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令和元年10月4日付け裁決(答申第10号)

2023年2月17日

ページ番号:487101

裁決書

審査請求人 ○○○○
処分庁 大阪市長 

 審査請求人が平成30年4月2日付けで提起した審査請求(平成30年度財第1号)の対象となる処分のうち、処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)による平成30年3月23日付け、外国為替証拠金取引(以下「FX」という。)に係る預入証拠金の払戻請求権に対する差押処分(以下「本件処分」という。)及び別紙1、1ないし3記載の株式に対する各差押処分(以下、本件処分と併せて「本件各処分」という。)に係る審査請求(以下「本件各審査請求」という。)について、次のとおり裁決します。

主文
 本件各審査請求を棄却します。

事案の概要
1 処分庁は、審査請求人に対して、平成29年11月24日付けで、平成26年度市民税及び府民税税額変更処分、平成27年度市民税及び府民税税額変更処分並びに平成28年度市民税及び府民税税額変更処分をし、平成29年12月8日付けで、平成25年度市民税及び府民税税額変更処分(以下、これら各変更処分を併せて「本件各先行処分」という。)をしました。
2 処分庁は、本件各先行処分に係る別紙2徴収金明細記載の各徴収金(以下「本件各徴収金」という。)について、審査請求人がその納期限までに完納しなかったため、本件各先行処分のうち、平成26年度ないし平成28年度市民税及び府民税税額変更処分に係る各徴収金についての督促状を平成30年1月24日に発付し、平成25年度市民税及び府民税税額変更処分に係る徴収金についての督促状を平成30年2月26日に発付しました。
3 処分庁は、上記2の各督促状を発した日から10日を経過しても、審査請求人が本件各徴収金を完納しなかったため、本件各処分をしました。
4 審査請求人は、平成30年4月2日、大阪市長に対し、本件各処分の取消しを求めて審査請求を提起しました。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 平成○○年○月○日に京都地方裁判所で判決(京都地方裁判所平成○○年○月○日判決・平成○○年(○)第○○○○号。以下「京都地裁判決」という。)があり、審査請求人については給与所得者ではなく事業主と判決された。
⑵ これまでの税務署の更正処分は審査請求人を給与所得者として課税しており、明らかに錯誤がある。事業所得として計算し直す必要がある。このことについては、税務署と協議中であるが、処分庁は審査請求人が給与所得者でないとの京都地裁判決が出たことを知ったのちに、税務署の更正処分は有効であるとの主張で、本件各処分を強制してきた。
⑶ 処分庁は、地方税の趣旨を理解していない。地方税は国税に基づいて計算され、その結果をもとに課税するものであると解釈されている。ところが、再三言っているように国税が決定していない(国税不服審判所に審査請求中)にも関わらず、強引に差押えしてきたものである。国税の最終決定を確認してから地方税を課税すべきである。
⑷ 処分庁は、課税処分と滞納処分は別個独立した処分であると主張しているが、課税処分により税額が確定した段階で、その金額を滞納した場合に滞納処分が発生するのであって、密接に関連した処分であり、別個独立した処分などとの主張は失当である。
⑸ FXの証拠金を差し押さえた場合、評価損が実損となり、多大な損害を与えることになるため、FXの証拠金の差押えは違法行為である。
⑹ 預金等、現時点での明確な残高が分かり、経年変化しても価値を金利等で追跡できる物を差し押さえるのには問題がない(差押えが間違いであっても弁済可能な財産)が、FXや株式など、時々刻々と変化するものを差し押さえるには甚だ問題がある。
2 処分庁の主張
⑴ 審査請求人は、所得税は給与所得ではなく事業所得とすべきであるにもかかわらず処分庁は本件各処分を強制したと主張していることから、所得税の更正処分の違法性及び市・府民税の課税処分の違法性を理由として本件各処分が違法であると主張していると考えられる。
 しかしながら、課税処分と滞納処分は別個独立した処分であることから、課税処分の違法性は承継されず、課税処分が重大かつ明白な瑕疵であるとして無効とならない限り、課税処分の違法を理由に本件各処分の取消しを求めることはできない。
⑵ 本件処分については、地方税法(以下「法」という)第331条第6項等において、地方団体の徴収金の滞納処分については、国税徴収法(以下「徴収法」という。)に規定する滞納処分の例によると定められており、徴収法第75条から第78条に規定する差押禁止財産には該当せず、違法ではない。
⑶ FXの預入証拠金を差し押さえる為に全ての建玉を強制的に決済したのではなく、FXに係る払戻請求権を差し押さえたまでである。

理由
1 本件各審査請求に係る法令等の規定
⑴ 市民税及び府民税の滞納処分について
ア 市町村民税に係る滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る地方団体の徴収金を完納しないときは、市町村の徴税吏員は、当該地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押さえなければならないとされています(法第331条第1項)。
 地方団体の徴収金の滞納処分については、徴収法に規定する滞納処分の例によることとされています(同条第6項)。
イ 個人の道府県民税の徴収は、法第2章第1節第2款に特別の定めがある場合を除くほか、当該道府県の区域内の市町村が、当該市町村の個人の市町村民税の徴収の例により、当該市町村の個人の市町村民税の徴収と併せて行うものとされています(法第41条第1項)。
ウ 市町村は、個人の市町村民税に係る地方団体の徴収金について督促状を発し、及び滞納処分をする場合においては、法に特別の規定がある場合を除くほか、当該個人の道府県民税に係る地方団体の徴収金についてあわせて行うものとされています(法第334条)。
⑵ 差押禁止財産について
 滞納者の有する財産は、原則として差押えの対象となりますが、滞納者の最低生活の保障、生業の維持その他の理由から、徴収法第75条から第78条までの規定に掲げる財産等については、差押えが禁止されています。
(3) 差押財産の選択について
 差し押さえる財産の選択は、徴収職員の裁量によることとされていますが、次に掲げる事項に十分留意して行うものとされています。この場合において、差し押さえるべき財産について滞納者の申出があるときは、諸般の事情を十分考慮の上、滞納処分の執行に支障がない限り、その申出に係る財産を差し押さえるものとされています(徴収法基本通達第47条関係17)。
ア 第三者の権利を害することが少ない財産であること。
イ 滞納者の生活の維持又は事業の継続に与える支障が少ない財産であること。
ウ 換価が容易な財産であること。
エ 保管又は引揚げに便利な財産であること。
2 本件各処分の適法性及び妥当性等について
⑴ 本件各先行処分について
ア 審査請求人は、給与所得者ではないとの判決が出たことにより、先行処分である課税処分に錯誤があることは明らかであるのに、処分庁はそれを知ったのちに本件各処分を強制してきた旨及び課税処分により税額が確定した段階で、その金額を滞納した場合に滞納処分が発生するのであって、両者は密接に関連した処分であり、別個独立した処分などとの処分庁の主張は失当である旨主張しています。
 しかしながら、課税処分と滞納処分とは、前者が租税確定手続であり、後者が租税徴収手続であって、両者はそれぞれ別個の法律効果の発生を目的とする別個独立の処分であることから、課税処分の違法は、滞納処分に承継されず、仮に課税処分に瑕疵があったとしても、当該課税処分が当然無効であるか、権限のある者によって取り消されない限り、滞納処分の効力に影響を及ぼすものではありません。
 これを本件についてみると、本件各先行処分について、当然無効となり得る瑕疵があると認めるに足りる事情はなく、また、本件各先行処分は権限のある者によって取り消された事実もありません。
 したがって、上記審査請求人の主張は採用することができません。
イ 審査請求人は、国税不服審判所に審査請求中であるにもかかわらず、処分庁が強引に差押えをしてきたが、国税の最終決定を確認してから地方税を課税すべきである旨主張しています。
 しかしながら、国税不服審判所に対して不服申立てを行っていることについては、先行処分である大阪市における市民税及び府民税の賦課決定に直ちに影響を及ぼすものではなく、また、国税不服審判所に審査請求中であることを理由に地方税の滞納処分の続行を停止すべき法令等の規定はありません。
 したがって、上記審査請求人の主張は採用することができません。
⑵ 本件各処分について
 審査請求人は、FXの証拠金を差し押さえた場合、評価損が実損となり、多大な損害を与えることになるため、FXの証拠金の差押えは違法行為である旨及びFXや株式など、時々刻々とその価値が変化するものを差し押さえるのは甚だ問題である旨主張しています。
 しかしながら、FXに係る預入証拠金の払戻請求権及び株式は、徴収法第75条から第78条までの規定に掲げる財産等に該当しないことは明らかです。
 また、徴収法基本通達第47条関係17において、差押財産の選択については徴収職員の裁量によるとしつつも、前記1⑶のとおり、差押財産の選択について留意すべき事項を掲げるとともに、差し押さえるべき財産について滞納者の申出があるときは、滞納処分の執行に支障がない限り、その申出に係る財産を差し押さえるものとするとされています。本件各処分に係る差押財産の選択については、前記1⑶の留意すべき事項が留意されていなかったと認めるに足りる事情はなく、また、審査請求人から差し押さえるべき財産の申出が行われた事実は認められないことから、前記通達の趣旨を踏まえても、本件各処分に係る差押財産の選択に違法又は不当な点は認められません。
 したがって、審査請求人の本件各処分に対する主張は理由がなく、採用することができません。
3 結論
 以上のとおり、本件各処分に違法又は不当な点は認められず、本件各審査請求は理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決します。

令和元年10月4日
大阪市長 松井 一郎

別紙1及び別紙2 省略

裁決書(令和元年答申第10号)

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