ページの先頭です

平成29年5月26日付け裁決

2023年2月17日

ページ番号:420470

裁決書

審査請求人  ○○○○
処分庁  大阪市長      

 審査請求人が平成28年7月9日付けで提起した、処分庁による平成28年7月6日付け審査請求人が株式会社○○○○銀行○○○○支店(以下「第三債務者」という。)に対して有する○○○○預金(口座番号第○○○○号)払戻請求権の差押処分(以下「本件処分」という。)に係る審査請求(平成28年度財第7号。以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決します。

主文
 本件審査請求を棄却します。

事案の概要
1 審査請求人は、処分庁に対し、平成22年度給与支払報告書(以下「本件給与支払報告書」という。)を提出しました。
2 処分庁は、地方税法(以下「法」という。)第321条の4第1項及び平成29年大阪市条例第11号による改正前の大阪市市税条例(以下「条例」という。)第49条第1項の規定に基づき審査請求人を特別徴収義務者と指定し、平成22年度給与所得に係る市民税及び府民税特別徴収税額(以下「平成22年度特別徴収税額」という。)の賦課決定(以下「先行処分」という。)を行い、平成22年8月2日、審査請求人に対し、先行処分に係る給与所得等に係る市民税及び府民税特別徴収税額の決定・変更通知書(以下「決定通知書」という。)を発送しました。
3 審査請求人は、平成22年度特別徴収税額について、平成23年2月分から同年5月分までの月割額(以下「未納税額」という。)を各納期限までに納入しませんでした。
4 処分庁は、未納税額について、次のとおり審査請求人あて督促状を発付しました。
(1) 平成23年2月分督促状 平成23年4月4日 
(2) 平成23年3月分督促状 平成23年5月10日
(3) 平成23年4月分督促状 平成23年6月8日 
(4) 平成23年5月分督促状 平成23年7月4日
5 審査請求人は、平成23年7月7日及び平成28年4月11日の2回、処分庁に対し、先行処分について善処を依頼する旨の書類をそれぞれ提出しましたが、処分庁は平成22年度特別徴収税額を減少させる賦課決定を行いませんでした。
6 処分庁は、平成28年7月6日、審査請求人に対し、本件処分を行い、同日、差押調書謄本を第三債務者に交付しました。
7 審査請求人は、平成28年7月9日、大阪市長に対し、本件処分の解除を求めて審査請求をしました。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 先行処分について
 先行処分は、既に退職している従業員○○○○(以下「退職者」という。)に係る特別徴収税額を含むものであり、無効である。
ア 退職者に係る平成21年度給与所得に係る市民税及び府民税特別徴収税額の未納額は、退職者が平成22年5月末に退職したことに伴い、○○○○円となっている。審査請求人は、処分庁に届ける必要はないものと考えていた。しかるに、先行処分は、退職前に提出された給与支払報告書の記載に基づきなされたものであり、当を得ない。
イ 先行処分に係る決定通知書が審査請求人に送付されたが、審査請求人の会社には、平成22年6月以降、退職者は在籍しておらず、給料の支払がないから、審査請求人は特別徴収するすべがなかった。
ウ 処分庁は、先行処分後、次の事情があったのに、減額更正決定をせず先行処分を放置した。
(ア) 退職者は、平成22年12月、市民税及び府民税の賦課決定税額とその納付相談のため○○○○市税事務所に赴いた際、退職者に係る平成22年度特別徴収税額が審査請求人の預金口座から引き落とされていたことを知った。その際、○○○○市税事務所から○○○○市税事務所に連絡を取ってもらい、「新たな課税手続きと納付方法」を行う手はずとなっていた。
(イ) 審査請求人は、処分庁から「差押え予告」の送達を受けたことから、平成23年7月7日付けの大阪市長あて「特別徴収住民税納付に係る嘆願書」(以下「嘆願書」という。)でもって、事務処理進捗を申し立てた。
(ウ) 審査請求人は、平成28年4月、処分庁から2通の納付書の送達を受けたことから、その間の事情を再検討されるよう要望書を提出した。
(2) 本件処分について
ア 先行処分は、上記(1)のとおり無効である。
イ 未納税額については消滅時効が完成している。審査請求人は、処分庁が発送したと主張する平成28年3月9日付け催告書の送達を受けていない。審査請求人が受領した書類は、同日付けの「納付書」であって、「催告書」とは似て非なる書類であり、「催告」にあたらない。
ウ よって、本件処分は違法不当であるため、速やかに解除されるべきである。
2 処分庁の主張
(1) 課税処分と滞納処分の関係について
 課税処分と滞納処分は別個独立のものであり、また、先行処分について、重大かつ明白な瑕疵がある場合を除き、先行処分の違法を理由として本件処分の取消しを求めることはできない。
(2) 先行処分について
ア 処分庁は、平成22年6月15日、審査請求人から、退職者を含む5人分の給与支払報告書の提出を受け、同年8月2日、退職者を含む5人分に関する先行処分を行い、先行処分に係る決定通知書を審査請求人に対して送付した。
イ 通常の取扱いによる郵便によって地方団体の徴収金の賦課徴収に関する書類を発送した場合、その郵便物は通常到達すべきであった時に送達があったものと推定される(法第20条第4項)。先行処分に関する決定通知書の送達については、処分庁は法第20条第5項に規定する記録を作成しており、同記録の記載に基づき、その送達がなされた事実は推定される。
ウ 異議申立ては、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならないところ(平成26年法律第68号による改正前の行政不服審査法第45条)、審査請求人は、先行処分に関して異議申立期間内に異議申立てをしていない。
エ 審査請求人は、処分庁が平成22年8月2日に先行処分に係る決定通知書を送付していることから、法第321条の5第3項及び平成28年総務省令第39号による改正前の地方税法施行規則(以下「規則」という。)第9条の5の規定により、同年9月10日までに異動届出書を提出する義務がある。
オ 異動届出書の提出義務について、処分庁特別徴収担当職員は、平成23年7月7日、審査請求人代表者の娘さんへ説明し、異動届出書の用紙及び返信用の封筒を送付している。また、平成25年11月27日にも、処分庁納税担当職員から審査請求人経理担当へ説明している。
カ 以上の点から、先行処分に重大かつ明白な瑕疵はない。
(3) 本件処分について
ア 本件処分は、審査請求人が平成22年度特別徴収税額を各納期限までに完納しておらず、当該平成22年度特別徴収税額に係る督促状を発した日から起算して10日を経過した後においても完納していないことから、当該平成22年度特別徴収税額を徴収するためにされたものであり、差押えに係る要件を満たしている。
 また、差押えの解除の要件は、納付、充当、更正の取消しその他の理由により差押えに係る国税の全額が消滅したとき又は差押財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び差押えに係る国税に先立つ他の国税、地方税その他の債権の合計額を超える見込みがなくなったときとされ(法第331条第6項及び国税徴収法(以下「徴収法」という。)第79条第1項)、本件処分は差押えの解除の要件に該当しない。
イ 地方税の徴収権は、法定納期限の翌日から起算して5年間行使しないことによって、時効により消滅する(法第18条第1項)。一方、地方税の徴収権の時効は、督促に係る部分の地方団体の徴収金につき、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までの期間中断し(法第18条の2第1項第2号)、また、地方税の徴収権の時効については、法に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用するとされ(法第18条第3項)、催告は、6か月以内に差押えをしなければ、時効中断の効力を生じないとされている(民法第153条)。この点、処分庁は審査請求人に対し平成28年3月9日付けで催告書(納税注意書)を発送したが、当該催告書の送付にあたっては、その書類の名称、その送達を受けるべき者の氏名、あて先及び発送の年月日を確認するに足りる記録を作成していることから、時効完成前の送達が推定され、平成28年7月6日に本件処分がされたことにより時効中断の効力が生じている。
ウ よって、本件処分は、適正であり解除する理由がない。

理由
1 先行処分及び本件処分に係る法令の規定
(1) 個人の道府県民税の賦課徴収について
 個人の道府県民税の賦課徴収は、特別の定めがある場合を除くほか、当該道府県の区域内の市町村が、当該市町村の個人の市町村民税の賦課徴収の例により、当該市町村の個人の市町村民税の賦課徴収と併せて行うこととされています(法第41条第1項前段)。
 個人の道府県民税の納税義務者又は特別徴収義務者は、その道府県民税に係る地方団体の徴収金を、個人の市町村民税に係る地方団体の徴収金の納付又は納入の例により、これとあわせて納付し、又は納入しなければならないこととされています(法第42条第1項)。
(2) 個人の市町村民税及び道府県民税の賦課期日について
 個人の市町村民税及び道府県民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とされています(法第39条及び第318条)。
(3) 給与支払報告書の提出義務について
 1月1日現在において給与の支払をする者で、当該給与の支払をする際所得税法第183条の規定によって所得税を徴収する義務があるものは、同月31日までに、総務省令の定めるところによって、当該給与の支払を受けている者についてその者に係る前年中の給与所得の金額その他必要な事項を当該給与の支払を受けている者の1月1日現在における住所所在の市町村別に作成された給与支払報告書に記載し、当該市町村の長に提出しなければならないこととされています(法第317条の6第1項)。
(4) 給与所得に係る個人の市町村民税の特別徴収について
 市町村は、納税義務者が前年中において給与の支払を受けた者であり、かつ、当該年度の初日において給与の支払を受けている者(支給期間が1月を超える期間により定められている給与のみの支払を受けていることその他これに類する理由があることにより、特別徴収の方法によって徴収することが著しく困難であると認められる者を除く。)である場合においては、当該納税義務者に対して課する個人の市町村民税のうち当該納税義務者の前年中の給与所得に係る所得割額及び均等割額の合算額は、特別徴収の方法によって徴収するものとされています(法第321条の3第1項本文)。
(5) 給与所得に係る特別徴収義務者の指定について
 市町村は、前条の規定により特別徴収の方法によって個人の市町村民税を徴収しようとする場合には、当該年度の初日において同条の納税義務者に対して給与の支払をする者のうち所得税法第183条の規定により給与の支払をする際所得税を徴収して納付する義務がある者を特別徴収義務者として指定し、これに徴収させなければならないこととされています(法第321条の4第1項前段及び条例第49条第1項)。
(6) 給与所得に係る個人の市町村民税の特別徴収義務者の納入義務について
 特別徴収義務者は、当該年度の初日の属する年の5月31日までに給与所得に係る特別徴収税額を特別徴収の方法によって徴収する旨の通知(以下「決定通知」という。)を受け取った場合にあっては、決定通知に係る給与所得に係る特別徴収税額の12分の1の額を6月から翌年5月まで、当該期日後に決定通知を受け取った場合にあっては、当該通知に係る給与所得に係る特別徴収税額を決定通知のあった日の属する月の翌月から翌年5月までの間の月数で除して得た額を決定通知のあった日の属する月の翌月から翌年5月まで、それぞれ給与の支払をする際毎月徴収し、その徴収した月の翌月の10日までに、これを当該市町村に納入する義務を負うこととされています(法第321条の5第1項本文)。
(7) 異動届出書の提出義務について
 特別徴収義務者は、その者が徴収すべき給与所得に係る特別徴収税額に係る個人の市町村民税の納税義務者が当該特別徴収義務者から給与の支払を受けないこととなった場合には、その事由(以下「異動事由」という。)が発生した日の属する月の翌月以降の月割額について、徴収して納入する義務を負わないこととされ(法第321条の5第2項本文)、この場合においては、特別徴収義務者は、総務省令で定めるところにより、次の事項を記載した異動届出書を当該特別徴収に係る納入金を納入すべき市町村の長に提出しなければならないこととされています(法第321条の5第3項)。
ア 給与の支払を受けないこととなった納税義務者の氏名
イ その者に係る給与所得に係る特別徴収税額のうち既に徴収した月割額の合計額
ウ その他必要な事項。なお、規則で定める様式においては、異動後の未徴収税額の徴収方法、1月1日以降退職時までの給与支払額及び控除社会保険料額等を記載することとされています。
 また、異動届出書は、異動事由が発生した日の属する月の翌月の10日までに提出しなければならず、異動事由が4月2日から5月31日までの間に生じた場合における異動事由が生じた者に係る市町村民税を当該年度から新たに特別徴収の方法によって徴収すべき市町村の長に対する異動届出書の提出は、決定通知のあった日の属する月の翌月の10日までとされています(規則第9条の5)。
(8) 市町村民税の滞納処分について
 市町村民税に係る滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき、又は市町村民税に係る滞納者が繰上徴収に係る告知により指定された納期限までに市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押さえなければならないこととされています(法第331条第1項)。
 また、市町村民税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については、徴収法に規定する滞納処分の例によることとされています(同条第6項)。
(9) 消滅時効について
 地方税の徴収権は、法定納期限の翌日から起算して5年間行使しないことによって、時効により消滅することとされています(法第18条第1項)。また、地方税の徴収権の時効は、督促に係る部分の地方団体の徴収金については、その効力が生じた時に中断し、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までの期間を経過した時から更に進行することとされています(法第18条の2第1項第2号)。
 また、地方税の徴収権の時効については、法第1章第11節第2款に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用することとされています(法第18条第3項)。民法の規定では、催告は、6か月以内に差押え等をしなければ、時効の中断の効力を生じないとされています(民法第153条)。
2 先行処分について
 審査請求人は、先行処分は無効である旨を主張しています。
 課税処分と滞納処分は目的を異にする別個独立した行政処分であることから、違法性は承継されず、課税処分が重大かつ明白な瑕疵により無効であるか、違法を理由として取り消された場合でない限り、差押処分の基礎となる課税処分の違法を理由として差押処分の取消しを求めることはできないと解されます。したがって、まず、先行処分に重大かつ明白な瑕疵が存するか、次のとおり判断します。
(1) 退職者に係る特別徴収税額を含む先行処分を行ったことについて
 審査請求人は、平成22年5月末に退職した退職者を含む同年8月2日になされた先行処分は無効であると主張しています。
 しかしながら、1(4)のとおり、市町村は、納税義務者が前年中において給与の支払を受けた者であり、かつ、当該年度の初日において給与の支払を受けている者である場合においては、当該納税義務者に対して課する個人の市町村民税のうち当該納税義務者の前年中の給与所得に係る所得割額及び均等割額の合算額は、特別徴収の方法によって徴収することとするとされています。
 また、1(3)のとおり、1月1日現在において給与の支払をする者で、所得税法第183条の規定によって所得税を徴収する義務があるものは、同月31日までに、総務省令の定めるところによって、当該給与の支払を受けている者についてその者に係る前年中の給与所得の金額その他必要な事項を当該給与の支払を受けている者の1月1日現在における住所所在の市町村別に作成された給与支払報告書に記載し、当該市町村の長に提出しなければならないこととされています。
 この点、本件給与支払報告書は退職者に係る個人別明細書を含めて提出されており、退職者が平成22年5月末に退職した事実を窺わせるような記載はありません。
 よって、本件処分は、審査請求人が提出した本件給与支払報告書に基づいてなされたものと認められ、何ら瑕疵はなく、審査請求人の主張を採用することはできません。
(2) 平成22年度特別徴収税額を減少させる賦課決定を行わなかったことについて
 審査請求人は、嘆願書の提出により、処分庁が経緯を再検討し、更正決定の課税通知を行うべきであった旨を主張しています。
 この点、1(7)のとおり、特別徴収義務者は、その者が徴収すべき給与所得に係る特別徴収税額に係る個人の市町村民税の納税義務者が当該特別徴収義務者から給与の支払を受けないこととなった場合には、異動事由が発生した日の属する月の翌月以降の月割額について、総務省令で定めるところにより、異動届出書を当該特別徴収に係る納入金を納入すべき市町村の長に提出しなければならないと規定しているところ、審査請求人が提出した嘆願書には「給与の支払を受けないこととなった納税義務者の氏名、その者に係る給与所得に係る特別徴収税額のうち既に徴収した月割額の合計額その他必要な事項の記載」がないため、当該嘆願書を異動届出書と認めることはできません。
 また、処分庁は、先行処分に係る決定通知書を審査請求人に送付する際に、異動届出書の用紙を同封しており、さらに、処分庁は、平成23年7月19日、審査請求人に対し異動届出書の提出義務についての説明を行っていることから、審査請求人には、当該特別徴収税額を減少させる手続の機会はあったと解されますが、異動届出書を提出しませんでした。
 以上から、処分庁が税額を変更する賦課決定を行わなかったことについて瑕疵はなく、審査請求人の主張を採用することはできません。
 以上の点から、先行処分に重大かつ明白な瑕疵はないものと判断します。
3 本件処分の適法性及び妥当性について
(1) 本件処分について
 前記1(8)のとおり、市町村民税に係る滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押さえなければならないこととされています。
 この点につき、審査請求人は、平成22年度特別徴収税額について、いずれも督促状を発した時から起算して10日を経過した日までに完納していません。
 また、前記1(9)のとおり、地方税の徴収権の時効は、督促についてはその効力が生じた時に中断し、督促状を発した日から起算して10日を経過した時からさらに進行するとされ、その後、差押え等による時効を中断させる行為がない場合は5年を経過した日に地方税の徴収権が消滅するものです。
 この点、本件の平成22年度特別徴収税額の徴収権が時効により消滅する年月日は、それぞれ督促状を発した日から10日を経過した日を起算日として5年を経過した日となるため、次のとおりとなります。
ア 平成23年2月分 平成28年4月15日
イ 平成23年3月分 平成28年5月21日
ウ 平成23年4月分 平成28年6月19日
エ 平成23年5月分 平成28年7月15日
 処分庁は、本件処分に先立ち、平成22年度特別徴収税額の徴収権の上記時効成立年月日より前の平成28年3月9日付けで、書類の名称、送達を受けるべき者の氏名、あて先及び発送年月日を確認するに足りる記録を作成した上で催告書を発付しています。そして、法第20条第4項によれば、「通常の取扱いによる郵便又は信書便によって第1項に規定する書類を発送した場合には、通常到達すべきであった時に送達があったものと推定する。」と規定されているところ、審査請求人の口頭意見陳述によれば、後記2のとおり催告書と一体のものである収入報告書の送達を受けた事実については争っていないことから、催告書は平成28年3月中旬ごろに審査請求人に到達したものと認めることが相当です。
 そして、その後6か月以内の平成28年7月6日付けで本件処分が行われていることから、前記1(9)のとおり、上記催告書が通常到達すべきであった時から時効中断の効力が生じることとなり、平成22年度特別徴収税額の徴収権が時効により消滅する時期は、平成33年3月中旬ごろになるものと認められます(民法第153条)。
 よって、本件処分は、時効中断中の平成28年7月6日に行われたものであるから、適法であると認められます。
(2) 催告書について
 審査請求人は、平成28年3月9日付け発行の納付書は受理しているが、当該納付書には「納税注意書」と記載された部分が添付されていないため、処分庁が言う「催告書」とは似て非なる書類であり、催告書の送達は受けていない旨を主張しています。
ア 処分庁が発行した「納税注意書」は、税務事務システム(以下「税システム」という。)上、収入報告書と「納税注意書」が一体となって出力される一枚の様式であり、審査請求人が持参した納付書の収入報告書部分の確認番号と、処分庁が当該納税注意書を出力した「納付書マスタ」の確認番号が一致すること並びに税システムで送付物の発送等に係る記録の確認ができる「送付物等状況一覧表」及び「文書発送整理簿」により審査請求人あてに当該納付書が発送されたことが確認できます。また、「納税注意書」は、送達を受けた審査請求人において切り離すことができるものとなっていますが、処分庁が、収入報告書部分と「納税注意書」と記載された部分をあえて切り離して発送するとは考えにくく、「納税注意書」と記載された部分が添付されていなかったとの審査請求人の主張を採用することはできません。
イ 催告とは、債権者が債務者に対して債務の履行を要求する意思の通知であるところ、処分庁が発送した「納税注意書」には、「取扱期限までに、裏面の各納付場所でお納めください。」と記載されていることから、「債務の履行を要求する意思の通知」と認められます。したがって、処分庁が発送した「納税注意書」は、催告書に該当します。
ウ 仮に、「納税注意書」と記載された部分が欠落していたとしても、収入報告書には「納付内容」、「氏名」、「税額・延滞金」及び「取扱期限」等が明示されており、権利行使の意思が含まれていると考えられるため、催告書に該当するものと解されます。
(3) 先行処分との関係について
 上記2で述べたとおり、先行処分に重大かつ明白な瑕疵は認められないことから、先行処分の違法を理由として本件処分を解除することはできません。
4 結論
 以上のとおり、本件処分に違法又は不当な点は認められず、本件審査請求は理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決します。

平成29年5月26日
大阪市長 吉村 洋文

裁決書(平成29年度答申第2号)

Adobe Acrobat Reader DCのダウンロード(無償)別ウィンドウで開く
PDFファイルを閲覧できない場合には、Adobe 社のサイトから Adobe Acrobat Reader DC をダウンロード(無償)してください。

SNSリンクは別ウィンドウで開きます

  • Facebookでシェア
  • Xでポストする
  • LINEで送る

探している情報が見つからない

このページの作成者・問合せ先

大阪市総務局行政部行政課法務グループ
住所: 〒530-8201 大阪市北区中之島1丁目3番20号(大阪市役所4階)
電話: 06-6208-7443 ファックス: 06-6229-1260

メール送信フォーム

このページへの別ルート

表示