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答申書(平成29年度答申第14号)

2023年2月17日

ページ番号:424779

諮問番号:平成29年度諮問第7号
答申番号:平成29年度答申第14号

答申書

第1  審査会の結論
 本件審査請求は棄却されるべきである。

第2  審査請求に至る経過
1 大阪市〇〇区〇〇において建築物新築工事のため本件処分の名宛人(以下「利害関係人」という。)は処分庁である大阪市長(以下「処分庁」という。)に対し、平成29年1月17日付けで道路法(昭和27年法律第180号。以下「法」という。)第32条第1項の規定に基づき、道路占用許可申請を行った。
2 処分庁は、法第32条第5項の規定に基づき、当該地を管轄する所轄警察署長に協議を行ったうえで、同条第1項の規定に基づき、条件を付して、平成29年1月31日付け大阪市指令〇〇第〇〇号により道路占用許可に関する処分(以下「本件処分」という。)を行った。
3 本件処分地沿いに存する建築物の所有者である審査請求人は、本件処分を不服として、平成29年2月22日、大阪市長(審査庁)に対し、本件処分の取消しを求める審査請求を行った。

第3  審理員意見書の要旨
 本件審査請求についての審理員意見書の要旨は次のとおりである。
1  審査請求人の主張
 道路占用許可を行った処分庁管理の道路(〇〇線)は、幅員3.64メートルで、相互通行の道路であり、建築基準法第42条第2項に規定されるいわゆる二項道路に該当し、建物を建築する場合はセットバックしなければならない道路である。
 本件処分地沿いの審査請求人が所有する建物(大阪市〇〇区〇〇所在の「〇〇(以下「所有ビル」という。)の1階部分に〇〇の保育園があり、頻繁に児童や父兄の出入りがあること、また、送迎車両の出入りが非常に困難になっていること、さらに一般車両が相互通行することもあり、その際には、所有ビルの1階部分の敷地内に車両が入りこむこともある非常に危険な状態であること、加えて、〇年〇月〇日に、本件処分地においてクレーン車の横転事故が発生した際には、本件許可の対象となっている道路には、交通整理員が置かれておらず、許可条件に反している状況であった。
 以上の事情によれば、本件の許可については、大阪市道路占用許可基準第2条(4)クに該当するため、本件処分の取り消しを求める。
2  処分庁の主張
 道路の占用物件は、法及び道路法施行令(昭和27年政令第479号。以下「令」という。)に規定されており、本件処分の占用物件も、令第7条第4号に規定されている「工事用仮囲、足場、詰所その他の工事用施設」に該当する。
 審査請求人は、「道路占用許可により中心後退から約1メートルを占用している」と主張しているが、道路占用許可申請書の添付書類である工事概要書によれば本件処分の足場の幅は路端から最大86センチメートルである。
 大阪市道路占用許可基準(以下4の項までにおいて「基準」という。)第27条第1項第2号ウで「その他 路端から0.6メートル以下」と出幅が定められているが、本件占用許可申請書においては、足場の高さが33メートルと高く、また、道路境界線から建築物の外壁までの空き寸法が最小部で3センチメートルしかないため、作業員の安全確保のため、足場を設置すると足場の出幅が路端から最大86センチメートルが必要不可欠であり、基準第27条第1項第2号ただし書きに規定されている「工事上やむを得ない場合」(「大阪市道路占用許可基準の取り扱い 2 基準の適用について(3)」に基づき、路端から1メートル以下と規定)に該当するものと判断し、許可している。
 また、本件処分地の道路幅員は3.64メートルであり、足場の幅最大86センチメートルを差し引くと、2.78メートルとなり、道路構造令第4条第2項で幅が2.5メートルと規定されている普通自動車が通行可能な幅である。
 ただし、法第32条第5項により、道路占用許可を与えようとする場合においては、道路交通法第77条第1項の規定の適用を受ける場合には、あらかじめ当該地域を管轄する警察署長に協議しなければならないこととなっている。本件処分においては、道路管理者である処分庁と交通管理者である警察署長とが、占用許可の可否及び期間、方法等許可条件について協議することにより交通の安全及び円滑を害することがないかどうかの調整が図られ、道路交通法第77条第1項に基づく警察署長の許可条件として、「現場周辺には、交通整理員を配置して、交通の安全と円滑を図るとともに、交通事故防止に努めること。」が付され、処分庁の許可条件としても「所轄警察署長が道路使用許可の時に付した各条件を厳守すること」と記載することで、交通安全上の措置は図られており、本件審査請求で主張されている基準第2条(4)ク「道路の管理上または道路交通上支障となる場所」には該当せず、以上のことから、本件処分は適法かつ妥当な行政処分である。
3  審理員意見書の結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。
4  審理員意見書の理由
(1) 本件に係る法令等の規定について
ア 法第32条は、道路の占用に関する基本規定となっている。道路は一般交通の用に供され、その効果として一般の自由な通行が認められている。この道路を根幹として生活圏が形成され、様々な諸活動が行われている。道路の占用については同条第1項により限定列挙され厳格な運用がなされており、あくまで道路の本来的な機能を阻害しない範囲内でのみ認められるものである。
イ 法第33条は、道路管理者は、道路の占用が法第32条第1項各号のいずれかに該当するものであって「道路の敷地外に余地がないためにやむを得ないものであり、かつ、政令で定める基準に適合する場合に限り、同条第1項の許可を与えることができる」旨を規定し、令第13条において、具体的な基準が規定されている。
ウ 本市においては、道路占用許可に関しては、道路法、道路法施行令、大阪市道路占用規則第9条に基づき「別に定める基準により行うものとする」旨を規定し、基準において、占用物件の種別ごとに個別具体的な許可基準を設けている。
エ 本件処分の占用物件は、法第32条第1項第7号の「第1項各号に掲げるものを除くほか、道路の構造又は交通に支障を及ぼすおそれのある工作物、物件又は施設で政令で定めるもの」で令第7条にある「工事用仮囲い、足場、詰所その他工事用施設」に該当する。
オ 本件処分の占用物件である足場の出幅については、基準第27条第1項第2号ウにおいて「その他 路端から0.6メートル以下」と定められているが、同号ただし書きの取扱いとして「大阪市道路占用許可基準の取扱い 2 基準の適用について(3)」で「基準第26条第1項第2号ただし書きに規定する『工事上やむを得ない場合』の出幅は路端から1メートル以下とする。」旨を定めている。
カ また、法第32条第5項は、道路管理者は、道路占用許可を与えようとする場合において、「当該許可に係る行為が道路交通法第77条第1項の規定の適用を受けるものであるときは、あらかじめ当該地域を管轄する警察署長に協議しなければならない」旨を定めている。
(2) 本件処分が道路の安全上支障があるかどうかについて
 審査請求人は、平成29年5月25日付けの反論書において「道路の管理上又は道路交通上支障となる場所」の該当性については、所轄警察署長が道路使用許可の際に付した各条項を厳守するとの許可条件を設けるか否かという抽象的な事情のみで判断されるのではなく、具体的な事情を踏まえて判断されるべきと主張している。
 しかしながら、法第32条第5項により、道路占用許可を与えようとする場合において、道路交通法第77条第1項の規定の適用を受けるものであるときは、あらかじめ当該地域を管轄する警察署長に協議しなければならないこととされ、本件処分についても、道路管理者である本市と交通管理者である所轄警察署長とが、占用許可の可否及び期間、方法等許可条件について協議を行っており、平成29年1月27日付けで本市建設局〇〇工営所長あてに大阪府〇〇警察署長より本件処分について、「許可条件を遵守すれば支障なしと認める」旨の回答を受領しており、交通の安全及び円滑を害することがないよう調整が図られている。
 審査請求人によれば、〇月〇日にクレーン車の横転事故が発生したこと及び同日に交通整理員が置かれておらず、許可条件に反していた旨の主張がなされているが、事実を裏付ける証拠書類等の提出はなされておらず、道路交通法第77条第1項の道路使用許可が、同日以降も許可条件の違反を理由として取り消されたり、効力停止が行われた事実はないため、審査請求人の主張には理由がない。
 なお、審査請求人は所有ビル1階の敷地内に車両が入り込むことがあり非常に危険な状態である旨を主張しているが、所有ビル1階の敷地内は、道路の幅員に含まれないため、本件処分に付随して考慮されるべき要素ではない。
 また、本件処分地の北側に面する〇〇線の道路幅員は3.64メートルであり、足場の最大幅86センチメートルを差し引くと2.78メートルとなるが、道路構造令第4条第2項で幅が2.5メートルと規定されている普通自動車が通行可能な幅員は確保されており、令第13条第4項で定められる道路占用許可の基準である「道路の一方の側は、常に通行することができることとすること」とされる条件を満たしていることから、基準第2条(4)クの道路交通上支障となる場所ではないと判断される。
(3) 上記以外の違法性又は不当性についての検討
 他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。

第4  調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  平成29年8月24日 諮問書の受理
  平成29年9月21日 審査庁から主張書面の収受
  平成29年9月25日 調査審議(審査庁の口頭説明、処分庁の陳述)
  平成29年10月13日 審査請求人から主張書面の収受
  平成29年10月13日 審査庁から主張書面の収受
  平成29年10月20日 調査審議
  平成29年11月6日 審査庁から主張書面の収受
  平成29年11月10日 調査審議
  平成29年12月1日 調査審議

第5  審査会の判断
1 本件に係る法令等の規定について
 前記第3の審理員意見書の要旨中4、(1)にあるとおりであると認められる。
 なお、法第32条第1項の規定に基づく道路占用許可については、法第33条第1項の規定に基づく許可基準として令第9条等が定められているが、大阪市では、法に基づく道路の占用許可事務についての細目的事項を定めた大阪市道路占用規則(昭和60年大阪市規則第73号)第9条において、占用の許可は、別に定める基準により行うものとする旨が定められており、これを受けて、上記法令に定める基準の範囲内で、道路の占用許可申請の審査基準として、大阪市道路占用許可基準(昭和62年大阪市告示第242号の2。以下「占用許可基準」という。)が定められている。
 本件との関連では、占用物件の設置場所について定めた占用許可基準第2条の(4)クに掲げる「道路の管理上又は道路交通上支障となる場所」については、物件を設置することができないと定められている。
2 争点
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は、本件処分の対象となっている〇〇線(以下「本件道路」という。)が、占用許可基準第2条(4)クの「道路の管理上又は道路交通上支障となる場所」に該当し、同条に定める占用物件の設置場所の基準をみたさないこととなるか否かである。
3 争点に対する判断
(1)ア 審査請求人は、本件道路が占用許可基準第2条(4)クの「道路の管理上又は道路交通上支障となる場所」に該当することに関し、本件処分により所有ビルの前面道路の通行可能部分が狭くなっているため、相互通行の際に、当該道路を通行する車両が敷地内に入り込むことにより所有ビルの利用者に危険が及んでいることを主張する。
 しかし、弁明書添付書類平面図のとおり、本件道路における足場の最大幅は86センチメートルであり、審査請求人や処分庁が主張する本件道路の幅員である3.64メートルから当該足場分を差し引いても、2.78メートル確保されている。なお、当該平面図では、道路幅員は3.62メートルとされているが、それを前提としても、幅員は2.76メートル確保されている。
 上記幅員が確保されていることにより、本件道路は、道路の設計の基礎とする自動車の種類ごとの諸元を定めた道路構造令第4条第2項において幅が2.5メートルと規定されている普通自動車やセミトレーラ連結車が通行可能な幅員は確保されているから、足場等の設置によって直ちに車両の通行に支障がある状態となるとはいえない。
 また、道路工事を行う場合の実施方法の基準を定めた令第13条第4号において、「原則として、道路の一方の側は、常に通行することができることとすること」とされているところ、本件道路においては上記の幅員が確保されていることにより、道路の一方の側は常に通行することができることとされているのであるから、足場等の設置によって直ちに車両の通行に支障がある状態となるとはいえない。
 よって、審査請求人の上記主張を認めることはできない。
イ 次に、審査請求人は、本件道路が占用許可基準第2条(4)クの「道路の管理上又は道路交通上支障となる場所」に該当することに関し、所有ビルの1階に入居している保育園「〇〇」の児童や保護者の出入りが頻繁にあり、本件処分により、送迎の車両の出入りが非常に困難になっていると主張する。
 しかし、上記アにて述べたとおり、本件道路の幅員はもともと3.64メートル又は3.62メートルであるところ、足場等が設置されても2.78メートル又は2.76メートルの幅員が確保されているのであるから、本件処分を取り消さなければならないような送迎の車両の出入りの困難が、足場等の設置によって生じるとは認められない。
 よって、審査請求人の上記主張を認めることはできない。
(2)ア また、審査請求人は、本件道路が占用許可基準第2条(4)クの「道路の管理上又は道路交通上支障となる場所」に該当することに関し、平成〇年〇月〇日に、本件処分の目的のマンション新築工事においてクレーン車の横転事故が発生したことを主張する。
 しかし、クレーン車の横転事故が発生したことは、当該工事の施工管理上の問題であり、本件道路について足場等を設置するための占用許可処分を処分庁が行ったことの違法性とは関係がない事項である。
 よって、審査請求人の上記主張を認めることはできない。
イ さらに、審査請求人は、上記アのクレーン車の横転事故の際に本件道路に交通整理員が置かれていなかったことが、本件処分の許可条件に違反すると主張する。
 この点、審査請求人のいう許可条件とは、事件記録にあるとおり、本件処分の「条件」の17の項において、「所轄警察署長が道路使用許可のときに付した各条件を厳守すること。」との条件が付されており、大阪府〇〇警察署長の「道路占用許可について(回答)」(平成29年1月27日付け〇〇第〇〇号)の「許可条件」の11の項において、「現場周辺には、交通整理員を配置して、交通の安全と円滑を図るとともに、交通事故防止に努めること。」との条件が付されていることを指すものである。
 しかしながら、審査請求人は、上記アのクレーン車の横転事故の際に本件道路に交通整理員が置かれていなかったということを主張するのみであり、上記の条件の違反となり得るような交通整理員の不配置について具体的な主張及び立証をするものではないから、上記の条件の違反を認めることはできない。
(3) 以上のとおり、審査請求人の主張を認めることはできず、本件道路が占用許可基準第2条(4)クの「道路の管理上又は道路交通上支障となる場所」に該当するとはいえないから、同条に定める占用物件の設置場所の基準をみたさないとはいえない。
 よって、本件処分に違法又は不当な点は認められない。
4 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
5 結論
 よって、本件審査請求に理由はないと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり判断する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会総務第2部会
 委員(部会長) 長部研太郎、委員 藤田整治、委員 曽我部真裕

答申書(平成29年度答申第14号)

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