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答申書(平成30年度答申第13号)

2023年2月17日

ページ番号:451304

諮問番号:平成30年度諮問第8号
答申番号:平成30年度答申第13号

答申書

第1 審査会の結論
 本件審査請求については、棄却すべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 審査請求人は、別紙1徴収金明細記載の各徴収金について、当該徴収金に係る「納期限」欄記載の日までに納付しなかった。
2 処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)は、上記1の各徴収金を徴収するため、平成29年11月21日、審査請求人が所有する別紙2物件目録記載の不動産(以下「差押不動産」という。)に対する差押処分(以下「本件処分」という。)を行った。
3 審査請求人は、平成30年2月8日、大阪市長に対し審査請求をした。

第3 審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 平成29年11月21日付け差押書を簡易書留で受け取った。いきなりの差押通知書に驚いてあべの市税事務所納税担当に電話すると「先日送った督促状に返事がなかったので差押えした」とのことであったが、審査請求人には届いていないし知らないことである。
 「差押書」は簡易書留なのに、なぜ「督促状」は普通郵便なのか。前者は単なる(結果)通知であるのに対し、後者は通知が手元に届くことによって、本人の意思や今後の方針、選択肢などが反映することとなり、内容的にも後者がはるかに重要であり必ず届けられねばならない。
(2) 遅延したり、納付金額に多寡はあるが、少しずつ分割して納付していることは処分庁の記録により明らかである。また、審査請求人の事情については、毎回の面談、確定申告、処分庁がかつて行った勤務先調査で明らかである。
(3) 督促状に返事がなかったというだけで「差押えした」というのはどういうことなのか。いったん差押登記をしてしまうと完全に消すことはできない。納付し続けている私としては、その必要もいわれもない。
(4) 延滞金の利率も、市民の貯蓄の定期預金や定額貯金の金利に比べて、ペナルティの部分を上乗せしても公序良俗に反するような、はるかに高利であり、滞納金額は異様に膨れている。
(5) 所有マンションは、遊休不動産でも収益物件でもなく、審査請求人自身が住居として使用している生活の場である。
 価値の面からみると、実勢価格の数パーセントから5パーセントの未納のために保全の差押えをしている。本件処分にどれほどの意味があったのか。
(6) 担当者は、市民との信頼関係を壊し、トラブルを起こし、市民に全く無駄な時間を浪費させ苦痛や怒りを起こさせ審査請求を受けている。
(7) 本件処分の取消・解除及び担当職員の更迭・処分を求める。
2 処分庁の主張
(1) 地方税法(以下「法」という。)第20条第1項において、地方団体の徴収金の賦課徴収に関する書類の送達方法が規定されているが、郵便等による送達の具体的な方法は、法上特に規定されていないため、必ずしも書留等の特殊取扱によることを要しない。よって、処分庁においては、督促状は普通郵便で送付している。
 また、法第20条第4項において、通常の取扱いによる郵便で発送した場合は、通常到達すべきであった時に送達があったものと推定するとされており、本件処分に係る督促状は、普通郵便で送付後、返戻もないことから、送達されたものと推定される。
 なお、本件処分に係る徴収金については、全て督促状を送付している。
 また、審査請求人の主張にある「先日送った督促状」とは、平成29年10月30日に送付している納付書付「差押予告書」と思われる。「差押予告書」は、滞納処分を執行するに際し、法令上送付することが必要とされている文書ではない。
(2) 審査請求人は、本件処分の対象となる徴収金について、いずれも督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納していない。また、この間、納付計画の提示もなく、度重なる来庁及び納付に係る約束不履行があり、また平成29年度になってからの納付は同年6月16日の1度のみであったことから、同日来庁した際に、このまま未納状況を継続すれば、滞納処分に至る旨を通告している。その後、同年10月30日に「差押予告書」を送付後も、納付がなかったため、法の規定に基づき、本件処分を執行するに至った。
(3) 法において、納税者は納期限後に税金を納付する場合においては、税額に延滞金額を加算して納付しなければならないと規定した上で、延滞金の割合も併せて規定しており、本件処分の対象となる延滞金は当該規定に基づき適正に算出されている。
(4) 差押不動産は審査請求人の居住用家屋であるが、国税徴収法(以下「徴収法」という。)第75条から第78条までに規定する差押禁止財産には該当しないため、差し押さえたことは、適法である。

第4 審理員意見書の要旨
1 結論
 本件審査請求のうち、「担当者の更迭及び処分」を求める部分については却下し、その余の部分については棄却するのが相当である。
2 理由
(1) 審理の対象について
 審査請求人は、審査請求の趣旨として、「本件処分の取消・解除」及び「担当者の更迭及び処分」を求めている。
 しかしながら、「担当者の更迭及び処分」については、処分庁においてこのような処分が行われた事実は認められないことから、審査請求人の当該主張は審査請求の対象となる処分の存在を欠いており、不適法なものである。
 したがって、以下、本件処分について審理する。
 なお、一般職に属する地方公務員に対し懲戒等を行うことは任命権者の専決事項であり(地方公務員法第6条参照)、審査請求人にその権限はない。
(2) 本件処分の適法性及び妥当性について
ア 督促状について
 審査請求人は、督促状が届いていない旨主張している。
 しかしながら、別紙1徴収金明細記載の各徴収金に係る督促状については、いずれも処分庁が税目・期(月)別ごとに定める督促状発付日に送付されており、その全てにおいて返戻がなかったことから、法の規定により、通常送達すべきであった時に送達があったものと推定され、これを覆すような事情は認められない。
イ 本件処分について
 審査請求人は、実勢価格の数パーセントのために保全の差押えをしている旨主張している。
 しかしながら、差押財産が不動産である場合には、当該差押財産の評価額が滞納者の滞納税額を超過しているとしても、その一事をもって当該差押えを違法ということはできないものであり、仮に差押不動産の価格が滞納額を超過していたとしても、そのことを理由に本件処分が違法となることはない。
ウ 延滞金の割合について
 審査請求人は、延滞金の割合について公序良俗に反するようなはるかに高利を課している旨主張している。
 しかしながら、納期限後にその税金を納付する場合には、法の規定に基づく割合を乗じて計算した金額に相当する延滞金額を加算して納付しなければならないとされているところ、延滞金の割合に係る法の規定は民法第90条の「公の秩序」そのものであり、公序良俗違反を問う余地はない。
エ 以上のとおり、本件処分は適正になされており、他に違法又は不当な点は認められないことから、本件処分の取消し及び解除を求める審査請求人の主張には、理由がない。

第5 調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  平成30年7月11日 諮問書の受理
  平成30年7月13日 審議(審査請求人及び処分庁あて主張書面又は資料の要求)
  平成30年8月 2日 処分庁から主張書面及び資料の受領
  平成30年8月 7日 審議(処分庁あて主張書面又は資料の要求)
  平成30年8月22日 処分庁から主張書面及び資料の受領
  平成30年8月23日 審議
  平成30年9月 7日 審議
  平成30年9月27日 審議

第6 審査会の判断
1 関係法令等の定め
(1) 書類の送達について
 地方団体の徴収金の賦課徴収又は還付に関する書類は、郵便若しくは信書便による送達又は交付送達により、その送達を受けるべき者の住所、居所、事務所又は事業所に送達する(法第20条第1項)。
 通常の取扱いによる郵便又は信書便によって地方団体の徴収金の賦課徴収又は還付に関する書類を発送した場合には、法に特別の定めがある場合を除き、その郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第3項に規定する信書便物は、通常到達すべきであった時に送達があったものと推定する(同条第4項)。
(2) 督促について
ア 納税者が納期限までに地方団体の徴収金を完納しない場合においては、市町村の徴税吏員は、納期限後20日以内に督促状を発しなければならず、特別の事情がある市町村においては、当該市町村の条例で異なる期間を定めることができる(法第329条第1項及び第3項、第334条、第371条並びに第702条の8第1項)。
イ 納税者が納期限までに徴収金を完納しない場合には、徴税吏員は、納期限後30日以内に、督促状を発しなければならない。(大阪市市税条例(以下「市税条例」という。)第16条(平成29年大阪市条例第11号による改正前にあっては第11条))。
(3) 滞納処分について
 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る地方団体の徴収金を完納しないときは、市町村の徴税吏員は、当該地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押さえなければならない(法第331条第1項第1号、第334条、第373条第1項第1号及び第702条の8第1項)。
 当該徴収金の滞納処分については、徴収法に規定する滞納処分の例による(法第331条第6項、第334条、第373条第7項及び第702条の8第1項)。
(4) 不動産の差押えについて
 不動産の差押えは、滞納者に対する差押書の送達により行う(徴収法第68条第1項)。当該差押えの効力は、その差押書が滞納者に送達された時に生ずる(同条第2項)。
(5) 差押禁止財産について
 滞納者及びその者と生計を一にする配偶者その他の親族の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具等の財産は差し押さえることができない(徴収法第75条第1項)。ただし、畳及び建具に係る部分について建物その他の工作物とともに差し押さえるときは、この限りではない(同条第2項)。
(6) 超過差押えの禁止について
 国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押さえることができない(徴収法第48条第1項)。
(7) 納期限後に納付する税金の延滞金について
 納期限後にその税金を納付する場合においては、当該税額に、その納期限の翌日から納付の日までの日数に応じ、各年の特例基準割合(当該年の前年に租税特別措置法第93条第2項の規定により告示された割合に年1パーセントの割合を加算した割合をいう。以下同じ。)に年7.3パーセントの割合を加算した割合(当該納期限の翌日から1月を経過するまでの期間については、特例基準割合に年1パーセントの割合を加算した割合)を乗じて計算した金額に相当する延滞金額を加算して納付しなければならない(法第41条第1項、第326条第1項、第369条第1項、第702条の8第1項及び法附則第3条の2第1項)。
2 争点等について
(1) 督促状について
 平成30年8月22日付けで処分庁から提出のあった資料によると、本件処分の対象となる徴収金に係る督促状は、いずれも処分庁が別に定める日に通常の取扱いによる郵便により発送されており、法第20条第4項の定めるところにより、通常到達すべきであった時に送達があったものと推定される。
 そして、①処分庁から提出のあった前記資料によれば、当該督促状について処分庁が返戻を受けた事実は認められないこと、②当該督促状の宛先は審査請求人が住居であると主張する差押不動産の所在地であるところ、審査請求人が他所へ転居していた事実は窺われないこと、③審査請求人の全主張をみても送達されなかったことを窺わせる具体的な事情は提出されていないこと等を総合すると、前記推定を覆滅する事実を認めることはできず、当該督促状については、適正に送達されていると認められる。
(2) 差押えの予告について
 審査請求人は、差押えの予告を記載した書面は届いていない、滞納処分に至る旨の通告も受けていない旨主張する。
 しかしながら、差押処分について事前に予告や説明をしておくことは、法令上、要求されているものではない。
 もっとも、処分庁から提出のあった前記資料によれば、以下の事実を認めることができる。
① 本件処分に至るまでの間、審査請求人と処分庁の間で継続的に納付に関する相談が行われていた。
② 当該納付相談の際、処分庁は、審査請求人に対して、滞納税額が完納に至らない場合には、財産調査のうえ滞納処分がされる旨の説明をしていた。
③ 処分庁は、審査請求人に対し、期日を指定したうえで、それまでに納付がなければ滞納処分をする旨の催告文書を複数回にわたって発送していた。
 以上より、本件処分にあたり事前に予告がなかったとする審査請求人の主張には理由がない。
(3) 差押財産について
 審査請求人は、差押財産が収益物件でもなく、住居であること及び滞納税額に比して差押不動産の評価額が高額であることから本件処分が違法である旨主張するので、以下検討する。
ア 本件処分の差押財産である土地及び家屋については、徴収法及びその他の法令に定める差押禁止財産に該当するとは認めらない。
イ 国税徴収法基本通達第47条関係17によれば、以下のとおりとされている。
 差し押さえる財産の選択は、徴収職員の裁量によるが、次に掲げる事項に十分留意して行うものとする。この場合において、差し押さえるべき財産について滞納者の申出があるときは、諸般の事情を十分考慮の上、滞納処分の執行に支障がない限り、その申出に係る財産を差し押さえるものとする。
(1) 第三者の権利を害することが少ない財産であること。
(2) 滞納者の生活の維持又は事業の継続に与える支障が少ない財産であること。
(3) 換価が容易な財産であること。
(4) 保管又は引揚げに便利な財産であること。
 これを本件についてみると、処分庁から提出のあった前記資料によれば、処分庁の調査において差押不動産以外に差し押さえるべき財産はなく、また、審査請求人から不動産に代わる差し押さえるべき財産の申出がなかったことが認められる。
 よって、本件処分に係る差押財産の選択は、前記通達の趣旨に則ったものと認められる。
ウ 差押財産が一筆の土地等の一個の不動産である場合には、当該差押財産の評価額が滞納者の滞納税額を超過しているとしても、その一事をもって当該差押えを違法ということはできないと解される(昭和52年10月27日東京地方裁判所判決参照)。
エ 以上より、審査請求人の主張には理由がない。
(4) 延滞金の割合について
 審査請求人は、延滞金の割合が公序良俗に反し高いと主張する。
 しかしながら、当該割合は、前記1(7)のとおり法の定めるところであり、また、別紙1徴収金明細記載の各徴収金に係る延滞金については、処分庁において法の定めるところに基づき適正に計算を行っていることが認められる。
(5) 小括
 以上より、本件処分を違法又は不当とする事由を認めることはできない。  
3 その他の審査請求人の主張について
 審査請求人は、本件処分に係る担当者の更迭等を求めている。
 しかしながら、法令上、審査請求人に担当者の処分を求める申請が認められているものではなく、「法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者」(行政不服審査法第3条)にはなり得ないため、当該担当者の更迭等の求めについては、審査請求の対象とはならない。
4 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
5 結論
 よって、本件審査請求に理由がないものと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり答申する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会税務第2部会
 委員(部会長)岸本佳浩、委員 鹿田良美、委員 瀬川昇

別紙1及び別紙2 省略

答申書(平成30年度答申第13号)

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