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答申書(平成30年度答申第11号)

2023年2月17日

ページ番号:451265

諮問番号:平成30年度諮問第5号
答申番号:平成30年度答申第11号

答申書

第1 審査会の結論
 本件審査請求のうち、納付すべき税額○,○○○,○○○円(固定資産税○,○○○,○○○円、都市計画税○,○○○,○○○円)を超える部分については取り消し、その余の部分については棄却するのが相当である。

第2 審査請求に至る経過
1 処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)は、審査請求人に対して、別紙1物件目録記載の各土地(以下「本件各土地」という。)及び各家屋について、平成29年4月3日付けで、平成29年度の固定資産税・都市計画税の税額を○,○○○,○○○円(固定資産税○,○○○,○○○円、都市計画税○,○○○,○○○円)とする賦課決定処分(以下「本件処分」という。)を行った。
2 審査請求人は、平成29年5月31日、本件処分のうち、本件各土地の全てに住宅用地(地方税法(以下「法」という。)第349条の3の2第1項に規定する住宅用地をいう。以下同じ。)に対する固定資産税の課税標準の特例措置が適用された場合の税額を上回る部分の取消しを求めて、審査請求をした。

第3 審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 住宅用地の認定について
ア 住宅用地とは、「専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋(居住部分の割合(地方税法施行令(以下「政令」という。)第52条の11第1項に規定する居住部分の割合をいう。以下同じ。)が4分の1以上であるもの。)の敷地の用に供されている土地」であるが、住宅の敷地の認定にあたっては、「当該住宅を維持し、またはその効用を果たすために使用されている一画地の土地」という単位で判断される(「地方税法第349条の3の2の規定における住宅用地の認定について」(平成9年4月1日付け自治固第13号自治省税務局固定資産税課長通知)(以下「自治省通知」という。))。
 本件各土地は○筆で一画地を構成するものであるから、本件各土地が住宅用地であるかどうかを判断するにあたっては、一画地である本件各土地が「専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋(居住部分の割合が4分の1以上であるもの。)の敷地に用に供されている土地」に当たるかどうかを判断することになる。
イ 敷地の認定は「一画地」の単位で判断するのであり、本件において一画地が本件各土地によって構成されるのであれば、住宅用地の課税標準の特例措置の適用を受けるかどうかを判断する単位となるのも「本件画地」となるはずである。
 また、仮に別紙1物件目録記載5の家屋(以下「本件3階建て建物」という。)が住宅ではないとした場合、自治省通知には、一画地の土地の上に住宅(別紙1物件目録記載4の家屋(以下「本件共同住宅」という。))とその他の家屋(本件3階建て建物)が混在する場合においては、家屋の総床面積に応じてあん分した方法でそれぞれの家屋の用に供している土地を認定する旨が定められているが、本件において、当該規定を適用されていない理由が明らかでない。
ウ 本件共同住宅の建築にあたっては、本件各土地全体の面積を敷地面積としたうえで、建ぺい率及び容積率が算定され、建築確認がなされている。すなわち、本件共同住宅が適法に建築されるためには、本件各土地全体の面積が敷地とされる必要があるのであり、その意味においても、本件各土地全体が本件共同住宅の敷地ということになる。
(2) 本件駐車場について
ア 本件共同住宅を建築するにあたっては、事前に大阪市との間で協議を行うことが条例において義務付けられているが、当該協議においては、付属駐車場として○○台分の駐車場を確保することの協議も行われている。本件各土地に所在する別紙2記載のAからCの駐車場(以下「本件駐車場」という。)は本件共同住宅の建築において不可欠の前提となる建物であって、本件駐車場がなければ本件共同住宅の建築も許可されない関係にある。
 自治省通知においては、「付属的な家屋(物置、納屋、土蔵等)については、本体の家屋と効用上一体として利用される状態にある場合には、一個の家屋に含めるものとする」とされているが、本件駐車場は、本件共同住宅の居住者用駐車場として大阪市との事前協議の結果、設置された建物であり、かつ、本件共同住宅から本件駐車場に向かうための専用通路も設けられているのであるから、本件共同住宅と本件駐車場はまさに「効用上一体として利用される状態」にある。
 処分庁は弁明書において、「単に共同住宅に併設されているのみでは住宅専用の駐車場と認定することができません」としているが、審査請求人は、本件駐車場が本件共同住宅に地理的又は物理的に近い場所に設置されていることのみを主張しているのではなく、大阪市の条例上、本件駐車場がなければ本件共同住宅を建築することができない関係にあり、かつ、機能的にも、本件共同住宅の居住者の用に供するための建物であることを主張している。
 また、審査請求人は、一時期において、月極駐車場としての利用者の募集を行ったことはあるが、そのことを前提としたとしても、本件駐車場が建築されなければ、本件共同住宅の建築が許可されない関係にあったことや、本件共同住宅と本件駐車場が機能的に一体として利用されていることには何ら変わりがない。
イ 処分庁は、本件駐車場のうちどれくらいの割合が居住者以外のものによって利用されるに至った場合、本件共同住宅との効用上一体性を欠くことになるのか、また、本件3階建て建物建築時の実地調査において、利用者の割合をどのように認定したのかを明らかにされたい。なお、いずれの時期においても、居住者による契約は存在しており、非居住者のみが契約者となっていた時期は存しない。
ウ 東京地方裁判所平成28年11月30日判決(平成27年(行ウ)第421号)(以下「東京地判」という。)を本件に当てはめた場合、本件駐車場は、駐車場が住宅用地に該当するためには「専ら居住者自らが利用する施設であることを要するものと解すべき法令上の根拠はな(い)」のであるから、本件共同住宅の居住者以外の者の利用があることをもって、本件駐車場の敷地が住宅用地に該当しないと判断することはできない。
(3) 本件3階建て建物について
ア ある建物が住宅であるかどうかは、「人の居住の用に供する状態であるか否か」で判定するのであり、仮にある時期において特定人の居住がなかったとしても、当該建物が居住の用に供された状態である以上、当該建物は住宅として認定する必要がある。
 本件3階建て建物のもともとの建築目的及び構造からすれば、本件3階建て建物が居住を目的とした建物であることは明らかであり、たまたま一時期において事務所として利用されたことがあるとの事情のみを理由として、居住用として建築された本件3階建て建物を非住宅として認定することは明らかに誤っている。
イ 住宅用地の認定が実態を前提になされるべきことからすれば、登記の内容自体を重視すべき理由はなく、また処分庁の主張によっても、本件3階建て建物が事務所として利用されていない時期については、いかなる理由によって本件3階建て建物が非住宅として認定されることになるのかについての主張がないことになる。一時期において事務所としての利用があったとの事情のみにより、その後のすべての期間において、本件3階建て建物は非住宅であるとの認定が維持されることは不合理というべきである。
ウ 2階については、個人に賃貸しており、借主は2階で寝泊まりし、2階を住居として使用している。借主からは印鑑登録証明書の提出を受けているが、借主は2階を住所として登録している。
 3階については法人に賃貸しており、当該法人は3階を事務所として利用していたと思われる一方、玄関わきのスペースには家具を設置し、寝具も備えていたため、寝泊まりが可能な状態で利用していた。
 すでに主張のとおり、本件3階建て建物は構造上も住居建物であるが、利用実態に関しても、2階は明確に住居としての使用がされており、また3階も寝泊まりが可能な状態での利用がされていた。そのため、いずれの意味においても住居として認定すべき建物である。
2 処分庁の主張
(1) 画地及び住宅用地の認定について
 画地の認定は、評価の単位を認定するものであり、法第388条第1項において、総務大臣が固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を固定資産評価基準(以下「評価基準」という。)として定めることとされており、その第1章第3節別表第3画地計算法「2 画地の認定」において規定されている。
 一方、住宅用地の認定は、課税標準の特例措置を適用する範囲(以下「住宅の敷地」という。)を認定するものであり、自治省通知「三 敷地の認定」に規定されている。
 評価基準において、「一画地は、原則として、土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録された一筆の宅地によるものとする。ただし、二筆以上の宅地について、その形状、利用状況等からみて、一体をなしていると認められる場合においては、その一体をなしている部分の宅地ごとに一画地とする。」とされており、本件各土地の評価においては、当該認定基準に基づき○筆を一画地として認定している。
 土地の評価において、一画地として認定した場合であっても、自治省通知「三 敷地の認定」(3)の規定のとおり、一画地の土地で住宅の敷地である部分とそれ以外の部分をそれぞれ認定することがあり、土地の評価における画地の範囲と住宅の敷地とは必ずしも一致するものではない。
 また、自治省通知「三 敷地の認定」(3)においては、「一画地の土地の上に住宅その他の家屋が混在する場合において、当該土地のうち住宅の敷地である部分を明確に区分することが困難なとき」には、それぞれの家屋の敷地面積を実際に認定することなく、あん分計算によってそれぞれの家屋の敷地面積を認定することができる旨記載されている。
 以上の趣旨を踏まえると、「一画地の土地の上に住宅その他の家屋が混在する場合」において、住宅の敷地である部分を区分することが困難でない場合には、あん分計算に依らずとも、土地の使用実態によって住宅の敷地である部分を認定することができると解される。
 本市においては、自治省通知を基に、さらにその運用方法等の詳細や事務処理の手順・方法等を規定した「住宅用地関係事務取扱要領」(以下「要領」という。)を定めている。要領第1章第3、2「土地の単位」(3)では、実地調査時の実測等により、住宅の敷地の部分とそれ以外の部分を認定すると定めており、当該要領に基づき住宅用地の敷地の認定を行っている。
 本件各土地は、本件共同住宅、別紙2記載のA駐車場(機械式立体駐車場)及びB駐車場(平面駐車場)並びに本件3階建て建物の敷地として利用されており、平成○○年に新築された本件3階建て建物の実地調査の際に、本件3階建て建物とAB各駐車場の敷地面積の実測が可能であったため、本件共同住宅、AB各駐車場及び本件3階建て建物のそれぞれの敷地については、家屋の総床面積に応じてあん分する方法での敷地の認定は行っていない。
(2) A駐車場(機械式立体駐車場)及びB駐車場(平面駐車場)について
ア 住宅用地とは、住宅を維持し、又はその効用を果たすために使用されている一画地の土地をいうものであるため、単に本件共同住宅に併設されているのみでは住宅専用の駐車場と認定することができない。
イ 住宅用地の認定については、現況どのような利用がなされているのかを判断の基準としているため、AB各駐車場がなければ本件共同住宅の建築が許可されない関係にあったとしても、住宅用地の認定に影響を及ぼすものではない。
ウ AB各駐車場は、本件3階建て建物建築時に行った処分庁による実地調査において、月極駐車場として一般に広く募集を行っていたため、外観により明らかに本件共同住宅の居住者専用の駐車場の用にのみ供しているものではないと判断できることから、本件共同住宅を維持し、又はその効用を果たすために使用していると認められないことから、AB各駐車場の敷地については、法第349条の3の2及び第702条の3に規定する住宅用地に対する固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)の課税標準の特例(以下「住宅用地の特例」という。)を適用していない。
 法第384条において、市町村長は、住宅用地の所有者に、当該市町村の条例の定めるところによって、当該年度に係る賦課期日現在における当該住宅用地について、その所在、面積、その上に存在する家屋の床面積及び用途等、固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができるとされており、大阪市市税条例(以下「市税条例」という。)第100条において、住宅用地の所有者は、当該年度に係る賦課期日現在における当該住宅用地について、当該年度の初日の属する年の1月31日までに申告書を市長に提出しなければならないと規定している。
 加えて、法第408条には、市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少なくとも一回実地に調査させなければならないとされているが、当該実地調査は限定された短時日の期間に行わなければならず、当該期間内に市町村内に所在する固定資産のすべてについて、その細部にまでわたって綿密な調査を行うことは極めて困難な仕事といわざるを得ないため、当該実地調査においては、必ずしも、全部の資産について細部の一々にわたってまで行われなくとも、その固定資産の状況を知り得る程度に行われれば足りるものと解すべきであり、住宅用地の認定に係る実地調査においても、外観により固定資産の状況の変化の有無を確認すれば足りるものであると解すべきであり、住宅用地の認定に係る実地調査においても、外観により固定資産の状況の変化の有無を確認すれば足りるものであると解されている。
 上記住宅用地の申告は、平成○○年の本件3階建て建物建築時の実地調査以降行われておらず、平成28年12月12日に行った実地調査においても、外観から従前との利用状況の変更は確認されなかったため、平成29年度についても、AB各駐車場の敷地には住宅用地の特例を適用していない。
 なお、法令等において、住宅との一体性が認められる駐車場の居住者以外の利用者における割合等の規定は特に定められていないため、居住者以外の利用者の割合は確認していない。
エ 東京地判における駐車場は、併用住宅の居住者及び利用者が利用する駐車場のことを指しており、AB各駐車場のように、本件共同住宅の居住者以外の者に対して広くその利用の募集を行い、本件共同住宅と全く関わりのない者が利用する駐車場とは状況を異にするものであるため、当該判決については、AB各駐車場の敷地を住宅用地として認定しない理由を否定するものではない。
 裁判所の判断として、「専用住宅又は併用住宅と全く関わりのない者が利用している駐車場については、社会通念上、これを当該専用住宅又は併用住宅を維持し又はその効用を果たすために使用されている土地と評価する余地はないというべきである」と示されていることを踏まえれば、AB各駐車場の敷地を住宅用地として認定していないことは適正である。
(3) 本件3階建て建物について
ア 自治省通知「一 住宅の認定」において、「人の居住の用に供する」とは、特定の者が継続して居住の用に供することをいい、賦課期日現在において現に人が居住していない家屋については、当該家屋が構造上住宅と認められ、かつ、当該家屋が居住以外の用に供されるものではないと認められる場合には住宅とすることとされている。
 本件3階建て建物は、平成○○年建築当初より、建物の用途を「事務所・倉庫」として不動産登記されており、当時の実地調査においても、本件3階建て建物は構造上事務所であり、かつ、事務所として使用していることを確認している。
 したがって、本件3階建て建物は、自治省通知「一 住宅の認定」における「当該住宅が構造上住宅と認められ、かつ、当該家屋が居住以外の用に供されるものではない」という要件に該当すると認められない。
イ 平成28年12月12日に行った実地調査においても、外観から従前との利用状況の変更は確認できず、平成○○年の本件3階建て建物の建築時の実地調査以降、上記の住宅用地の申告も行われていないため、平成29年度についても、本件3階建て建物の敷地については住宅用地の特例を適用していない。

第4 審理員意見書の要旨
1 結論
 本件処分について、本件3階建て建物の敷地の用に供されている土地○○○.○○平方メートルについて、居住部分の割合が4分の1以上2分の1未満であるとして、住宅用地の特例を適用した場合の本件処分に係る税額○,○○○,○○○円を上回る部分について取り消し、その余の部分を棄却するのが相当である。
2 理由
(1) 土地の評価における画地の認定と住宅用地の認定の関係性について
 土地の評価における画地の認定とは、土地の評価の単位を認定することを目的とし、住宅用地の認定とは、住宅の敷地を認定することを目的としてそれぞれ、その取扱いが定められている。したがって、土地の評価において、その形状などから一画地と認定した場合であっても、住宅の敷地の認定において、一画地の土地上に住宅とその他の家屋が混在する場合には、それぞれの部分について敷地を認定することになるため、評価における画地の単位と住宅の敷地とは必ずしも一致するものではなく、審査請求人の主張には理由がない。
(2) 住宅の敷地について
ア A駐車場(機械式立体駐車場)及びB駐車場(平面駐車場)について
(ア) 処分庁は、本件共同住宅及びAB各駐車場が建築された当初は、効用上一体として利用されているものとして、一画地全体を住宅用地として認定していたが、平成○○年に本件3階建て建物が建築された際の実地調査において、月極駐車場として一般に広く募集を行っており、本件共同住宅と効用上一体として利用されていないことを確認したため、AB各駐車場の敷地を住宅用地の特例を適用しない土地として認定した。
 そして、本件処分において、処分庁が住宅用地の特例を適用しなかったことは、①審査請求人から住宅用地の申告書が平成○○年以降提出されていないこと、②実地調査はその固定資産の状況を知り得る程度に行われれば足りるものと解されていること(固定資産税務研究会編「固定資産税逐条解説」(平成22年6月1日発行)457頁参照)、③処分庁が平成28年12月に行った実地調査において、外観からは従前の利用状況と明確な変更がなかったことに鑑みると、妥当であると判断する。
(イ) ①東京地判における駐車場は、併用住宅の居住者及び利用者が利用する駐車場のことを指しており、AB各駐車場のように本件共同住宅の居住者以外の者が利用する駐車場とは状況を異にするものであること、②裁判所の判断として、「専用住宅又は併用住宅と全く関わりのない者が利用している駐車場については、社会通念上、これを当該専用住宅又は、併用住宅を維持し又はその効用を果たすために使用されている土地と評価する余地はないというべきである」と示されていること、③審理員が審査請求人あて行った平成29年度賦課期日現在のAB各駐車場の利用状況に関する質問に対して、審査請求人は、駐車可能台数○○台のうち、居住者○台、外部利用者○○台、空き○台と回答していることから、AB各駐車場は、社会通念上、本件共同住宅と効用を一体にするとは認められない。
 なお、固定資産税等の課税にあたっては、賦課期日現在における利用状況によって判断することになるため、AB各駐車場がなければ本件共同住宅の建築が許可されない関係にあることや、本件各土地全体の面積を敷地面積としたうえで建築確認がなされていたことがあったとしても、住宅用地の認定に影響を及ぼすものではない。
(ウ) 上記を踏まえれば、AB各駐車場の敷地を住宅用地として認定していない処分庁の判断は適正であり、審査請求人の主張には理由がない。
イ 本件3階建て建物について
(ア) 固定資産税等を課税するにあたっては、賦課期日現在における利用状況によって判断されるべきものであるところ、審査請求人から提出された図面及び本件3階建て建物内部の写真によると、本件3階建て建物の2階部分については構造上住宅と認められる。また、審理員が審査請求人あて行った平成29年度賦課期日現在における本件3階建て建物の利用状況に関する質問の回答及び審査請求人から提出された賃貸借契約書によると、本件3階建て建物の2階部分については、平成○○年○○月○○日以降平成○○年○月○日現在においても住宅としての契約が継続中であり、また、入居者の平成○○年○月○○日付け発行の印鑑登録証明書からも住所として本件3階建て建物が登録されていることが確認できる。
 上記を総合して判断すると、本件3階建て建物の2階部分については、平成29年度賦課期日現在において特定の者が継続して居住しているか、又は、平成29年度賦課期日現在において現に人が居住していないとしても、構造上住宅と認められ、かつ居住の用以外に供されるものでないものと推認できることから、住宅であると認めることが妥当であると判断する。
 本件3階建て建物の3階部分に関する審査請求人の主張については、家具や寝具を備え寝泊まりできる状態にあったとしても、特定の者が継続して居住の用に供しているものとはいえないため、住宅として認定することはできない。
(イ) 処分庁は本件3階建て建物について実地調査において住宅としての要件を満たしていることを確認したため、当該建物の敷地について、所有者立会いのもと実測を行い、本件3階建て建物に係る敷地面積を○○○.○○平方メートルとし、平成30年度から小規模住宅用地として認定するとしており、認定の理由について、本件3階建て建物の1階部分に車庫があり、車の出し入れをするのに必要な敷地があったためとしている。
 この点について、本件3階建て建物及びその敷地の状況は平成29年度と平成30年度において相違がないこと、また、本件3階建て建物を維持し、又はその効用を果たすために必要な敷地面積は、当該建物が住宅であるか事務所であるかという用途に影響されるものではないと考えられることから、平成29年度賦課期日現在における本件3階建て建物に係る敷地面積は、○○○.○○平方メートルとすることが妥当であると判断する。
ウ 地積の認定方法について
 本件各土地については、本件共同住宅、AB各駐車場、本件3階建て建物の底地からなる一画地の土地であり、本件共同住宅及び本件3階建て建物の敷地は併用住宅の敷地であること、AB各駐車場の敷地については住宅の敷地ではないことから、「住宅を維持し、又はその効用を果たすための部分とそれ以外の部分が混在している1画地の土地」に該当し、それぞれの部分について、要領第1章第3、2(3)ア又はイの規定により地積を認定することとなる。
 この点について、本件各土地については住宅用地の申告書が提出されていないことから、処分庁が要領第1章第3、2(3)イに規定の実測により認定を行ったことは適正であると判断する。
(3) 以上により、本件3階建て建物について2階部分に係る主張を除き、審査請求人の主張には理由がない。
(4) 本件3階建て建物について、2階部分を住宅の用に供するものと認定した場合の本件各土地の平成29年度固定資産税等税額について本件各土地は○筆を一画地として評価しているため、法令等に基づき、次のとおり算定される。
ア 本件各土地の地積及び価格について
 本件各土地について、地積及び価格は次の表のとおりである。

地籍及び価格
別紙1物件目録番号 地積(㎡) 価格(円) 
 土地1○,○○○.○○ ○○○,○○○,○○○
 土地2 ○○.○○ ○,○○○,○○○
 土地3 ○.○○ ○,○○○,○○○
合計○,○○○.○○

イ 本件共同住宅及び本件3階建て建物の敷地面積及び戸数について
 処分庁からの提出資料によると、本件共同住宅の敷地面積は○○○.○○平方メートル、戸数は○○○戸、本件3階建て建物の敷地面積は○○○.○○平方メートルとすることが妥当であり、平成29年度賦課期日現在における戸数は○戸となる。
ウ 住宅用地の特例の適用率について
 本件共同住宅は居住部分の割合が4分の3以上であるため1.0、本件3階建て建物については、当該家屋の総床面積は○○○.○○平方メートルであり、その2階部分の床面積は○○.○○平方メートルであることから、居住部分の割合が4分の1以上2分の1未満であるため、0.5となる。
エ 住宅用地について
 本件各土地に係る住宅用地の面積は、本件共同住宅の敷地面積及び本件3階建て建物の敷地面積に、一画地の合計地積に対する本件各土地の地積が占める割合及び住宅用地の特例の適用率を乗じることにより求める。
オ 小規模住宅用地について
 200平方メートル以下の住宅用地(200平方メートルを超える場合は住宅1戸あたり200平方メートルまでの部分)は小規模住宅用地となる。
カ 前記イからオにより、本件共同住宅及び本件3階建て建物の住宅用地は、すべて小規模住宅用地に該当する。
キ 土地1について
小規模住宅用地
○○○.○○×(○,○○○.○○/○,○○○.○○)=○○○.○○㎡
(本件共同住宅敷地相当面積)
○○○.○○×1.0=○○○.○○㎡
(住宅用地の特例適用対象となる本件共同住宅敷地相当面積)
○○○.○○×(○,○○○.○○/○,○○○.○○)=○○○.○○㎡
(本件3階建て建物敷地相当面積)
○○○.○○×0.50=○○.○○㎡
(住宅用地の特例適用対象となる本件3階建て建物敷地面積)
○○○.○○+○○.○○=○○○.○○㎡
(土地1における小規模住宅用地相当地積)
○○○,○○○,○○○×(○○○.○○/○,○○○.○○)=○○○,○○○,○○○円
(平成29年度価格)
○○○,○○○,○○○×1/6=○○,○○○,○○○円
(平成29年度固定資産税課税標準額)
○○○,○○○,○○○×1/3=○○,○○○,○○○円
(平成29年度都市計画税課税標準額)
商業地等
○,○○○.○○-○○○.○○=○○○.○○㎡
(小規模住宅用地相当地積修正後の商業地等相当地積)
○○○,○○○,○○○-○○○,○○○,○○○=○○,○○○,○○○円
(平成29年度価格)
前年度課税標準額
○○,○○○,○○○/○○○.○○×○○○.○○=○○,○○○,○○○円
負担水準 ○○,○○○,○○○/○○,○○○,○○○×100=○○%
平成29年度課税標準額は前年度据置 ○○,○○○,○○○円
合計固定資産税課税標準額
○○,○○○,○○○+○○,○○○,○○○=○○,○○○,○○○円
合計都市計画税課税標準額
○○,○○○,○○○+○○,○○○,○○○=○○○,○○○,○○○円
ク 土地2について
小規模住宅用地
○○○.○○×(○○.○○/○,○○○.○○)=○○.○○㎡
(本件共同住宅敷地相当面積)
○○.○○×1.0=○○.○○㎡
(住宅用地の特例適用対象となる本件共同住宅敷地相当面積)
○○○.○○×(○○.○○/○,○○○.○○)=○.○○㎡
(本件3階建て建物敷地相当面積)
○.○○×0.50=○.○○㎡
(住宅用地の特例適用対象となる本件3階建て建物敷地面積)
○○.○○+○.○○=○○.○○㎡(土地2における小規模住宅用地相当地積)
○,○○○,○○○×(○○.○○/○○.○○)=○,○○○,○○○円
(平成29年度価格)
○,○○○,○○○×1/6=○○○,○○○円
(平成29年度固定資産税課税標準額)
○,○○○,○○○×1/3=○○○,○○○円
(平成29年度都市計画税課税標準額)
商業地等
○○.○○-○○.○○=○.○○㎡
(小規模住宅用地相当地積修正後の商業地等相当地積)
○,○○○,○○○-○,○○○,○○○=○,○○○,○○○円
(平成29年度価格)
前年度課税標準額 ○○○,○○○/○.○○×○.○○=○○○,○○○円
負担水準 ○○○,○○○/○,○○○,○○○×100=○○%
平成29年度課税標準額は前年度据置 ○○○,○○○円
合計固定資産税課税標準額
○○○,○○○+○○○,○○○=○,○○○,○○○円
合計都市計画税課税標準額
○○○,○○○+○○○,○○○=○,○○○,○○○円
ケ 土地3について
小規模住宅用地
○○○.○○×(○.○○ /○,○○○.○○ )=○.○○㎡
(本件共同住宅敷地相当面積)
○.○○㎡×1.0=○.○○㎡
(住宅用地の特例適用対象となる本件共同住宅敷地相当面積)
○○○.○○×(○.○○ /○,○○○.○○ )=○.○○㎡
(本件3階建て建物敷地相当面積)
○.○○×0.50=○.○○㎡
(住宅用地の特例適用対象となる本件3階建て建物敷地面積)
○.○○+○.○○=○.○○㎡(土地3における小規模住宅用地相当地積)
○,○○○,○○○×(○.○○/○.○○)=○○○,○○○円(平成29年度価格)
○○○,○○○×1/6=○○○,○○○円(平成29年度固定資産税課税標準額)
○○○,○○○×1/3=○○○,○○○円(平成29年度都市計画税課税標準額)
商業地等
○.○○-○.○○=○.○○㎡
(小規模住宅用地相当地積修正後の商業地等相当地積)
○,○○○,○○○-○○○,○○○=○○○,○○○円(平成29年度価格)
前年度課税標準額 ○○○,○○○/○.○○×○.○○=○○○,○○○円
負担水準 ○○○,○○○/○○○,○○○×100=○○%
平成29年度課税標準額は前年度据置 ○○○,○○○円
合計固定資産税課税標準額 ○○○,○○○+○○○,○○○=○○○,○○○円
合計都市計画税課税標準額 ○○○,○○○+○○○,○○○=○○○,○○○円
コ 納付すべき固定資産税等の税額について
本件各土地の合計固定資産税課税標準額  ○○,○○○,○○○円・・・①
本件各土地の合計都市計画税課税標準額 ○○○,○○○,○○○円・・・②
本件共同住宅及び本件3階建て建物の合計固定資産税課税標準額
○○○,○○○,○○○円・・・③
本件共同住宅及び本件3階建て建物の合計都市計画税課税標準額
○○○,○○○,○○○円・・・④
 本件審査請求において本件共同住宅及び本件3階建て建物に係る課税標準額については争いがないため、固定資産税課税標準額は上記①+③により○○○,○○○,○○○円、都市計画税課税標準額は上記②+④により○○○,○○○,○○○円となる。
 以上により、納付すべき固定資産税額は○,○○○,○○○円、都市計画税額は○,○○○,○○○円、合計○,○○○,○○○円となる。
(5) 上記以外の違法性又は不当性についての検討
 他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。

第5 調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  平成30年6月28日 諮問書の受理
  平成30年6月29日 審議
  平成30年7月13日 審議(審査請求人及び処分庁あて主張書面又は資料の要求並びに大阪市都市計画局あて資料の要求)
  平成30年7月31日 処分庁から資料の収受
  平成30年8月2日 審査請求人から主張書面及び資料の収受
             大阪市都市計画局から資料の収受
  平成30年8月7日 審議
  平成30年8月23日 審議
  平成30年9月7日 審議

第6 審査会の判断
1 関係法令等の定め
(1) 固定資産税等の賦課期日について
 固定資産税等の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする(法第359条及び第702条の6)。
(2) 固定資産税等の課税標準について
ア 土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準は、土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳又は家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された価格とされる(法第349条)。
イ 都市計画税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る固定資産税の課税標準となるべき価格をいう(法第702条第2項)。
(3) 住宅用地の特例について
ア 専ら人の居住の用に供する家屋(以下「専用住宅」という。)又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるものに対して課する固定資産税の課税標準は、当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の3分の1の額とする(法第349条の3の2第1項)。
 住宅用地のうち、その面積が200平方メートル以下であるもの(200平方メートルを超える場合は住宅1戸当たり200平方メートルまでの部分)に対して課する固定資産税の課税標準は、当該小規模住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の6分の1の額とする(法第349条の3の2第2項)。
イ 都市計画税の住宅用地に対する課税標準は、法第349条の3の2第1項の規定の適用を受ける場合、当該土地に係る都市計画税の課税標準となるべき価格の3分の2の額とする(法第702条の3第1項)。
 法第349条の3の2第2項の規定の適用を受ける場合、当該土地に係る都市計画税の課税標準となるべき価格の3分の1の額とする(法第702条の3第2項)。
ウ 法第349条の3の2第1項に規定する家屋で政令で定めるものは、その一部を人の居住の用に供する家屋のうち、居住部分の割合が4分の1以上である家屋(以下「併用住宅」という。)とする(政令第52条の11第1項)。 
エ 法第349条の3の2第1項に規定する土地で政令で定めるものは、次に定める土地とする(政令第52条の11第2項)。
(ア) 専用住宅の敷地の用に供されている土地については、当該土地(当該土地の面積が当該家屋の床面積の10倍の面積を超える場合には、当該10倍の面積に相当する土地)。
(イ) 併用住宅の敷地の用に供されている土地については、次の表の家屋の区分及び当該家屋に係る居住部分の割合の区分に応じた率(以下「住宅用地の率」という。)を当該土地の面積(当該土地の面積が当該家屋の床面積の10倍の面積を超える場合には、当該10倍の面積)に乗じて得た面積に相当する土地。

住宅用地の率
  家屋居住部分の割合 率 
(ア) (イ)に掲げる家屋以外の家屋 4分の1以上2分の1未満0.5
(ア) (イ)に掲げる家屋以外の家屋 2分の1以上1.0
(イ) 地上階数5以上を有する耐火建築物である家屋 4分の1以上2分の1未満0.5
(イ) 地上階数5以上を有する耐火建築物である家屋 2分の1以上4分の3未満0.75
(イ) 地上階数5以上を有する耐火建築物である家屋 4分の3以上1.0

(4) 住宅の認定について
ア 人の居住の用に供するとは、特定の者が継続して居住の用に供することをいう(自治省通知1(3))。
イ 賦課期日において現に人が居住していない家屋については、当該家屋が構造上住宅と認められ、かつ、当該家屋(併用住宅にあっては、当該家屋のうち居住部分とする。)が居住以外の用に供されるものでないと認められる場合には、住宅とする(自治省通知1(4))。
(5) 住宅の敷地の認定について
ア 自治省通知における取扱い
(ア) 住宅の敷地の用に供されている土地とは、当該住宅を維持し、又はその効用を果たすために使用されている一画地の土地をいう(自治省通知3(1))。
(イ) 一画地の土地は、道路、塀、垣根、溝等によって他の土地と区分して認定するものとするが、明確な境界がない場合においては、土地の使用の実態によって認定する。この場合、住宅の敷地の用に供されている土地が一筆の土地の一部である場合は、当該部分のみをもって一画地とし、数筆の土地にわたり一個の住宅が存する等数筆の土地が一体として利用されているような場合には、数筆にわたって一画地を認定する(自治省通知3(2))。
(ウ) 一画地の土地の上に住宅その他の家屋が混在する場合において、当該土地のうち住宅の敷地である部分を明確に区分することが困難なときは、当該土地に存する家屋の総床面積に応じてあん分し、それぞれの家屋の用に供している土地を認定することができる。ただし、総床面積に応じてあん分することが不適当な場合は、建築面積に応じてあん分しても差し支えない(自治省通知3(3))。
イ 要領における取扱い
(ア) 原則として、1棟の家屋若しくは1個の家屋を維持し、又は効用を果たすために使用されている1画地の土地とし、次の場合はそれぞれを1画地とする。
A 道路、塀、垣根及び溝等によって明確に区分されている場合における、そのそれぞれ区分された部分
B 複数の筆にわたって、同一の用に供されている部分(一体的に利用されている場合)
(イ) 複数の家屋を維持し、又はその効用を果たすために使用されている1画地の土地においては、それぞれの家屋について次の方法により敷地を認定する。
A 「固定資産税にかかる住宅用地の申告書」又は「固定資産税にかかる住宅用地の異動申告書」により申告された地積により敷地を認定する。
B 当該土地のうち住宅の敷地である部分を明確に区分することが困難な場合、住宅敷地の認定は、当該土地に存する家屋の建床面積に応じて按分して求めた土地をそれぞれの家屋の敷地とする。ただし、建床面積に応じて按分することが不適当な場合、例えば高層の住宅棟と低層の店舗棟が存し、建床面積で按分するより延床面積で按分する方が住宅用地相当地積が大きくなるような場合は、延床面積で按分しても差し支えない。
(ウ) 住宅を維持し、又はその効用を果たすための部分とそれ以外の部分が混在している1画地の土地においては、それぞれの部分について次の方法により敷地を認定する。
A 「固定資産税にかかる住宅用地の申告書」又は「固定資産税にかかる住宅用地の異動申告書」により申告された地積により認定する。
B 住宅を維持し、又はその効用を果たすための部分又はそれ以外の部分の地積について所有者に連絡の上、実地調査時の実測等により認定する。
(6) 共同住宅における駐車施設の設置について
 建築主は、共同住宅等建築物を建設する場合、次の表の左欄に掲げる住戸数の区分に応じて、それぞれ当該右欄に掲げる数値以上に駐車施設を設置しなければならない。(平成6年6月1日改正前の大阪市共同住宅の駐車施設に関する指導要綱第5条)

駐車施設の設置率
 駐車施設の設置率駐車施設の設置率 
共同住宅等建築物の全住戸数1戸当たりの専有床面積が 35㎡以下の住戸部分左に掲げる以外の住戸部分
 30戸以上 20% 30%
 70戸以上 25% 40%

2 争点
(1) 本件駐車場の敷地の用に供されている土地が本件共同住宅の敷地の一部として、住宅用地の特例の適用対象となるか(争点1)
(2) 本件3階建て建物が専用住宅又は併用住宅と認定され、当該建物の敷地の用に供されている土地が住宅用地の特例の適用対象となるか(争点2)
3 争点1について
(1) 審査請求人は、本件駐車場は大阪市との事前協議の結果、設置された建物であり、かつ、本件共同住宅から本件駐車場に向かうための専用通路も設けられているのであるから、本件共同住宅と本件駐車場はまさに「効用上一体として利用される状態」にある旨主張する。
(2) 審査請求人の平成30年8月2日付け主張書面添付に係る資料ク及び資料ケによると、本件共同住宅については平成○年○月○○日に建築確認を受けており、住戸部分合計○○○戸のうち1戸当たりの専有床面積が35平方メートル以下の住戸部分が○○○戸、それ以外の住戸部分が○戸存することが認められる。当該状況を前記1(6)の指導要綱に当てはめると、本件共同住宅の建設当時はその建設にあたり○○台分の駐車施設の設置が必要とされていたこととなる。
(3) 住宅用地の特例は、専用住宅又は併用住宅の「敷地の用に供されている土地」に対して適用されるものであるところ、ある土地が「敷地の用に供されている土地」に当たるかどうかは、当該年度の固定資産税の賦課期日における当該土地の現況によって決すべきものであると解される(最高裁判所平成23年3月25日第二小法廷判決参照)。
 また、専用住宅又は併用住宅の敷地の用に供されている土地であるかどうかについては、その規定の文言の文理並びに本件特例が主として住宅政策上の見地から住宅用地の固定資産税及び都市計画税負担の軽減を図るため課税標準の特例措置を設けたものであることに照らせば、土地と専用住宅又は併用住宅の形状や利用状況等を踏まえ、社会通念に従い、その土地が専用住宅又は併用住宅を維持し、又はその効用を果たすために使用されている一画地の土地であるかどうかによって判断すべきものと解される(東京地方裁判所平成28年11月30日判決参照)。
(4) 本件駐車場については、審査請求人が営む貸駐車場としても利用されていることが認められ、かつ、同主張書面によると、本件駐車場は建設された当初は○○台収容可能であったが、本件処分に係る賦課期日現在(平成29年1月1日現在)では、別紙2記載のとおり、A駐車場(機械式立体駐車場)に○○台分、B駐車場(平面駐車場)に○台分、C駐車場(本件3階建て建物の1階)に○台分の合計○○台分の駐車可能区画が存することが認められる。
 そして、本件駐車場の○○台分の駐車可能区画のうち本件共同住宅の居住者及び店舗(以下「本件共同住宅の居住者等」という。)が利用している駐車区画が○台分、本件共同住宅の居住者等以外の利用者が利用している駐車区画が○○台分、空き区画が○台分あり、本件共同住宅の居住者等は、B駐車場(平面駐車場)のうち○台分及びC駐車場(本件3階建て建物の1階)のうち○台分をそれぞれ利用していることが認められる。
 もっとも、C駐車場(本件3階建て建物の1階)については、当該建物の敷地の用に供されている土地であるため、本件共同住宅を維持し、又は効用を果たすために使用されているとは認められない。
 そうすると、本件共同住宅の敷地の用に供されている土地にあたるか否かが問題となる部分は、本件駐車場のうち、A駐車場(機械式立体駐車場)及びB駐車場(平面駐車場)となる。
 そこで、A駐車場(機械式立体駐車場)及びB駐車場(平面駐車場)の利用状況等をみると、以下のとおりである。
 ① AB各駐車場は審査請求人が営む貸駐車場としても利用されており、AB各駐車場内の区画はいずれも本件共同住宅の居住者等以外の利用者の利用が可能な区画として予定されている。
 ② 本件処分に係る賦課期日現在におけるAB各駐車場の利用者は、本件共同住宅の居住者等以外の利用者が大半を占めている。
 ③ 本件処分に係る賦課期日現在においてAB各駐車場を利用している本件共同住宅の居住者等の割合は、本件共同住宅の住居及び店舗の数に比して、ごく僅かである。
 ④ AB各駐車場の契約内容は、本件共同住宅の居住者等と本件共同住宅の居住者等以外の利用者との間で特段の区別は設けられていない。
 以上の事実関係を踏まえ、本件処分に係る賦課期日現在におけるAB各駐車場の現況を社会通念に照らし客観的に判断した場合、AB各駐車場は、本件共同住宅を維持し、又はその効用を果たすために使用されていると認めることはできない。
(5) 審査請求人は、敷地の認定は「一画地」の単位で判断するのであり、本件において一画地が本件各土地によって構成されるのであれば、住宅用地の特例の適用を受けるかどうかを判断する単位となるのも「本件画地」となるはずであると主張する。
 しかしながら、①自治省通知においても、一画地の土地の上に住宅その他の家屋が混在する場合が当然予定されていること、②住宅用地の特例が住宅政策上の見地から住宅用地の固定資産税等の負担の軽減を図ることを目的としていること等を踏まえると、自治省通知は、本件各土地の利用状況に応じて、一画地内で区分して住宅用地を認定することを妨げるものではなく、要領の定めを違法又は不当とすることはできない。
 よって、要領の定めるところにより、本件各土地の利用状況に応じて、一画地内で区分して住宅用地を認定した本件処分を違法又は不当とすることはできず、審査請求人の主張には理由がない。
4 争点2について
(1) 住宅用地の特例については、上記のとおり、専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地に対して適用されるものである。「人の居住の用に供する」とは、特定の者が継続して居住の用に供することをいい、賦課期日現在において現に人が居住していない家屋については、当該家屋が構造上住宅と認められ、かつ、当該家屋が居住以外の用に供されるものでないと認められる場合にのみ、「人の居住の用に供する家屋」とするものとされている。
(2) 本件3階建て建物について、審査請求人は、構造上も住居建物であり、利用実態からしても、当該建物が居住の用に供された状態である以上、住宅として認定すべき旨主張する。これに対し、処分庁は、本件3階建て建物は、平成○○年に行った実地調査において、特定人の生活の実態がなく、事務所として使用していることを確認したこと及び平成28年12月12日に行った実地調査においても、外観から従前との利用状況の変更は確認できず、これまで住宅用地の申告も行われていないことから当該建物は住宅に当たらない旨反論する。
(3) 審査請求人の平成29年8月21日付け主張書面添付に係る図面及び平成29年10月24日付け主張書面添付に係る本件3階建て建物内部の写真によると、本件3階建て建物の2階部分及び3階部分には、その専有部分にそれぞれ台所、便所、洗面設備及び浴室といった、特定の者が継続して居住の用に供するために通常必要とされる設備を有しているため、審理員意見書のとおり、本件3階建て建物については構造上、住宅と認めることが相当である。
(4) 本件3階建て建物の2階部分について
 審査請求人の平成30年3月2日付け主張書面添付に係る本件3階建て建物の賃貸借契約書によると、契約期間の始期を平成○○年○○月○○日として、個人と賃貸借契約が締結されていることが認められる。
 また、審査請求人の平成30年3月7日付け主張書面添付に係る本件3階建て建物の2階部分の賃借人の印鑑登録証明書によると、賃借人は遅くとも平成○○年○月○○日時点では当該2階部分を住所として登録していることからも、当該個人が居住の用に供するために本件3階建て建物の2階部分を賃貸借したことが窺われるところである。
 これらの状況を鑑みると、当該建物の2階部分は、本件処分に係る賦課期日現在、特定の者が継続して居住の用に供していたか、又は現に人が居住していなかったとしても、当該部分は構造上住宅と認められ、かつ、居住以外の用に供されるものでないと解されることから、「人の居住の用に供する」ものに該当すると認めるのが相当である。
(5) 本件3階建て建物の3階部分について
 審査請求人は、家具を設置し、寝具も備えていたため、寝泊まりが可能な状態で利用していたと主張する。
 しかしながら、当該部分を借主である法人が事務所として利用していたという点については、審査請求人及び処分庁において争いのないところである。
 当該利用状況を踏まえると、当該部分については、本件処分に係る賦課期日現在において、「特定の者が継続して居住の用に供していた」とは認められず、また、「現に人が居住していなかったとしても、居住以外の用に供されるものでないと認められる場合」に該当すると認めることはできず、住宅とは認められない。
(6) 以上のことからすると、本件3階建て建物のうち2階部分については、人の居住の用に供する部分と認められるところ、別紙1物件目録記載の各階床面積から算出した居住部分の割合は4分の1以上2分の1未満となることから、本件3階建て建物の敷地の用に供されている土地の面積に住宅用地の率0.5を乗じて得た面積に相当する土地について住宅用地の特例の適用対象とすべきである。
 なお、本件3階建て建物の敷地の用に供されている土地については、審理員意見書のとおり、本件3階建て建物の敷地の状況が平成29年度と平成30年度において相違がないことから、処分庁が平成30年度の課税にあたって、実地調査において審査請求人の立会いの下、実測により認定した○○○.○○平方メートルを平成29年度においても採用することが相当である。
5 納付すべき固定資産税等の税額について
 本件3階建て建物の敷地の用に供されている土地の一部に対して住宅用地の特例を適用するとした審理員の判断については、結論において正当として是認できるものである。
 そして、納付すべき固定資産税等の税額については、前記第4、2(4)のとおり計算されているところ、当該計算に違算等は認められず、別紙1物件目録記載の各土地及び各家屋に係る固定資産税額等が適正に計算されていることが認められる。
6 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
7 結論
 よって、本件審査請求のうち、本件3階建て建物の敷地に対する住宅用地の特例の適用に係る部分については前記4(6)の限度で理由があり、その余の部分については理由がないと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり答申する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会税務第2部会
 委員(部会長)岸本佳浩、委員 鹿田良美、委員 瀬川昇

別紙1物件目録及び別紙2 省略

答申書(平成30年度答申第11号)

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