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平成30年2月1日付け裁決(答申第15号)

2023年2月17日

ページ番号:431260

裁決書

審査請求人 ○○○○
処分庁 大阪市長

 審査請求人が平成28年12月26日付けでした、処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)による平成28年10月3日付け差押処分(以下「本件差押処分」という。)並びに同年12月21日付け事業所税更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び同月22日付け事業所税過少申告加算金決定処分(以下「本件加算金決定処分」という。)に係る審査請求(平成28年度財第15号。以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決します。

主文
 本件審査請求を棄却します。

事案の概要
1 本件差押処分について
(1) 処分庁は、審査請求人に対し、平成26年○月○日から平成27年○月○日までの事業年度に係る事業所税更正処分及び事業所税過少申告加算金決定処分(以下「前事業年度に係る更正処分等」という。)を行い、平成27年12月21日付けで事業所税更正通知書及び事業所税加算金決定通知書を送付しました。
(2) 前事業年度に係る更正処分等に係る徴収金(以下「本件徴収金」という。)について、審査請求人が納期限までに完納しなかったため、処分庁は平成28年2月25日に督促状を送付しましたが、審査請求人は、当該督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに本件徴収金を完納しませんでした。
(3) 処分庁は、本件徴収金を徴収するため、平成28年10月3日付けで、審査請求人が別紙契約目録記載の生命保険契約(以下「本件保険契約」という。)に基づき○○○○会社(以下「保険会社」という。)に対して有する保険金支払請求権、解約返戻金の支払請求権及び利益配当請求権(以下「本件差押財産」という。)について本件差押処分をしました。
2 本件更正処分及び本件加算金決定処分について
(1) 審査請求人は、処分庁に対し、平成○年○月○日付けで、平成27年○月○日から平成28年○月○日までの事業年度(以下「平成27事業年度」という。)に係る事業所税の申告書(以下「本件申告書」という。)を提出しました。
 本件申告書においては、審査請求人が事業を行っている大阪市○区(略)所在の「○○○○」と称する施設(以下「本件施設」という。)について、地方税法(以下「法」という。)第701条の41第1項第9号に該当するとして、算定期間を通じて使用された事業所床面積から当該事業所床面積に2分の1を乗じて得た面積を控除することにより、事業所税の資産割の課税標準となるべき事業所床面積が算定されていました。
(2) 処分庁は、平成28年12月7日に大阪市保健所環境衛生監視課あて照会し、審査請求人が本件施設について簡易宿所営業の許可を受けていることを電話で確認するとともに、外観調査により本件施設が現在も営業されていることを確認しました。
(3) 処分庁は、審査請求人に対し、平成28年12月21日付けで法第701条の41第1項第9号の課税標準の特例の適用を否認する本件更正処分を行い、同月22日付けで本件加算金決定処分を行いました。
3 審査請求人は、平成28年12月26日付けで、大阪市長に対し、本件差押処分、本件更正処分及び本件加算金決定処分(以下「本件各処分」という。)の取消しを求めて審査請求をしました。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 本件差押処分について
 本件差押処分に対し不服の申立てを行っていたが、却下の決定が出る前に差押えを実行された。現在は、審査請求人の抗議により差押えがいったん保留されているが、不服の結論が出る前に実行に移すのはいかがなものか。もともと、不服の申立てが却下されたときは速やかに支払う趣旨を伝えており、昨年度も同様に却下の決定が出てすぐに加算金とともに支払っている。
(2) 本件更正処分及び本件加算金決定処分について
ア ホテルや旅館には事業所税の課税標準の2分の1の特例がある。簡易宿所が75パーセントの減免措置を廃止しホテル旅館業と同等の50パーセント減免に変更されるのであれば納得できる。
イ ○区では、簡易宿所を観光客が宿泊するホテルと位置付け活用し、地域の活性化を図っており、審査請求人の経営する簡易宿所は、同区の戦略の中でも中心的な位置付けの簡易宿所である。宿泊者の観点から見ても、ホテル業、旅館業等の事業所税減免施設と営業形態に大差を感じることはできないと考える。
ウ 簡易宿所に係る事業所税の減免については、ホテルや旅館との均衡を考慮した上で、日雇労働者の生活の場として利用され収益性が低いこと等から、昭和50年の事業所税の創設当初から講じられてきたものである。しかしながら、近年は客層の変化等業態の多様化が進んでいること、また、アパート等の住居用施設に転用され減免適用施設が大幅に減少していることから、当該減免措置は廃止することとされた。
 しかしながら、簡易宿所の数は減少しておらず、むしろ、ホテルや旅館と同等の機能、役割を果たす施設としてその数は増加している。このような現状を踏まえると、簡易宿所についても、ホテルや旅館と同等の事業所税の減免措置を講じることが妥当である。
エ 無許可民泊が横行しているため、旅館業法上の許可を受けた事業者が損をし、簡易宿所営業の許可を正式に受けて運営している業者だけが不当に高額な税金を払わなければならない状況になっている。このことは、憲法が定める法の下の平等に反しないのか。
2 処分庁の主張
(1) 本件差押処分について
ア 審査請求人は本件徴収金を納期限までに完納しておらず、本件徴収金に係る督促状を発した日から起算して10日を経過した後においても完納していないことから、滞納となっている本件徴収金を徴収するために本件差押処分を行ったものであり、本件差押処分は、差押えに係る要件を満たしている。
イ 本件差押処分は生命保険契約に係る解約返戻金(以下「解約返戻金」という。)の差押えであり、一般に保険料が支払われなければ差押えにより取り立てる解約返戻金が減少することが想定されることから、財産の価値が著しく減少するおそれがあるときに該当するものとして、審査請求期間中の平成29年1月23日に保険会社へ解約請求書を送付したものである。
 しかしながら、その後、保険会社から解約の効力発生日時点での取立見込額の連絡があり、差押え時点よりも解約返戻金が増加していることが確認できたことから、著しく解約返戻金が減少することなく、差押えにより徴収確保の措置としては十分であると判断し、同年2月14日に解約請求手続を取り消したものであり、審査請求人の権利保護にも十分配慮している。
ウ よって、本件差押処分は適正である。
(2) 本件更正処分について
ア 事業所税の課税標準の特例の対象となるのは、法第701条の41第1項第9号に規定されているとおり、旅館業法第2条第2項又は第3項に規定するホテル営業又は旅館営業の用に供する施設であり、簡易宿所営業の用に供する施設は除かれていることから、本件申告書に係る課税標準の特例の適用を否認し、法第701条の58第1項及び平成29年大阪市条例第11号による改正前の大阪市市税条例(以下「条例」という。)第134条の21第1項により本件更正処分を行ったものであり、適正である。
イ 事業所税の減免措置については、平成25年1月1日以降に事業年度が開始する事業年度分から、全て廃止されている。
 したがって、本件施設に係る平成27事業年度における事業所税については、減免されないものである。
(3) 本件加算金決定処分について
 本件加算金決定処分は、本件更正処分が処分庁の調査に基づき行われたものであるため、法第701条の61第1項の規定により、本件更正処分により増加した事業所税額を基にした過少申告加算金の基礎となる税額に過少申告加算金課率を乗じて算出して行ったものであり、適正である。

理由
1 本件審査請求に係る法令等の規定
(1) 事業所税の課税標準について
 事業所税の課税標準は、資産割にあっては、課税標準の算定期間の末日現在における事業所床面積とされています(法第701条の40第1項)。
(2) 事業所税の課税標準の特例について
 旅館業法第2条第2項に規定するホテル営業又は同条第3項に規定する旅館営業の用に供する施設で政令で定めるものに係る事業所等において行う事業に対して課する資産割の課税標準となるべき事業所床面積の算定については、当該施設に係る事業所等に係る事業所床面積(法第701条の34の規定の適用を受けるものを除く。)から当該施設に係る事業所床面積に2分の1を乗じて得た面積を控除するものとされています(法第701条の41第1項第9号)。
(3) 旅館業法に規定する「ホテル営業」及び「旅館営業」について
ア ホテル営業とは、洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいうとされています(旅館業法第2条第2項)。
イ 旅館営業とは、和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいうとされています(旅館業法第2条第3項)。
(4) 事業所税の更正について
 法第701条の31第1項第1号に規定する指定都市等(以下「指定都市等」という。)の長は、申告書の提出があった場合において、当該申告書に係る課税標準額又は税額がその調査したところと異なるときは、これを更正するとされています(法第701条の58第1項)。
(5) 事業所税の過少申告加算金について
 申告書の提出期限までにその提出があった場合において、更正があったときは、指定都市等の長は、当該更正に係る税額に誤りがあったことについて正当な理由があると認める場合を除き、当該更正による不足税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算金額を徴収しなければならないとされています(法第701条の61第1項)。
(6) 事業所税に係る滞納処分について
 事業所税に係る滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る事業所税に係る地方団体の徴収金を完納しないときは、指定都市等の徴税吏員は、当該事業所税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押さえなければならず、また、当該徴収金の滞納処分については、徴収法に規定する滞納処分の例によるとされています(法第701条の65第1項第1号及び第6項)。
(7) 超過差押え及び無益な差押えの禁止について
ア 国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押さえることができないとされています(徴収法第48条第1項)。
イ 差し押さえることができる財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先立つ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額を超える見込みがないときは、その財産は、差し押さえることができないとされています(徴収法第48条第2項)。
(8) 差し押さえる債権の範囲について
 徴収職員は、債権を差し押さえるときは、その全額を差し押さえなければならないとされています(徴収法第63条本文)。
(9) 差押禁止財産について
 滞納者及びその者と生計を一にする親族の生活に欠くことができない衣服等の財産は、差し押さえることができないとされています(徴収法第75条第1項)。
2 本件差押処分の適法性及び妥当性について
(1) 差押えの要件について
 審査請求人は、不服の申立てが却下されたときは速やかに支払う趣旨を伝えており、昨年度も同様に却下の決定が出てすぐに加算金とともに支払っているにもかかわらず不服申立ての決定前に取立権が行使されている旨主張しています。
 しかしながら、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに、納税者がその督促に係る地方団体の徴収金を完納しないときは、徴税吏員は、当該事業所税に係る徴収金につき、滞納者の財産を差し押さえなければならないと規定されているところ(法第701条の65第1項)、本件徴収金に係る督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに審査請求人が本件徴収金を完納していなかったことは明らかであるから、本件差押処分は、法第701条の65第1項の要件を満たしています。
(2) 超過差押えについて
 本件差押処分については、本件徴収金の額が○○○○円であり、本件差押処分時における本件差押財産の処分予定価額が、債権差押通知書到達日(平成28年10月4日)における本件解約返戻金○○○○円(現実には利益配当金は存在せず、差押えの対象となっていない。)となっていることから、本件差押処分が本件徴収金の額を超える額の解約返戻金の支払請求権を差し押さえていること、さらに、このような状態にあって本件保険契約に係る保険金支払請求権を併せて差し押さえていることが、それぞれ徴収法第48条第1項の規定に反しないかが問題となるため、以下検討します。
ア 第一に、債権を差し押さえるときは、その債権の額が徴収すべき国税の額を超える場合においても、原則として、その債権の全額を差し押さえなければならないことから(徴収法第63条本文)、1個の債権を差し押さえる限り、たとえその債権額が徴収金の額を超過していたとしても、違法とはならないものと解されます。
イ 第二に、徴収法が、徴収職員において財産の差押えを行うにあたり、その種類や順序について制限を設けた規定を置いていないことに鑑みれば、徴税吏員が徴収法の例により滞納処分を行うにあたってどのような財産をどのような範囲で差し押さえるかは、当該徴税吏員の合理的な裁量に委ねられているものと解されます。
 次に、徴収法第48条第1項に規定する超過差押えに該当するかどうかは、原則として、差押え時を基準時として、差押財産の処分予定価額と徴収金の額を比較して判定するものと解されるところ(国税徴収法基本通達(以下「基本通達」という。)第48条関係2)、差押財産の処分予定価額が徴収金の額を超過した場合に、直ちに当該差押えが超過差押えとして違法となるものではなく、徴収金の額に比較して差押財産の処分予定価額が合理的な裁量の範囲を超え著しく高額であると認められるような財産を差し押さえたというような特段の事情がある場合に初めて、当該差押えが違法となるものと解されます。また、徴税吏員が複数の財産を差し押さえた場合において、そのうちの一部の財産の差押えによって徴収の目的が十分達成できるにもかかわらず、あえて他の財産も差し押さえたときは、超過差押えとなる余地もあり得る一方、差押財産が法律上分割できない場合、あるいは分割することはできるが、分割することにより当該財産の経済的価値を著しく害する場合には、たとえ当該財産の価額の合計額が徴収金の額を超過したとしても、違法とはならないと解されます(基本通達第48条関係3)。
ウ これを本件差押処分においてみると、本件解約返戻金の支払請求権はこれ自体が1個の債権であることから、本件解約返戻金の額が徴収金の額を超過していたとしても、超過差押えの問題が生じることはありません。 
 なお、生命保険契約に基づいて発生する保険金支払請求権と解約返戻金支払請求権は、法的には並存しているものの、一方を行使すれば他方は消滅するという択一的な関係にあり、いずれが行使されるか差押処分時には定まっていないものであるから、徴収法第48条第1項への抵触の有無を判断するにあたっては、当該保険金支払請求権及び解約返戻金支払請求権は一体のものとして判断すべきものです。
 したがって、本件差押処分は、徴収法第48条第1項に規定する超過差押えには該当しません。
(3) 無益な差押えについて
 徴収法第48条第2項に規定する無益な差押えに該当するか否かについては、本件差押財産が債権であることから滞納処分費は不要であり、また、本件徴収金に先立つ、国税、地方税及びその他の債権も認められず、本件差押財産から本件徴収金を徴収することができると見込まれることから、該当しません。
(4) 差押禁止財産について
 本件差押財産は、徴収法第75条から第78条までの各条に定める差押禁止財産及び差押えが制限されている財産のいずれにも該当せず、徴収法に定める手続に基づき適法になされています。
 したがって、本件差押処分は徴収法に規定する滞納処分の例によって行われており、適正です。
3 本件更正処分及び本件加算金決定処分の適法性及び妥当性について
 審査請求人は、本件施設が簡易宿所であるにもかかわらず、法第701条の41第1項第9号に該当する施設であり、同号の課税標準の特例が適用されるとして、資産割の課税標準となるべき事業所床面積の算定に際し、本件施設に係る対象事業所床面積から同床面積に2分の1を乗じて得た面積を控除した上で税額を算出し、平成○年○月○日付けで本件申告書を提出しました。
 しかしながら、本件申告書は、本件施設が簡易宿所であることを前提とする限り、課税標準額の計算の根拠となるべき法令の適用を誤った不適法なものであると認められることから、処分庁が本件施設は法第701条の41第1項第9号の課税標準の特例に該当せず、本件申告書に係る課税標準額又は税額がその調査したところと異なるとして、法第701条の58第1項の規定に基づき本件更正処分を行ったことは、適正です。
 また、本件加算金決定処分についても、本件更正処分を受けて、法第701条の61第1項の規定に基づき行ったものであり、適正です。
4 事業所税の減額措置等について
 審査請求人は、ホテルや旅館には事業所税の課税標準の2分の1の特例があるのであるから、簡易宿所がホテル旅館業と同等の位置付けの中で簡易宿所の75パーセントの減免措置を廃止したのであれば、ホテル旅館業と同等の50パーセント減免を行った場合の税額に相当する事業所税のみが課税されるべきであると主張しています。
 しかしながら、審査請求人の上記主張は立法論の範疇に属するものであり、審査請求人が主張する事情によって本件各処分が違法性ないし不当性を帯びるとは認めらません。
 なお、事業所税の減免を受けようとする者は、納期限、すなわち、法人にあっては各事業年度の終了の日から2月以内に申請書を市長に提出しなければならないものとされているところ(平成29年大阪市規則第82号による改正前の大阪市市税条例施行規則第4条第1項柱書、法第701条の46第1項)、審査請求人が本件申告書提出時に減免申請書を市長に提出した事実は認められないことから、事業所税の減免に係る審査請求人の主張は、その前提を欠くものであって、これを審理の対象とすることができません。
5 結論
 以上のとおり、本件各処分に違法又は不当な点は認められず、本件審査請求は理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決します。

平成30年2月1日
大阪市長 吉村 洋文

別紙契約目録 省略

裁決書(平成29年度答申第15号)

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