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平成30年3月13日付け裁決(答申第17号)

2023年2月17日

ページ番号:433767

裁決書

審査請求人 ○○○○
処分庁 大阪市長

 審査請求人が、平成29年4月7日付けでした平成29年1月4日付け個人の市民税及び府民税賦課決定処分(以下「本件処分1」という。)に係る審査請求(平成29年度財第2号。以下「本件審査請求1」という。)及び平成29年1月20日付け個人の市民税及び府民税税額変更処分(以下「本件処分2」という。)に係る審査請求(平成29年度財第3号。以下「本件審査請求2」という。)並びに平成29年8月1日付けでした平成29年6月23日付け個人の市民税及び府民税税額変更処分(同税の年税額を○○○○円から○○○○円に変更したもの)(以下「本件処分3」という。)に係る審査請求(平成29年度財第17号。以下「本件審査請求3」という。)及び平成29年6月23日付け個人の市民税及び府民税税額変更処分(同税の年税額を○○○○円から○○○○円に変更したもの)(以下「本件処分4」という。)に係る審査請求(平成29年度財第18号。以下「本件審査請求4」という。)について、次のとおり裁決します。

主文
1 本件審査請求1、本件審査請求2及び本件審査請求3を却下します。
2 本件審査請求4を棄却します。

事案の概要
1 処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)は、平成29年1月4日、本件処分1を行いました。
2 処分庁は、審査請求人が平成29年1月20日に提出した「平成28年度市民税・府民税申告書」に基づき、同日、本件処分2を行いました。
3 審査請求人は、平成29年4月7日、大阪市長に対し、本件処分1及び2の取消しを求めて審査請求をしました。
4 処分庁は、平成29年6月13日、個人の市民税及び府民税税額変更処分(同税の年税額を○○○○円から○○○○円に変更したもの)(以下「請求外処分」という。)を行いました。
5 処分庁は、平成29年6月23日、本件処分3及び4を行いました。
6 処分庁は、平成29年6月28日、審査請求人に対し、本件処分2の徴収金に係る「差押予告書及び納付書」(以下「本件差押予告書」という。)を送付しました。
7 審査請求人は、平成29年8月1日、大阪市長に対し、本件処分3及び4の取消しを求めて審査請求をしました。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 審査請求人の平成27年中の収入は、約○○○○円である。
(2) 株式会社○○○○(以下「本件会社」という。)が提出した給与支払報告書は、虚偽の報告書である。
(3) 審査請求人は、本件会社から一切の支払を受けておらず、正確な金額も知らない。
(4) 本件会社からの収入がないのに、あることとして税金を計算することは、実質課税(地方税法(以下「法」という。)第294条の2の2)に反する。
(5) 誤った収入金額に対する課税処分であったにもかかわらず、生命保険料控除を受ければ税額が減額されると聞かされ、訳が分からないままに保険資料を持参して控除の手続をとったところ、誤った控除がなされている。
(6) 虚偽の報告書が提出されている点について調査をすることなく、何ら所得を得ていないと申告している審査請求人の財産に対して、支払期限までに支払わなければ差し押さえるという本件差押予告書は、あまりにも不公正なものと言わざるを得ない。
2 処分庁の主張
(1) 役員報酬未払の主張について
ア 審査請求人には、複数の給与支払者から処分庁宛て提出された給与支払報告書があるため、それら全てを合算した上で、法等に基づき、税額を適正に算出している。
 本件会社についても、処分庁宛て平成27年分の給与支払報告書の提出があることから、給与の支払があったものと認められる。
イ 本件会社からの給与又は報酬について、処分庁が調査、確認等を行った結果は、次のとおりである。
(ア) 本件会社から提供を受けた審査請求人に係る「平成27年分給与所得退職所得に対する源泉徴収簿」(以下「本件源泉徴収簿」という。)には、平成27年1月から同年9月まで、毎月○○○○円が審査請求人に支払われていたことが記録されている。
(イ) 本件会社の平成26年10月1日から平成27年9月30日までの事業年度に係る法人税の確定申告書の添付書類である「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」には、役員給与として審査請求人に対し、○○○○円が支払われていたことが記録されている。
(ウ)  本件会社の「損益計算書」の役員報酬の額は、前記(イ)の「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」の役員給与の合計額と同額である。
(エ) 本件会社に係る履歴事項全部証明書には、「監査役 ○○○○ 平成○年○月○日重任 平成○年○月○日辞任」と記載されている。
ウ 給与支払報告書に基づいて賦課決定を行う場合、法定調書である当該給与支払報告書に記載されている支払金額について、実際に受け取ったか否かについて確認することは、その要件とされていない。
(2) 本件差押予告書を送付したことについて
 審査請求人については、平成29年1月4日、納期限を同月31日とする「平成28年度市民税・府民税納税通知書兼税額変更(決定)通知書」を送付し、当該納期限を経過後、平成29年2月27日に督促状を送付している。その後、同年3月17日に納税注意書を送付したが、納付の確認ができなかったため、同年6月28日に本件差押予告書の送付に至ったものである。
 よって、本件差押予告書を送付したことについて、何ら違法、不当な点はない。

理由
1 本件審査請求に係る法令等の規定
 (1) 納税義務者について
 道府県内に住所を有する個人に対しては道府県民税を、市町村内に住所を有する個人に対しては市町村民税を、均等割額及び所得割額の合算額によってそれぞれ課するとされています(法第24条第1項第1号及び第294条第1項第1号)。
(2)  所得割の課税標準について
 道府県民税及び市町村民税の所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とされ(法第32条第1項及び第313条第1項)、法又はこれに基づく政令で特別の定めをする場合を除くほか、それぞれ所得税法その他の所得税に関する法令の規定による所得税法第22条第2項又は第3項の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算の例によって算定するとされています(法第32条第2項本文及び第313条第2項本文)。
(3)  給与所得金額の算定方法について
 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいい(所得税法第28条第1項)、給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とするとされています(同条第2項)。
(4)  収入金額とすべき金額について
 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とするとされています(所得税法第36条第1項)。
(5) 給与支払報告書の提出義務について
 1月1日現在において給与の支払をする者で所得税法第183条の規定によって所得税を徴収する義務があるものは、同月31日までに、総務省令の定めるところによって、当該給与の支払を受けている者についてその者に係る前年中の給与所得の金額その他必要な事項を当該給与の支払を受けている者の1月1日現在における住所所在の市町村別に作成された給与支払報告書に記載し、これを市町村長に提出しなければならないとされています(法第317条の6第1項)。
2  審理の対象について
(1) 本件処分1及び本件処分4は、いずれも審査請求人の平成27年中の給与収入の額が○○○○円であることを前提として行われた賦課決定処分であるところ、本件処分1は、本件処分4がなされたことに伴い取り消されたものと解されます。
 審査請求は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の違法性又は不当性を理由として当該処分等の取消しを求めてする行政手続であり(行政不服審査法(以下「行審法」という。)第1条第1項)、消滅した処分に対する不服は審査の対象とはなりません。前述のとおり、本件処分1は本件処分4がなされたことに伴い取り消されたものと解され、本件審査請求1は、本件処分1の取消しを求める法律上の利益を欠いており、不適法です。
(2) 本件処分2は、本件処分1の税額を減額する処分であって、本件処分1の一部取消しという審査請求人に有利な効果をもたらすものであるから、本件審査請求2は、本件処分2の取消しを求める法律上の利益を欠いており、不適法です。
(3) 本件処分3は、請求外処分によって増額となった分を減額する処分であって、請求外処分の一部取消しという審査請求人に有利な効果をもたらすものであるから、本件審査請求3は、本件処分3の取消しを求める法律上の利益を欠いており、不適法です。
(4) したがって、本件審査請求4について、以下のとおり判断します。
3 本件処分4について
(1) 前記1(4)のとおり、所得金額の計算上収入金額とすべき金額は、その年分において収入すべき金額とされているところ、審査請求人は、本件会社から役員報酬○○○○円を受け取った事実はなく、処分庁が認定した給与収入額○○○○円(役員報酬○○○○円を含む。)は誤りである旨主張しています。
(2) しかしながら、審理員から提出された事件記録(行審法第42条第2項)及び審査請求人口頭説明記録(審査会に依頼し、提供を受けた行審法第81条第3項において準用する行審法第74条の規定による事実の陳述の記録)によれば、以下の事実が認めらます。
ア 本件会社は、審査請求人の平成27年中の収入について、処分庁に対し、支払金額を○○○○円とする給与支払報告書(以下「本件給与支払報告書」という。)を提出しています。
イ 本件会社が処分庁に提出した本件源泉徴収簿には、平成27年1月から同年9月まで、毎月○○○○円が審査請求人に支払われていたことが記録されており、その合計金額は、本件給与支払報告書の支払額に一致しています。
ウ 本件会社の平成26年10月1日から平成27年9月30日までの事業年度に係る法人税の確定申告書の添付書類である「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」には、役員給与として審査請求人に対し、○○○○円が支払われていたことが記録されています。
エ 審査会の答申書において「審査請求人の説明によれば、審査請求人は、自身が本件会社の役員に就任しているであろうこと、及び、本件会社から審査請求人に対し給与の支払処理がなされているであろうことを認識していたと考えられる。」とされています。
 この点について、審査請求人口頭説明記録によれば、審査請求人は、答申書のとおり認識していたことがうかがえます。
(3) 以上によれば、本件給与支払報告書に記載されている給与収入は、審査請求人が収入すべき金額に該当すると認められ、審査請求人の上記主張は、採用することができません。
4 本件差押予告書について
 審査請求人は、虚偽の報告書が提出されている点について調査をすることなく、何ら所得を得ていないと申告している審査請求人の財産に対して、支払期限までに支払わなければ差し押さえるという本件差押予告書は、あまりにも不公正なものである旨主張しています。
 しかしながら、差押予告書は、納付を促すために発するものであり、それ自体として、納税者の権利義務その他法律上の地位に影響を及ぼすものではなく、審査請求の対象とはなりません。
5 結論
 よって、本件審査請求1、本件審査請求2及び本件審査請求3については、取消しを求める法律上の利益を欠く不適法なものであるため行審法第45条第1項の規定により、また、本件審査請求4については、本件処分4に違法・不当な点は認められず、理由がないことから、行審法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決します。

平成30年3月13日
大阪市長 吉村 洋文

裁決書(平成29年度答申第17号)

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