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令和2年3月30日付け裁決(答申第15号)

2022年12月22日

ページ番号:505347

裁決書

審査請求人  大阪市〇〇区〇〇〇〇  〇〇 〇〇
処分庁  大阪市長  松井 一郎

 審査請求人が平成31年3月29日に提起した障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号。以下「法」という。)第76条に基づく補装具費支給に関する処分に係る審査請求(以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決する。

主文
 本件審査請求を棄却する。

事案の概要
1 平成30年5月9日、審査請求人は大阪市〇〇区保健福祉センター所長(以下「処分庁」という。)に対し、法第76条第1項に基づく補装具費支給の申請(第1回目)を行った。
2 平成30年〇月〇日、処分庁から大阪市立心身障がい者リハビリテーションセンター(本市の身体障がい者更生相談所。以下「更生相談所」という。)に対し、法第76条第3項に基づき、上記1の申請に係る判定の依頼を行った。
3 平成30年〇月〇日、上記2の依頼に基づき、更生相談所において、審査請求人に係る判定のための診察(第1回目)が行われた。
4 平成30年〇月〇日、更生相談所にて、上記2の依頼に係る専門家によるカンファレンス(第1回目)が行われた結果、「〇〇と〇〇の処方が適当」との結論に至った。
5 平成30年〇月〇日、更生相談所から審査請求人に対し、上記4の処方結果が内示されたが、審査請求人からは、〇〇である〇〇社製の「〇〇」(電動車椅子であるが、この製品は〇〇機能をも有するものであり、基準外の特例補装具となる。)でなければ、自宅への出入りが不可能であるとの主張がなされた。また、後日審査請求人の主張を証明する資料を提出するので、再度検討を希望する旨の申し出がなされた。
6 平成30年〇月〇日、上記5に係る資料として、審査請求人から補装具事業者を介し、更生相談所に対し、動画(DVD。審査請求人が、電動車椅子普通型と特例電動車椅子の2種類を使用し、自宅マンションのエントランスを出入りする様子を捉えた動画である。)が提出された。
7 平成30年〇月〇日、さらに、上記5に係る資料として、審査請求人から補装具事業者を介し、審査請求人の主治医(内科)作成に係る診療情報提供書が提出された。
8 平成30年〇月〇日、上記6及び7の資料の提出を踏まえ、更生相談所にて、上記2の依頼に係るカンファレンス(第2回目)が行われた結果、上記4のカンファレンスと同様、A並びにBの必要性はないとの結論に至った。一方で、第1回目のカンファレンス時には処方することとしていた「〇〇」については、当該部品が〇〇であることから、これに代わり、基準内の付属品である〇〇を処方することが適当とする結論に至った。以上の結果、審査請求人の補装具については、「〇〇と〇〇が適当」との判断に至った。なお、自宅マンションのエレベーターやオートロックの操作には、自助具で解決できる可能性もあることから、審査請求人が希望すれば相談先を紹介することとした意見が付加された。
9 平成30年〇月〇日、更生相談所から審査請求人に対し、上記8の第2回目のカンファレンスを踏まえた検討結果が内示されたところ、審査請求人は、本件について不服を申し立てること、自助具に係る支給は希望しない旨の意思を示した。
10 平成30年〇月〇日、審査請求人から更生相談所に対し、判定に関わった者の氏名、並びに上記9に係る検討結果の理由について、問い合わせがなされた。
11 平成30年〇月〇日、上記10の問い合わせに対し、更生相談所が回答(判定に関わった職員の役職と氏名、〇〇が認められた理由、〇〇が認められなかった理由、〇〇が認められなかった理由、Bが認められなかった理由)を行った。
12 平成30年〇月〇日、上記10及び11の経過を踏まえ、更生相談所にて審査請求人の上記2の判定に係るカンファレンス(第3回目)が行われた。
13 平成30年〇月〇日、審査請求人は、上記1の申請を取り下げるとともに、再度、法第76条に基づく補装具費支給の申請(第2回目)を行った。
14 平成30年〇月〇日、上記13に係る処分庁から更生相談所への、法第76条第3項に基づく判定依頼に基づき、更生相談所にて判定のための診察(上記3から通じて第2回目)が行われた。このとき、審査請求人からの要望により、更生相談所は、「ドアを開閉するための自助具」の有無につき、援助技術研究室(大阪市より補装具・福祉機器普及事業の事業委託を受け、障がいのある人が抱えるさまざまな問題に対して、福祉用具の活用や住環境整備を通じて具体的な解決を図るための支援システムの構築と普及を行っている機関)に問い合わせを行ったものの、同研究室より「ドアを開閉するための自助具はない」旨の回答を得た。
15 平成30年〇月〇日、更生相談所にて上記14の回答を踏まえたカンファレンス(上記4から通じて第4回目)が行われたところ、電動車椅子は移動のための補装具であり、住環境や介護の問題を解決するものではないことから、車椅子の機能によってドアの開閉を考慮する必要はないとの結論に至った。
16 平成30年〇月〇日、さらにカンファレンス(上記4から通じて第5回目)が行われ、審査請求人の補装具につき、改めて、同年〇月〇日に処方した「〇〇と〇〇が適当」との結論に至った。
17 平成30年〇月〇日、審査請求人から処分庁に対し、判定結果についての問い合わせがなされ、処分庁は、審査請求人に対し、判定結果の内示と説明を行った。これに対し、審査請求人から更生相談所に対して、判定により認められた機能と認められなかった機能並びにそれぞれの判定理由について、問い合わせがなされたため、同年〇月〇日に更生相談所より審査請求人に対して回答を行うとともに、同日、更生相談所より処分庁に対し、判定書等の送付を行った。
18 平成30年〇月〇日、審査請求人から処分庁に対し、補装具費支給申請の進捗状況についての問い合わせがなされ、処分庁は、同月〇日、これに対する回答(交付した処方箋に基づく見積書の提出がなければ決定できないため見積書の提出をお願いする旨)を行った。
19 平成30年〇月〇日、審査請求人から処分庁に対し、補装具によらない福祉サービスによる解決策(代替案)についての問い合わせがなされ、同月〇日、処分庁は審査請求人に対し、これに対する回答(重度訪問介護の移動中介護の利用について)を行った。
20 平成30年〇月〇日、審査請求人から処分庁に対し、重度訪問介護の移動介護は経済活動において利用できないためにこれに代わる代替案についての問い合わせがなされ、処分庁は、同月〇日、審査請求人に対し、これに対する回答をメールにより行った。
21 平成30年〇月〇日、審査請求人から処分庁に対し、重度訪問介護が障害者総合支援法に基づくサービスであるかについての問い合わせがなされ、処分庁は、同月〇日、審査請求人に対し、これに対する回答を行うとともに、補装具費の支給決定に際して必要となる見積書の提出を求めた。
22 平成30年〇月〇日、審査請求人から処分庁に対し、上記13の申請について、却下とする決定を希望する旨の申し出がなされ、処分庁は、同月〇日、審査請求人に対し、補装具費の支給を決定する予定であるため却下の決定はできない旨の説明を行うとともに、再度、補装具費の支給決定に際して必要となる見積書の提出を求めた。
23 平成30年〇月〇日、処分庁は審査請求人より、処方箋に対応した見積書を受領するとともに、同日、法第76条に基づき、上記13に係る申請に対する補装具費支給決定(以下「本件処分」という。)を行った。
24 平成30年〇月〇日、処分庁は審査請求人に対し、「補装具費支給決定通知書」並びに「同支給券」を送付した。
25 平成31年〇月〇日、審査請求人が福祉局障がい者施策部障がい支援課(以下「障がい支援課」という。)に来所し、本件処分の理由について、更生相談所並びに処分庁による説明を求める旨の申し出がなされた。これに対し、障がい支援課では、左記申し出について更生相談所並びに処分庁に伝達する旨を回答し、その後、各所間で情報共有を行った。
26 平成31年3月29日、審査請求人から大阪市長に対し、本件処分の取消しを求める審査請求を行った。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
 本件処分は、決定の理由に不備があり、また補装具費の支給要否の決定において裁量権の逸脱と濫用があることから違法であるので、本件処分を取り消す旨の裁決を求めるとともに審査請求人が希望する特例補装具の支給を求める。
2 処分庁の主張
 本件処分に際しては、国が定める「補装具費支給事務取扱指針」(以下「指針」という。)等に基づき、更生相談所に判定を依頼しており、更生相談所においてはケースワーカーによる面談や医師による2回の医学的診断に加え、看護師や理学療法士等を交えた5回の会議を経て判定結果が導かれており、補装具本来の機能や審査請求人の身体状況をふまえた適切な判定を行ったものと確認している。
 本件処分は、更生相談所における医学的判定に基づき決定した処分であり、処分に至る手続きの過程や決定の根拠に問題はなく、違法や不当な点はない。

理由
1 本件に係る法令等の規定
(1) 補装具の定義は、法第5条第25項に規定されており、「補装具とは、障害者等の身体機能を補完し、又は代替し、かつ長期間にわたり継続して使用されるものその他の厚生労働省令で定める基準に該当するものとして、義肢、装具、車いすその他の厚生労働大臣が定めるものをいう」と定められている。
(2) 法第5条第25項に規定された補装具に係る「厚生労働省令で定める基準」については、同法施行規則第6条の20に規定されており、次の①から③のいずれにも該当することとされている。
① 障害者等の身体機能を補完し、又は代替し、かつその身体への適合を図るように製作されたものであること。
② 障害者等の身体に装着することにより、その日常生活において又は就労もしくは就学のために、同一の製品につき長期間にわたり継続して使用されるものであること。
③ 医師等による専門的な知識に基づく意見又は診断に基づき使用されることが必要とされるものであること。
(3) 補装具費の支給については、法第76条に規定されており、市町村は、障害者から申請があった場合、当該申請に係る障がい者の障がいの状態からみて必要と認めるとき、補装具費を支給することが定められている。
(4) 補装具の種目や費用額の算定基準は、厚生労働省告示第528号「補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準」(以下「告示」という。)に規定されている。
(5) 補装具費支給に係る事務取扱については、国から「指針」が示されており、電動車椅子の申請があった場合、市町村は、更生相談所に補装具費支給の要否について判定依頼すること、また依頼を受けた更生相談所は申請者の来所により医学的判定を行うことが定められている。
(6) 特例補装具については、指針において、身体障がい者の現症、生活環境その他真にやむを得ない事情により、告示に定められた補装具の種類に該当するものであって、別表に定める名称、型式、基本構造等によることができない補装具を特例補装具とすることが定義されている。
 また、当該特例補装具を支給する必要が生じた場合は、支給の必要性並びに費用の額等について、更生相談所の判定又は意見に基づき決定することが示されている。
(7) 電動車椅子の支給については、厚生労働省通知「電動車椅子に係る補装具費の支給について」(厚労省通知、障発0323第32号、平成30年3月23日)が発出されており、当該通知の別紙「電動車椅子に係る補装具費支給事務取扱要領」(以下「電動車椅子に係る補装具費支給事務取扱要領」という。)の中で、支給決定に当たっては、更生相談所が十分な判定を行うとともに、名称種別の決定に当たっては、身体の状況、生活環境及び身体的操作能力の結果を総合的に考慮する必要があることが示されている。
(8) 電動車椅子の機能のうちAについては、〇〇において、支給対象者については〇〇と示されている。
(9) 電動車椅子の機能のうち〇〇の支給対象者については、国が示す「補装具費支給事務取扱要領」(以下「支給事務取扱要領」という。)において、〇〇が例示されている。
(10) Bは、「支給事務取扱要領」において、基本的事項として、〇〇と示されている。
2 本件処分に係る処分庁の手続き並びに更生相談所における判定過程の適否に関する検討
 本件処分に際して、処分庁における手続き並びに更生相談所における判定が適切な過程を経ているかについて、申請受付以降の経過を追い、検討する。
(1) 処分庁における手続きの適否
 処分庁は、審査請求人が申請した補装具が電動車椅子であって、申請書に添付された事業者見積書から告示の基準外部品が含まれていることから、支給決定に際しては、医学的診察に基づき適切な処方を得る必要があると判断し、「指針」並びに「電動車椅子に係る補装具費支給事務取扱要領」に示されているとおり、更生相談所に判定依頼を行なっている。
(2) 更生相談所における判定の適否
 更生相談所は、処分庁からの依頼に基づき、審査請求人に必要であり、適合する補装具の機能について審査請求人の障がいや身体の状況、生活環境並びに身体的操作能力等から十分な判定を行うため、審査請求人の来所による医学的判定(診察)を2度行っている。
 また、審査請求人の判定に際しては、診察を行った医師や看護師をはじめ、理学療法士等の専門職を交えた5度のカンファレンスが行われ、審査請求人から提出された動画を視聴し審査請求人の日常動作等を確認した結果として判定書並びに処方箋が作成されている。
(3) 処分庁における処分の根拠
 処分庁は、更生相談所の判定書並びに処方箋に基づき、審査請求人から申請のあった補装具(電動車椅子)の支給決定を行っている。
(4) 処分庁から審査請求人に対する処分理由の説明の適否
 本件審査において審査請求人は、自らが希望する電動車椅子の一部の部品が処方されなかったことについて、拒否する処分がなされたと説明し、本件処分が行政手続法第8条の規定に基づく処分庁の対応に不備があることを申し立てている。
 行政手続法第8条は、「申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。(以下省略)」と規定しており、処分内容が、不許可、棄却、却下等、拒否された場合に処分庁に課される義務を示している。
 本件処分は、審査請求人から申請のあった補装具(電動車椅子)を支給する旨の決定が行われたものであって、申請を拒否する処分を行ったものではない。
 また、補装具費支給申請は、申請者が支給を希望する種目を申請することが必要であるが、補装具に係る具体的な部品(追加が必要な機能)については、更生相談所における医学的判定により処方されるものである。
 特に、本件審査において審査請求人が否認されたとしている機能(部品等)は、告示に示された基準外であり、特例補装具に該当することから、指針において、支給の必要性並びに費用の額等については更生相談所の判定又は意見に基づき決定する領域である。
 審査請求人に係る判定は、更生相談所における2度に渡る診察に加え、審査請求人から提供された動画における動作等から適合する機能や仕様が処方されたものであり、支給決定にあたり十分な判定が行われているものと考える。
 また、処分庁並びに更生相談所は、処分に係る理由をはじめとした審査請求人からの問い合わせについて、そのすべてに漏れなく回答しており、社会通念上必要な説明責任は果たされているものと考える。
 これらのことから、処分庁における手続き並びに更生相談所における判定は、適切な過程を経ており、審査請求人に対する説明も尽されているものと考える。
3 処分庁における裁量権の逸脱や濫用の有無に関する検討
 更生相談所において作成された審査請求人に係る補装具の処方について、法令等に照らした検討や判断がなされているか、判定において裁量権の逸脱や濫用がみられるかについて、検討する。
(1) A
 A機能のある車椅子の支給対象者については、国が示す〇〇において、〇〇と示されている。
 更生相談所は、審査請求人は、身体の状況から、〇〇に該当しないことからAは処方しないと判定しており、この判定は「指針」に基づくものであるから裁量権を逸脱・濫用しているとは言えない。
(2) B
 Bは、国が示す「支給事務取扱要領」において、〇〇と示されている。
 更生相談所は、審査請求人を2度診察し、また審査請求人が提出した動画により日常動作や姿勢を確認したうえで、医学的見地からBを必要とする状態にないと判定しており、十分な判定に基づく結果であるから裁量権を逸脱・濫用しているとは言えない。
4 争点について
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件の争点は、①本件処分につき理由不備の違法があるか否か、②本件処分につき裁量権の逸脱・濫用の違法があるか否かである。
 以下、検討する。
5 争点に係る判断について
(1) 争点①について
ア 前記審理関係人の主張の要旨、理由1に記載のとおり、本件処分は、法第76条に基づき、障がい者等からの申請に基づいて「補装具」の購入等に要する費用の支給を決定するものである。その「補装具」の定義については前記審理関係人の主張の要旨、理由1に記載のとおりである他、告示により「補装具」の種目として「電動車椅子」が示されている。
 なお、購入等に係る費用の支給の対象となる「電動車椅子」の具体的な機能・型式等については指針の別表において示されているが、これらのうちから、いずれの機能・型式に係る「電動車椅子」を費用の支給対象とするかについては、同別表記載のとおり、申請者の個別具体的な身体の状況に基づいて処分庁が判断するものというべきである。さらに、「指針」及び「電動車椅子に係る補装具費支給事務取扱要領」により、「電動車椅子」に係る申請があった場合において、処分庁は更生相談所に対して支給の要否につき判定の依頼を行うとともに、処分庁は、同更生相談所における医師等の医学的専門家による十分な協議とその結果としての判定を踏まえて、いかなる「電動車椅子」を支給の対象にするのかについて決定をするものとされている。
 また、実際にも、審査請求人は、本件処分に係る申請において、その申請書上あくまで「電動車椅子」の購入等に要する費用の支給を申請しているのであり、同申請書上、具体的な「電動車椅子」の機能や型式は特定されていない。
イ 以上を前提に、本件処分は、審査請求人による「電動車椅子」の購入等に要する費用の支給の申請に対し、審査請求人の具体的な身体の状況を前提にした医師等の専門的判断を含む判定を踏まえ、同人に相応の「電動車椅子」の購入に必要となる費用の支給を決定したものであるというべきである。すなわち、本件処分は、審査請求人の申請を認容する処分を行ったと言わざるを得ず、行政手続法第8条により、理由の付記が必要となる「申請により求められた許認可等を拒否する処分」には当たらないというべきである。
 また、審査請求人が、本件処分に係る申請の後、本件処分に至るまでの処分庁とのやりとりの中で、Aや、B等の機能を備えた「電動車椅子」の購入等に要する費用の支給を求める旨を事実上表明していることを考慮するにしても、事案の概要に記載のとおり、処分庁は、審査請求人からの問い合わせ等に対して、判断に係る事実上の事前の内示や、見込まれる判断の根拠を示す等、十分な対応をしていることが伺える。
ウ 以上のことからすれば、本件処分につき、理由不備の違法性は認められない。
(2) 争点②について
ア 前記(1)、イに記載のとおり、本件処分は審査請求人の申請を認容する処分と言うべきであるが、その認容処分の具体的な内容(いかなる機能を有する電動車椅子を処方すべきか等)については、既述のとおり、処分庁に一定の裁量が認められるというべきである。そこで、以下、本件処分の内容において、裁量権の逸脱・濫用がないといえるのかを検討する。
イ 前記事案の概要に記載の事実経過や、調査審議の経過、本審査会で実施した審査請求人による口頭意見陳述の内容によれば、審査請求人が「電動車椅子」に付すべき機能として事実上付加を求めていたものの、処分庁が本件処分において考慮しなかった機能は、㋐A、㋑B、㋒C、㋓Dであることが認められる。また、上記㋐、㋑、㋒、㋓の機能を具備した「電動車椅子」は、指針別表1の定める「電動車椅子」の基準を超えた「特例補装具」に該当するものであることが認められる。
 審査請求人は、上記㋐、㋑、㋒、㋓の各機能を具備した、「特例補装具」に該当する「電動車椅子」に係る費用の支給を処分庁が認めなかった点について、本件処分に裁量権の逸脱・濫用の違法性があることを主張するものと認められる。
ウ この点、法第76条に基づく処分については行政庁に一定の合理的裁量が認められており、その処分を行うにつき、「判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして違法となる」こととされている(福岡地裁平成27年2月9日判決)。
 また、法に基づき制定されたものであり、その内容に合理性が認められる「告示」、「指針」、「電動車椅子に係る補装具費支給事務取扱要領」等によれば、既述のとおり、法76条による申請に関して「電動車椅子」の購入等に要する費用の支給申請があった場合、処分庁は、更生相談所に対して専門的見地からの判定を依頼すること、判定の依頼を受けた更生相談所では、医師による対象者の診察や、医師、看護師等の専門家間での協議検討(カンファレンス)を行う等して、対象者の個別具体的な身体の状況や、生活環境及び身体的操作能力を十分に勘案したうえで判定を行うこと、処分庁は同判定を踏まえて支給の要否を決定することになる。
 また、指針の別表1中「電動車椅子」の「名称」に記載されている機能の範囲を超える機能を有する「電動車椅子」は、「特例補装具」としての取扱いとなり、同「特例補装具」については、障がい者の障害の現症、生活環境その他真にやむを得ない事情の有無や、特例補装具の使用の必要性等が、更生相談所における判定の過程で十分に審査されたうえで、処分庁により、その支給の決定がされることになる。
 以上を踏まえ、上記機能㋐、㋑、㋒、㋓について、処分庁が支給の対象としない決定をしたことが、裁量権の逸脱・濫用に係る違法性を有するかについて、以下、検討する。
エ 調査審議の経過によれば、上記各機能が処方される要件・基準・目的は以下のとおりであることが認められる。
(ア) 機能㋐について
 〇〇において、その対象者を「〇〇」とされている。
(イ) 機能㋑について
 「支給事務取扱要領」において、「〇〇」と示されており、〇〇が対象となる。
(ウ) 機能㋒について
 「支給事務取扱要領」において、〇〇が例示されている。なお、身体状況から〇〇が認められる場合、指針における基準内の〇〇の処方が基本となる。
(エ) 機能㋓について
 〇〇を目的とした機能である。
オ 上記㋐、㋑、㋒、㋓の各機能を審査請求人に処方すべき必要性がないこと(前記エに係る要件・基準を充足しないこと。)については、平成30年5月9日の当初の申請時より合計2回にわたって行われた医師による診察の結果や、審査請求人による提出に係るDVDの録画(審査請求人が車椅子を使用する状況を録画したもの。)の内容を基に、上記当初の申請時より合計5回に及ぶ、医師、看護師等が参加したカンファレンスを経たうえで、判定が行われれたものであることが認められる。また、処分庁は、左記判定の結果に即して、本件処分を行ったものであることが認められる。
 以上のとおり、本件処分は、医学的見地からの十分な協議と検討を踏まえた専門的判定に基づいたものといえる。
カ また、法第76条による支援は、障がい者等に対する生活支援を目的とするものであり、同条にいう「補装具」としての「電動車椅子」とは、あくまで障がい者等の「歩行」機能を代替する移動のための補助具であることが想定されているものと言うべきである。すなわち、障がい者等の就労環境の向上や住環境の向上を図るために「電動車椅子」を処方することは、現在の法や制度上、想定されていないのであり、就労環境の向上は各自の就労先における支援により、また、住環境の向上は重度訪問介護制度の活用により、手当てがなされることが想定されていると言うべきである。
 確かに、上記㋐、㋑、㋒、㋓の機能が、「指針」別表1記載の基準内の通常仕様として想定される「電動車椅子」に付加されることにより、就労に伴う通勤や、日常生活において、審査請求人の行動の範囲や、行動の効率がより向上することは否定し難いものと言える。しかしながら、既述のとおり、現在の法や制度の下においては、審査請求人の就労環境や住環境の向上を図るという観点までを踏まえて「電動車椅子」とそれに付随する種々の機能を処方しなかったとしても、法第76条の趣旨に反するものではないと言うべきである。
 また、上記㋓の機能については、審査請求人が希望している活用方法(エレベーターの操作やドアの開閉等に係る動作を補助するための使用)を前提とすれば、車椅子から転落する等の危険が生じ得ることも認められる。
キ 以上のことから、本件処分には、重要な事実誤認や、事実に対する評価について明らかに不合理な点も見当たらず、また、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しない等、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くような取扱いが為されたとも見出し難い。よって、本件処分につき、裁量権の逸脱・濫用に係る違法は認められないと言うべきである。
ク なお、審査請求人は、当初処分庁からは自助具を使用することによって「電動車椅子」を利用する上での不便さが解消される旨の説明があったが、当該説明の内容は事実に反していると主張している。しかし、前述のとおり、住環境等の向上を図るために「補装具」を処方することは現在の法令や制度上は予定されておらず、審査請求人のいう自助具の有無によって処方される「電動車椅子」の仕様あるいは機能が左右されるわけでもない。
 したがって、そのような自助具の存否が本件処分の違法性、不当性に影響を与えるものではないと言うべきである。
6  小括
 以上から、本件処分に違法又は不当な点は認められない。
7 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
8 結論
 よって、本件審査請求は理由がないと認められるので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決する。

令和2年3月30日
審査庁  大阪市長  松井 一郎

裁決書(令和元年答申第15号)

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