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答申書(平成29年度答申第17号)

2023年2月17日

ページ番号:433753

諮問番号:平成29年度諮問第19号
答申番号:平成29年度答申第17号

答申書

第1 審査会の結論
1 審査請求人の平成27年中の所得に課すべき市民税及び府民税(以下「本件市・府民税」という。)に係る平成29年1月4日付け普通徴収税額決定処分(以下「本件処分1」という。)、本件市・府民税に係る同月20日付け税額変更処分(以下「本件処分2」という。)及び本件市・府民税に係る同年6月23日付け税額変更処分(変更事由が「平成29年6月13日付け税額変更の取消(税額変更の理由を記載していなかったため)」であるもの。以下「本件処分3」という。)の取消しを求める審査請求については、いずれも却下すべきである。
2 本件市・府民税に係る平成29年6月23日付け税額変更処分(変更事由が「生命保険料控除の否認による税額変更(生命保険料控除について誤った年度で適用していることが判明したため)」であるもの。以下「本件処分4」という。)の取消しを求める審査請求については、棄却すべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)は、平成29年1月4日、本件処分1を行った。
2 処分庁は、審査請求人が平成29年1月20日提出した本件市・府民税に係る申告書(以下「本件申告書」という。)に基づき、本件処分2を行った。
3 審査請求人は、平成29年4月7日、大阪市長に対し、本件処分1及び2の取消しを求めて審査請求をした。
4 処分庁は、平成29年6月13日、本件市・府民税の額を○○○○円から○○○○円に変更し、その差額○○○○円を徴収する税額変更処分(以下「請求外処分」という。)を行った。
5 処分庁は、平成29年6月23日、本件処分3及び4を行った。
6 処分庁は、平成29年6月28日、審査請求人に対し、本件処分2の徴収金に係る「差押予告書及び納付書」(以下「本件差押予告書」という。)を送付した。
7 審査請求人は、平成29年8月1日、大阪市長に対し、本件処分3及び4の取消しを求めて審査請求をした。

第3 審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 審査請求人の平成27年中の収入は、約○○○○円である。
(2) 株式会社○○○○(以下「本件会社」という。)が提出した給与支払報告書は、虚偽の報告書である。
(3) 審査請求人は、本件会社から一切の支払を受けておらず、正確な金額も知らない。
(4) 本件会社からの収入がないのに、あることとして税金を計算することは、実質課税(地方税法(以下「法」という。)第294条の2の2)に反する。
(5) 誤った収入金額に対する課税処分であったにもかかわらず、生命保険料控除を受ければ税額が減額されると聞かされ、訳が分からないままに保険資料を持参して控除の手続をとったところ、誤った控除がなされている。
(6) 虚偽の報告書が提出されている点について調査をすることなく、何ら所得を得ていないと申告している審査請求人の財産に対して、支払期限までに支払わなければ差し押さえるという本件差押予告書は、あまりにも不公正なものと言わざるを得ない。
2 処分庁の主張
(1) 役員報酬未払の主張について
ア 審査請求人には、複数の給与支払者から処分庁宛て提出された給与支払報告書があるため、それら全てを合算した上で、法等に基づき、税額を適正に算出している。
 本件会社についても、処分庁宛て平成27年分の給与支払報告書の提出があることから、給与の支払があったものと認められる。
イ 本件会社からの給与又は報酬について、処分庁が調査、確認等を行った結果は、次のとおりである。
(ア)  本件会社から提供を受けた審査請求人に係る「平成27年分給与所得退職所得に対する源泉徴収簿」(以下「本件源泉徴収簿」という。)には、平成27年1月から同年9月まで、毎月○○○○円が審査請求人に支払われていたことが記録されている。
(イ) 本件会社の平成26年10月1日から平成27年9月30日までの事業年度に係る法人税の確定申告書の添付書類である「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」には、役員給与として審査請求人に対し、○○○○円が支払われていたことが記録されている。
(ウ)  本件会社の「損益計算書」の役員報酬の額は、前記(イ)の「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」の役員給与の合計額と同額である。
(エ) 本件会社に係る履歴事項全部証明書には、「監査役 ○○○○ 平成○年○月○日重任 平成○年○月○日辞任」と記載されている。
ウ 給与支払報告書に基づいて賦課決定を行う場合、法定調書である当該給与支払報告書に記載されている支払金額について、実際に受け取ったか否かについて確認することは、その要件とされていない。
(2) 本件差押予告書を送付したことについて
 審査請求人については、平成29年1月4日、納期限を同月31日とする「平成28年度市民税・府民税納税通知書兼税額変更(決定)通知書」を送付し、当該納期限を経過後、平成29年2月27日に督促状を送付している。その後、同年3月17日に納税注意書を送付したが、納付の確認ができなかったため、同年6月28日に本件差押予告書の送付に至ったものである。
 よって、本件差押予告書を送付したことについて、何ら違法、不当な点はない。

第4 審理員意見書の要旨
1 結論
 本件処分1から3までについての審査請求は訴えの利益がないため、行政不服審査法第45条第1項の規定により却下し、本件処分4についての審査請求は理由がないため、同条第2項の規定により棄却されるべきものと判断する。
2 理由
(1) 審理の対象について
ア 審査請求人は、収入金額について不服を申し立てているところ、本件処分1及び4はどちらも収入金額を○○○○円としてなされた処分である。
 したがって、本件処分1については、本件処分4がなされたことに伴い取り消されたものと解され、本件処分1の取消しを求める審査請求には訴えの利益がなく不適法であり、却下されるべきである。
イ 本件処分2及び3については、誤って適用された生命保険料控除の取消しを求めていることから、税額の増額を求めていると解されるが、審査請求人の不利益に当該各処分を変更することはできないため、本件処分2及び3に係る審査請求は不適法なものと解され、却下されるべきである。
(2)  本件処分4の適法性について
ア 処分庁は、本件会社に対して調査を行い、審査請求人に係る給与所得に対する源泉徴収簿の提供を受け、平成27年1月から同年9月までの間、毎月○○○○円が審査請求人に支払われた旨の記載があることを確認している。
イ 処分庁は、本件会社に係る法人税申告書の閲覧を行い、源泉徴収簿、法人税申告書及び給与支払報告書について、それぞれの記載内容に整合性があることを確認している。
ウ 処分庁は、本件会社に係る履歴事項全部証明書を取得し、役員報酬が支払われていたとされる期間において、審査請求人が監査役として登記されていたことを確認している。
エ よって、本件会社から提出された給与支払報告書の記載は適正になされている。
オ 課税所得の計算にあたっては、現実の収入がなくとも、その収入の原因となる権利が確定的に発生した場合には、その時点で所得の実現があったものとして、課税所得を計算すると解されている。
カ 以上より、本件処分4は適正である。
(3)  本件差押予告書を送付したことについて
 審査請求は、行政庁の処分に対してできるとされているところ、差押予告書は、法律に規定はなく、督促状を発してもなお完納しない場合に、さらに納付を促すために発するものであり、それ自体として、納税者の権利義務その他法律上の地位に影響を及ぼすものでなく、行政処分には当たらない。
3 上記以外の違法性又は不当性について
 他に違法又は不当な点は認められない。

第5 調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  平成29年12月12日 諮問書の受理
  平成29年12月13日 審議
  平成29年12月15日 審査請求人に対し「口頭説明の求めについて」を送付
  平成30年 1月12日 調査(審査請求人の口頭説明)及び審議
  平成30年 2月14日 審議
  平成30年 2月28日 審議

第6 審査請求人の口頭説明の要旨
1 本件申告書について
 「給与収入」の欄に○○○○円と記載された納税通知書が届いたことから、確認のため○○○○市税事務所に電話すると、来てほしいと言われた。そこで、同市税事務所に行ったところ、同市税事務所の職員に本件会社から○○○○円支給されている旨の書類が提出されていると言われ、少しでも減額になるならしてもらいたいと思い、生命保険料控除の書類を持って行って、本件申告書を自ら書いて提出した。
2 本件会社の監査役に就任したことの認識について
 本件会社は、夫が創業した会社であり、審査請求人自身が本件会社の役員になっているだろうという認識はあった。監査役になっているということを確信して知ったのは、離婚しようとしてからである。
3 本件会社の役員報酬について
(1) 夫名義の預金通帳を自ら管理し、その口座に毎月生活費が振り込まれていた。振込名義人は、一時期、本件会社や審査請求人自身であったこともあるが、途中からはずっと夫であった。
(2) 振り込まれた生活費のことを「給料」と呼んでいたが、役員報酬として受け取ったことはない。
(3)  子どもの手が離れ、アルバイトに行っている時に、夫から、アルバイト収入の額を聞かれ、月○○○○円から○○○○円なので、支障ないというような話をされたので、本件会社から役員報酬を支払う経理処理がなされているであろうと思っていた。

第7 審査会の判断
1 関係法令の定め
(1) 納税義務者について
 道府県内に住所を有する個人に対しては道府県民税を、市町村内に住所を有する個人に対しては市町村民税を、均等割額及び所得割額の合算額によってそれぞれ課する(法第24条第1項第1号及び第294条第1項第1号)。
(2)  所得割の課税標準について
 道府県民税及び市町村民税の所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とされており(法第32条第1項及び第313条第1項)、法又は政令で特別の定めをする場合を除くほか、それぞれ所得税法その他の所得税に関する法令の規定による所得税法第22条第2項又は第3項の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算の例によって算定する(法第32条第2項本文及び第313条第2項本文)。
(3)  給与所得金額の算定方法について
 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいい(所得税法第28条第1項)、給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする(同条第2項)。
(4)  収入金額とすべき金額について
 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とする(所得税法第36条第1項)。
(5) 給与支払報告書の提出義務について
 1月1日現在において給与の支払をする者で所得税法第183条の規定によって所得税を徴収する義務があるものは、同月31日までに、総務省令の定めるところによって、当該給与の支払を受けている者についてその者に係る前年中の給与所得の金額その他必要な事項を当該給与の支払を受けている者の1月1日現在における住所所在の市町村別に作成された給与支払報告書に記載し、これを市町村長に提出しなければならない(法第317条の6第1項)。
2  審理の対象について
(1) 本件処分1及び本件処分2は、いずれも審査請求人の平成27年中の給与収入の額が○○○○円であることを前提として行われた賦課決定処分であるところ、本件処分1は、本件処分2がなされたことに伴い取り消されたものと解される。
 したがって、本件処分1の取消しを求める審査請求は、その対象となる処分を欠いており、不適法である。
(2) 本件処分2は、本件処分1の税額を減額する処分であって、本件処分1の一部取消しという審査請求人に有利な効果をもたらすものであるから、本件処分2に係る審査請求は、取消しを求める法律上の利益を欠いており、不適法である。
(3) 本件処分3は、請求外処分によって新たに徴収することとされた税額○○○○円を○○○○円に減額する処分であって、請求外処分の取消しという審査請求人に有利な効果をもたらすものであるから、本件処分3に係る審査請求は、取消しを求める法律上の利益を欠いており、不適法である。
(4)  したがって、当審査会は、本件処分4の取消しを求める審査請求について、以下、審理するものとする。
3 本件処分4について
(1) 前記1(4)のとおり、所得金額の計算上収入金額とすべき金額は、その年分において収入すべき金額とされているところ、審査請求人は、本件会社から役員報酬○○○○円を受け取った事実はなく、処分庁が認定した給与収入額○○○○円(役員報酬○○○○円を含む)は誤りである旨主張する。
(2) しかしながら、本件関係証拠及び審査請求人の説明によれば、以下の事実が認められる。
ア 本件会社は、審査請求人の平成27年中の収入について、処分庁に対し、支払金額を○○○○円とする給与支払報告書(以下「本件給与支払報告書」という。)を提出している。
イ 本件会社が処分庁に提出した本件源泉徴収簿には、平成27年1月から同年9月まで、毎月○○○○円が審査請求人に支払われていたことが記録されており、その合計金額は、本件給与支払報告書の支払額に一致している。
ウ 本件会社の平成26年10月1日から平成27年9月30日までの事業年度に係る法人税の確定申告書の添付書類である「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」には、役員給与として審査請求人に対し、○○○○円が支払われていたことが記録されている。
エ 審査請求人の説明によれば、審査請求人は、自身が本件会社の役員に就任しているであろうこと、及び、本件会社から審査請求人に対し給与の支払処理がなされているであろうことを認識していたと考えられる。
(3) 以上の認定事実によれば、本件給与支払報告書に記載されている給与収入は、審査請求人が収入すべき金額に該当すると認められ、審査請求人の上記主張は、採用することができない。
4 本件差押予告書について
 審査請求人は、虚偽の報告書が提出されている点について調査をすることなく、何ら所得を得ていないと申告している審査請求人の財産に対して、支払期限までに支払わなければ差し押さえるという本件差押予告書は、あまりにも不公正なものである旨主張する。
 しかしながら、差押予告書は、納付を促すために発するものであり、それ自体として、納税者の権利義務その他法律上の地位に影響を及ぼすものではなく、審査請求の対象とならない。
5 審査請求に係る審理手続について
 本件各審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
6 結論
 よって、本件各審査請求のうち、本件処分1から3までの取消しを求める部分については不適法であり、本件処分4の取消しを求める部分については理由がないものと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり答申する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会税務第2部会
 委員(部会長)岸本佳浩、委員 鹿田良美、委員 瀬川昇

答申書(平成29年度答申第17号)

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