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平成29年10月20日付け裁決

2023年2月17日

ページ番号:420987

裁決書

審査請求人 ○○○○
処分庁 大阪市長

 審査請求人が平成29年5月25日付けでした、処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)による平成29年5月16日付け法人市民税減免不許可処分(以下「本件処分」という。)に係る審査請求(平成29年度財第9号。以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決します。

主文

 本件審査請求を棄却します。

事案の概要
1 審査請求人は、平成29年5月3日付けで、郵送により平成29年度法人市民税の均等割申告書を提出するとともに、同日付けで、平成28年4月1日から平成29年3月31日までの期間の法人市民税についての減免申請書を処分庁に提出しました。
2 処分庁は、平成29年大阪市条例第63号による改正前の大阪市市税条例(以下「市税条例」という。)第60条第1項第6号に定める期限を過ぎて減免申請書が提出されたことを理由として、平成29年5月16日付けで本件処分を行いました。
3 審査請求人は、平成29年5月25日付けで、大阪市長に対し本件処分の取消しを求めて本件審査請求を行いました。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 次のとおり災害等やむを得ない理由による期限延長を認めるべきである。
ア 平成29年4月29日に車上荒らしの被害にあい、車内よりすでに税理士に依頼して提出する前に印鑑を押すだけの状態の申請書類の入ったカバンを盗まれ、さらに仕事で利用している両替機の鍵を盗まれた。
イ 対応が遅れると2億円相当の被害を出すことになるため、二次災害を事前に防ぐために、5月2日の深夜2時頃まで、鍵の交換作業に追われ、自身での申請書類の対応が物理的に不可能な状態になり、税理士に依頼して書類を提出しようとした。
ウ 連休ということもあり、1日に税理士に書類を準備してもらったが、当日は車上荒らしの後処理で身動きがとれず印鑑を押す事が不可能であり、他に代替的な手段をとることが物理的に不可能であった。
エ 処分庁は、代替的手段によって期限までに申告納付手続をすることが可能であった場合には、地方税法(以下「法」という。)第20条の5の2に規定する「災害その他やむを得ない理由」に該当しないと主張するが、車上荒らしという犯罪行為に対して、できる限りの復旧作業を行ったことが「やむを得ない理由」に仮に該当しないのであれば、車上荒らしという犯罪行為で書類を盗まれたことに対する過失があるような言い回しであり、犯罪行為の被害者にとってあまりにも厳しすぎる対応である。
(2) 仮に1週間から2週間書類の到達が遅れたのであれば弁明のしようが無いにしろ、実質1から2営業日程度の到達遅延は、郵送での誤差の範囲内であり、市税の管理業務に対して多大な影響を与えたとも言えず、本件処分は、民法第1条第2項に規定する「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」とのいわゆる「信義誠実の原則」(以下「信義則」という。)に反する決定であると解する。
2 処分庁の主張
(1) 本件処分理由について
 法第321条の8第19項の規定に基づき、公共法人等は、毎年4月30日までに、前年4月1日から3月31日までの期間中の事実に基づいて算定した均等割額を記載した申告書を、当該期間中において有する事務所、事業所又は寮等所在地の市町村長に提出し、及びその申告した均等割額を納付しなければならないとされている。
 本市においては、市税条例第60条第1項第6号の規定に基づき、初めて市内に事務所、事業所又は寮等を有することとなったものの減免申請書の提出期限は5月31日、それ以外のものの減免申請書の提出期限は、当該法人市民税の納期限としている。
 審査請求人は、平成27年10月15日に設立されており、同号に規定する「初めて市内に事務所、事業所又は寮等を有することとなったもの」には該当しないことから、審査請求人が法人市民税の免除を受けようとする場合は、前記の納期限までに減免申請書を提出しなければならないが、減免申請書の提出が期限後であったため、これを不許可とした。
(2) 災害等による期限の延長について
 本件審査請求は、減免の申請に対する不許可処分についてなされたものであり、申告期限の期間延長についてなされたものではないこと、また、申告期限の期間延長の申請をしていないことから、期間延長の適否について判断すべきものではないが、法第20条の5の2の規定は、申告納付手続を委任するなどの代替的手段によって期限までに申告納付手続を執ることが可能であった場合には、「災害その他やむを得ない理由」に該当しないものと解され、審査請求人は税理士へ申告納付手続を依頼していることから、本件処分への適用はない。
(3) 郵送での誤差について
 法第20条の5の3の規定(郵送等に係る書類の提出時期の特例)に基づき、郵便又は信書便により書類が提出されたときは、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日にその提出がされたとみなすとされている。処分庁は、平成29年度市民税の均等割申告書及び減免申請書を平成29年5月8日に収受しているが、前述の規定により通信日付印に表示された平成29年5月3日付けの提出とみなすこととなるため、到着遅延について誤差の範囲を考慮する余地はない。
(4) 信義則の適用について
 租税法において信義則とは、「相手方の合理的な期待や信頼を裏切ってはならない。」という原則であり、誤った言動を信じて行動をした者の期待や信頼を保護することが目的であるとされている。本件処分は、審査請求人が減免申請書を提出した日が、市税条例第60条第1項第6号に定める日を過ぎていたため不許可としたものであり、信義則に反するものではない。
 なお、法人市民税の減免申請書の提出期限については、平成29年3月24日付けで本市より審査請求人あてに送付した法人市民税申告納付依頼状において、法人市民税(均等割)申告書の提出期限を平成29年5月1日と明記し、同封している法人市民税減免申請書には「この申請書を法人市民税申告書の提出期限までに提出されないときは、減免されませんのでご注意ください。」と明記している。

理由
1 本件審査請求に係る法令等の規定
(1) 特定非営利活動法人に係る法人市民税の申告納付について
 特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人(以下「特定非営利活動法人」という。)で均等割のみを課されるものは、毎年4月30日までに、均等割額を記載した申告書を、前年4月1日から3月31日までの期間中において有する事務所、事業所又は寮等所在地の市町村長に提出し、及びその申告した均等割額を納付しなければならないとされています(法第294条第7項、第312条第3項第4号及び第321条の8第19項)。
(2) 期限の特例について
 法又は条例により定められている期限が民法第142条に規定する休日に該当するときは、法又は条例の規定にかかわらず、これらの日の翌日をその期限とみなすこととされています(法第20条の5第2項)。
(3) 特定非営利活動法人に係る法人市民税の減免について
 市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において市町村民税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、市町村民税を減免することができるものとされており(法第323条本文)、本市は、次のとおり市税条例において減免の要件を定めています。
 特定非営利活動法人で収益事業を行わないものに対しては、申請に基づき市民税を免除することとされており(市税条例第58条第3号)、当該免除を受けようとする者のうち、市税条例第60条第1項第6号イに規定する初めて市内に事務所、事業所又は寮等を有することとなったもの以外のものは、同条第2項各号に掲げる事項を記載した申請書にその証拠となる書類を添付して、当該市民税の納期限までに市長に提出しなければならないとされています(同条第1項第6号ア)。
(4) 災害等による期限の延長について
 地方団体の長は、災害その他やむを得ない理由により、法又はこれに基づく条例に定める申告等に関する期限までに、申告等をすることができないと認めるときは、当該地方団体の条例の定めるところにより、当該期限を延長することができるとされています(法第20条の5の2)。
 本市においては、市長は、広範囲にわたる災害その他やむを得ない理由により、法又は市税条例に定める申告等に関する期限までに、申告等をすることができないと認めるときは、その理由のやんだ日から2月以内に限り、地域、期日その他必要な事項を指定して当該期間を延長することとしています(市税条例第13条第1項)。
 また、市長は、災害その他やむを得ない理由により、申告等に関する期限までに、申告等をすることができないと認めるときは、第1項の規定の適用がある場合を除き、申告等をすべき者の申請により、その理由のやんだ日から2月以内に限り、期日を指定して当該期限を延長し(同条第3項)、当該期限の延長を受けようとする者は、同項に規定する理由がやんだ後速やかに、申請書にその証拠となる書類を添付して、市長に提出しなければなりません(同条第4項)。
(5) 郵送等に係る書類の提出時期の特例について
 法又はこれに基づく条例の規定により一定の期限までになすべきものとされている申告等に関する書類が郵便又は信書便により提出されたときは、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日にその提出がされたものとみなすとされています(法第20条の5の3)。
2 本件処分理由の適法性について
 審査請求人である特定非営利活動法人は、平成27年10月15日に設立されており、市税条例第60条第1項第6号イに規定する、「初めて市内に事務所等を有することとなったもの」には該当しないことから、審査請求人が法人市民税の減免を受けようとする場合は、前記1(2)及び(3)のとおり、その納期限である4月30日(本年は4月30日が日曜日のため5月1日)までに法人市民税の減免申請書を提出しなければなりません。
 しかしながら、処分庁から提出のあった審査請求人が減免申請書の郵送に要した封筒の写しからは通信日付が平成29年5月3日であることが確認でき、法第20条の5の3の規定に基づき、審査請求人から減免申請書が提出された日は同日とみなされることから、市税条例第60条第1項第6号に定める期限を過ぎて減免申請書が提出されたことを理由として、処分庁が本件処分を行ったことは適正です。
 なお、審査請求人は、郵送での誤差の範囲内である旨主張していますが、上記のとおり、到達遅延による郵送の誤差を考慮する余地はなく、審査請求人の主張には理由がありません。
3 災害等による申告等の期限の延長の適用について
 審査請求人は、法人市民税の減免申請について、災害その他やむを得ない理由による期限の延長を認めるよう求めていますが、審査請求人が減免申請をした時点において、市長が、市税条例第13条第1項に基づき申告等に係る期限を延長した事実は認められません。また、同条第3項は、災害その他やむを得ない理由により、申告等に関する期限までに、申告等をすることができないと認めるときは、第1項の規定の適用がある場合を除き、申告等をすべき者の申請により、その理由のやんだ日から2月以内に限り、期日を指定して当該期限を延長すると規定するところ、審査請求人から、同条第4項に規定する申告等の期限延長に係る申請書の提出があった事実は認められません。
 したがって、審査請求人の法人市民税の減免申請について期限の延長は認められません。
4 信義則の適用について
 民法第1条第2項においては、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」と規定されており、このいわゆる信義則とは、人は相手方の合理的な期待や信頼を裏切ってはならない、という原則であり、租税法においては、誤った言動等を信じて行動した納税者の期待や信頼を保護することが目的であると解されています。
 処分庁は、平成29年3月24日付けで審査請求人にあて送付した法人市民税申告納付依頼状において、法人市民税(均等割)申告書の提出期限を同年5月1日と明記し、同封している法人市民税減免申請書には、「この申請書を法人市民税申告書の提出期限までに提出されないときは、減免されませんのでご注意ください。」と明記しており、誤った教示を行っているとはいえず、信義則に反するとはいえないものです。

平成29年10月20日
大阪市長 吉村 洋文

裁決書(平成29年度答申第7号)

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