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平成29年5月29日付け裁決(答申第3号)

2023年2月17日

ページ番号:439570

裁決書

審査請求人
○○○○
○○○○
処分庁
大阪市A区保健福祉センター所長

 審査請求人(以下「請求人」という。)が平成28年9月27日に提起した処分庁による生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第78条の規定に基づく徴収金決定処分に係る審査請求(以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決する。

主文
 本件審査請求を棄却する。

事案の概要
1 平成21年11月3日付けで、処分庁は請求人に対し、法による保護を開始した。
2 平成21年11月4日、請求人が処分庁に、預貯金先として「B」とのみ記載がある資産申告書を提出した。また、請求人が処分庁から「生活保護のしおり」を受け取るとともに、生活保護制度に関する説明を受けた。
3 平成24年1月24日、請求人が処分庁に、平成23年○月から○月まで収入がない旨の収入申告書を提出した。
4 平成24年3月13日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に請求人から口座開設の報告や収入に関する言及はなかった。
5 平成24年4月19日、請求人が処分庁に、平成24年○月から○月まで収入がない旨の収入申告書を提出した。
6 平成24年7月11日、請求人が処分庁に、1年間収入がない旨の収入申告書を提出した。
7 平成24年11月19日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に請求人から口座開設の報告や収入に関する言及はなかった。
8 平成25年2月19日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に請求人から口座開設の報告や収入に関する言及はなかった。
9 平成25年7月22日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に猫がいることが確認されたが、請求人から口座開設の報告や収入に関する言及はなかった。請求人が処分庁に、1年間収入がない旨の収入申告書を提出した。
10 平成25年11月22日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に猫がいることが確認されたが、請求人から口座開設の報告や収入に関する言及はなかった。
11 平成26年3月10日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に猫がいることが確認されたが、請求人から口座開設の報告や収入に関する言及はなかった。
12 平成26年7月15日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に猫がいることが確認されたが、請求人から口座開設の報告や収入に関する言及はなかった。
13 平成26年10月22日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に請求人から口座開設の報告や収入に関する言及はなかった。請求人が処分庁に、平成25年○月から平成26年○月まで収入がない旨の収入申告書を提出した。また、請求人が処分庁から「生活保護のしおり」を受け取るとともに、生活保護法の改正に関する説明を受けた。
14 平成27年2月24日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に猫がいることが確認されたが、請求人から口座開設の報告や収入に関する言及はなかった。
15 平成27年6月23日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に猫がいることが確認されたが、請求人から口座開設の報告や収入に関する言及はなかった。
16 平成27年7月8日、請求人が処分庁に、平成26年○月から平成27年○月までと、平成27年○月から○月まで収入がない旨の収入申告書を提出した。
17 平成27年10月14日、請求人が処分庁に、平成27年○月から○月まで収入がない旨の収入申告書を提出した。
18 平成27年11月11日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に、請求人が処分庁職員に対し、「C信用金庫」の口座の存在と、その口座への知人からの入金の事実を伝えた。請求人は、この入金が知人に貸したお金の返済金であると主張するとともに、知人にこのことを相談したところ、役所に提示すれば返還になると聞いたため、役所に提出する気はないと話した。処分庁職員から請求人に対して「C信用金庫」の通帳の提出を指示するも、請求人は、調査権限があるのだから処分庁で調べろという趣旨の返答をした。
19 平成27年11月20日、請求人が処分庁に、預貯金先として「B」とのみ記載がある資産申告書を提出した。
20 平成28年1月13日、請求人が処分庁に、平成27年○月から○月まで収入がない旨の収入申告書を提出した。
21 平成28年1月28日、処分庁がC信用金庫事務部に対し、請求人の口座の有無に関する法第29条に基づく照会を行った。
22 平成28年2月1日、処分庁がC信用金庫事務部から、請求人の口座がC信用金庫○○支店に存在する旨の回答を受理した。
23 平成28年2月2日、処分庁がC信用金庫○○支店に対し、請求人の口座番号及び平成21年11月以降の出入金明細に関する法第29条に基づく照会を行った。
24 平成28年2月17日、処分庁がC信用金庫○○支店から、請求人の口座番号及び平成21年11月以降の出入金明細に関する回答を受理したところ、以下の記載があった。
                  お支払金額    お預り金額
 24  ○ ○   振込入金  D          〇〇
 24  ○ ○    ATM振込  〇〇            D
 24  ○ ○    ATM振込  〇〇            D
 24  ○ ○    ATM振込  〇〇            D
 24  ○ ○    振込入金  D            〇〇
 24  ○ ○    ATM振込  〇〇            D
 24   ○ ○    ATM振込  〇〇               D
 27   ○ ○    振込入金   D           〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D          〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D            〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D          〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D          〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D         〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D         〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D         〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D         〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D         〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D         〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D         〇〇
 27  ○ ○    振込入金   D         〇〇
 27   ○ ○    振込入金   D         〇〇
 27   ○ ○    振込入金   D         〇〇
25 平成28年2月25日、処分庁職員による請求人宅の定期訪問時に請求人から「C信用金庫」への入金に関する言及はなかった。
26 平成28年3月30日、処分庁がケース診断会議を実施し、知人からの入金について法第78条に基づき徴収することを決定した。
27 平成28年3月31日、処分庁が請求人に対し、法第78条に基づく徴収金決定処分を行った。
 請求人は、知人からの入金は、知人のペットの猫を預かっていた際の立て替えていた食費分であることや、知人との間で金銭の貸し借りを行っていることなどを申し立てた。
28 平成28年4月22日、請求人が大阪市長に対し、平成28年3月31日付け徴収金決定処分の取消しを求める審査請求をした。
29 平成28年7月1日、理由の提示に瑕疵がある処分であるとして、大阪市長が平成28年3月31日付け徴収金決定処分を取り消す裁決を行ったが、この裁決において大阪市長は、次の理由で、猫の生活費とする請求人の主張自体は退けた。
 すなわち、請求人は少なくとも平成25年○月○日の時点で知人から猫を預かり始めているところ、知人からの入金は平成24年の2回を除けば全て平成27年以降のものであり、請求人が猫を預かっている時期と入金の時期には齟齬が存在する。
 加えて、入金額が毎回○万円と定額であり、猫のために費消した経費を積み上げたものとは考えられないこと、及び猫のために費消したことを証明するものが何ら請求人から提出されていないことから、猫の生活費とする請求人の主張については事実とは認められない。
30 平成28年7月5日、処分庁が請求人に対し、知人からの入金○○○○円について、法第78条に基づく徴収金決定処分(以下「本件処分」という。)を行った。
31 平成28年9月27日、請求人は、大阪市長に対し、本件処分の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。

審理関係人の主張の要旨
1 請求人の主張
 入金は、預り猫の生活費(エサ、病院、砂)であり私的収入扱いは不当。
 猫の飼い主たる知人が、仕事で出張する際に、平成25年○旬から平成26年○旬まで4、5回猫を預かった。知人は、猫の缶詰と海老を持ってきた。平成27年度に知人が長期出張に行くことになり、○月中旬から○月○日の帰阪まで預かった。猫の主食は海老で、エサ代は毎週送金してもらうことになり、○回送金を受けた。当事者どうしでレシート確認のため証拠はない。○月○日から○月○日までの出張(○月○日一時帰阪)の際も預かり、○回送金を受けた。貸し借りは平成24年度の入出金である。
2 処分庁の主張
 請求人は、収入の申出当初、「知人に貸したお金の返済金」と申し立てており、預り猫の生活費という主張は、平成28年3月31日の徴収金決定処分の通知の際に初めて述べられたものである。処分庁の職員が家庭訪問した際に猫を確認しているが、請求人は猫の生活費には何ら言及していない。
 また、請求人は入金時期の収入申告書で無収入と申告し、処分庁が請求人に対して資料を提示するよう求めたにもかかわらず従わなかったことから、虚偽の申告と判断したものである。

理由
1 法令等の定め
(1)法第4条は、生活保護制度における基本原理の一つである「保護の補足性」について規定しており、その第1項において、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と定めている。また、法第5条は、「法律の解釈及び運用は、すべてこの原理に基づいてされなければならない。」と定めている。
(2)法第8条第1項によれば、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。」とされている。これは、生活保護制度により保障されるべき最低限度の生活は、「生活保護法による保護の基準」(昭和38年4月1日厚生省告示第158号。以下「保護の基準」という。)によって、要保護者各々について具体的に確定され、その保護の程度は、保護の基準によって測定された需要と要保護者の資力(収入)とを対比し、その資力で充足することのできない不足分について扶助されることを定めているものである。
(3)法第28条及び法第29条で保護の実施機関には積極的な調査権限が付与されているが、併せて、法第61条では、「被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。」と規定し、被保護者に対し、届出の義務を課している。
(4)法第78条は、「不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に100分の40を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。」と規定している。
 ここでいう「不実」とは、積極的に虚構の事実を構成することはもちろん、消極的に真実を隠蔽することも含まれる。
 そして、平成24年7月23日社援保発0723第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知「生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて」(以下「平成24年通知」という。)の2「法第78条に基づく費用徴収決定について」において、「法第63条は、本来、資力はあるが、これが直ちに最低生活のために活用できない事情にある要保護者に対して保護を行い、資力が換金されるなど最低生活に充当できるようになった段階で既に支給した保護金品との調整を図るために、当該被保護者に返還を求めるものであり、被保護者の作為又は不作為により保護の実施機関が錯誤に陥ったため扶助費の不当な支給が行われた場合に適用される条項ではない。被保護者に不当に受給しようとする意思がなかったことが立証される場合で、保護の実施機関への届出又は申告をすみやかに行わなかったことについてやむを得ない理由が認められるときや、保護の実施機関及び被保護者が予想しなかったような収入があったことが事後になって判明したとき等は法第63条の適用が妥当であるが、法第78条の条項を適用する際の基準は次に掲げるものとし、当該基準に該当すると判断される場合は、法第78条に基づく費用徴収決定をすみやかに行うこと。」とされており、法第78条を適用する際の基準(以下「適用基準」という。)については、「①保護の実施機関が被保護者に対し、届出又は申告について口頭又は文書による指示をしたにもかかわらず被保護者がこれに応じなかったとき(適用基準①)、②届出又は申告に当たり明らかに作為を加えたとき(適用基準②)、③届出又は申告に当たり特段の作為を加えない場合でも、保護の実施機関又はその職員が届出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず、又は虚偽の説明を行ったようなとき(適用基準③)、④課税調査等により、当該被保護者が提出した収入申告書が虚偽であることが判明したとき(適用基準④)」と示されている。
2 争点
請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は次のとおりである。
・ 平成27年度以外の収入(以下「収入①」という。)が収入認定すべき収入に該当するか否か。(争点1-①)
・ 平成27年度の収入(以下「収入②」という。)が収入認定すべき収入に該当するか否か。(争点1-②)
・ 請求人は保護費を不当に受給しようとする意思をもって申告すべき収入を申告していなかったことが認められるか。(争点2)
3 争点に対する判断
(1)収入認定についての考え方
 前記1(1)のとおり、保護の補足性について定めた法第4条第1項において、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と規定されている。
 そして、かかる法の規定からすると、収入認定すべき収入にあたるか否かは、その金銭を得たことにより、被保護者の最低限度の生活の維持のために活用可能な資産が増加したか否かの観点から検討すべきこととなる。
(2)争点1-①について
 収入①に関し請求人は、「貸したお金が返ってきたものだからこれはもともと自分のお金であると訴え、収入ではない」と主張している。
 この点、生活保護開始以前の貸付金が返済されたのであれば、入金時における活用可能な資産が増加し、当然に収入認定すべき収入となることに疑いの余地はない一方、受給した保護費の中から貸与した場合、その返済金が入金されたことの一事をもって活用可能な資産が増加したといえるかが問題となり得る。
 ここで、法の目的は、「最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」(法第1条)であり、他人への金銭貸与は、本人の最低生活の維持にも、自立の助長にも資することのない用途である。そうであれば、金銭貸与を行った時点で保護費としての性質を失うことになり、当該金銭が返済されれば、被保護者の活用可能な資産が増加したといえるから、当該金銭は収入認定すべき収入となると解される。
 よって、収入①は、収入認定すべき収入に当たる。
(3)争点1-②について
 収入②に関し請求人は、知人から預かった猫の餌代、病院代、砂代(以下「猫の餌代等」という。)であると主張している。
 この点、前記3(1)のとおり、収入認定すべき収入にあたるか否かは、被保護者の最低限度の生活の維持のために活用可能な資産が増加したか否かの観点から検討されるべきものである。
 そして、知人より請求人の口座に金銭が振り込まれていることについては、事件記録から確認できる。また、請求人が知人から猫を預かっていたことについても、同様に事件記録から認めることができるが、問題は当該金銭が、猫の餌代等として現に費消されたために、活用可能な資産が増加していないといえるか否かである。
 一般に、被保護者の口座に入金があれば、活用可能な資産が増加したものと評価できるのが通常である。一方で、当該入金が使途を限定したものであり、入金された金銭を被保護者が現にその使途に直ちに費消したのであれば、例外的に、活用可能な資産が増加しているとはいえないことになる。
 ここで、平成24年通知の1、(1)、③においては、法第63条に基づく費用返還の対象額から控除すべき収入の認定に当たり、「事前に実施機関に相談があったものに限る。ただし、事後に相談があったことについて真にやむを得ない事情が認められるものについては、挙証資料によって確認できるものに限って同様に取り扱って差し支えない」として、例外的な事情について被保護者側に明らかにするよう求めている。
 法第63条に関する上記通知の場合より被保護者側の帰責性が大きい法第78条の適用が問題となる本件においては、例外的に活用可能な資産が増加していないことについて、被保護者の側が明らかにすべき事項であると解される。
 以上を前提に、以下のとおり検討する。
ア まず、前記1(3)のとおり、収入、支出その他生計の状況に変動があった場合には、被保護者に速やかな届出義務が課せられており(法第61条)、保護の実施機関は、当該届出をもとに、被保護者について収入認定等を行うこととなる。
 そして、請求人は、収入②について法第61条に基づく届出を速やかに行っていないが、知人からの口座への入金が猫の餌代等のためであること、請求人が現実に猫の餌代等のために当該入金された金銭を直ちに費消したことは、当該届出によって請求人が明らかにしない限り、処分庁にとっては把握する契機がないといえる。
 したがって、収入②については、その活用可能な資産が増加していないと処分庁が判断できる状況にはなかったものと解される。
イ 次に、審査請求書によれば、知人からの入金には、猫の病院代、砂代も含まれているとのことであるが、請求人からそれ以上の具体的な言及はなく、これを裏付ける証拠の提出も一切されていないことが事件記録により確認できる。
ウ さらに、事件記録によると、本件審査請求の審理手続においても、審理員は猫の餌代等であることを証明する物件を提出するよう請求人に依頼を行ったが、請求人から猫の餌を購入した際のレシート等の物件が提出されることはなかったことが確認できる。
エ 以上の点からすれば、現時点においてもなお、収入②が猫の餌代等として費消されたという請求人の主張を裏付けるものはなく、請求人について活用可能な資産が増加していないと認めることはできないから、収入②は、収入認定すべき収入に当たる。
(4)争点2について
 平成24年通知では、「被保護者に不当に受給しようとする意思がなかったことが立証される場合で、保護の実施機関への届出又は申告をすみやかに行わなかったことについてやむを得ない理由が認められるとき」等は、「法第63条の適用が妥当である」と示されていることから、法第78条の適用にあたっては保護費を不当に受給しようとする意思があることが求められるとともに、各適用基準はその客観的事情を示していると解される。また、被保護者に保護費を不当に受給しようとする意思がある前提として、被保護者が法第61条に基づく届出義務としての収入申告義務を理解していることが必要であると解される。
 よって、未申告の収入に関し、収入申告義務を理解していたか、保護費を不当に受給しようとする意思があったかについて、本件の事実関係に照らして検討する。
ア 請求人は、収入申告義務を理解していたか。
 処分庁は、請求人の保護開始時の平成21年11月4日と制度変更時である平成26年10月22日に、請求人に対して、「生活保護のしおり」を用いて、あらゆる収入について申告しなければならない旨請求人に説明を行い、請求人も説明を受けた旨署名を行っている。
 よって、請求人は、収入があればすべて処分庁に申告しなければならないことを理解していたと推認できる。
イ 請求人に保護費を不当に受給しようとする意思があったか。
 事件記録によれば、請求人は、平成27年11月11日に、処分庁職員(ケースワーカー)が請求人宅を訪問した際、その場で請求人が提示した資産申告書について、ケースワーカーから同申告書に記載された以外の通帳はないかとの質問を受けた。それに対し、請求人は、同申告書に記載された通帳以外の別の通帳があると述べながら、その通帳を提示するように職員が指示したにもかかわらずその指示に従わず、当該別の通帳を提出しなかった。
 そして、その際に、請求人は、自ら通帳を提示しない理由として、当該通帳には、知人からの返済金が口座に振り込まれており、知人にこれを相談したところ、役所に提示すれば返還になると聞いたためとの趣旨のことを述べたとのことである。
 その後、処分庁は、法第29条に基づく調査を行い、当該別の通帳から本件審査請求に係る未申告の収入を発見している。
 以上の事実経過によれば、請求人は、処分庁が資産申告書の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じなかった客観的事情が認められることから、この点に関して少なくとも法第78条の適用基準③「届出又は申告に当たり特段の作為を加えない場合でも、保護の実施機関又はその職員が届出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず、又は虚偽の説明を行ったようなとき」に該当し、不当に保護費を受給しようとする意思があったことが認められる。
ウ これらの状況から、請求人は収入申告義務を理解していながら、保護費を不当に受給しようとする意思をもって申告すべき収入を申告していなかったと認められる。
(5)小括
 したがって、請求人のすべての未申告収入について、法第78条の規定を適用した本件処分に違法又は不当な点は認められない。
4 結論
 以上のとおり、本件審査請求は理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決する。

平成29年5月29日
審査庁 大阪市長  吉村 洋文

裁決書(平成29年度答申第3号)

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