ページの先頭です

平成29年4月24日付け裁決

2023年2月17日

ページ番号:420459

裁決書

審査請求人 ○○○○            
処分庁   大阪市長     

 審査請求人が平成28年10月31日付けで提起した処分庁による平成28年9月9日付け法人市民税更正処分(以下「本件処分」という。)に係る審査請求(平成28年度財第12号)について、次のとおり裁決します。

主文
 本件審査請求を棄却します。

事案の概要
1 審査請求人の関与税理士(以下「関与税理士」という。)は、平成27年7月1日から平成28年6月30日までの事業年度分の法人市民税に係る申告書(以下「確定申告書」という。)を平成28年8月25日に提出しました。
2 処分庁は、法人市民税均等割額の税率判定に誤りがあるとして関与税理士に問い合わせを行いました。
3 関与税理士より、平成28年8月29日付けで、審査請求人の平成28年6月30日現在の貸借対照表の写し、平成27年7月1日から平成28年6月30日までの株主資本等変動計算書の写し及び平成27年7月1日から平成28年6月30日までの事業年度に係る利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書の写し(以下「添付書類」という。)が処分庁あてに提出されました。
4 処分庁は、関与税理士より提出された確定申告書及び添付書類(以下「確定申告書等」という。)を確認し、本件処分を行いました。
5 審査請求人は、本件処分の取消しを求めて平成28年10月31日に大阪市長あて審査請求をしました。

審査請求人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
 審査請求人は、次のとおり本件処分は取り消されるべき旨主張しています。
(1) 審査請求人は、申告期限の延長の特例申請を提出しているので、申告期限は平成28年9月30日である。処分庁から同年9月9日付けで法人市民税更正通知書(以下「更正通知書」という。)が送付されてきたのは時期尚早である。
(2) 処分庁は、審査請求人の資本準備金について、単に貸借対照表の記載だけで判断し ており、資本準備金の意味を全く理解していない。資本金○万円の会社が○億円のプレミアをつけて株式を発行することができるかは、常識で判断しても不可能であることが明らかである。
(3) 戦前より所有している本社の土地に係る評価益について、正しくは損益計算書の特別利益に計上し、その他の利益剰余金に計上すべきところ、あまりにも目立ちすぎると思い、資本準備金が無難と判断し企業会計上正しくない処理をした。審査請求人の資本準備金は○万円強しかない。
(4) 修正申告書は、審査請求人が誤りがあると判断した場合に提出するものであり、審査請求人は正当な申告書を提出したと判断したので修正申告はしなかった。
(5) よって、本件処分は取り消されるべきである。
2  処分庁の主張
 処分庁は、次のとおり本件処分は適正である旨主張しています。
(1) 地方税法(以下「法」という。)第321条の8第1項は、法人税法第74条第1項の規定によって法人税に係る申告書を提出する義務がある法人は、当該申告書の提出期限までに、法人の市民税の申告書を提出しなければならないと規定し、申告期限前の提出を妨げていない。
 また、法第321条の11第1項は、市町村長は、法第321条の8の規定による申告書の提出があった場合において、当該申告に係る均等割額がその調査したところと異なることを発見したときは、これを更正するものと規定していることから、本件処分の時期は適法である。
(2) 本件処分については、関与税理士から提出のあった「貸借対照表」の写し及び「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」の写しを確認したところ、資本金又は出資金○○○○円、資本準備金○○○○円、利益積立金額△○○○○円であり法人税法上の資本金等の額は○○○○円であった。資本金等の額が資本金の額及び資本準備金の額の合算額に満たないことから、審査請求人の均等割税率を資本金の額及び資本準備金の額の合算額○○○○円、従業者数○人で判定したところ均等割の税率は○○○○円となる。よって、本件処分は適正であり審査請求人の主張は認められない。

理由
1 本件に係る法令等の規定について
(1) 法人市民税の納税義務者について
 市町村内に事務所又は事業所を有する法人は、均等割額及び法人税割額の合算額を納付しなければならないとされています(法第294条第1項第3号)。
(2) 法人市民税の申告納付について
ア 法人税法第74条第1項の規定によって法人税に係る申告書を提出する義務がある法人は、当該申告書の提出期限までに、総務省令で定める様式によって、当該申告書に係る法人税額、これを課税標準として算定した法人税割額、均等割額その他必要な事項を記載した申告書をその法人税額の課税標準の算定期間中において有する事務所、事業所又は寮等所在地の市町村長に提出し、申告した市町村民税額を納付しなければならないとされています(法第321条の8)。
イ 法人税法第74条第1項の規定による申告書の提出期限については、各事業年度終了の日の翌日から2月以内とされています。また、会計監査人の監査を受けなければならないことその他これに類する理由により決算が確定しないため、当該事業年度以後の各事業年度の当該申告書をそれぞれ同項に規定する提出期限までに提出することができない常況にあると認められる場合には、当該提出期限を1月間延長することができるとされています(法人税法第75条の2第1項)。
ウ 市町村長は、法第321条の8の規定による申告書の提出があった場合において、当該申告に係る均等割額がその調査したところと異なることを発見したときは、これを更正するものとされています(法第321条の11第1項)。
(3) 法人市民税均等割の税率について
ア 法人に対して課する均等割の税率は、資本金等の額及び市町村内の事務所又は事業所の従業者数によって、300万円、175万円、41万円、40万円、16万円、15万円、13万円、12万円、5万円の9段階に分けられています(法第312条第1項及び平成29年大阪市条例第11号による改正前の大阪市市税条例(以下「条例」という。)第30条の2第1項)。 
イ 法第312条第3項第1号に掲げる法人の資本金等の額が、同号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額又は出資金の額に満たない場合における同条第1項の適用については、同項の表の第2号から第9号までの規定中「資本金等の額が」とあるのは「第3項第1号に定める日現在における資本金の額及び資本準備金の額の合算額又は出資金の額が」とするとされています(法第312条第6項)。
2 本件処分を申告期限前に行ったことの妥当性について
 審査請求人は、申告期限の延長の特例申請を提出しているので、申告期限は平成28年9月30日であり、処分庁から同年9月9日付けで法人市民税更正通知書が送付されてきたのは時期尚早であると主張しています。
 しかしながら、法人市民税の申告納付について、法第321条の11第1項においては、市長は確定申告書の提出があった場合には、当該申告に係る均等割額がその調査したところと異なることを発見した時はこれを更正するものとしており、当該更正を申告期限前に行うことを妨げる規定は法上存しません。また、審査請求人は、この当時、正当な申告書を提出しているとの判断の下、修正申告を行う意思はなかった旨主張していることから、申告期限前に更正通知書の送付を受けたことにより、審査請求人に特段の不利益等が生じたものとも認められません。
 よって、処分庁が確定申告書及び添付書類に基づき、同月9日に本件処分を行っていることは、違法ないし妥当性を欠いているとは認められません。
3 本件処分における均等割に係る適用税率の適正性について
 審査請求人は、確定申告書に記載した資本準備金の額は、企業会計上正しくない処理によるものであり、審査請求人の資本準備金は○万円強しかない旨主張しています。
 しかしながら、株式会社の資本準備金の額は、株式会社における決算承認等、会社法等に則った会社の意思ないし手続により確定されるものであり、処分庁としても、少なくとも、納税者からの審査請求において、当該審査請求人が処分庁あてに提出した確定申告書等に記載されている資本金等の額、資本金又は出資金、資本準備金の額が株式会社たる納税者の決算承認等を前提とするものである限りは、これらの数字を前提に均等割額を判定することになります。
 これを本件においてみるに、審査請求人は、資本準備金の額について「正しくは損益計算書の特別利益に計上しその他の利益準備金に計上するのが妥当な処理であると思いますが、あまりにも目立ちすぎると思い、資本準備金が無難と判断し企業会計上正しくない処理をしてしまいました。」と述べており、企業会計におけるこれら会計処理の妥当性は別にして、これら会計処理を会社の意思ないし手続において行っていることを前提としています。また、審査請求人において、確定申告書提出後に、本件処分の前提となる会計処理を会社法等に則って是正したなどとの特段の事情も認められません。よって、本件においては、審査請求人が提出した確定申告書等に記載された資本準備金の額こそが会社の決算承認等を前提とした額であると認められます。
 以上を前提に、審査請求人の平成27年7月1日から平成28年6月30日までの事業年度に係る法人市民税における均等割額を検討するに、平成27年の法改正により、同年4月1日以後に開始する事業年度分から、株式会社である納税者の「資本金等の額」が「資本金の額及び資本準備金の額の合算額」を下回る場合には、「資本金の額及び資本準備金の額の合算額」が課税区分の基準とされるところ、審査請求人が提出した確定申告書等においては、「資本金等の額」が「資本金の額及び資本準備金の額の合算額」を下回っているにもかかわらず、「資本金等の額」を基に法人市民税均等割額を算出していることから、その内容は法令の定めに沿ったものとは認められません。
 したがって、当該「資本金の額及び資本準備金の額の合算額」を前提に均等割額を算出した本件処分は適法かつ妥当なものと認められます。
4 結論
 以上のとおり、本件処分に違法又は不当な点は認められず、本件審査請求は理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決します。

平成29年4月24日
大阪市長 吉村 洋文

裁決書(平成29年度答申第1号)

Adobe Acrobat Reader DCのダウンロード(無償)別ウィンドウで開く
PDFファイルを閲覧できない場合には、Adobe 社のサイトから Adobe Acrobat Reader DC をダウンロード(無償)してください。

SNSリンクは別ウィンドウで開きます

  • Facebookでシェア
  • Xでポストする
  • LINEで送る

探している情報が見つからない

このページの作成者・問合せ先

大阪市総務局行政部行政課法務グループ
住所: 〒530-8201 大阪市北区中之島1丁目3番20号(大阪市役所4階)
電話: 06-6208-7443 ファックス: 06-6229-1260

メール送信フォーム

このページへの別ルート

表示