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答申書(平成30年度答申第14号)

2023年2月17日

ページ番号:451418

諮問番号:平成30年度諮問第10号
答申番号:平成30年度答申第14号

答申書

第1 審査会の結論
 本件審査請求については、棄却されるべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)は、平成30年4月、審査請求人が法人市民税の納税義務を有していることを確認した。
2 処分庁は、調査の結果、平成30年4月24日、地方税法(以下「法」という。)第17条の5第1項の規定に基づき次の(1)から(5)までの期間(以下(1)から(5)までの期間を併せて「本件各期間」という。)に係る法人市民税の決定処分(以下「本件各処分」という。)を行った。
(1) 平成24年4月1日から平成25年3月31日までの期間
(2) 平成25年4月1日から平成26年3月31日までの期間
(3) 平成26年4月1日から平成27年3月31日までの期間
(4) 平成27年4月1日から平成28年3月31日までの期間
(5) 平成28年4月1日から平成29年3月31日までの期間
3 審査請求人は、平成30年5月24日、大阪市長に対し審査請求をした。

第3 審理関係人の主張の要旨 
1 審査請求人の主張
(1) 大阪府税(以下「府税」という。)の減免申請が不要との通知に「大阪市税の減免手続は従来どおり」と記載されていたことから、船場法人市税事務所に連絡したところ、平成20年5月に状況調査の郵便を送り、同月20日付けで「法人より未開業の連絡あり」と税務端末に入力されているとのことであった。
 審査請求人からそのような連絡をしたことは一切なく、状況調査の郵便も受け取った覚えがない。返答をしたこともない内容が税務端末に入力されているという極めて異常な状態であるために、通常の減免の手続が出来ず市税の徴収が行われる結果となっている。
(2) 毎年、府税は減免申請をしているが、市税からの書類は一切来ていなかったため、市税の申告をしなくてはならないということを全く知らなかった。納付書等が送られてこない現状において、納税に精通しているものでなければどのようにそれに対処すれば良いか見当もつかない。
(3) 審査請求人は収益事業を行っておらず、10年間赤字運営を行っており、累積赤字となっている。市税事務所の対応に強い不信感を持っており、通常であれば毎年減免手続を行い、減免されていたであろう市民税を支払わなくてはならないということには納得できない。
2 処分庁の主張
(1) 本件各処分について
ア 法第321条の8第19項の規定により、法第312条第3項第4号に規定する公共法人等は、総務省令で定める様式によって、毎年4月30日までに、毎年4月1日から3月31日までの期間中の事実に基づいて算定した均等割額を記載した申告書(以下「均等割申告書」という。)を、当該期間中において有する事務所、事業所又は寮等(以下「事務所等」という。)所在地の市町村長に提出し、及びその申告した均等割額を納付しなければならないとされており、収益事業を行わない特定非営利活動法人であっても均等割申告書を提出する義務を負うものであり、法人市民税について非課税ではない。
イ 審査請求人から提出された履歴事項全部証明書によると、審査請求人は特定非営利活動法人であり、平成19年10月15日に設立されており、平成29年大阪市規則第82号による改正前の大阪市市税条例施行規則(以下「施行規則」という。)第4条第1項第4号に規定する初めて市内に事務所等を有することとなったものには該当しないことから、審査請求人が平成24年4月1日から平成29年3月31日までの各期間に係る法人市民税の免除を受けようとする場合は、各年の4月30日までに均等割申告書と減免申請書を提出しなければならないが、提出がなされなかったため、減免の適用はできないものである。
ウ また、本件各処分は、法第321条の11第2項の規定により審査請求人から法人市民税の申告書の提出がなかったため調査によって行ったものであり、法定納期限の翌日から起算して5年以内に行われていることから(法第17条の5)、平成30年4月24日に行った本件各処分は適法である。
(2) 慫慂(しょうよう)文書等の送付について
ア 大阪市内で新たに事務所等を開設した法人は、平成29年大阪市条例第11号による改正前の大阪市市税条例(以下「市税条例」という。)第37条第7項の規定により、その該当することとなった日から2月以内に、法人設立・事務所等開設の申告をしなければならないところ、審査請求人は、前記のとおり平成19年10月15日に設立されているにもかかわらず当該申告はされていない。そこで、本市は、法人設立・事務所等開設申告書の提出のない法人の調査を行い、審査請求人あてに文書を送付し、法人設立・事務所等開設申告書の提出を慫慂したものである。
イ 審査請求書に記載の未開業の連絡は当該慫慂文書に対する応答であったと認識している。未開業の連絡の有無については、審査請求人と認識の違いがあるが、そもそも法人設立・事務所等開設の申告及び法人市民税の均等割の申告は、納税義務者が自らの判断と責任においてなすべきものであり、本件では前記のとおり各年の4月30日までに法人市民税の均等割申告書を提出しなければならず、それは本市からの慫慂の有無にかかわらず行うべきものである。

第4 審理員意見書の要旨
1 結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきものと判断する。
2 理由
(1) 法人設立・事務所等開設申告書について
 審査請求人から提出された履歴事項全部証明書によると、審査請求人は特定非営利活動法人であり、平成19年10月15日に設立されているため、新たに区内に事務所等を有する法人に該当することとなった日から2月以内に法人設立・事務所等開設申告書を市長に提出しなければならないところ、審査請求人から当該申告書が提出された事実はない。
 審査請求人は、平成20年5月に処分庁から送付された法人設立・事務所等開設申告書の提出を慫慂する文書を受け取った事実がなく、未開業である連絡をすることはないことを主張している。しかしながら、当該慫慂文書については、処分庁において設立等について申告がない法人に対し、法人設立・事務所等開設申告書の提出を促すために送付しているものであり、法令等に規定された通知すべき書類ではないこと、また、未開業であることの連絡をするしないにかかわらず、法人設立・事務所等開設申告書を提出する必要があることから、審査請求人の主張には理由がない。
(2) 法人市民税の申告納付及び決定について
 本件各処分における平成24年4月1日から平成29年3月31日の期間中に市内に事務所等を有していたこと及び本件各処分に係る法人税割額が○○○○円であることについては、特に争いはない。
 したがって、審査請求人は本件各処分に係る各期間の均等割申告書を当該市民税の各納期限までに市長に提出しなければならないこととなる。
 しかしながら、審査請求人から各納期限までに均等割申告書の提出がなかったため、処分庁において本件各処分がなされたものである。
 法人市民税の均等割額の決定は、法定納期限の翌日から起算して5年を経過した日以降においてはすることができないものとされているところ、本件各処分は平成30年4月24日に行われており、各納期限の翌日から5年以内に行われた処分となる。
 また、審査請求人は、処分庁から文書が送られてこないことから、申告しなければならないことを知らなかったとも主張しているが、処分庁からの文書の送達の如何にかかわらず、均等割申告書を提出する必要があることから、審査請求人の主張には理由がない。
(3) 減免等について
 審査請求人は、収益事業を行っておらず、10年間赤字運営であることから、毎年減免申請ができていれば、市民税を免除されていたであろうことや処分庁の対応に強い不信感を持っていることなどを主張しているが、当該主張は本件各処分への違法性又は不当性に対する主張ではないため、採用することができない。
 なお、各期間に係る減免申請については、法人市民税の各納期限までに申請が必要となるが、審査請求人から減免申請書が提出された事実は認められない。
(4) 上記以外の違法性又は不当性について
 他に本件各処分に違法又は不当な点は認められない。

第5 調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  平成30年9月10日 諮問書の受理
  平成30年9月11日 審議
  平成30年9月27日 審議

第6 審査会の判断
1 関係法令等の定め
(1) 法人市民税の納税義務者等について
 市町村民税は、市町村内に事務所又は事業所を有する法人に対しては、均等割額及び法人税割額の合算額によって課する(法第294条第1項第3号)。
(2) 法人設立・事務所等開設申告書について
ア 市町村長は、市町村民税の賦課徴収について必要があると認める場合においては、当該市町村の条例の定めるところによって、新たに第294条第1項第3号又は第4号の者に該当することとなった者に、その名称、代表者又は管理人の氏名、主たる事務所又は事業所の所在、当該市町村内に有する事務所、事業所又は寮等の所在、当該該当することとなった日その他必要な事項を申告させることができる(法第317条の2第8項)。
イ 新たに区内に事務所又は事業所を有することとなった法人は、その該当することとなった日から2月以内に法人設立・事務所等開設申告書を市長に提出しなければならない(市税条例第37条第7項)。
(3) 特定非営利活動法人に係る法人市民税の申告納付について
 特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人(以下「特定非営利活動法人」という。)で均等割のみを課されるものは、毎年4月30日までに、均等割額を記載した申告書を、前年4月1日から3月31日までの期間中において有する事務所等所在地の市町村長に提出し、及びその申告した均等割額を納付しなければならない(法第294条第7項、第312条第3項第4号及び第321条の8第19項)。
(4) 法人市民税の決定について
 市町村長は、納税者が法人市民税に係る申告書を提出しなかった場合においては、その調査によって、申告すべき法人市民税額等を決定する(法第321条の11第2項)。
(5) 更正又は決定の期間制限について
 更正又は決定は、法定納期限の翌日から起算して5年を経過した日以後においては、することができない(法第17条の5第1項)。
(6) 特定非営利活動法人に係る法人市民税の減免について
ア 特定非営利活動法人で収益事業を行わないものに対しては、申請に基づき市民税を免除する(市税条例第45条第5項第3号(平成24年大阪市条例第104号による改正前は第4号))。
イ 当該市民税の免除を受けようとする者のうち初めて市内に事務所等を有することとなったもの以外のものは、その理由を記載した申請書にその証拠となる書類を添付して、当該市民税の納期限までに市長に提出しなければならない(施行規則第4条第1項本文)。
 初めて市内に事務所等を有することとなったものについては、初めて市内に事務所等を有することとなった日の属する年度の翌年度において申告納付すべき法人の市民税に係る免除の申請をする場合に限り、5月31日までに申請しなければならない。(施行規則第4条第1項第4号(平成24年大阪市規則第260号による改正前は第5号))。
2 争点等について
(1) 申告の慫慂について
 審査請求人は、開業の問合せ文書を受け取った覚えはなく、また、市税からの書類が一切来ていなかったため、法人市民税の申告納付義務があるとの認識がなく、適正に申告等の手続を行うことができなかった旨主張する。
 しかしながら、そもそも法人市民税の申告納付に関する慫慂は法令上義務付けられているものではない。また、上記のとおり、法人市民税に関する法令は、審査請求人のように特定非営利活動法人で収益事業を行わないものについても一般的に法人市民税を申告納付する義務を課した上で、法令所定の期限までに法令所定の申請を行い、当該申請に基づき処分庁が収益事業を行っていないとの要件に該当すると判断した場合にのみ初めて法人市民税の免除を認める定めとなっているものであり、審査請求人がこれらの法令を知らなかったことは審査請求人の申告納付義務を否定すべき正当な理由にはならない。
 したがって、審査請求人が主張する本件各処分に至るまでの経緯を踏まえたとしても、当該慫慂の如何が審査請求人の法人市民税の申告納付義務に影響を及ぼすものとはいえない。
 なお、審査請求人は、処分庁において記録されている平成20年5月20日付けの「法人より未開業の連絡」は行っておらず、処分庁の誤った記録により市税からの書類が送付されなかったとも主張しているが、上記のとおり処分庁はそもそも慫慂に関する法的義務を負わないため、市税からの書類が送付されなかった理由の如何にかかわらず、審査請求人の主張には理由がない。
(2) 本件各期間に係る法人市民税の決定処分について
 審査請求人は、通常であれば毎年減免手続を行い、減免されていたであろう法人市民税を支払わなくてはならないということは納得できない旨及び処分庁が審査請求人からの申出があるまで審査請求人が未申告であることを約10年放置していたことについて問題である旨主張している。
 しかしながら、上記のとおり、法人市民税に関する法令は、審査請求人のように特定非営利活動法人で収益事業を行わないものについても一般的に法人市民税を申告納付する義務を課しているものであり、納税者の申告等により処分庁が納税義務の存在を把握することは当然に予定されている。よって、処分庁が、審査請求人からの申出を発端として法第321条の11第2項の規定に基づく調査を行い、法人市民税の決定処分を行ったとしても、この点に違法又は不当な点は認められない。
 また、本件各処分については、審査請求人が未申告であった期間に係る法人市民税のうち、法第17条の5第1項の規定に基づき遡及して決定が可能である5年分についてのみ行われており、この点にも違法又は不当な点は認められないことから、いずれにしても審査請求人の主張には理由がない。
3 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
4 結論
 よって、本件審査請求に理由がないものと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり答申する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会税務第1部会
 委員(部会長)佐藤 善恵、委員 津留 真弓、委員 下尾 裕

答申書(平成30年度答申第14号)

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