかどうかの判断は、構造上及び使用の実態によるもので、特定の者が継続して居住の用に供すること、すなわち当該家屋に特定人が生活の実態を有していることが必要である。本件家屋については、本件調査の結果、居宅として認められず、また、住宅用地の特例における住宅の認定要件としての居住の用に供しているとも認められないことから、平成28年度の賦課期日現在において、本件土地は住宅用地でないと判断し、住宅用地の特例を適用していない。
(4) 平成28年3月24日に審査請求人が来庁した時及び同29日に実地調査を行った時に、審査請求人に対し反論書に記載のとおりの説明を行った。
 なお「パイプ・ライン」については「ライフ・ライン」を言おうとしたものであり、言葉の誤りである。また、その前後に「一般的に電気、水道等」と説明を行っている。
(5) 審査請求人は「不便を常と考え我慢すれば生活には困らない」場合「住宅」に該当する旨を主張しているが、「住宅」の意義について法上具体的に構造や設備の種類が記載されているものはない。
 しかし、居住の用に供するかどうかの判断は、構造上及び使用の実態によるものであり、特定の者が継続して居住の用に供すること、すなわち当該家屋に特定人が生活の実態を有していることが必要である。本件家屋については、審査請求人が主張する設備が備えられていることを確認しているが、(略)から、特定の者が継続して居住の用に供するための設備としては不十分なものであると考える。

理由
1 本件処分に係る法令の規定
(1) 固定資産税等の課税客体について
 固定資産税は、固定資産に対し、当該固定資産所在の市町村において課することとされ(法第342条第1項)、また、都市計画税は、都市計画法第7条第1項に規定する市街化区域内に所在する土地及び家屋に対して、市町村が課することができることとされています(法第702条第1項)。
(2) 固定資産税等の課税標準について
 基準年度の土地又は家屋に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格で固定資産課税台帳に登録されたものとするとされ、ただし、基準年度の土地又は家屋について第二年度の固定資産税の賦課期日において地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情があるため、基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格によることが不適当である場合においては、当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で固定資産課税台帳に登録されたものとするとされています(法第349条第2項)。
 都市計画税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る固定資産税の課税標準となるべき価格をいうとされています(法第702条第2項)。
(3) 固定資産税等の賦課期日について
 固定資産税等の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とされています(法第359条及び第702条の6)。
(4) 住宅用地の特例及び小規模住宅用地の特例について
 専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるものに対して課する固定資産税等の課税標準は、当該住宅用地に係る固定資産税等の課税標準となるべき価格の3分の1(都市計画税は3分の2)の額とすることとされています(法第349条の3の2第1項及び第702条の3第1項(住宅用地の特例))。
 また、住宅用地のうち、その面積が200㎡以下であるものに対して課する固定資産税等の課税標準は、当該小規模住宅用地に係る固定資産税等の課税標準となるべき価格の6分の1(都市計画税は3分の1)の額とすることとされています(法第349条の3の2第2項及び第702条の3第2項(小規模住宅用地の特例))。
(5) 商業地等について
 商業地等とは、農地以外の土地である宅地等のうち住宅用地以外の宅地及び宅地比準土地をいうとされています(法附則第17条第4号)。
2 本件処分の適法性及び妥当性について
(1) 審査請求人の主張について
 審査請求人は、審査請求の理由として「本件物件」を住居として使用していると主張していることから、審査請求における不服の対象となる固定資産は本件家屋なのか本件土地なのかが明らかでないため、審査請求における不服の対象がどちらであるのかについて判断します。
 まず、対象の固定資産を本件家屋とした場合について検討すると、法第432条第3項において、固定資産税の賦課についての審査請求においては、同条第1項の規定により審査を申し出ることができる事項についての不服を当該固定資産税の賦課についての不服の理由とすることができないこととされており、そのため、審査請求人が本件家屋の用途など価格に関する事項を不服としているのであれば、当該価格についての不服は、同条第1項の規定に基づき審査を申し出ることができる事項についての不服となり、本件審査請求においては不服の理由とすることができないため、審査請求の理由を欠き、不合理です。また、同法第381条第3項の規定による家屋課税台帳への登録に必要な事項として、住宅であると主張しているものと解することも可能ですが、家屋課税台帳に登録する事項は、税額の増減をもたらすものではないため、審査請求の利益がなく、不合理です。
 一方、対象の固定資産を本件土地とした場合について検討すると、審査請求書において「当該物件 大阪市○区(略)」と本件土地の所在が記載されており、本件家屋を住居として使用していると主張することで、その敷地である本件土地について面積が200㎡以下であることから小規模住宅用地の特例に該当するとして、税額の減額を求めるものであると解することが、審査請求人に審査請求の利益が認められ、合理的です。
 したがって、本件審査請求は、本件処分のうち本件土地(大阪市○区(略))に係る不服申立てであると解し、本件土地に係る小規模住宅用地の特例適用の適否について、判断することとします。
(2) 小規模住宅用地の特例の適否について
 住宅用地の特例は、居住用家屋の敷地の用に供されている土地である「住宅用地」について固定資産税等の課税標準となるべき価格を軽減し、その面積が200㎡以下である「小規模住宅用地」について同価格をさらに軽減しているところ、これらは、住宅用地について税負担の増加をできるだけ緩和することが住宅政策上の見地から必要であるという考慮に基づいて設けられたものであり、特に小規模住宅用地の特例は、居住者の日常生活において、居住用家屋の敷地が最小限度必要と考えられることなどから設けられたものです。
 小規模住宅用地の特例は、前提として住宅用地の特例に該当することが必要であり、住宅用地の特例に該当しない場合には、当然、小規模住宅用地の特例にも該当しません。
 本件土地は面積が200㎡以下の土地であるところ、小規模住宅用地の特例の前提となる住宅用地の特例に該当するか否かについて、以下判断します。
ア 住宅用地の特例の適用対象となる土地とは、法第349条の3の2第1項において「専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの」とされており、当該土地が住宅用地の特例の適用対象となるか否かについては、本件家屋が「人の居住の用に供する家屋」すなわち、「住宅」に該当するか否かが論点となります。
 この点につき、「地方税法第349条の3の2の規定における住宅用地の認定について」(平成9年4月1日付け自治固第13号各道府県総務部長、東京都総務・主税局長あて自治省税務局固定資産税課長通知。以下「自治省通知」という。)において、住宅用地の認定に際しての取扱いが定められています。
 自治省通知においては、当該家屋が住宅であるかどうかの判定について、「人の居住の用に供するとは、特定の者が継続して居住の用に供することをいう」とされています。
イ 本件家屋について、特定の者が継続して居住の用に供していたか否かについては、審査請求人からは「従前どうり住居として使用している」との主張があっただけで、特定の者が継続して居住の用に供しているといった具体的な主張、立証はなく、また、処分庁も居住実態に係る特段の主張をしていないため、特定の者が継続して居住の用に供していたか否かという実態については判明しません。
 そのため、本件家屋が特定の者が継続して居住の用に供し得るものか否かという観点から、以下検討します。
ウ 本件家屋は(略)であり、外観及び内観は、本件調査時に処分庁職員が撮影し、証拠書類として提出された写真のとおりであると認められます。
 また、本件家屋の構造及び設備は、本件調査の結果によると、審理関係人の主張の要旨2(1)のとおりですが、その点について審査請求人は特段の反論をしていないことから、本件調査の結果は本件土地及び本件家屋の平成28年度の賦課期日現在の状況と相違ないものと判断します。
 そして、本件家屋の構造及び設備の状況からすると、本件家屋には、通常、日常生活を送る上で必要不可欠な諸設備はほとんどない状態であることが認められます。
 この点につき、審査請求人は「設備に若干心許ないところがあるものの不便を常と考え我慢すれば生活には困らない」旨を主張していますが、本件家屋の構造及び設備、特に(略)を考慮すると、客観的に本件家屋が特定の者が継続して居住するに耐えうるものとは認められません。
 したがって、居住の実態については判明していないものの、本件家屋の設備及び構造からすると、本件家屋は特定の者が継続して居住の用に供し得るものとであるとは認められないことから、本件土地について住宅用地の特例を適用することはできず、小規模住宅用地の特例についても適用する理由はありません。
(3) その他の主張について
 審査請求人は処分庁職員の対応に対する不服、○○○○市税事務所から情報提供を受けた内容に対する不服、市職員の業務への取組み姿勢に対する不服等についても主張していますが、それらの主張は、本件処分の適法性及び不当性には何ら影響を与えないものです。
3 結論
 以上のとおり、本件処分は適法かつ妥当なものであり、本件審査請求には理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決します。

平成29年3月29日
大阪市長 吉村 洋文

別紙物件目録 省略

裁決書(平成28年度答申第5号)

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