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平成29年12月26日付け裁決

2023年2月17日

ページ番号:424788

裁決書

審査請求人  住所 ○○○○○ 氏名 ○○○○○
処分庁  大阪市○○区保健福祉センター所長

 審査請求人が平成29年2月26日付けで提起した処分庁による保育施設・事業利用調整及び保育所入所保留処分に係る審査請求について、次のとおり裁決する。

主文
 本件審査請求を棄却する。

事案の概要
1 平成28年10月13日、審査請求人は、○○区保健福祉センターへ審査請求人の子どもの保育施設・事業利用調整申込書(以下「申込書」という。)を提出し、受理された。その後、審査請求人の第1保育希望施設が○○区所在のため、○○区保健福祉センターは、○○区保健福祉センターより、申込書の送付を受けた。
2 ○○区保健福祉センターは、平成28年10月31日に面接を行った。その後、1次調整を行った結果入所保留と決定し、平成29年1月16日付け「保育施設等・事業利用調整結果通知書兼保育所入所保留通知書」(以下「保留通知書」という。)を同年2月3日に審査請求人宅へ送付した。
3 平成29年2月10日、審査請求人は、入所保留決定(以下「本件処分」という。)について不服であるとし、審査請求書を提出した。

審理関係人の主張の要旨
1  審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、○○区保健福祉センター所長(以下「処分庁」という。)が行った本件処分において、保留通知書に記載されている理由の内容が不明確であることから、本件処分が違法又は不当であるため、本件処分を取り消すとともに保育所への入所承諾を行うことを求めるというものである。
2 処分庁の主張
 処分庁は、児童福祉法第24条及び「大阪市保育施設等の利用調整に関する事務取扱要綱」に基づいて保育所入所に係る利用調整を行っており、審査請求人に対して行った本件処分は適正であったと主張している。
 また、1次調整においては、処分庁は約200名に対し保留通知書を送付する必要があるため、保留通知書にそれぞれの状況に応じた詳細な入所保留理由を記載することは不可能であるが、保留理由についての問い合わせがあった場合は、本人確認を行ったうえで詳細に説明を行っている。本件については、○○区保健福祉センターへ入所保留理由を伝達し、○○区保健福祉センターから審査請求人に保留理由について回答を行っていることを確認している。

理由
1 本件に係る法令等の規定について
ア 児童福祉法第24条第1項では「市町村は、この法律及び子ども・子育て支援法の定めるところにより、保護者の労働又は疾病その他の事由により、その監護すべき乳児、幼児その他の児童について保育を必要とする場合において、次項に定めるところによるほか、当該児童を保育所(認定こども園法第3条第1項の認定を受けたもの及び同条第9項の規定による公示がされたものを除く。)において保育しなければならない。」と規定されている。
イ 同条第2項では「市町村は、前項に規定する児童に対し、認定こども園法第2条第6項に規定する認定こども園(子ども・子育て支援法第27条第1項の確認を受けたものに限る。)又は家庭的保育事業等(家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業又は事業所内保育事業をいう。以下同じ。)により必要な保育を確保するための措置を講じなければならない。」と規定されているが、同法附則第73条第1項により読み替えられた同法第24条第3項では「市町村は、保育所、認定こども園(子ども・子育て支援法第27条第1項の確認を受けたものに限る。以下この項及び第46条の2第2項において同じ。)(保育所であるものを含む。)又は家庭的保育事業の利用について調整を行うとともに、認定こども園の設置者又は家庭的保育事業を行う者に対し、前項に規定する児童の利用の要請を行うものとする。」とされている。
ウ 児童福祉法施行規則第24条では、「市町村は、法第24条第3項の規定に基づき、保育所、認定こども園(子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第27条第1項の規定による確認を受けたものに限る。)又は家庭的保育事業等の利用について調整を行う場合(法第73条第1項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)には、保育の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、保育を受ける必要性が高いと認められる児童が優先的に利用できるよう、調整するものとする。」とされている。
エ 大阪市では、児童福祉法第24条第3項に基づく利用調整にあたり、「大阪市保育施設等の利用調整に関する事務取扱要綱」を定め、「保育利用調整基準」に基づき保育の必要性の高い児童から順に利用調整を行い、保護者に対し「保育施設・事業利用調整結果通知書」又は「保育施設・事業利用調整結果通知書兼保育所入所保留通知書」によりその結果を通知することとしている。
オ 行政手続法第8条第1項では「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。」と規定されている。
カ 同条第2項では「前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。」と規定されている。
2 「保育施設・事業利用調整結果通知書兼保育所入所保留通知書」に記載された処分理由が行政手続法第8条第1項に反するか否か
(1) 行政手続法の解釈について
 行政手続法第8条の規定は、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されている。したがって、一般論として、理由の記載は、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して申請が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に拒否の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然知りうるような場合を別として、理由付記として十分でないということになる(最判昭和60年1月22日民集39巻1号1頁参照)。
 また、「一般に、法律が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に、どの程度の記載をなすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである」(最判昭和38年5月31日民集17巻4号617頁)とされている。
(2) 保育所入所保留処分における理由の記載の程度について
 上記判例を踏まえると、入所保留処分となった保護者(以下「被処分者」という。)が当該処分を不服として不服申立てを行う際の便宜を考えれば、①被処分者の世帯が「保育利用調整基準」により合計何点と認定されたのかを示すことが望ましい。さらに、合計点数を示すだけでは、なぜ自らの世帯が入所可能となった世帯に比べて入所の優先順位が下回る結果となったのかを知ることが困難であることから、②他の世帯と比べて点数が下回ったために入所できなかったのか、それとも、点数は同じであったが「(3)順位表」の適用で差がついたのかを示すことが望ましい。しかし、①の合計点数を記載することについては、例えば、児童が障がいを有しており、その児童について特に保育の必要性が高いと行政庁側が判断した場合には、「(1)基本点数表」の「13.その他」により、行政庁側の裁量で高い点数をつける場合もあり、当該児童の障がいについて保護者と行政庁側の認識が相違することがあるため、保護者との信頼関係を損ねないためには、行政庁側の障がいに関する判断を保護者に知られないことが望ましい場合がある。このような場合、上記①を記載することについては、一部の特定の事情を有する児童に関して、点数の記載を行うことによる不都合が生じる。そして、そのような不都合がない大半の場合では点数が記載されているにも関わらず、特定の事情を有する場合のみ点数の記載がないとなると、そのことをもって、特殊な事情があることが保護者に推測されてしまうことになる。
 また、②他の世帯との比較を示すことについて、そのようなことを記載すれば、特に、入所者が少ない場合には、自らの世帯の点数(行政庁側から伝えない場合でも「保育利用調整基準」である程度自ら算定可能)から入所者の世帯の点数を推測することが可能になり、当該世帯のプライバシーの観点から問題となるため、他の世帯との比較の結果を記載することは難しい場合もある。入所者が多い場合には、他の世帯のプライバシー情報が推測される可能性は低いと考えられるが、入所者が多い場合には記載して、入所者が少ない場合には記載しないことにすることは、実務上の困難を伴うことになる。
 結局のところ、他の申請者との関係で処分結果が決まる保育所入所保留処分の場合には、その理由の程度は抽象的にならざるを得ない。
 一方で、①については、審査基準は公表されているため、それを用いて一定程度自らの世帯の合計点数を算定することは可能であることから、合計点数を知ることができないことが、被処分者にとって不服申立てを行う上での大きな支障となることはない。また、②についても、他の申請者との競合の結果により入所保留となったということがわかれば、不服申立てを行うか否か判断することは可能である。
(3) 本件処分の理由付記について
 以上を踏まえ、「利用申込をされた保育施設・事業については、利用可能数を上回る申込みがあったため、保育利用調整基準に基づく利用調整を行った結果による。」との記載がなされていれば、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して申請が拒否されたかを、その記載自体から了知しうるものであると認めるのが相当であるから、法の要請する理由付記の程度の最低限の要請は充たしていると考える。
 よって、本件処分に、行政手続法第8条第1項の理由付記の違法はない。
3 結論
 以上のとおり、本件処分に違法な点はなく、本件審査請求に理由はないと認められるので、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決する。

平成29年12月26日
審査庁   大阪市長  吉村 洋文

裁決書(平成29年度答申第12号)

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