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平成30年8月1日付け裁決(答申第7号)

2023年2月17日

ページ番号:447825

裁決書

審査請求人 ○○○○
処分庁 大阪市長

 審査請求人が平成29年11月2日付けでした、処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)による平成29年8月9日付け延滞金減免不許可処分(以下「本件処分」という。)に係る審査請求(平成29年度財第25号。以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決します。

主文
 本件審査請求を棄却します。

事案の概要
1 審査請求人は、平成26年5月1日から平成27年4月30日までの事業年度分の法人市民税に係る確定申告書を平成27年7月28日に処分庁に提出しました。
2 審査請求人は、平成26年5月1日から平成27年4月30日までの事業年度分の法人市民税に係る修正申告(以下「本件修正申告」という。)を平成29年4月5日に処分庁に行いました。
3 処分庁は、本件修正申告に伴う延滞金額○○○○円について、審査請求人の納付がなかったため、平成29年6月8日付けで、当該延滞金額に係る納付書を送付しました。
4 審査請求人は、平成29年7月20日付けで、処分庁に対して当該延滞金額の減免申請を行い、処分庁は、平成29年8月9日付けで、審査請求人に対して本件処分を行いました。
5 審査請求人は、平成29年11月2日付けで大阪市長に対し、本件処分を不服として本件審査請求をしました。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 地方税法(以下「法」という。)第326条第4項及び平成30年大阪市条例第55号による改正前の大阪市市税条例(以下「市税条例」という。)第14条第6項は「やむを得ない理由があると認める場合には、延滞金額を減免することができる」としている。審査請求人の平成25年度から27年度に関する大阪市に対する法人市民税に関する申告納付は、法及び市税条例の「やむを得ない理由」に該当するものである。したがって、本件処分は、これらの規定に反する不合理なものであり、合理的な行政裁量を逸脱するものである。
(2) 審査請求人は、常に自らの判断と責任に基づき正しいものとして、確定申告書を含めた税務申告を行っている。しかし、A市は法律に基づいたものであるとして、審査請求人に対して積極的に指導を行った。指導を受けた時点で審査請求人は反論しているが、その場で却下されている。そのうえで、審査請求人の確定申告の状況が誤りであると断定され、指導に基づいた申告を促された。当然指導に応じなければそれなりのペナルティーが課せられるという前提である。そのような状況下において、行政による指導内容を無視した判断を納税者自身が下し、申告・納付を行うことは事実上不可能である。であるからこそまた、A市長は審査請求人に対して、その後、当該指導に誤りがあった事を公式に認めている。
 すなわち本事案は、審査請求人の正しい判断に基づく確定申告に対して、誤った指導が積極的に行政によって行われ、誤った内容に誘導されたという異常な事態が前提となっており、審査請求人にとっては不可抗力としかいいようがないこと、そして審査請求人に責がないことは客観的に明らかである。
(3) 弁明書における処分庁の弁明についてであるが、第一に、当初の申告の際、行政による誤指導の影響を完全に排除できたはずであるし、納税者はそうしなければならないという考え方は、一般納税者の考え方からは著しく乖離している。行政による指導があった場合、指導に従わない場合の不利益を考慮すれば、一般納税者としてはこれに従わざるを得ないのが現実である。
 第二に、申告納税方式であるという根拠からのみこの件を判断することは、法第326条第4項及び市税条例第14条第6項の適用を大きく狭め、同時に法の趣旨から通常認められるべき「やむを得ない理由があると認める場合」の範囲を狭める結果になってしまう。すなわち、法は、「やむを得ない理由があると認める」か否かを判断する事情を何ら限定していない。しかし、処分庁が主張するように申告納税方式であるという根拠からのみこの件を判断することになれば、申告前後の事情については何ら考慮されないことになってしまい、延滞金が発生する時点ではすでに結論が出ていることになってしまう。これでは上記の法の趣旨にそぐわないと考える。
 第三に、他の自治体(B・C・D・E)に審査請求人が申請した同内容の延滞金減免申請は全て減免決定を受けている。これらの自治体でも、大阪市と同じ法に基づいて審査がなされているが、いずれの自治体においても、A市側の誤った指導等の経緯が減免を受けるべき事情、「やむを得ない理由」に該当すると認められている。大阪市以外に申告納税である事が理由で却下された事案は一つもない。以上の事情からすれば、処分庁による本件処分は、行政の統一性・一貫性、税法の一体的な適用を阻害するものといわざるを得ない。
(4) そもそも法が認める租税に関する行政の「裁量」は、全く無限定の自由裁量ではない。憲法第30条及び第84条の定める租税法律主義のもとでは、課税に関する行政の裁量は自由裁量ではなく、それを羈束裁量と呼ぶかどうかは別にして、当然に必要かつ合理的な範囲に限定される。
 そうであるからこそ、誤指導に基づいた課税に対して、大阪市以外の自治体は審査請求人が申請した同内容の延滞金減免申請について全て減免決定をしている。そして、国税に関する法令解釈通達(「人為による異常な災害又は事故による延滞税の免除について」)ですら、税務職員による誤指導があった場合には延滞税を免除するものとしている。
 処分庁は、国やこれらの自治体とは別個独立の自治体であるとしても、これらの国や自治体とは異なる判断をするのであれば、すなわち「他の自治体における見解と本件とを比較することが適当」ではなく、かつ本件が「直ちに本市の延滞金を減免させるに足る『やむを得ない理由がある』には当たらない」と判断するのであれば、本件においてどのような事情があるから、あるいはどのような事情がないから、減免しないという判断をしたのか、その判断の合理性を自ら具体的に示す必要がある。しかし、処分庁は、「それが直ちに本市の延滞金を減免するに足る(中略)『やむを得ない理由がある』」に当たらないと主張するのみで、その判断の合理的な根拠を一切示していない。
2 処分庁の主張
(1) 審査請求人は、平成26年5月1日から平成27年4月30日までの事業年度分の確定申告書を提出するに際し、正しい申告及び納付ができなかったのはすべてA市長の指導が原因であるとすることは納税者の判断と責任を放棄しており、最終的に法の規定に基づいているか、事務所等の認定や本市域内に所在する事務所等の従業者数、分割基準数及び課税標準、法人税割額等の計算に誤りがないかを審査請求人自身で精査しなければならない。
 平成29年7月20日付けで、審査請求人が本市に提出した「延滞金減免申請書」の「減免を受けようとする理由」には、「当該事業年度分の確定申告書を見直した結果、A市長の指導が誤りであったと判断するに至った」旨を記載していることから、自らの精査によって申告内容の誤りに気付き得たものであると考える。
(2) 本市が延滞金の減免を不許可としたのは、単に法人市民税が申告納税方式を採用する税目であるということを根拠としているのではなく、仮に申告内容が適正でないことのきっかけが他の自治体の指導にあったとしても、それが直ちに本市の延滞金を減免するに足る、法第326条第4項及び市税条例第14条第6項に規定する「やむを得ない理由がある」には当たらないからである。
 法第326条第4項の規定は、延滞金の減免の可否を各市町村長の裁量に委ねているものであり、本市では、市民税の延滞金の減免について、市税条例第14条第6項で定めているところである。したがって、他の自治体における見解と本件を比較することは適当ではない。
(3) 申告納税制度においては、他の自治体の指導を受けた場合においても、納税者がその内容を精査したうえで、最終的には納税者が自己の責任において、自身で申告を行う必要がある。
 A市から受けた指導内容に疑義を持ったのであれば、審査請求人の事務所等が所在する本市や他の自治体に、A市からの指導内容の正否を確認することも可能であったが、審査請求人から本市に対して相談や問い合わせはなかった。指導内容の正否の確認を行わなかったことも、自らの意思であることから、その結果として本市へ法人市民税の修正申告書を提出することとなり延滞金が発生したことについては、本市の延滞金を減免するに足る、法第326条第4項及び市税条例第14条第6項に規定する「やむを得ない理由がある」には該当しない。

理由
1 本件審査請求に係る法令の規定
(1) 法人市民税の納税義務者について
 法人市民税は、市町村内に事務所又は事業所を有する法人に対しては、均等割額及び法人税割額の合算額によって課するとされています(法第294条第1項第3号)。
(2) 法人市民税の申告納付について
 法人税法第74条第1項の規定によって法人税に係る申告書を提出する義務がある法人は、当該申告書の提出期限までに、総務省令で定める様式によって、当該申告書に係る法人税額、これを課税標準として算定した法人税割額、均等割額その他必要な事項を記載した申告書を、その法人税額の課税標準の算定期間中において有する事務所、事業所又は寮等所在地の市町村長に提出し、その申告した法人市民税額を納付しなければならず(法第321条の8第1項)、同項の規定によって申告書を提出した法人は、先の申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した法人市民税額に不足額があるときは、遅滞なく、総務省令で定める様式によって、当該申告書を提出した市町村長に、当該申告書に記載した課税標準等又は税額等を修正する申告書を提出し、その申告により増加した法人市民税額を納付しなければならないとされています(同条第22項)。
(3) 二以上の市町村において事務所又は事業所を有する法人市民税の申告納付について
 二以上の市町村において事務所又は事業所を有する法人が法第321条の8の規定によって法人市民税を申告納付する場合においては、当該法人の法人税額を関係市町村に分割し、その分割した額を課税標準とし、関係市町村ごとに法人税割額を算定して、これに均等割額を加算した額を申告納付しなければならず(法第321条の13条第1項)、その分割は、関係市町村ごとに、法人税額の課税標準の算定期間中において有する法人の事務所又は事業所について、当該算定期間の末日現在における従業者の数にあん分して行うこととされています(同条第2項)。
(4) 修正申告に係る延滞金について
ア 市町村民税の納税者は、法第321条の8第22項に規定する申告書に係る税金を納付する場合には、この税額に、その納期限(当該税金に係る同条第1項の納期限とし、納期限の延長があった場合には、その延長された納期限とする。以下同じ。)の翌日から納付の日までの期間の日数に応じて計算した金額に相当する延滞金額を加算して納付しなければならないとされています(法第326条第1項)。
 ただし、市町村長は、納税者が納期限までに税金を納付しなかったことについてやむを得ない理由があると認める場合には、法第326条第1項の延滞金額を減免することができることとされています(同条第4項)。
イ 市長は、納税者が納期限までに税金を納付しなかったことについてやむを得ない理由があると認める場合には、申請に基づき、延滞金額を減免することができることとされています(市税条例第14条第6項)。
2 審査請求人の主張について
 法第326条第4項及び市税条例第14条第6項は、税負担の公平等の要請に鑑み、「やむを得ない理由」があると認められる場合に延滞金の裁量的減免を認めるものと解されます。かかる法第326条第4項及び市税条例第14条第6項の趣旨に鑑みれば、ここでの「やむを得ない理由」とは、単なる納税者の税法の不知又は誤解に基づく場合を意味するのではなく、延滞金を課すことが不当又は酷と認められる特別な事情、例えば、災害、交通・通信の途絶等、納税者の責めに帰することのできない外的事情による場合など、社会通念上、上記趣旨に鑑みてもなお、やむを得ない理由がある場合を意味すると解するのが相当です。また、「やむを得ない理由」の判断にあたっては、審査請求人が主張する他の市町村の誤指導についても、納税者の責めに帰することのできない外的事情となり得るものの、単に当該誤指導があったという事実のみでは足りず、当該誤指導の内容、誤指導がなされた後納税者が過少申告となった具体的経緯や状況、その他の事情を総合的に勘案した上で、社会通念上、上記趣旨に鑑みてもなお、やむを得ないと言えるかどうかを検討する必要があります。
 これを本件においてみるに、審査請求人から提出のあった平成29年6月27日付け○○○○によれば、A市は、平成23年2月に審査請求人に対して法人市民税の申告に当たり、A市内に所在した審査請求人の詰所を法人市民税の課税の基礎となる事務所又は事業所(以下「事務所等」という。)に当たる旨の誤指導をしたことは認められます。
 しかしながら、審査請求人は、A市から上記誤指導を受けた平成23年2月の時点では、当該詰所とは別にA市内に事務所等となる○○○○営業所を有していたことから、上記誤指導が直ちに当時の審査請求人のA市における法人市民税の申告税額には影響を及ぼさなかったとも考えられます。
 また、こうした状況を前提に、審査請求人は、その後平成25年6月頃になって、○○○○営業所を閉鎖していますが、その時点でA市と改めて折衝等を行った事実は伺われず、平成28年12月13日に本件審査請求の発端となった審査請求人のA市に対する更正の請求(平成25年5月1日から平成26年4月30日まで、平成26年5月1日から平成27年4月30日まで、平成27年5月1日から平成28年4月30日までの各事業年度分)を行うまでの間、A市内に事務所等を有するとした内容の法人市民税の申告書を継続して提出していたものと認められます。
 これらの事情からすれば、審査請求人に社会通念上、法令等の趣旨に鑑みてもなお、やむを得ない理由があるかどうかの判断にあたっては、上記誤指導が行われた具体的経緯及びその時点での申告内容等、さらには審査請求人が、○○○○営業所の閉鎖以降については、自らの正当と考える内容の申告を行ってA市からの更正処分を受けた上で、審査請求等の不服申立てを行う途もあった中で、A市と特段の折衝を行うことなく上記申告書の提出を続けるに至る事情等を十分に検討する必要がありますが、大阪市行政不服審査会からの要請によっても、審査請求人からはこれらの事項に関する主張等はなされていません。
 以上を踏まえると、審査請求人の現状の主張等を前提とする限り、本件処分に当たって、審査請求人に法第326条第4項及び市税条例第14条第6項に規定する「やむを得ない理由」があったとまでは認めることはできないと言わざるを得ません。
 また、審査請求人は、本市以外の自治体は審査請求人が申請した同内容の延滞金減免申請について全て減免決定しており、国税に関する法令解釈通達ですら、税務職員による誤指導があった場合には延滞税を免除するものとしていることから、処分庁による本件処分は、行政の統一性・一貫性、税法の一体的な適用を阻害する旨主張しています。
 しかしながら、本市における延滞金の減免については、あくまで先に述べた法令等の趣旨に鑑みてもなお、やむを得ないと言えるかどうかによって判断されるものであって、他の課税団体の対応状況等をもって直ちに当該減免の判断に影響を及ぼすものとはいえません。
3 結論
 以上のとおり、本件処分に違法又は不当な点は認められず、本件審査請求は理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決します。

平成30年8月1日
大阪市長 吉村 洋文

裁決書(平成30年度答申第7号)

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