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平成29年10月19日付け裁決

2023年2月17日

ページ番号:420990

裁決書

審査請求人 ○○○○
処分庁 大阪市長 

 審査請求人が平成29年3月13日付けで提起した処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)による平成29年1月10日付け延滞金減免一部許可処分(以下「本件処分」という。)に係る審査請求(平成28年度財第19号。以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決します。

主文
 本件審査請求のうち、平成29年4月4日付けで減額の更正がされた延滞金に係る部分(以下「更正部分」という。)に係る審査請求を却下し、その余の部分を棄却します。

事案の概要
1 審査請求人は、平成22年6月30日、○○○○税務署に事業廃止届を提出しました。
2 平成23年3月○日に、大阪地方裁判所において、審査請求人に対する破産手続開始決定が行われました。その後、同年10月○日に、大阪地方裁判所において、審査請求人に対する免責許可決定が行われました。
3 本市○○○○市税事務所は、平成28年5月24日付けで、審査請求人に対して平成21年度及び平成23年度市・府民税に係る差押予告書及び納付書を送付し、処分庁は、同月27日付けで、審査請求人に対して引継予告通知書兼納付(納入)催告書を送付しました。
4 審査請求人は、平成28年6月10日付けで、処分庁に対して徴収猶予の申請を行い、これに対して、処分庁は、当該申請について許可決定を行い、同月27日付けで審査請求人に通知しました。
5 審査請求人は、平成28年12月1日、平成21年度及び平成23年度の市・府民税本税(以下「本税」という。)を完納しました。
6 審査請求人は、平成28年12月26日、平成21年度市・府民税に係る延滞金(以下「平成21年度延滞金」という。)及び平成23年度市・府民税に係る延滞金(以下「平成23年度延滞金」という。)について、その全額の免除を求めて処分庁に対し申請(以下「本件申請」という。)をしました。
 これに対して、処分庁は、平成29年1月4日付けで、平成23年度延滞金についてのみ、その全額の免除を認める本件処分を行い、同月10日付けでその旨を審査請求人に通知しました。
7 審査請求人は、平成29年3月13日、本件処分のうち平成21年度延滞金について減免を認めなかった部分の取消し及び全額の免除を求めて、大阪市長に対し審査請求を行いました。
8 処分庁は、平成29年4月4日付けで、本件処分について、平成21年度延滞金のうち平成22年6月30日以降に加算された部分について免除する旨の更正をし、その旨を審査請求人に通知しました。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 本税については、平成21年度及び平成23年度ともに、「納税者又は特別徴収義務者がその事業を廃止し、又は休止したとき」(平成29年大阪市条例第11号による改正前の大阪市市税条例(以下「条例」という。)第6条の2第1項第3号)の該当事由があるとして、徴収猶予につき許可がなされている。
 一方、延滞金の免除申請については、平成23年度延滞金についてのみ、「地方税法第15条第1項第5号(事業を廃止したとき)に該当」とし免除を認めているが、平成21年度本税についても、事業廃止(条例第6条の2第1項第3号)を根拠に徴収の猶予が認められているのであって、延滞金について別異に取り扱うことは整合性を欠く。
 したがって、平成21年度延滞金について、平成23年度延滞金と同様に、地方税法(以下「法」という。)第15条第1項並びに第15条の9第1項及び第2項を適用せず、全額免除しなかったことは、法令の適用に誤りがあり違法である。
(2) 審査請求人は、平成21年度本税については、平成28年の催告を受け、未納金の存在を知ったことから、その後、分割により全額を納付した。しかし、平成21年度延滞金については、その免除を許可しないことは、課税庁による徴収事務の怠慢を、納税者に責任を負わせるに等しく、看過し難いものであり、納税者間の公平を害するものである。
 条例第45条第6項は、「市長は、公益上その他の事由により特に必要があると認めるときは、申請に基づき、市規則で定めるところにより市民税を減免することができる。」と定めるところ、上記のような納税者間の公平を害する徴収事務の取扱いは、課税庁に対する納税者の信頼を大きく損なうものであって、公益又はそれに準じて、重大な事由であり、免除する必要性も高い。
 したがって、平成21年度延滞金については、条例第45条第6項に定める「公益上その他の事由」に該当し、免除する必要性があるというべきであり、同項を適用せず、平成21年度延滞金を免除しなかったことは裁量権の逸脱又は濫用であって、違法である。
(3) 破産手続を申し立てた審査請求人に対し、その後、何ら催告等を行うこともなく、長期間経過したことにより、審査請求人は平成21年度本税が未納であることを知る機会すらなく、未納金がないものと考えていた。他の公租公課については、所管課からの通知等により審査請求人は未納金を把握し、延滞金減免の申請を行っており、課税庁が適時に催告等を行っていれば、徴収緩和の申請等の手続を行っていたはずである。
 そして、何ら催告等を行わなかったことは、まさに、徴収事務を放置したに等しい。
 以上の本件の経緯を踏まえれば、課税庁が平成21年度本税のみならず延滞金を徴収する(免除を認めない)ことは、徴収事務の放置に起因する延滞金の発生・増額原因を納税者に押し付けるものというほかなく、そのような取扱いが、信義誠実の原則(以下「信義則」という。)に反するものであり、違法である。
(4) 万一、平成21年度延滞金の免除を認めないことが違法ではないと解する余地があったとしても、上記に述べた経緯からすれば、未納金の存在を知らされていなかった市民に対し、本税のみならず延滞金までを徴収することは極めて不当である。例えば、年に1回など定期的に未納付の状況につき文書で知らせる等の事務がなされていれば、審査請求人は適時に、しかるべき対応を行っていたものである。実際、審査請求人は平成21年度本税が未納状態であることを知ったのち、直ちに、納税に向けて誠実に対応のうえ、分割により完納に至ったものである。
 しかし、長期間にわたり、審査請求人は未納金の存在を知らされることもなかった。このような徴収事務の放置に起因する延滞金については、これを審査請求人に負担させることは誰の目から見ても不当である。
(5) 以上のとおり、平成21年度延滞金の免除を認めなかった本件処分は違法又は不当であるから、取消しの上、免除を許可するべきである。
2 処分庁の主張
(1)ア 平成21年度延滞金は、平成29年大阪市規則第82号による改正前の大阪市市税条例施行規則(以下「規則」という。)第7条の4第1項(法第15条の9第1項と同趣旨)を適用し、徴収猶予履行終了時に一部免除済みである。
イ 審査請求人につき、現在、相当の給与収入が認められること等から、規則第7条の4第2項(法第15条の9第2項と同趣旨)に規定する要件に該当せず、同規定を適用することはできない。
ウ 本件審査請求の対象となった処分は、前記ア及びイの処理後、残った平成21年度延滞金につき、規則第7条の4第5項による「延滞金軽減免除手続に係る要綱」(以下「要綱」という。)第1項に該当しないとして、審査請求人からの本件申請を不許可としたものである。
エ 本件審査請求を受け、改めて本件申請に係る審査を行った結果、平成21年度延滞金については、要綱第1項に規定する事業廃止の日(平成22年6月30日)以降に加算された延滞金については免除することが相当であると判断し、本件処分につき、延滞金減免を一部許可する更正通知書を平成29年4月4日付けで審査請求人あて発送している。
オ 平成21年度延滞金のうち事業廃止以前に係る部分についても、その事業につき著しい損失を受けた事実があれば減免が可能であるため、審査請求人に当該事実を証する資料等の提出を求めていたが、平成29年3月31日に、事実を証する書類はないと聴取したため、当該部分についての減免はされない旨を伝えている。
カ 結果、事業廃止以前の延滞金は残るものの、事業廃止以降の延滞金については全額免除となっている。
(2) 条例第45条は、市民税本税の減免に係る規定であり、延滞金に係るものではない。よって、同条を延滞金の減免に適用することはできない。
(3) 市・府民税(普通徴収)については、法第13条に基づき納税者に対し文書により納付の告知を行い、法第329条第1項に基づき納税者が納期限までにその徴収金を完納しない場合においては督促状を発しなければならないとされているが、その他の催告については法令等に定めはない。
 また、審査請求人は、徴収事務の放置に起因する延滞金の発生・増額原因を納税者に押し付けるものと主張しているが、納税は日本国憲法第30条に定められた義務であり、延滞金の発生・増額は納税義務者である審査請求人が市・府民税をその納期限までに完納しなかったことに起因するものである。
(4) 延滞金の免除は法令等で規定されており、その判断基準に基づき適正に処分したものであることから、審査請求人が主張するところの、未納金の存在を知らされなかったということについて、そのこと自体をもって本件処分の違法性及び妥当性に影響を及ぼすものではない。

理由
1 本件処分に係る法令等の規定
(1) 徴収猶予の要件等について
 次のいずれかに該当する事実がある場合において、その該当する事実に基づき納税者が地方団体の徴収金を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、その者の申請に基づき、1年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができるとされています(法第15条第1項)。
ア 納税者がその財産につき、震災、風水害、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかったとき
イ 納税者又はこれらの者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したとき
ウ 納税者がその事業を廃止し、又は休止したとき
エ 納税者がその事業につき著しい損失を受けたとき
オ アからエまでのいずれかに該当する事実に類する事実があったとき
(2) 納税の猶予の場合の延滞金の免除について
 事業の廃止等による徴収の猶予をした場合には、その猶予をした地方税に係る延滞金額のうち、当該事業の廃止等による徴収の猶予をした期間に対応する部分の延滞金額について、特例基準割合による延滞金の額を超える部分の金額は、免除するとされています(法第15条の9第1項及び附則第3条の2第3項)。
 また、徴収の猶予をした場合において、納税者の事業又は生活の状況によりその延滞金額の納付又は納入を困難とするやむを得ない理由があると認められるときには、市長は、その猶予をした地方税に係る延滞金につき、猶予した期間に対応する部分の金額でその納付又は納入が困難と認められるものを限度として免除することができるとされています(法第15条の9第2項第2号)。
(3) 公益上その他の事由による延滞金の免除について
 市長が公益上その他の事由により特に減免する必要があると認めるときは、延滞金を減免することができるとしています(規則第7条の4第5項)。
 「特に減免する必要があると認めるとき」については要綱に定めており、法第15条第1項に該当する事実があった場合には、延滞金額の全部(規則第7条の4第1項から第4項の規定により既に軽減されている場合にはその残額)を限度として減免することができるとしています(要綱第1項)。
(4) 個人の府民税に係る延滞金の減免について
 市町村長が個人の市町村民税又はその延滞金額を減免した場合においては、当該納税者に係る個人の道府県民税又は延滞金額についても当該市町村民税又は延滞金額に対する減免額の割合と同じ割合によって減免されたものとするとされています(法第45条)。
2 法第15条の9第1項及び第2項又は規則第7条の4第5項若しくは要綱第1項を適用せず、全額免除しなかったことの違法性について
(1) 法第15条の9第1項の適用について
 審査請求人は、平成21年度延滞金について、法第15条の9第1項を適用せず、全額免除しなかったことは、法令の適用に誤りがあり違法である旨主張しています。
 しかしながら、平成21年度延滞金については、平成23年度延滞金と同様、徴収猶予期間に対応する部分は、既に法第15条の9第1項の適用による減免を行っていることから、平成21年度延滞金について法第15条の9第1項の適用を求める審査請求人の主張には理由がありません。
(2) 法第15条の9第2項の適用について
 審査請求人は、法第15条の9第2項を適用せず、全額免除しなかったことは、法令の適用に誤りがあり違法である旨主張しています。
 しかしながら、審査請求人につき、相当の給与収入が認められること等から、同項の要件である、事業又は生活の状況によりその延滞金額の納付又は納入を困難とするやむを得ない理由があるとは認められません。
 したがって、平成21年度延滞金について法第15条の9第2項を適用することはできません。
(3) 規則第7条の4第5項及び要綱第1項の適用について
 前記1(3)のとおり、法第15条第1項に該当する事実があった場合には、延滞金額の全部(規則第7条の4第1項から第4項の規定により既に軽減されている場合にはその残額)を限度として減免することができるとしています(要綱第1項)。
 この点、平成21年度延滞金のうち、平成22年6月30日以降に加算された部分については、規則第7条の4第5項及び要綱第1項の規定を適用し、平成29年4月4日付けの更正により免除されています。したがって、本件審査請求のうち、更正部分に係るものについては、審査請求の利益がなく、不適法なものと判断します。
 一方、平成21年度延滞金のうち、更正部分を除く部分は、事業を廃止した平成22年6月30日より前に生じた延滞金であるところ、審査請求人が平成29年3月31日に、当該事業の廃止より前に、「その事業につき著しい損失を受けたとき」に該当する事実を証する書類はない旨、処分庁に申述していることからも、当該事実は認められません。したがって、処分庁が平成21年度延滞金のうち、更正部分を除く部分について免除をしなかったことは適法であると判断します。
3 条例第45条を適用し全額免除しなかったことについて
 審査請求人は、条例第45条第6項を適用し全額免除しなかったことは、裁量権の逸脱又は濫用であり違法である旨主張しています。
 しかしながら、条例第45条は、市民税本税の減免に係る規定であり、延滞金に係るものではありません。
 したがって、同条を適用して延滞金を免除することはできません。
4 信義則違反又は本件処分の不当性について
 審査請求人は、破産手続後、何ら催告等が行われなかったことは、徴収事務を放置したに等しく、処分庁が延滞金の免除を認めないことは、徴収事務の放置に起因する延滞金の発生・増額原因を納税者に押し付けるものであり、信義則に反し、違法であると主張しています。
 また、審査請求人は、長期間にわたり、未納金の存在を知らされることもなく、このような徴収事務の放置に基因する延滞金を負担させることは不当であると主張しています。
 しかしながら、審査請求人は、平成28年6月10日付けで処分庁に提出した徴収猶予等申請書に、平成23年3月○日に破産手続開始決定を受け、同年10月○日に免責決定を受けた当時の負債状況を表すものとして「滞納公租公課一覧表」を添付しているところ、同一覧表には平成21年度本税が記載されており、審査請求人の「未納金の存在を知らされなかった」との主張の前提事実が認められないところです。
 また、そもそも、延滞金は、所定の要件を充足することによって当然に納付義務が成立し、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき額が確定するものであり、本税の納付が完了しない限りは自動的に発生し続けるものです。
 さらに、処分庁が滞納者に対して改めて催告をすべきことを定めた法令上の規定はなく、特に本件においては、上記のとおり滞納者たる審査請求人自身も納税義務の存在を認識していたものと認められるため、処分庁が催告をしなかったことを徴収事務の放置等と評価することはできません。
 したがって、平成21年度延滞金のうち、更正部分を除く部分を免除しなかったことについては、信義則違反であるとも不当であるとも評価されるものではありません。
5  結論
 以上のとおり、本件審査請求のうち、更正部分に係る審査請求については、審査請求の利益がなく、不適法なものであるため行政不服審査法第45条第1項の規定により、また、その余の部分に係る審査請求については、本件処分に違法又は不当な点は認められず、理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決します。

平成29年10月19日
大阪市長 吉村 洋文

裁決書(平成29年度答申第8号)

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